保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)

休日デート

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 翌日は休日だったので、安藤さんとは朝からデートすることとなった。
 市内で一番大きな駅に集まることになった。駅内に目印となる時計塔があるので、そこに着いたら連絡するという形でまとまった。

 集合場所に着いてメッセージを送ると、安藤さんから「あともう少しで着く」と返事があった。スマホを持ったまましばらく周りの景色を見渡す。

 スーツを着た社会人。トレーニングウェアを着た学生。僕と同じく私服姿の大人と子供。休日にも関わらず、様々な人が時計塔を通り過ぎていく。
 今日も世界は忙しなく動いているみたいだ。

「最上くーん!」

 ぼーっと景色を眺めていると、僕の名を呼ぶ馴染みのある声が聞こえてきた。
 声の聞こえた方に顔をやる。しかし、そこに安藤さんの姿はなかった。訝しんで覗いていると、知らない美人の女性がこちらに近づいてくる。

「こらー、私はここだぞ」

「え……もしかして安藤さんですか……」

 驚きを隠せない僕に安藤さんは「してやったり」と言わんばかりにいやらしい笑みを浮かべた。

 それにしても、安藤さんは文字どおり見違えるほど、学校生活の容姿とは変わっていた。

 昨日と同じくおさげだった髪はストレートに伸ばしている。
 コンタクトをつけているのか、いつもの赤縁メガネはつけていなかった。彼女の目が思いの外まん丸だったのは新しい発見だ。

 口には薄い口紅を、頬にはチークを塗っており、普段よりも色気が増している。もしかすると目元にも化粧を施しているから目がより丸く見えているのかもしれない。

 白のカットソーと白のスカートで着飾り、カットソーの上にはGジャンを羽織っている。服とは対照的に持っているバッグは黒革のものだった。

「ふふふ。見違えた?」

「そりゃ、もちろん。見間違えない方がおかしいですよ」

「そっか。なら、頑張っておめかししてきた甲斐があったかな」

「すごく似合ってます」

「ありがと。それじゃあ、行こっか」

「行こうって……どこへですか?」

「今日行く場所に決まってるじゃん!」

 安藤さんは愉快にウィンクすると、僕を先導するように歩き始めた。安藤さんに流されるまま僕は彼女の後をついていく。

「今日行く場所ってどこですか? まだ聞いてないんですけど」

「映画館だよ。昼ごはん食べた後だと眠くなるかもしれないから午前中に見た方がいいかなと思って。それに昼ごはんを食べながら映画の感想を言い合えるしね」

「映画館……どんな映画を観るんですか?」

「それは秘密。向こうに着いてからのお楽しみだよ」

 笑みを浮かべながら人差し指を鼻の位置に添える。今日の安藤さんは一挙手一投足に魅力を感じる。

「そうですか。にしても、安藤さんってこんなに美人だったんですね。何で学校では赤縁の眼鏡とおさげ髪なんて地味な格好してるんですか?」

「毎日このコーデだと時間かかって面倒くさいからね」

「でも、髪ストレートにして、赤縁の眼鏡とるだけですごく変わりますよ。きっと今の方が人が寄ってくると思いますし、友達もできやすいと思いますけど」

「うーん、イメージ変えただけで近寄ってくる人間を私は友達と呼べないよ」

 安藤さんは笑顔で答えたものの、その笑顔の裏には何やら闇があるように感じた。

「それもそうですね」

 だから僕は無意識のうちに彼女の意見に同意してしまっていた。
 少しだけ無言の時間が続く。せめてもの救いはちょっと歩いたところに映画館があったことだった。

「され、着きました。時間もちょうどいい感じだね!」

 先ほどの雰囲気がなかったように、安藤さんはテンションが上がる様子で腕時計の時間を見る。それから映画館に入り、券売機へと足を運んだ。

 安藤さんは機械の前に立ち、スマホに写されたQRコードをスキャナーにかざす。僕は顔を上げ、上部に設置されたモニターに写される時刻表を目にやる。

 人気アニメ映画、海外映画など色々なジャンルの映画が公開されている。時間もちょうどいいと言っていたからすぐに始まるやつだろう。

 視線をスライドさせ、一つ一つ折っていく。ふと、あるところで視線が止まった。

「はい。これ最上くんの分ね」

 とてつもない不安に襲われていると、安藤さんが僕の肩を叩いてチケットを差し出す。そこには答え合わせをするように、タイトルが記載されていた。

『事故物件の隣部屋』。映画のジャンルは考えなくとも『ホラー』であると分かる。

「今週の水曜日に公開だったの。すごく見たかったから最上くんがいて助かったよ。一人で見るのは流石に怖いから」

 絶対に嘘だ。昨日のホラーVRではとても楽しそうにプレイしていた。僕を陥れようとして選んだに違いない。

「ほら、早く行こっ!」

 本当に見ないといけないのだろうか。頭を悩ませていると、安藤さんが僕の腕に両腕を抱いた。柔らかい感触が伝わる。これが恋愛系の映画を観るのであれば、とても心揺れるシチュエーションだっただろう。

 だが、今の僕はすでに心が揺れている。心臓はこれ以上ないくらいに鼓動を打っていた。

 周りには安藤さんは天使のように映っていることだろう。美人な先輩と一緒にデートできるなんて幸せ者だなと。ただ、今の僕には彼女は地獄に誘う悪魔にしか見えなかった。

 誰か助けてくれ。

 これから見る映画の主人公の気持ちを先読みするように、僕は心の中で悲痛の叫び声を上げたのだった。
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