保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)

忘れていたハンカチ

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「しんど……」

 月曜日の朝。登校するや否や、僕は机の上に突っ伏していた。
 桐花姉さんから課されたランニングを行なったためだ。運動不足のせいもあって、3キロ走ったあとはしばらく動けなかった。

 疲労が蓄積された状態にも関わらず、学校には通わなければならない。重い足を引き摺りながら登校し今に至る。

「珍しいね。亡霊くんが愚痴をこぼすなんて」

 誰に言ったでもない台詞を隣の席の女子が拾った。
 横に顔を向ける。彼女は僕に視線を向けることなく、教科書を鞄から机の中に移動させていた。

 和光 美聡(わこう みさと)。
 黒色の艶やかなロングヘアー。容姿端麗な顔立ちから男子はおろか女子にまで人気がある。しかし、人気とは裏腹に彼女の周りに人が来ることはない。皆、恐れ多いのだろう。

 最も、彼女はクラスメイトが寄ってこないのをどう思ってもいなさそうだ。強いて言えば、快適と思っているんじゃないだろうか。まだ数日ではあるが、日頃の彼女の態度による僕の偏見だ。

「珍しいですか?」

「ええ。全てに対して『どうでもいい』とでも言うように遠い目をしているから感情がないのかと思ってた。亡霊だけにね」

 自己紹介のニックネームは彼女にだけヒットしたようだ。あれ以来、彼女だけは僕のことを亡霊呼ばわりする。まあ、他の人は僕の名前すら呼ばないのだが。

「今朝3キロランニングしてきたんです」

「へぇー、それは大変ね。ダイエットでも始めたの?」

「この体型でダイエットするのは流石に早すぎますよ。健康のためというか、体づくりのためというか、そんな感じです」

「見るかぎり、逆効果な気がするけど」

 和光さんの意見はもっともだ。今の僕に3キロは厳しすぎる。夕方もやらなければいけないのを考えると憂鬱だな。

「ねえねえ」

 二人で会話をしている最中、廊下の方から一人の女性が話しかけてきた。
 オレンジがかった髪をポニーテールに結んでいる。吊り目の奥にある輝かしい紫の瞳は、怠慢だが面倒見のいい性格を感じさせる。

「最上 文也くんっている」

 彼女のお目当ては僕のようだ。
 だが、僕は彼女のことを全く知らない。会ったことすら記憶していないくらいだ。そんな彼女が僕に何の用だろう。

「最上 文也くんなんて内のクラスにいたかしら?」

 和光さんは冗談なのか本当なのか分からないような表情とトーンで聞いてきた。普段から「亡霊、亡霊」と呼んでいるせいで、肝心な名前を忘れてしまっているのかもしれない。

「いや……僕のことなんだけど……」

「ああ、君か。ちょうど良かった。渡したいものがあってね。これ!」

 そう言って彼女はポケットの中を探ると一枚の布を取り出した。
 見覚えのある正方形の布。それは日和先輩の気を引くために落としたハンカチだった。

 どうやら、彼女が拾ってくれていたようだ。
 合点がいったところで、席を立ち上がって廊下を出る。
 
「本当は先週の内に渡そうと思ってたんだけど完全に失念しててね。今週は忘れないように朝に来たんだ。はい、どうぞ!」

「ありがとうございます。えっと……」

 名前を言おうとして口ごもる。僕は彼女の名前を知らなかった。

「私は二年D組の飯塚 杏子(いいづか あんず)。よろしくね」

「飯塚……先輩……」

 一つ上の先輩だったか。
 それにD組ということは日和先輩と同じクラスのはずだ。

「おお、その呼び方いいね。高校で初めて先輩呼びされた気がするわ」

「良かったです。あの……この後お時間あったりしますか?」

「別にいいよ。でも、私で大丈夫? 見ず知らずの相手だと思うけど」

「飯塚先輩がいいんです」

「へぇー、そう。あっ、もしかして一目惚れしたとか?」

「それはないので安心してください」

「否定が早いな。まあ、いいよ。初めての後輩に免じて話に乗ってやろう」

「助かります。じゃあ、ここで話すのは憚られるので場所を移しましょう」

 僕と飯塚先輩は二人で人気の少ない渡り廊下まで歩いていった。

「それで、話って何?」

「飯塚先輩は同じクラスの安藤日和さんを知っていますか?」

「安藤……ああ、あの地味……いや、今はちょっと感じ変わったか。知ってるよ。安藤さんがどうしたの? あっ、もしかして安藤さんのことが好きとか?」

「いえ。他言無用でお願いしたいのですが、実は安藤さんとはもう恋人同士なんです」

「えっ! うそっ! なるほど。それで先週からイメチェンしてたのか。にしても、こんな時期に先輩に手を出すとは。中々のやり手だね」

「色々ありましてね。話は戻りますが、クラスでの安藤さんってどんな感じですか?」

「んー、どんな感じって言われてもな。あんまり喋らないから分からないな。男子からはオシャレしたら可愛いみたいな噂を聞くけどね」

「そう……なんですね……」

「あっ! もしかして嫉妬した感じか?」

「違いますよ」

「おお、自信満々だね。そういうの嫌いじゃないよ」

「クラスで仲の良い友達とかいますか?」

「そうねー、あんまり見ないかな。みんなあんまり安藤さんのこと好きじゃなさそうだからなー」

「っ? どうしてですか?」

「さっき言ったでしょ。男子から可愛いって噂されているって。女子ってそういうのに嫉妬しちゃうんだよね。特に何もしてないのにモテるやつには」

「飯塚先輩も同じですか?」

「私? 私は別にそんなことないよ。殺伐としたのは好きじゃないからね。自分にも、他人にもさ」

「そうですか。じゃあ、安藤さんに話しかけてもらってもいいですか? 安藤さん、クラスで一人ぼっちなのが辛いらしくて」

「話しかけるのは構わないけど、一人ぼっちを解消するのはちょっと難しいかも」

「どうしてですか?」

「私がいつも行動を共にする子に嫉妬してるヤツがいるんだ。好きな男子が安藤さんに好意を寄せそうになってるからね。だから私が下手に安藤さんとつるんだら、彼女に迷惑かけるかもしれないしね」

「そういうことでしたか」

 殺伐としたのは好きじゃないと言っていたから、彼女としては日和先輩と話すこともできれば避けたいことだろう。そこを飲み込んでもらえたのだから、これ以上踏み込むのは悪い。

「あの……メッセージアカウント交換しませんか?」

「いきなりだね。浮気は良くないよ」

「下心はないですよ。もし何かあった時に、力を貸して欲しいなと思いまして」

「あんまり期待されちゃ困るんだけどね。でもいいよ。こうして出会えたのも運命みたいなもんだしね」

 こうして僕は日和先輩のクラスメイトである女子と連絡を交換することに成功したのだった。
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