保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)

依頼の本質

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 五限終わり。僕は保健室で休息を取っていた。
 チャイムが鳴ると同時に目を覚ます。上体を起こし、ポケットからスマホを取り出す。時間を確認すると、先ほどのチャイムは六限の終わりを告げるものだと分かった。

「お目覚めか」

 ベッドから起き上がると、先生が僕の存在に気づく。
 先週は毎日のように見ていたからか、休日を空けて見る先生の姿はとても懐かしかった。

 パソコンを広げているが、イヤホンはつけていない。

「今日はゲームじゃないんですね?」

「私を何だと思ってる」

「すみません。生徒に『サボるな』と叱る立場の先生がサボるわけないですもんね」

「何を当たり前の話をしているんだか。ゲームは休日中にクリアしたから、今日は漫画を読んでいるんだよ。電子書籍でな」

「サボってんじゃないですか……」

「失敬だな。サボるは『やるべき事をやらずに他事をする』時に使うんだ。私はやるべき事を終わらせてから漫画を読んでいる。サボっているのではなく、休息を取っているのだよ」

「そうですか。四宮先生が言うのなら間違いないですね」

 下手に口出ししようものなら、屁理屈で言いくるめられるだろう。最悪の場合、カッターナイフで強制的に口を閉ざされる可能性だってある。

 触らぬ神に祟りなしだ。

「依頼の方はどうだ? 休日だったから特に進展はないだろうが」

「日和先輩にとっての進展はないですが、僕としてはいくらか進展はありました」

「へぇ~、君は彼女のことを下の名前で呼ぶようになったのか。この休日で何かあったみたいだな。リア充め。爆発しろ」

「リア充爆発って……懐かしい言葉ですね。もう、死語じゃないですか?」

「そうなのか。色々な年代のゲームやら漫画を読んでいるせいで今の時代が分からなくなっているな。それで、君の言う進展とは?」

「うーん、あんまり良いものではないですね。先生に一つ尋ねたいことがあるんですが。日和先輩って一年の時にもカウンセリングに来たことがあるんですよね」

「ああ。よく来たよ」

「その時はどんな話をしてたんですか?」

「んー、色々と話してたからな。いちいち覚えてはいない。ただ、クラスの人間関係についてよく教えてくれた」

「クラスの人間関係……」

「人は周りの人間関係には敏感な傾向にあるからな。学生のうちはクラスや部活などの人間関係にアンテナを張っているもんさ」

「四宮先生にいちいち教える必要はなさそうですけどね」

「そんなことはないさ。良い意味でも悪い意味でも、人と共有することで安心感を得られるからね。ただ、彼女の場合、別の理由もあるかもしれないが」

「別の理由?」

「二年生になって、彼女が最初に来た時に言っただろ。クラスに『いじめっ子』がいるって。先生である私に人間関係を伝えるのは、警戒しておかなければならない学生を仄めかす意味もあるんだ。安藤日和はいじめられるのをとても恐れている」

 飯塚先輩の言っていたことが脳裏をよぎる。彼女の友達がいじめっ子かどうかは判断できないが、日和先輩に嫉妬しているクラスメイトがいるというのは、あまりよろしくない状態だな。

「友達を作るのは『いじめ』を防ぐための防波堤にするためだ。孤立状態というのは、いじめられる可能性を大いに引き上げるからな。ついでに言うと、孤立状態が長引けば長引くほど危険になっていく」

「僕が保健室に来る度に、先生が依頼の進捗を聞くのはそう言う意味があってのことだったんですね」

「察しが良くて助かる。さらに言えば、都度聞いておかないと君がサボる可能性があるからな」

「信用されてないんですね」

「もちろんだ。少々強引に君を召使に仕立て上げたからな。管理を怠ると、逃げられる可能性がある」

「それは……否定できませんね……」

 持病さえなければ、召使にされて以降、保健室になんて絶対に来なかったろうに。

「君にはできる限り早めに依頼を完了してもらいたいが、強引に作った友達は良い結果を生まない。むしろ悪化させる危険性がある。ゆっくりでいいから良い仲間を作ってあげてくれ」

「わかりました」

 恋人がいじめられる姿を見たくはない。
 今日の出来事で依頼の難易度はグッと上がった気がする。それでも、こんな事情を知ってしまった以上は頑張るしかない。

 話している最中、不意にスマホに通知が流れる。

『今、文也くんのクラスにいる子から保健室にいるって聞いたけど体調悪いの?』

 日和先輩からのメッセージだった。
 文言を見た瞬間、僕は背筋が凍るのを感じた。

 そういえば、今日は帰りに日和先輩が教室に来る日だった。

「すみません。野暮用を思い出したので、これにて失礼します」

 四宮先生からの返事を待たず、保健室の扉を勢いよく開け、教室まで走っていった。
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