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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
秘密の暴露
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「じゃあねー、また明日ー」
飯塚先輩は手を振りながら自分の最寄り駅の路線に歩いていった。
僕と日和は後ろ姿を見送りながら手を振った。やがて飯塚先輩の姿が見えなくなると、二人して顔を合わせる。
「最後にカフェでも寄っていかない?」
日和の誘いに僕は迷うことなく乗った。
それからスマホで最寄りのカフェを調べる。すぐ近くにあるようで、地図アプリを見ながら歩くこと数分で目的地に到着した。
テーブル席が空いていたので二人向かい合わせで座った。
「今日は色々とお世話になったから私が注文してくるね」
日和は有無を言わせないように、パッと立ち上がって売り場の方へ足を運んでいった。ここは彼女の言葉に甘えよう。僕は一息つきながら深く腰掛ける。
飯塚先輩と日和の仲が深まってくれて良かった。
ホラーの趣味が合ったことが効いたようだ。飯塚先輩は先週に僕らが見た映画を未視聴とのことだったので、今度の休みに一緒に行こうと二人で約束していた。
僕は誘いを断った。二人きりでないと話せないこともたくさんあるだろうから、今週の休日は彼女たちを二人きりにさせようと思ったのだ。決してホラーが苦手だからではない。決して……
「お待たせ」
思いの外、日和が帰ってくるのは早かった。
トレーにはSサイズのホットコーヒーが二つ置かれている。紙スリーブに手を添えてコップを一つ自分の元に持っていく。
「はぁ~」
日和は上品に両手でコップを持って一口啜った。気持ちがリラックスしたのか、声混じりの息を吐く。
「今日は色々とありがとね」
先ほどの行為がトリガーと言わんばかりに、日和は息を吐いた口を開けたまま話し始める。
「礼には及ばないよ」
「カッコつけなくてもいいのに」
「飯塚先輩と仲良くなれて良かったですね」
「うん。それもこれも文也のおかげ」
日和はそう言ってコップに目を落とす。コップの口から見えるコーヒーに視線を注いでいる様子だ。なにかを言おうとしている。そんな気配を感じたので、僕は静寂を貫くことにした。
両手で持ったコップをゆっくりテーブルに置く。それから息をゆっくり吐き、僕に目を向けた。心なしか不安な視線を見せている。
「文也に謝らなければいけないことがあるの」
謝らなければいけないこと。
彼女の口から出た言葉を僕は頭の中で繰り返す。口から漏れていたかもしれない。
「文也は好意で私に告白したかもしれないけど、私は下心があって文也の告白を受け入れたの。下心って言っても、エッな意味ではないよ」
公共の場で直接言うのは憚られたのかぼかして口にする。それでも、大抵の人はわかる気がするけど。ニュアンス的に。
「今日見たから分かると思うけど、いじめられそうになっていたの。今日みたいに直接されたわけではなく、気配みたいなのを感じてた」
膝に置かれた手がテーブルに添えられる。両手でシュガーの入っていた紙をいじり始めた。
「気配を感じれたのは、中学時代にそう言ったことがあったからなの。一年生クラスがある廊下での時みたいに、案外モテるらしくてさ。それで、他の女子から嫉妬を買われていじめられた」
ぐしゃぐしゃにした紙をテーブルに置くと、今度は何もない空をキュッと握り締める。
「クラス内での話を盗み聞きしたら、今回もそんな感じだった」
「その時はおさげと眼鏡は?」
「してたよ。でも、筒抜けだったみたい。文也も落としちゃったみたいだから仕方ないよね」
日和は参ったような表情を見せる。人によってはいやらしい話だと思われるが、天音さんも言っていたように眼鏡越しにも分かる可愛さなのだから仕方がない。
「また同じ結果を生んでしまう。悩んでいた矢先、文也が告白してきた。それを受けて私は悪知恵が働いたの。彼氏がいると分かれば、男子も諦めるだろうし、女子から嫉妬を受けることはないんじゃないかって。それに、文也みたいな入学したての一年生なら想いを寄せる人はいないんじゃないかって」
「顔も普通ですしね」
「んー、そんなことは言ってないんだけどな。だから、文也の告白を受け入れたのは、気が合ったからじゃなくて、カモフラージュとして使おうと思ったの。ずっと隠していてごめんなさい」
深々と頭を下げる。僕からの反応を聞くまで上げないとでも言うように、ずっと姿勢をキープしていた。
今の話を受けて、僕が言えるのはたった一つだけだった。
「今はどうなの?」
怒られると思っていたからか、日和はポカンとした顔を向けてきた。僕はもう一度同じ質問を繰り返す。
「今は……好き、大好き!」
素直に言ってくるとは思わず、恋のキューピットが僕の心臓を撃ち抜く。
「それが聞ければ満足だよ。過去にどう日和が思っていようが関係ない。むしろ話してくれてありがとう」
照れ臭くて、頬を掻きながら口にした。
「……良かった。やっぱり文也は優しいね。怒って良いところなのに」
「正直知っていたから」
「えっ! そうなの! いつ? 何で知ったの?」
日和は心底驚いたらしく質問攻めにしてくる。どこで気づく瞬間があったのか、考えているみたいで目の焦点が合っていない。
「日和の家から帰る途中に唯川さんに会ったんです。そこで教えてもらいました。あくまで推測でしたが」
「唯川……あぁ、明里か。うわぁ~、盲点だった。そりゃ、そうだよね。私が男子を家に呼んだら訝しむよね」
頭を抱えながら机に突っ伏す。滑稽な様を見せる日和がなんだか面白かった。
「それを聞いた時は……やっぱり怒った?」
机に突っ伏しながらも、こちらに顔を向ける。
「怒ってないですよ。それに、僕も隠していたことがありましたから」
日和が自らの口から秘密を言ってくれたのだ。僕だけ隠すのはフェアじゃない。
心の中で四宮先生に謝罪しながら、僕は言葉を連ね始めた。
飯塚先輩は手を振りながら自分の最寄り駅の路線に歩いていった。
僕と日和は後ろ姿を見送りながら手を振った。やがて飯塚先輩の姿が見えなくなると、二人して顔を合わせる。
「最後にカフェでも寄っていかない?」
日和の誘いに僕は迷うことなく乗った。
それからスマホで最寄りのカフェを調べる。すぐ近くにあるようで、地図アプリを見ながら歩くこと数分で目的地に到着した。
テーブル席が空いていたので二人向かい合わせで座った。
「今日は色々とお世話になったから私が注文してくるね」
日和は有無を言わせないように、パッと立ち上がって売り場の方へ足を運んでいった。ここは彼女の言葉に甘えよう。僕は一息つきながら深く腰掛ける。
飯塚先輩と日和の仲が深まってくれて良かった。
ホラーの趣味が合ったことが効いたようだ。飯塚先輩は先週に僕らが見た映画を未視聴とのことだったので、今度の休みに一緒に行こうと二人で約束していた。
僕は誘いを断った。二人きりでないと話せないこともたくさんあるだろうから、今週の休日は彼女たちを二人きりにさせようと思ったのだ。決してホラーが苦手だからではない。決して……
「お待たせ」
思いの外、日和が帰ってくるのは早かった。
トレーにはSサイズのホットコーヒーが二つ置かれている。紙スリーブに手を添えてコップを一つ自分の元に持っていく。
「はぁ~」
日和は上品に両手でコップを持って一口啜った。気持ちがリラックスしたのか、声混じりの息を吐く。
「今日は色々とありがとね」
先ほどの行為がトリガーと言わんばかりに、日和は息を吐いた口を開けたまま話し始める。
「礼には及ばないよ」
「カッコつけなくてもいいのに」
「飯塚先輩と仲良くなれて良かったですね」
「うん。それもこれも文也のおかげ」
日和はそう言ってコップに目を落とす。コップの口から見えるコーヒーに視線を注いでいる様子だ。なにかを言おうとしている。そんな気配を感じたので、僕は静寂を貫くことにした。
両手で持ったコップをゆっくりテーブルに置く。それから息をゆっくり吐き、僕に目を向けた。心なしか不安な視線を見せている。
「文也に謝らなければいけないことがあるの」
謝らなければいけないこと。
彼女の口から出た言葉を僕は頭の中で繰り返す。口から漏れていたかもしれない。
「文也は好意で私に告白したかもしれないけど、私は下心があって文也の告白を受け入れたの。下心って言っても、エッな意味ではないよ」
公共の場で直接言うのは憚られたのかぼかして口にする。それでも、大抵の人はわかる気がするけど。ニュアンス的に。
「今日見たから分かると思うけど、いじめられそうになっていたの。今日みたいに直接されたわけではなく、気配みたいなのを感じてた」
膝に置かれた手がテーブルに添えられる。両手でシュガーの入っていた紙をいじり始めた。
「気配を感じれたのは、中学時代にそう言ったことがあったからなの。一年生クラスがある廊下での時みたいに、案外モテるらしくてさ。それで、他の女子から嫉妬を買われていじめられた」
ぐしゃぐしゃにした紙をテーブルに置くと、今度は何もない空をキュッと握り締める。
「クラス内での話を盗み聞きしたら、今回もそんな感じだった」
「その時はおさげと眼鏡は?」
「してたよ。でも、筒抜けだったみたい。文也も落としちゃったみたいだから仕方ないよね」
日和は参ったような表情を見せる。人によってはいやらしい話だと思われるが、天音さんも言っていたように眼鏡越しにも分かる可愛さなのだから仕方がない。
「また同じ結果を生んでしまう。悩んでいた矢先、文也が告白してきた。それを受けて私は悪知恵が働いたの。彼氏がいると分かれば、男子も諦めるだろうし、女子から嫉妬を受けることはないんじゃないかって。それに、文也みたいな入学したての一年生なら想いを寄せる人はいないんじゃないかって」
「顔も普通ですしね」
「んー、そんなことは言ってないんだけどな。だから、文也の告白を受け入れたのは、気が合ったからじゃなくて、カモフラージュとして使おうと思ったの。ずっと隠していてごめんなさい」
深々と頭を下げる。僕からの反応を聞くまで上げないとでも言うように、ずっと姿勢をキープしていた。
今の話を受けて、僕が言えるのはたった一つだけだった。
「今はどうなの?」
怒られると思っていたからか、日和はポカンとした顔を向けてきた。僕はもう一度同じ質問を繰り返す。
「今は……好き、大好き!」
素直に言ってくるとは思わず、恋のキューピットが僕の心臓を撃ち抜く。
「それが聞ければ満足だよ。過去にどう日和が思っていようが関係ない。むしろ話してくれてありがとう」
照れ臭くて、頬を掻きながら口にした。
「……良かった。やっぱり文也は優しいね。怒って良いところなのに」
「正直知っていたから」
「えっ! そうなの! いつ? 何で知ったの?」
日和は心底驚いたらしく質問攻めにしてくる。どこで気づく瞬間があったのか、考えているみたいで目の焦点が合っていない。
「日和の家から帰る途中に唯川さんに会ったんです。そこで教えてもらいました。あくまで推測でしたが」
「唯川……あぁ、明里か。うわぁ~、盲点だった。そりゃ、そうだよね。私が男子を家に呼んだら訝しむよね」
頭を抱えながら机に突っ伏す。滑稽な様を見せる日和がなんだか面白かった。
「それを聞いた時は……やっぱり怒った?」
机に突っ伏しながらも、こちらに顔を向ける。
「怒ってないですよ。それに、僕も隠していたことがありましたから」
日和が自らの口から秘密を言ってくれたのだ。僕だけ隠すのはフェアじゃない。
心の中で四宮先生に謝罪しながら、僕は言葉を連ね始めた。
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