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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
彼女の家
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「ここが日和先輩の家ですか?」
先週見た景色の続きを眺めながら辿り着いた場所は、住宅街に佇む大きな一軒家だった。紺を基調とした邸宅。周辺にある家に比べて異質な存在となっている。
「うん。ちょっと引いた?」
「まあ……まさかこんな豪華な家に住んでいるとは思わなかったので」
「だよね」と何度も言われたセリフに対して反応するような口ぶりを見せる。両開きの大きな門扉を開くと階段があった。学校のように『くの字』に敷かれている階段を上がっていくと広大な敷地が姿を現した。
他よりも高い位置にある家は豪華絢爛という言葉がお似合いだ。
広々とした芝生。その縁に色とりどりの花が咲いている。窓から見えるリビングは広大であり、壁についたテレビは見たことのない大きさだった。
「両親は何をされてるんですか?」
「それは秘密」
人差し指を鼻に添え、にっこりと微笑む。
玄関に着くと、日和先輩は扉横にある平板に手のひらをくっつけた。黒がかった平板は上から下へと白い直線を滑らせていく。
そして、緑色の光を放つと、カチッと開錠する音が漏れた。
「生体認証ですか?」
「そう。鍵を失くす心配がないから便利だよ。さ、中に入って!」
扉を開け、僕を先に促すように鞄を上下させる。「お邪魔します」と言って中に入った。玄関は自分の部屋の十倍弱あるのではないかと思われる。何もかも桁違いだ。
「両親も家政婦さんもいないから好きに寛いで大丈夫だよ」
日和先輩は扉を閉め、内側から錠をかける。
「そうなんですね……えっ……」
相槌を打ちながら靴を脱いでいる途中、僕は思わず声を漏らした。
両親も家政婦さんもいない。それはつまり、この家にいるのは僕と日和先輩だけということだろうか。
「何かあった?」
日和先輩は僕の隣につき、顔を近づけてきた。二人っきりというシチュエーションが変な緊張感をもたらす。
「い、いえ。家政婦さんもいるんだなと思って」
平常心を装って脱いだ靴を整え、部屋に上がる。念の為、もう一度「お邪魔します」と口にした。
「これだけ広いとお手入れが大変だからね。毎週火、木、土、日に家政婦さんが来て、家事をしてくれるんだ」
「へぇー、それはいいですね」
廊下を歩くものの、どこに行けばいいのか迷う。一度後ろを振り向いて日和先輩の方に体を向けた。
「すみません。どこに行けばいいですかね?」
「そうね。なら、私の部屋に来る?」
「お願いします」
日和先輩は「任された」と自衛隊のように片手をおでこに付けて敬礼する。前後が入れ替わり、僕は日和先輩についていくこととなった。
二階にあるらしく階段のある場所まで歩いていく。一般的に階段は廊下にあるはずだが、彼女の家はリビングに階段があった。まるで常夏のリゾートにある家みたいだ。
「ここだよ」
階段を上がって一番手前にある部屋が、日和先輩の部屋らしい。
中に入ると甘い香りが鼻腔をくすぐった。彼女らしく桃色を基調とした部屋だった。
ベッドの枕元に置かれたウサギのぬいぐるみ。勉強机の横には本棚が二段並んでいる。小説や漫画など多種多様な本が陳列されていた。
「読書家なんですか?」
「そういうわけでもないよ。ただ、時間を持て余すことが多かったから読書に費やしていただけ」
日和先輩はそう言って自分の机に鞄を置いた。
「お茶とお菓子を持って来るから適当に遊んでて。あんまり良い物はないから期待しないでね」
一言告げ、部屋を出ていく。良い物はたくさんある気がするけどな。
女子の部屋でどう過ごせばいいのだろうか。悩みながらも部屋を見回していく。
すると、勉強机に取り付けられた本棚に並ぶ書籍に目がいく。
教科書に比べてサイズ感の大きい本。
僕は勉強机まで足を運ぶと、目についた卒業アルバムを手に取った。
ケースを取り出して中を確認する。
二枚ほどページをめくると、クラスごとの写真が出てきた。
日和先輩はすぐに見つかった。苗字が安藤なので、先頭付近にいたのだ。
中学時代の彼女の容姿は、今日の彼女と同じだった。
髪はストレート。メガネはつけておらず、まんまるな瞳を輝かせている。笑みを浮かべているが、今に比べて若干ひきつっているように感じた。
気のせいだろうか。
いや、たぶん気のせいではないだろう。
「お待たせ~」
突然、ガチャっと開く音に驚き、体を震わせながら後ろを向く。
「何見てるの?」
「卒業アルバムを……」
「そういうのは一緒に見る物のような気がするけどな」
微笑を浮かべ、ベッド横にあるテーブルにお盆を乗せる。お盆には麦茶の入ったコップ二つとクッキーが綺麗に並んだ皿が乗っていた。
「すみません。興味があったので、つい……」
卒業アルバムをケースに入れ、元あった場所に戻す。
刹那、後ろから体重をかけられた。何事かと思ったところで、お腹あたりを締め付けられる。
「えっと……日和先輩……」
後ろから抱きつかれたことに動揺を隠せず彼女の名前を呼ぶ。
返事はなかった。一体、後ろでは何が起こっているのだろうか。
「ねえ、文也くん」
しばらく静寂が続くと、ふと彼女の声が聞こえてきた。僕の頭に顔を近づけていたようで吐息が耳に当たる。思わず身体をこわばらせる。全身の毛が逆立つのを感じた。
「今からエッチする?」
次に聞いた言葉に衝撃を隠せなかった。
一体、どういう風の吹き回しだろうか。彼女の意図が分からず、僕はしばらく答えることができなかった。
先週見た景色の続きを眺めながら辿り着いた場所は、住宅街に佇む大きな一軒家だった。紺を基調とした邸宅。周辺にある家に比べて異質な存在となっている。
「うん。ちょっと引いた?」
「まあ……まさかこんな豪華な家に住んでいるとは思わなかったので」
「だよね」と何度も言われたセリフに対して反応するような口ぶりを見せる。両開きの大きな門扉を開くと階段があった。学校のように『くの字』に敷かれている階段を上がっていくと広大な敷地が姿を現した。
他よりも高い位置にある家は豪華絢爛という言葉がお似合いだ。
広々とした芝生。その縁に色とりどりの花が咲いている。窓から見えるリビングは広大であり、壁についたテレビは見たことのない大きさだった。
「両親は何をされてるんですか?」
「それは秘密」
人差し指を鼻に添え、にっこりと微笑む。
玄関に着くと、日和先輩は扉横にある平板に手のひらをくっつけた。黒がかった平板は上から下へと白い直線を滑らせていく。
そして、緑色の光を放つと、カチッと開錠する音が漏れた。
「生体認証ですか?」
「そう。鍵を失くす心配がないから便利だよ。さ、中に入って!」
扉を開け、僕を先に促すように鞄を上下させる。「お邪魔します」と言って中に入った。玄関は自分の部屋の十倍弱あるのではないかと思われる。何もかも桁違いだ。
「両親も家政婦さんもいないから好きに寛いで大丈夫だよ」
日和先輩は扉を閉め、内側から錠をかける。
「そうなんですね……えっ……」
相槌を打ちながら靴を脱いでいる途中、僕は思わず声を漏らした。
両親も家政婦さんもいない。それはつまり、この家にいるのは僕と日和先輩だけということだろうか。
「何かあった?」
日和先輩は僕の隣につき、顔を近づけてきた。二人っきりというシチュエーションが変な緊張感をもたらす。
「い、いえ。家政婦さんもいるんだなと思って」
平常心を装って脱いだ靴を整え、部屋に上がる。念の為、もう一度「お邪魔します」と口にした。
「これだけ広いとお手入れが大変だからね。毎週火、木、土、日に家政婦さんが来て、家事をしてくれるんだ」
「へぇー、それはいいですね」
廊下を歩くものの、どこに行けばいいのか迷う。一度後ろを振り向いて日和先輩の方に体を向けた。
「すみません。どこに行けばいいですかね?」
「そうね。なら、私の部屋に来る?」
「お願いします」
日和先輩は「任された」と自衛隊のように片手をおでこに付けて敬礼する。前後が入れ替わり、僕は日和先輩についていくこととなった。
二階にあるらしく階段のある場所まで歩いていく。一般的に階段は廊下にあるはずだが、彼女の家はリビングに階段があった。まるで常夏のリゾートにある家みたいだ。
「ここだよ」
階段を上がって一番手前にある部屋が、日和先輩の部屋らしい。
中に入ると甘い香りが鼻腔をくすぐった。彼女らしく桃色を基調とした部屋だった。
ベッドの枕元に置かれたウサギのぬいぐるみ。勉強机の横には本棚が二段並んでいる。小説や漫画など多種多様な本が陳列されていた。
「読書家なんですか?」
「そういうわけでもないよ。ただ、時間を持て余すことが多かったから読書に費やしていただけ」
日和先輩はそう言って自分の机に鞄を置いた。
「お茶とお菓子を持って来るから適当に遊んでて。あんまり良い物はないから期待しないでね」
一言告げ、部屋を出ていく。良い物はたくさんある気がするけどな。
女子の部屋でどう過ごせばいいのだろうか。悩みながらも部屋を見回していく。
すると、勉強机に取り付けられた本棚に並ぶ書籍に目がいく。
教科書に比べてサイズ感の大きい本。
僕は勉強机まで足を運ぶと、目についた卒業アルバムを手に取った。
ケースを取り出して中を確認する。
二枚ほどページをめくると、クラスごとの写真が出てきた。
日和先輩はすぐに見つかった。苗字が安藤なので、先頭付近にいたのだ。
中学時代の彼女の容姿は、今日の彼女と同じだった。
髪はストレート。メガネはつけておらず、まんまるな瞳を輝かせている。笑みを浮かべているが、今に比べて若干ひきつっているように感じた。
気のせいだろうか。
いや、たぶん気のせいではないだろう。
「お待たせ~」
突然、ガチャっと開く音に驚き、体を震わせながら後ろを向く。
「何見てるの?」
「卒業アルバムを……」
「そういうのは一緒に見る物のような気がするけどな」
微笑を浮かべ、ベッド横にあるテーブルにお盆を乗せる。お盆には麦茶の入ったコップ二つとクッキーが綺麗に並んだ皿が乗っていた。
「すみません。興味があったので、つい……」
卒業アルバムをケースに入れ、元あった場所に戻す。
刹那、後ろから体重をかけられた。何事かと思ったところで、お腹あたりを締め付けられる。
「えっと……日和先輩……」
後ろから抱きつかれたことに動揺を隠せず彼女の名前を呼ぶ。
返事はなかった。一体、後ろでは何が起こっているのだろうか。
「ねえ、文也くん」
しばらく静寂が続くと、ふと彼女の声が聞こえてきた。僕の頭に顔を近づけていたようで吐息が耳に当たる。思わず身体をこわばらせる。全身の毛が逆立つのを感じた。
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