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2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)
好調な下校、不調な下校
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「すみません。お待たせしました」
飯塚先輩に連れられ、僕は日和と千丈先輩の待つ校門付近にやってきた。
「気にしてないよ。何かあったの?」
日和は不思議そうな表情で聞いてくる。
彼女に関連しての内容のため言うべきか迷う。
「ちょっと……雑談を……」
少し迷ってから、本人の想像に任せるように覚束ない返事をする。
「へぇ~。文也がクラスメイトと雑談なんて。仲の良い友達ができたみたいで良かった」
仲が良いか。弁解したい気持ちはあるが、日和が喜んでくれているので黙ることにした。
「ところで……」
言いながら視線を日和から横に逸らす。
千丈先輩は昼頃と変わらず項垂れていた。彼女の頭上には不調を示すように縦線が何本も引かれているように見える。
「千丈先輩は……まだ落ち込んでますよね……」
「うん。心配だったから迎えにいったんだけど、クラスでもこんな様子だった。一人哀愁漂わせて座ってたんだよね」
昼食時間に行われた部活勧誘は失敗で終わった。
あの後、何も話すことなく教室を立ち去っていった。側から見れば不審者に見えなくもないが、クラスにいた生徒のほとんどは日和に夢中になっていたので、気づけばいなくなっていた程度に思っていることだろう。
一発目で心が完全に折れ、その後は動けずじまいでチャイムが鳴った。
今日の戦績はゼロ。むしろマイナスかもしれない。今の調子では部活勧誘どころかイベント開催すら怪しい。
何人も集めておいて、何も話せず終わったら示しがつかない。
「ところで……」
今度は日和の視線を走らせる。
定まった先は僕の隣だった。
「杏子はどうしたの?」
僕もまた隣に視線を運ぶ。
そこには、だらしのない笑顔を見せる飯塚先輩の姿があった。
「ねえねえ、日和。私ってそんなに可愛いかな?」
ポリポリ頰を掻きながら惚気るように口走る。
「えっ! うん。可愛いと思うけど」
「そうかなー! えへへ、えへへ」
鼻を下伸ばし照れるように笑う。
日和は少し引き気味な表情で飯塚先輩を見る。それから助けを乞うように僕を見た。流石に説明が必要だよな。
「僕のクラスメイトが可愛いって言ったんです。僕に向けて言ったんですけど、距離が近かったから飯塚先輩にも聞こえたんでしょうね」
「そういうことね」
「日和は言われ慣れてると思うけど、私は初めてだったからさ。しかも、後輩男子に。これってモテ期かな?」
「変な男に引っかからないでくださいね」
偏見ではあるものの、飯塚先輩はすぐ罠に引っかかりそうだ。
あまり悪くは言いたくないが、彼らは多少可愛くて付き合えるなら誰でも良いと思っている。
「行きましょっか。結花も待たせちゃうかもしれないので」
ここで話し込むわけにもいかない。
本日は、昨日完成したポスターのデザインを元に清書する予定だ。
清書に際して、美術部である結花の力を借りることにした。
突然の頼みであったが、結花は嫌な様子は一切見せず、すぐに承諾してくれた。妹には頭が上がらない。今度何かプレゼントしてあげよう。
話がまとまったところで僕の家に向かうため校門を出る。
僕と千丈先輩が前を行き、日和と飯塚先輩が後ろ付いていく形となった。
「ごめんね。最上くんが色々教えてくれたのに、何一つできなくて」
僕が声をかけるよりも先に、千丈先輩が口を開いた。
「別に気にしなくて良いですよ。日和から聞きました。一年の時に、授業の発表で泡吹いて倒れたって」
「恥ずかしいこと言われちゃったな。昔から人前は苦手なんだよね。多くの視線に晒されると身動きが取れなくなっちゃうんだ」
「そうなんですね。なら、言遊部に入ったってすごいですね」
「え? どうして?」
「だって、今の言遊部は千丈先輩一人なんですから、先輩は一人で入部を希望しに行ったんですよね。少なくとも五人の視線には晒されることになった。それを拒まずに入部届を出したんですから、相当な思いがあったんじゃないですか?」
「……」
「なら、なおさら廃部にはさせられないですね」
「最上くん……」
千丈先輩の口元がだんだん閉まっていく。
その様子を眺めていると、彼女の目元から大量の涙が出てきた。
「えっ! ちょっと待ってください!」
思わぬ出来事に焦らないはずもなかった。
女子を泣かせてしまった。後ろにいる二人に見られたら何を思われるだろうか。
「ごめん。嬉しくって。まさか褒められるとは思ってなかったから」
ブレザーで涙を拭う。
ひとまず、悪い意味で泣いている訳じゃなくて良かった。知らぬうちに傷つけてしまったかと思った。
「文也~」
ふと、肩に手を置かれる。
その手は呼び止めるには握力が強すぎた。
振り向くと、日和が真顔でこちらを見ている。どうやら、泣かせてしまったことに気づかれたみたいだ。それも、不都合なことに悪い事をして泣かせたと思われたみたいだ。
「なーにしてるのかなー?」
「これには深い訳が……」
脅威の視線に晒され、言葉がうまく出ない。
千丈先輩の気持ちが今なら分かる。どうやら、人の視線には毒の作用があるみたいだ。
飯塚先輩に連れられ、僕は日和と千丈先輩の待つ校門付近にやってきた。
「気にしてないよ。何かあったの?」
日和は不思議そうな表情で聞いてくる。
彼女に関連しての内容のため言うべきか迷う。
「ちょっと……雑談を……」
少し迷ってから、本人の想像に任せるように覚束ない返事をする。
「へぇ~。文也がクラスメイトと雑談なんて。仲の良い友達ができたみたいで良かった」
仲が良いか。弁解したい気持ちはあるが、日和が喜んでくれているので黙ることにした。
「ところで……」
言いながら視線を日和から横に逸らす。
千丈先輩は昼頃と変わらず項垂れていた。彼女の頭上には不調を示すように縦線が何本も引かれているように見える。
「千丈先輩は……まだ落ち込んでますよね……」
「うん。心配だったから迎えにいったんだけど、クラスでもこんな様子だった。一人哀愁漂わせて座ってたんだよね」
昼食時間に行われた部活勧誘は失敗で終わった。
あの後、何も話すことなく教室を立ち去っていった。側から見れば不審者に見えなくもないが、クラスにいた生徒のほとんどは日和に夢中になっていたので、気づけばいなくなっていた程度に思っていることだろう。
一発目で心が完全に折れ、その後は動けずじまいでチャイムが鳴った。
今日の戦績はゼロ。むしろマイナスかもしれない。今の調子では部活勧誘どころかイベント開催すら怪しい。
何人も集めておいて、何も話せず終わったら示しがつかない。
「ところで……」
今度は日和の視線を走らせる。
定まった先は僕の隣だった。
「杏子はどうしたの?」
僕もまた隣に視線を運ぶ。
そこには、だらしのない笑顔を見せる飯塚先輩の姿があった。
「ねえねえ、日和。私ってそんなに可愛いかな?」
ポリポリ頰を掻きながら惚気るように口走る。
「えっ! うん。可愛いと思うけど」
「そうかなー! えへへ、えへへ」
鼻を下伸ばし照れるように笑う。
日和は少し引き気味な表情で飯塚先輩を見る。それから助けを乞うように僕を見た。流石に説明が必要だよな。
「僕のクラスメイトが可愛いって言ったんです。僕に向けて言ったんですけど、距離が近かったから飯塚先輩にも聞こえたんでしょうね」
「そういうことね」
「日和は言われ慣れてると思うけど、私は初めてだったからさ。しかも、後輩男子に。これってモテ期かな?」
「変な男に引っかからないでくださいね」
偏見ではあるものの、飯塚先輩はすぐ罠に引っかかりそうだ。
あまり悪くは言いたくないが、彼らは多少可愛くて付き合えるなら誰でも良いと思っている。
「行きましょっか。結花も待たせちゃうかもしれないので」
ここで話し込むわけにもいかない。
本日は、昨日完成したポスターのデザインを元に清書する予定だ。
清書に際して、美術部である結花の力を借りることにした。
突然の頼みであったが、結花は嫌な様子は一切見せず、すぐに承諾してくれた。妹には頭が上がらない。今度何かプレゼントしてあげよう。
話がまとまったところで僕の家に向かうため校門を出る。
僕と千丈先輩が前を行き、日和と飯塚先輩が後ろ付いていく形となった。
「ごめんね。最上くんが色々教えてくれたのに、何一つできなくて」
僕が声をかけるよりも先に、千丈先輩が口を開いた。
「別に気にしなくて良いですよ。日和から聞きました。一年の時に、授業の発表で泡吹いて倒れたって」
「恥ずかしいこと言われちゃったな。昔から人前は苦手なんだよね。多くの視線に晒されると身動きが取れなくなっちゃうんだ」
「そうなんですね。なら、言遊部に入ったってすごいですね」
「え? どうして?」
「だって、今の言遊部は千丈先輩一人なんですから、先輩は一人で入部を希望しに行ったんですよね。少なくとも五人の視線には晒されることになった。それを拒まずに入部届を出したんですから、相当な思いがあったんじゃないですか?」
「……」
「なら、なおさら廃部にはさせられないですね」
「最上くん……」
千丈先輩の口元がだんだん閉まっていく。
その様子を眺めていると、彼女の目元から大量の涙が出てきた。
「えっ! ちょっと待ってください!」
思わぬ出来事に焦らないはずもなかった。
女子を泣かせてしまった。後ろにいる二人に見られたら何を思われるだろうか。
「ごめん。嬉しくって。まさか褒められるとは思ってなかったから」
ブレザーで涙を拭う。
ひとまず、悪い意味で泣いている訳じゃなくて良かった。知らぬうちに傷つけてしまったかと思った。
「文也~」
ふと、肩に手を置かれる。
その手は呼び止めるには握力が強すぎた。
振り向くと、日和が真顔でこちらを見ている。どうやら、泣かせてしまったことに気づかれたみたいだ。それも、不都合なことに悪い事をして泣かせたと思われたみたいだ。
「なーにしてるのかなー?」
「これには深い訳が……」
脅威の視線に晒され、言葉がうまく出ない。
千丈先輩の気持ちが今なら分かる。どうやら、人の視線には毒の作用があるみたいだ。
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