44 / 138
1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
三人での寄り道
しおりを挟む
一件落着したところで、僕たちは寄り道がてらゲームセンターを訪れていた。
日和と来たことのあるゲームセンター。飯塚先輩は途中まで日和と一緒の帰路だったため、別れる場所となる駅付近で遊ぶことにした。
「いやー、楽しかった!」
飯塚先輩は清々しい表情で、モリオカートVRのコーナーから出ていく。とても楽しんでくれたみたいだ。改めてプレイするのは数日ぶりだったが、僕の中での高揚感も未だ健在だった。
「ねぇねぇ、次はあれ乗らない?」
僕の方を叩き、飯塚先輩は言う。見ると、もう一方の手は日和の肩に乗っけていた。顔で指しているようで、全く違う方を向いている。
彼女の視線の先に目を合わせる。そこにあったのは『脱出病院』と書かれたホラーVRだ。
なんだかデジャブを感じる。
「飯塚さんってホラー系好きなんだ?」
「うん! 大好き! ホラーとか絶叫マシンとか心臓バクバクするやつが好きなんだよね」
「わかる! 生きてるって感じするもんね!?」
「そ、そうなんだよ!」
飯塚先輩がホラー好きであるとわかった瞬間、日和のテンションが高くなる。不意に声を大きくする日和に、飯塚先輩は驚くものの悪い気はしていない様子だ。むしろ同じ趣味を見つけて喜ばしく思っているみたいだった。
「文也はどうする?」
「僕は待っているよ。今日は流石にホラーはもういいかな」
「え、なんで?」
「文也は私たちと違ってホラー苦手だから」
「へぇー、結構可愛いところあるじゃん」
後輩の弱点を知れて嬉しく思ったのか嫌らしい目でこちらを覗く。僕はあしらうように「はいはい。早く行ってください」と手を前後に振った。
二人が『脱出病院』に足を運んでいくのを見送ってから、周りをキョロキョロと見回す。すると、UFOキャッチャーのところに既視感のあるぬいぐるみを発見した。
ウサギのぬいぐるみ。
どこで見たか記憶を辿っていく。予想以上に早い段階で既視感の正体が分かった。日和の部屋にあるベッドの枕元に置いてあったのだ。
枕元にあったぬいぐるみと同種類だが、大きさが少し小さい。
取ったら喜んでくれるだろうか。そう思いながらポケットから財布を取り出し、百円玉を入れる。
こちらに向けて縦に寝そべっている。
まずは正攻法を試そうと、アームを首の位置に持っていって降ろしていく。うまく掴んだもののアームの力が弱く、持ち上がることはなかった。
アームの力が乱数設定になっているのだろうか。
少しやり方を変えよう。五百円玉を投入し、6プレイできるようにする。アームの落とす位置をぬいぐるみよりもやや横や手前にすることでゆっくりと移動させていく。
移動させていくとはいえ、最終的には持ち上げなければいけない。
なるべく受け口付近まで持ってきたところで、受け口にアームを挟むようにして持ち上げる。
だが、うまくはいかなかった。
「何してるの?」
どうしたものかと悩んでいたところで後ろから声をかけられる。
振り向くと、飯塚先輩が僕の隣についていた。VRは終わったようだが、日和はどこに行ったのだろう。
「安藤さんならトイレだよ」
「そうですか。良かった……」
「もしかして、安藤さんにプレゼント?」
安堵で漏らした言葉を逃さぬように拾ってくる。飯塚先輩は抜け目がない。
「はい。ただ、うまく取れないので、どうしようかと」
「私に任せて」
飯塚先輩はそう言って、スマホを使ってゲーム料金を支払った。
僕は横にそれて場所を譲る。飯塚先輩は真ん中に位置するとプレイを始めた。アームはぬいぐるみから外れた位置に落とす。
「何してるんですか?」
「良いから見てなって」
自信ありげに告げる。僕は黙ってアームを覗いた。
アームが持ち上がると、まるでマジックのようにぬいぐるみがひっついてくる。良く見ると、ぬいぐるみに付けられたプラスチック製の輪っかに引っかかっていた。
アームは受け口に達して再び開く。引っかかった部分はなんとかずれ落ち、無事に受け口にぬいぐるみが落ちていった。
「すごいですね」
「でしょ! でも、途中まで君がやってくれたから取りやすかったんだ。私はただ、最後に添えただけ。はい、どうぞ!」
受け口からぬいぐるみを取って僕に渡す。
この人は本当に抜け目がないな。配慮の天才とでも言おうか。
「お待たせー。何やってるの?」
ちょうどそのタイミングで日和が戻ってくる。
「最上くんが安藤さんのために取ってくれたんだ」
飯塚先輩がアシストしてくれたので、それに肖ってぬいぐるみを渡す。
「これ……日和の部屋のベッドにあったから……」
「覚えてくれてたんだ。ありがとうね!」
日和は僕に笑顔を向けて、感謝の言葉を伝えてくれた。
「へぇ~、お二人はそんな仲まで発展してたんだね」
飯塚先輩は人の言葉を逃さない。ニヤニヤする口を手で押さえながらこちらを覗く。
「違いますから」「違うから!」
僕らは強く否定する。嫌らしい雰囲気になったのは確かだからか、日和の否定口調は強いものだった。
「大丈夫、大丈夫。誰にも言わないから」
強い否定が悪手となり、飯塚先輩は誤解を鵜呑みにしてしまった。
日和と来たことのあるゲームセンター。飯塚先輩は途中まで日和と一緒の帰路だったため、別れる場所となる駅付近で遊ぶことにした。
「いやー、楽しかった!」
飯塚先輩は清々しい表情で、モリオカートVRのコーナーから出ていく。とても楽しんでくれたみたいだ。改めてプレイするのは数日ぶりだったが、僕の中での高揚感も未だ健在だった。
「ねぇねぇ、次はあれ乗らない?」
僕の方を叩き、飯塚先輩は言う。見ると、もう一方の手は日和の肩に乗っけていた。顔で指しているようで、全く違う方を向いている。
彼女の視線の先に目を合わせる。そこにあったのは『脱出病院』と書かれたホラーVRだ。
なんだかデジャブを感じる。
「飯塚さんってホラー系好きなんだ?」
「うん! 大好き! ホラーとか絶叫マシンとか心臓バクバクするやつが好きなんだよね」
「わかる! 生きてるって感じするもんね!?」
「そ、そうなんだよ!」
飯塚先輩がホラー好きであるとわかった瞬間、日和のテンションが高くなる。不意に声を大きくする日和に、飯塚先輩は驚くものの悪い気はしていない様子だ。むしろ同じ趣味を見つけて喜ばしく思っているみたいだった。
「文也はどうする?」
「僕は待っているよ。今日は流石にホラーはもういいかな」
「え、なんで?」
「文也は私たちと違ってホラー苦手だから」
「へぇー、結構可愛いところあるじゃん」
後輩の弱点を知れて嬉しく思ったのか嫌らしい目でこちらを覗く。僕はあしらうように「はいはい。早く行ってください」と手を前後に振った。
二人が『脱出病院』に足を運んでいくのを見送ってから、周りをキョロキョロと見回す。すると、UFOキャッチャーのところに既視感のあるぬいぐるみを発見した。
ウサギのぬいぐるみ。
どこで見たか記憶を辿っていく。予想以上に早い段階で既視感の正体が分かった。日和の部屋にあるベッドの枕元に置いてあったのだ。
枕元にあったぬいぐるみと同種類だが、大きさが少し小さい。
取ったら喜んでくれるだろうか。そう思いながらポケットから財布を取り出し、百円玉を入れる。
こちらに向けて縦に寝そべっている。
まずは正攻法を試そうと、アームを首の位置に持っていって降ろしていく。うまく掴んだもののアームの力が弱く、持ち上がることはなかった。
アームの力が乱数設定になっているのだろうか。
少しやり方を変えよう。五百円玉を投入し、6プレイできるようにする。アームの落とす位置をぬいぐるみよりもやや横や手前にすることでゆっくりと移動させていく。
移動させていくとはいえ、最終的には持ち上げなければいけない。
なるべく受け口付近まで持ってきたところで、受け口にアームを挟むようにして持ち上げる。
だが、うまくはいかなかった。
「何してるの?」
どうしたものかと悩んでいたところで後ろから声をかけられる。
振り向くと、飯塚先輩が僕の隣についていた。VRは終わったようだが、日和はどこに行ったのだろう。
「安藤さんならトイレだよ」
「そうですか。良かった……」
「もしかして、安藤さんにプレゼント?」
安堵で漏らした言葉を逃さぬように拾ってくる。飯塚先輩は抜け目がない。
「はい。ただ、うまく取れないので、どうしようかと」
「私に任せて」
飯塚先輩はそう言って、スマホを使ってゲーム料金を支払った。
僕は横にそれて場所を譲る。飯塚先輩は真ん中に位置するとプレイを始めた。アームはぬいぐるみから外れた位置に落とす。
「何してるんですか?」
「良いから見てなって」
自信ありげに告げる。僕は黙ってアームを覗いた。
アームが持ち上がると、まるでマジックのようにぬいぐるみがひっついてくる。良く見ると、ぬいぐるみに付けられたプラスチック製の輪っかに引っかかっていた。
アームは受け口に達して再び開く。引っかかった部分はなんとかずれ落ち、無事に受け口にぬいぐるみが落ちていった。
「すごいですね」
「でしょ! でも、途中まで君がやってくれたから取りやすかったんだ。私はただ、最後に添えただけ。はい、どうぞ!」
受け口からぬいぐるみを取って僕に渡す。
この人は本当に抜け目がないな。配慮の天才とでも言おうか。
「お待たせー。何やってるの?」
ちょうどそのタイミングで日和が戻ってくる。
「最上くんが安藤さんのために取ってくれたんだ」
飯塚先輩がアシストしてくれたので、それに肖ってぬいぐるみを渡す。
「これ……日和の部屋のベッドにあったから……」
「覚えてくれてたんだ。ありがとうね!」
日和は僕に笑顔を向けて、感謝の言葉を伝えてくれた。
「へぇ~、お二人はそんな仲まで発展してたんだね」
飯塚先輩は人の言葉を逃さない。ニヤニヤする口を手で押さえながらこちらを覗く。
「違いますから」「違うから!」
僕らは強く否定する。嫌らしい雰囲気になったのは確かだからか、日和の否定口調は強いものだった。
「大丈夫、大丈夫。誰にも言わないから」
強い否定が悪手となり、飯塚先輩は誤解を鵜呑みにしてしまった。
11
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる