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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
正義の鉄槌
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『調子に乗るなよブス』
机に書かれた悪意に満ち溢れた文言が中学時代のことを思い起こさせた。
『サボり魔』
『お前だけ休めるとかズルじゃん』
『休んでるだけなら学校来るなよ』
授業後、いつもどおり保健室から帰って来ると、机の上に何か書かれていた罵詈雑言。自分だって、できることなら皆と同じように授業に参加したいのに。相手の気持ちを理解せず、自分の気持ちを押し通す彼らに悲しさを覚えた。
「どう見ても自分の机に書くような言葉ではないですね。これを書いたのは誰ですか?」
女子たちは沈黙を通し、答えることはなかった。
「お前に……関係ないだろ……」
静寂の末、最初に漏れた声は椅子に座った女子の噛み締めるような声だった。
「関係なくないですよ。安藤さんは僕の大切な人ですから」
「なんだよっ。彼氏とかでも言うのか?」
「だったら悪いですか?」
「マジかよ……」
信じられないとでも言うように、机を囲んだ全員が目を丸くした。
彼女らが惚けた隙に、僕は手元にあったノートを奪う。てからすり抜けたノートに彼女は「あっ」と息の混じった声を出した。
ノートを広げると、日和が書いていた『行きたいスポットリスト』に落書きがされていた。
不潔な絵。『幼稚かよ』『やる気満々じゃん』などのリストに書かれた場所に対しての悪口。『ラブホ』『クラブ』などが新たに追加されたりもしていた。
あまりの酷さに眉間に皺がよる。
「あいつが悪いんだよ! 調子に乗って色気づきやがったんだから」
怒りを彷彿させる姿が側からも分かったのか、何を言わずとも弁明を始めた。
「それは安藤さんの勝手でしょ……」
「勝手だけどよ。やるなら家でやれよ。クラスにまで持ち込むなよ。正直言って邪魔なんだよ!」
逆ギレとでも言うように、椅子に座った彼女が声を荒げる。他の女子たちも同調するように敵意のある視線を送ってくる。おそらく周りの女子はリーダー格である彼女の行為に流されるしか能がないのだろう。
リーダー格を黙らせれば全ては解決する。
「なんで邪魔なんですか?」
「あいつが視界に入っただけでムカつくんだよ。ちょっと可愛いことに気づいたからって調子に乗りやがって。性格ブスだろ。絶対!」
「そんなことはないです」
「彼氏の言い分なんて当てにできるかよ。あんたが気づいていないだけで裏では何してるかわからっ!」
言い終わる前に教室には甲高い音が響き渡った。
気づいたら、僕は彼女の頬をビンタしていた。妄想に取り憑かれ、ありもしないことを口にした彼女に黙っていられなかった。
彼女は何も喋らないまま、ただ茫然として打たれた頬を触っている。他の女子もまさかの事態に声を出せずにいた。
「安藤さんの誹謗中傷は絶対に許しません。次喋ったら、その口を顔面ごとグーで殴ります」
ビンタした手の拳を握りしめる。その場にいた全員が凍りついたのを感じる。
教室の雰囲気は、僕が完全に掌握していた。この機会を逃すわけにはいかない。
「分かったら、早くこの場から立ち去ってください」
萎縮して動けないのか、彼女たちは微動だにしなかった。
「早くっ!」
言葉の熱を持って凍りついた体を溶かす。
ビクッと体を震わせると、机周りにいた女子が距離を取っていった。
しかし、まだ椅子に座った彼女だけは動けずにいた。ビンタを食らったことが相当ショックだったのだろう。
「何してるんですか!?」
冷ややかな声で、彼女に語りかける。
彼女はまるで悪魔にでも声をかけられたかのように、真っ青になった顔をこちらに向ける。
「目障りです。視界に入っただけでムカつく。だから早く出ていってください」
「は、はい!」
完全に怖気付いた様子だ。
上擦った声を上げ、挙動不審になりながら教室を後にした。
彼女たちの姿が見えなくなったところで、気持ちを落ち着かせるため、大きく息を吸って吐く。
そこで、まだ人の気配がするのに気がついた。
顔を向けると、飯塚先輩がまるでクラスを間違えたかのような慌てた表情を見せていた。自分のクラスなのにおかしな話だ。
「君、見かけによらず怖いんだね」
「……まあ、遺伝みたいなものです」
僕はおそらく桐花姉さんと同じ血筋なのだろう。
結花や綾子姉さんとは違う血筋なのは間違いない。
「すみません。殺伐としたのは嫌いと言っていたのに」
「別にいいよ。君が来なくても殺伐としていたのは変わらないと思うし」
「飯塚先輩は止めてくれたんですね?」
「一応ね。ほら、言うわけにはいかなかったけど、事情を知っているわけだし」
「ありがとうございます」
「お礼はいらないよ。悪者になりたくなかっただけだから。あとあと色々と面倒だし。そんなことより、安藤さんのところに行ったら? 保健室にいるんでしょ? 机の上は私が綺麗にしておくからさ」
飯塚先輩に促され、日和の机に目をやる。
罵詈雑言が多数書かれた机。僕が見たのは一部に過ぎず、全体が見渡せる今はあちこちに文字が見える。
「僕も手伝います」
「でも、待ってるんでしょ? 迎えに行ったほうが……」
「流石に飯塚先輩だけに掃除させるのは申し訳ないですから。二人の方が早いと思いますし」
「……そっか。なーんか、君が安藤さんにモテた理由がわかった気がするわ。じゃあ、私はバケツと雑巾を持ってくるね」
安藤さんはそう言って、教室を後にする。
僕は今のうちに日和の荷物を鞄にしまうことにした。
机に書かれた悪意に満ち溢れた文言が中学時代のことを思い起こさせた。
『サボり魔』
『お前だけ休めるとかズルじゃん』
『休んでるだけなら学校来るなよ』
授業後、いつもどおり保健室から帰って来ると、机の上に何か書かれていた罵詈雑言。自分だって、できることなら皆と同じように授業に参加したいのに。相手の気持ちを理解せず、自分の気持ちを押し通す彼らに悲しさを覚えた。
「どう見ても自分の机に書くような言葉ではないですね。これを書いたのは誰ですか?」
女子たちは沈黙を通し、答えることはなかった。
「お前に……関係ないだろ……」
静寂の末、最初に漏れた声は椅子に座った女子の噛み締めるような声だった。
「関係なくないですよ。安藤さんは僕の大切な人ですから」
「なんだよっ。彼氏とかでも言うのか?」
「だったら悪いですか?」
「マジかよ……」
信じられないとでも言うように、机を囲んだ全員が目を丸くした。
彼女らが惚けた隙に、僕は手元にあったノートを奪う。てからすり抜けたノートに彼女は「あっ」と息の混じった声を出した。
ノートを広げると、日和が書いていた『行きたいスポットリスト』に落書きがされていた。
不潔な絵。『幼稚かよ』『やる気満々じゃん』などのリストに書かれた場所に対しての悪口。『ラブホ』『クラブ』などが新たに追加されたりもしていた。
あまりの酷さに眉間に皺がよる。
「あいつが悪いんだよ! 調子に乗って色気づきやがったんだから」
怒りを彷彿させる姿が側からも分かったのか、何を言わずとも弁明を始めた。
「それは安藤さんの勝手でしょ……」
「勝手だけどよ。やるなら家でやれよ。クラスにまで持ち込むなよ。正直言って邪魔なんだよ!」
逆ギレとでも言うように、椅子に座った彼女が声を荒げる。他の女子たちも同調するように敵意のある視線を送ってくる。おそらく周りの女子はリーダー格である彼女の行為に流されるしか能がないのだろう。
リーダー格を黙らせれば全ては解決する。
「なんで邪魔なんですか?」
「あいつが視界に入っただけでムカつくんだよ。ちょっと可愛いことに気づいたからって調子に乗りやがって。性格ブスだろ。絶対!」
「そんなことはないです」
「彼氏の言い分なんて当てにできるかよ。あんたが気づいていないだけで裏では何してるかわからっ!」
言い終わる前に教室には甲高い音が響き渡った。
気づいたら、僕は彼女の頬をビンタしていた。妄想に取り憑かれ、ありもしないことを口にした彼女に黙っていられなかった。
彼女は何も喋らないまま、ただ茫然として打たれた頬を触っている。他の女子もまさかの事態に声を出せずにいた。
「安藤さんの誹謗中傷は絶対に許しません。次喋ったら、その口を顔面ごとグーで殴ります」
ビンタした手の拳を握りしめる。その場にいた全員が凍りついたのを感じる。
教室の雰囲気は、僕が完全に掌握していた。この機会を逃すわけにはいかない。
「分かったら、早くこの場から立ち去ってください」
萎縮して動けないのか、彼女たちは微動だにしなかった。
「早くっ!」
言葉の熱を持って凍りついた体を溶かす。
ビクッと体を震わせると、机周りにいた女子が距離を取っていった。
しかし、まだ椅子に座った彼女だけは動けずにいた。ビンタを食らったことが相当ショックだったのだろう。
「何してるんですか!?」
冷ややかな声で、彼女に語りかける。
彼女はまるで悪魔にでも声をかけられたかのように、真っ青になった顔をこちらに向ける。
「目障りです。視界に入っただけでムカつく。だから早く出ていってください」
「は、はい!」
完全に怖気付いた様子だ。
上擦った声を上げ、挙動不審になりながら教室を後にした。
彼女たちの姿が見えなくなったところで、気持ちを落ち着かせるため、大きく息を吸って吐く。
そこで、まだ人の気配がするのに気がついた。
顔を向けると、飯塚先輩がまるでクラスを間違えたかのような慌てた表情を見せていた。自分のクラスなのにおかしな話だ。
「君、見かけによらず怖いんだね」
「……まあ、遺伝みたいなものです」
僕はおそらく桐花姉さんと同じ血筋なのだろう。
結花や綾子姉さんとは違う血筋なのは間違いない。
「すみません。殺伐としたのは嫌いと言っていたのに」
「別にいいよ。君が来なくても殺伐としていたのは変わらないと思うし」
「飯塚先輩は止めてくれたんですね?」
「一応ね。ほら、言うわけにはいかなかったけど、事情を知っているわけだし」
「ありがとうございます」
「お礼はいらないよ。悪者になりたくなかっただけだから。あとあと色々と面倒だし。そんなことより、安藤さんのところに行ったら? 保健室にいるんでしょ? 机の上は私が綺麗にしておくからさ」
飯塚先輩に促され、日和の机に目をやる。
罵詈雑言が多数書かれた机。僕が見たのは一部に過ぎず、全体が見渡せる今はあちこちに文字が見える。
「僕も手伝います」
「でも、待ってるんでしょ? 迎えに行ったほうが……」
「流石に飯塚先輩だけに掃除させるのは申し訳ないですから。二人の方が早いと思いますし」
「……そっか。なーんか、君が安藤さんにモテた理由がわかった気がするわ。じゃあ、私はバケツと雑巾を持ってくるね」
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僕は今のうちに日和の荷物を鞄にしまうことにした。
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