保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)

不穏な教室

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「ねえ、亡霊くんって板書とかどうしているの?」

 帰りのホームルームが終わり、鞄を持って日和の教室に行こうとした時、隣の和光さんがそんなことを聞いてきた。

「ちゃんと取ってますよ。サボり魔ではないですから」

「ちゃんと取っているのは授業に参加しているやつでしょ。そうじゃなくて、保健室で休んでいる時の授業の板書よ」

「それは……取ってないですね……」

 授業に出席していない時は、基本的に誰かのノートを借りて写す必要がある。とはいえ、僕にはノートを借りられるような友達はいない。中学時代は、先生が事情を知っていたし、テストの点は悪くなかったので、多めに見てもらえた。

 高校では通用しないのだろうか。

「見せてくれるような友達もいないようだから当然か」

 自分で言うのは構わないが、他人に言及されると腹が立つな。まあ、和光さんの性格からして言わない方がおかしいか。

「休んだ授業の部分をメッセージで教えて。私が写真を撮って送ってあげるから」

「……和光さん、投稿中に電柱とかで頭撃ちましたから?」

「いきなりどうしたの? そんなわけないでしょ」

「では、階段で転けて頭撃ちましたか?」

「なんで頭を打ったことは確定しているのかしら?」

「いえ……まさか、あの和光さんが僕に気を遣ってくれるとは思っていなかったので」

「ひどい偏見ね。数学の先生が『テストの際にノートを回収してチェックする』って言った時に最上くんのことが引っかかったのよ。誰にも見せてもらえなかったと思われたら、クラス全員が説教されて授業が潰れる可能性があるからね」

「なるほど。和光さんらしいですね」

 何気なく口にした言葉だが、和光さんとしては気に食わなかったらしく怒りの形相で睨みつけられた。何か悪いことを言ってしまったようなので、反射的に「すみません」と口にする。

「とにかく欠席した日付と時間帯さえ教えてくれればいいから」

「それだけでどの部分かわかるんですか?」

「ええ。私は書く前に今日の日付を書いているから」

「偉いですね。では、お言葉に甘えさせてもらいます。ありがとうございます」
 
 必要事項を伝え終えると、和光さんもまた鞄を持って教室を後にした。僕も惹かれるように教室を出ていくが、和光さんとは逆方向の廊下を歩いて行った。

 これから行く先は下駄箱ではなく、日和の在籍する二年D組だ。
 日和と初めて接触した日に、二年D組の教室は把握している。最寄りの階段を使うよりも、反対側の階段から上ったほうが早く着ける。

 階段を上がると、二年D組の教室が見えてきた。
 自クラスのホームルームの終了が遅かったこと、和光さんと話をしていたことが影響してか教室に生徒はほとんどいなかった。

 唯一いるのは女子五人組。
 前方の扉から見える彼女らの様子には不穏な空気が感じられた。

 一対四で対立しているような構図。
 四人は窓側にある机を囲むように位置している。彼女らの隣にある席に佇む女子生徒が困った様子で話しかけている。

 その生徒は見知った生徒だった。

「うっせーな! 杏子は安藤の味方なのかよ! 自分が可愛いって分かったからってすぐにイメチェンするお調子者のよ!」

 教室まで近づくと、椅子に座った一人が声を上げる。
 彼女の怒号を聞いて、一人孤立していた飯塚先輩が萎縮する。殺伐とした雰囲気が苦手と言ったのは事実だと分かった。

「何を揉めてるんですか?」

 僕は飯塚さんとは対照的に、怯むことなく教室に入って声をかける。
 彼女から発された名前を聞いて、黙っているわけにはいかなかった。

「テメェは誰だ?」

 一瞬、先生だと思ったのか動揺した様子でこちらを見たが、男子生徒だと分かったタイミングで先ほどと同じようなテンションで聞いてくる。

「一年の最上です」

「一年……下級生がウチらの教室に何の用だ?」

「代理で安藤さんの荷物を取りに来ました。彼女の席はどこにありますか?」

 彼女たちに近づきながら喋る。視線を飯塚先輩に向けると、バツが悪そうな表情をしていた。「見られたらマズイ」と彼女の表情は訴えかけている。

「悪いけど、安藤とはあんまり仲良くないからどこの席かは知らないな。適当に探してみたらどうだ?」

「そうですか? ところで、今四人が囲んでいるのはあなたの席でしょうか? 何やら落書きを腕で隠しているようなそぶりが見受けられますが」

 僕の問いかけに全員の顔が引き攣る。いじめっ子というのはいつの時代も狡猾さに欠けるな。相手を痛ぶることでしか自分を保つことができない人種だ。無理もない話だろう。

「私のだよ。うちらの趣味で書いているもんだ。恥ずかしいから他人に見せられないだけ」

 飯塚先輩と四人の間に割り込む。

「他人に見せて恥ずかしいものをわざわざ机の上に書くなんて矛盾してませんか? 僕には『見てください』と訴えているようにしか見えないのですが」

「クラスのノリだから書けるんだよ。他のクラスの子に見られるのは嫌なんだよ」

「そうですか」

 言い訳の多い奴らだ。ここは一発で黙らせる必要がある。

「ところで、机の上にB6のノートが載っていますが、それは一体何用ですか? 学科のノートはA4で統一されているはずですから授業ノートではないですよね?」

「こ、これは……」

 彼女は隠すように腕をノートを内側に仕舞い込む。

「僕はそのノートを見たことがあります。日和が……安藤さんが持っていたノートにそっくりなんですよ」

 言い訳を考える前に畳み込むように追撃する。

「あなたの座っている席は安藤さんのものではないんですか?」

 僕の質問に、その場にいた全員が静寂を貫いた。
 言い訳の余地なしと見た。一歩前に踏み出し、前にいた女子生徒の肩を掴むと勢いよく横に押し流す。

 一つ上とは言え、力差は男の方が上だ。それに、僕は姉に鍛えられている。並大抵のものなら押し除けられる。

 顕になる机の一部。
 そこには落書きの一端が垣間見えた。

『調子に乗るなよブス』

 机に書かれた落書きは明らかに自分の机の上に書く内容ではなかった。
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