20 / 138
1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
休日デート
しおりを挟む
翌日は休日だったので、安藤さんとは朝からデートすることとなった。
市内で一番大きな駅に集まることになった。駅内に目印となる時計塔があるので、そこに着いたら連絡するという形でまとまった。
集合場所に着いてメッセージを送ると、安藤さんから「あともう少しで着く」と返事があった。スマホを持ったまましばらく周りの景色を見渡す。
スーツを着た社会人。トレーニングウェアを着た学生。僕と同じく私服姿の大人と子供。休日にも関わらず、様々な人が時計塔を通り過ぎていく。
今日も世界は忙しなく動いているみたいだ。
「最上くーん!」
ぼーっと景色を眺めていると、僕の名を呼ぶ馴染みのある声が聞こえてきた。
声の聞こえた方に顔をやる。しかし、そこに安藤さんの姿はなかった。訝しんで覗いていると、知らない美人の女性がこちらに近づいてくる。
「こらー、私はここだぞ」
「え……もしかして安藤さんですか……」
驚きを隠せない僕に安藤さんは「してやったり」と言わんばかりにいやらしい笑みを浮かべた。
それにしても、安藤さんは文字どおり見違えるほど、学校生活の容姿とは変わっていた。
昨日と同じくおさげだった髪はストレートに伸ばしている。
コンタクトをつけているのか、いつもの赤縁メガネはつけていなかった。彼女の目が思いの外まん丸だったのは新しい発見だ。
口には薄い口紅を、頬にはチークを塗っており、普段よりも色気が増している。もしかすると目元にも化粧を施しているから目がより丸く見えているのかもしれない。
白のカットソーと白のスカートで着飾り、カットソーの上にはGジャンを羽織っている。服とは対照的に持っているバッグは黒革のものだった。
「ふふふ。見違えた?」
「そりゃ、もちろん。見間違えない方がおかしいですよ」
「そっか。なら、頑張っておめかししてきた甲斐があったかな」
「すごく似合ってます」
「ありがと。それじゃあ、行こっか」
「行こうって……どこへですか?」
「今日行く場所に決まってるじゃん!」
安藤さんは愉快にウィンクすると、僕を先導するように歩き始めた。安藤さんに流されるまま僕は彼女の後をついていく。
「今日行く場所ってどこですか? まだ聞いてないんですけど」
「映画館だよ。昼ごはん食べた後だと眠くなるかもしれないから午前中に見た方がいいかなと思って。それに昼ごはんを食べながら映画の感想を言い合えるしね」
「映画館……どんな映画を観るんですか?」
「それは秘密。向こうに着いてからのお楽しみだよ」
笑みを浮かべながら人差し指を鼻の位置に添える。今日の安藤さんは一挙手一投足に魅力を感じる。
「そうですか。にしても、安藤さんってこんなに美人だったんですね。何で学校では赤縁の眼鏡とおさげ髪なんて地味な格好してるんですか?」
「毎日このコーデだと時間かかって面倒くさいからね」
「でも、髪ストレートにして、赤縁の眼鏡とるだけですごく変わりますよ。きっと今の方が人が寄ってくると思いますし、友達もできやすいと思いますけど」
「うーん、イメージ変えただけで近寄ってくる人間を私は友達と呼べないよ」
安藤さんは笑顔で答えたものの、その笑顔の裏には何やら闇があるように感じた。
「それもそうですね」
だから僕は無意識のうちに彼女の意見に同意してしまっていた。
少しだけ無言の時間が続く。せめてもの救いはちょっと歩いたところに映画館があったことだった。
「され、着きました。時間もちょうどいい感じだね!」
先ほどの雰囲気がなかったように、安藤さんはテンションが上がる様子で腕時計の時間を見る。それから映画館に入り、券売機へと足を運んだ。
安藤さんは機械の前に立ち、スマホに写されたQRコードをスキャナーにかざす。僕は顔を上げ、上部に設置されたモニターに写される時刻表を目にやる。
人気アニメ映画、海外映画など色々なジャンルの映画が公開されている。時間もちょうどいいと言っていたからすぐに始まるやつだろう。
視線をスライドさせ、一つ一つ折っていく。ふと、あるところで視線が止まった。
「はい。これ最上くんの分ね」
とてつもない不安に襲われていると、安藤さんが僕の肩を叩いてチケットを差し出す。そこには答え合わせをするように、タイトルが記載されていた。
『事故物件の隣部屋』。映画のジャンルは考えなくとも『ホラー』であると分かる。
「今週の水曜日に公開だったの。すごく見たかったから最上くんがいて助かったよ。一人で見るのは流石に怖いから」
絶対に嘘だ。昨日のホラーVRではとても楽しそうにプレイしていた。僕を陥れようとして選んだに違いない。
「ほら、早く行こっ!」
本当に見ないといけないのだろうか。頭を悩ませていると、安藤さんが僕の腕に両腕を抱いた。柔らかい感触が伝わる。これが恋愛系の映画を観るのであれば、とても心揺れるシチュエーションだっただろう。
だが、今の僕はすでに心が揺れている。心臓はこれ以上ないくらいに鼓動を打っていた。
周りには安藤さんは天使のように映っていることだろう。美人な先輩と一緒にデートできるなんて幸せ者だなと。ただ、今の僕には彼女は地獄に誘う悪魔にしか見えなかった。
誰か助けてくれ。
これから見る映画の主人公の気持ちを先読みするように、僕は心の中で悲痛の叫び声を上げたのだった。
市内で一番大きな駅に集まることになった。駅内に目印となる時計塔があるので、そこに着いたら連絡するという形でまとまった。
集合場所に着いてメッセージを送ると、安藤さんから「あともう少しで着く」と返事があった。スマホを持ったまましばらく周りの景色を見渡す。
スーツを着た社会人。トレーニングウェアを着た学生。僕と同じく私服姿の大人と子供。休日にも関わらず、様々な人が時計塔を通り過ぎていく。
今日も世界は忙しなく動いているみたいだ。
「最上くーん!」
ぼーっと景色を眺めていると、僕の名を呼ぶ馴染みのある声が聞こえてきた。
声の聞こえた方に顔をやる。しかし、そこに安藤さんの姿はなかった。訝しんで覗いていると、知らない美人の女性がこちらに近づいてくる。
「こらー、私はここだぞ」
「え……もしかして安藤さんですか……」
驚きを隠せない僕に安藤さんは「してやったり」と言わんばかりにいやらしい笑みを浮かべた。
それにしても、安藤さんは文字どおり見違えるほど、学校生活の容姿とは変わっていた。
昨日と同じくおさげだった髪はストレートに伸ばしている。
コンタクトをつけているのか、いつもの赤縁メガネはつけていなかった。彼女の目が思いの外まん丸だったのは新しい発見だ。
口には薄い口紅を、頬にはチークを塗っており、普段よりも色気が増している。もしかすると目元にも化粧を施しているから目がより丸く見えているのかもしれない。
白のカットソーと白のスカートで着飾り、カットソーの上にはGジャンを羽織っている。服とは対照的に持っているバッグは黒革のものだった。
「ふふふ。見違えた?」
「そりゃ、もちろん。見間違えない方がおかしいですよ」
「そっか。なら、頑張っておめかししてきた甲斐があったかな」
「すごく似合ってます」
「ありがと。それじゃあ、行こっか」
「行こうって……どこへですか?」
「今日行く場所に決まってるじゃん!」
安藤さんは愉快にウィンクすると、僕を先導するように歩き始めた。安藤さんに流されるまま僕は彼女の後をついていく。
「今日行く場所ってどこですか? まだ聞いてないんですけど」
「映画館だよ。昼ごはん食べた後だと眠くなるかもしれないから午前中に見た方がいいかなと思って。それに昼ごはんを食べながら映画の感想を言い合えるしね」
「映画館……どんな映画を観るんですか?」
「それは秘密。向こうに着いてからのお楽しみだよ」
笑みを浮かべながら人差し指を鼻の位置に添える。今日の安藤さんは一挙手一投足に魅力を感じる。
「そうですか。にしても、安藤さんってこんなに美人だったんですね。何で学校では赤縁の眼鏡とおさげ髪なんて地味な格好してるんですか?」
「毎日このコーデだと時間かかって面倒くさいからね」
「でも、髪ストレートにして、赤縁の眼鏡とるだけですごく変わりますよ。きっと今の方が人が寄ってくると思いますし、友達もできやすいと思いますけど」
「うーん、イメージ変えただけで近寄ってくる人間を私は友達と呼べないよ」
安藤さんは笑顔で答えたものの、その笑顔の裏には何やら闇があるように感じた。
「それもそうですね」
だから僕は無意識のうちに彼女の意見に同意してしまっていた。
少しだけ無言の時間が続く。せめてもの救いはちょっと歩いたところに映画館があったことだった。
「され、着きました。時間もちょうどいい感じだね!」
先ほどの雰囲気がなかったように、安藤さんはテンションが上がる様子で腕時計の時間を見る。それから映画館に入り、券売機へと足を運んだ。
安藤さんは機械の前に立ち、スマホに写されたQRコードをスキャナーにかざす。僕は顔を上げ、上部に設置されたモニターに写される時刻表を目にやる。
人気アニメ映画、海外映画など色々なジャンルの映画が公開されている。時間もちょうどいいと言っていたからすぐに始まるやつだろう。
視線をスライドさせ、一つ一つ折っていく。ふと、あるところで視線が止まった。
「はい。これ最上くんの分ね」
とてつもない不安に襲われていると、安藤さんが僕の肩を叩いてチケットを差し出す。そこには答え合わせをするように、タイトルが記載されていた。
『事故物件の隣部屋』。映画のジャンルは考えなくとも『ホラー』であると分かる。
「今週の水曜日に公開だったの。すごく見たかったから最上くんがいて助かったよ。一人で見るのは流石に怖いから」
絶対に嘘だ。昨日のホラーVRではとても楽しそうにプレイしていた。僕を陥れようとして選んだに違いない。
「ほら、早く行こっ!」
本当に見ないといけないのだろうか。頭を悩ませていると、安藤さんが僕の腕に両腕を抱いた。柔らかい感触が伝わる。これが恋愛系の映画を観るのであれば、とても心揺れるシチュエーションだっただろう。
だが、今の僕はすでに心が揺れている。心臓はこれ以上ないくらいに鼓動を打っていた。
周りには安藤さんは天使のように映っていることだろう。美人な先輩と一緒にデートできるなんて幸せ者だなと。ただ、今の僕には彼女は地獄に誘う悪魔にしか見えなかった。
誰か助けてくれ。
これから見る映画の主人公の気持ちを先読みするように、僕は心の中で悲痛の叫び声を上げたのだった。
20
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる