保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

文字の大きさ
61 / 138
2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)

広まった噂

しおりを挟む
「最上! やっぱり、お前……安藤先輩と付き合っていたのか?」

 授業後。僕は数人の男子から尋問を受けていた。
 部活勧誘で見せた日和の行動は、瞬く間に学年に広がっていき、僕のクラスにまで知れ渡ってしまった。

「言ってませんでしたっけ?」

「聞いてねえよ。ただの親しい仲だと思ってた。普通、あんな美人な先輩が彼女になったらみんなに自慢するからな。何も言わないってことは恋仲ではないと思っていたぜ」

「まさかお前、あえて言わないで俺たちが浮かれる姿を見て楽しんでたのか!」

「そんなことするわけないじゃないですか」

「じゃあ、何で隠してたんだよ!?」

「別に隠していたわけじゃ……僕は言ったと思ってましたし」

「ちっ……俺らは眼中にねえってか。高みの見物気取りかよ」

「一ミリも思ってないですよ」

 眼の中に入っていないという意味では眼中にはないかもしれない。だが、流石に見下すようなことはしない。

「白々しいな。この調子だと、バーベキューを断ったのも、万が一彼女が取られる可能性があったからかもしれないな」

「だな。行こうぜ。こいつといると、見下されているような気がしてならないし」

「そういえば、移動教室でA組に可愛い子がいるのを発見したんだ。明日の昼に見に行かねえか?」

 さっきまでの会話がなかったかのように彼らは素早い話題転換をして僕の机から去っていった。嵐のように騒がしいクラスメイトだ。

「変な奴らに絡まれて可哀想ね。私も最初の頃は鬱陶しくて殴ってやりたいと思ったわ」

 彼らに視線を送っていると、隣から和光さんの声が聞こえてくる。
 彼女は話しながら帰りの支度をしていた。教科書やノートを綺麗に束ね、鞄の隙間に埋めていく。一つ一つの動作が鮮やかだった。

「へぇ~、和光さんも絡まれていたんですか? でも、あんまりクラスメイトが近寄ってくるところを見たことないですよ?」

「今の時代、何も直接会うだけが絡むではないからね」

 ようやく僕の方に顔を向けると、ポケットからスマホを取り出して見せる。

「クラスのグループから勝手に友達追加してメッセージ送ってきたの。『何番目の席の誰々だけど知っている?』って」

「あー、なるほど。だいぶ鬱陶しいですね」

「リアルでは話しかけてこないのに、デジタルになると煩くなる。こういう人種あまり好きではないのよね」

「和光さんは嫌いそうですね。なんなら、話しかけてくる人も嫌いそうですが」

「そんなことないわ。うざ絡みは嫌だけどね」

「同感です」

 さて、早めに出ないと待たせてしまう可能性があるので、ここらでお暇することにしよう。

「さっきの話なんだけど……」

 荷物をまとめ、席を立とうとしたところで声をかけられる。中断したい気持ちはあるが、和光さんに言うのは憚られる。なんだか怖いのだ。

「何ですか?」

「この前言ってた、ひよ何とかさん」

「日和ですね。あと一文字くらい覚えてあげてください」

「そうそう。日和さん、あの人は君の彼女だったのね。入学して早々、一つ上の先輩と恋仲とは。亡霊くんってやる時はやるのね。そっちの方もやってるの?」

 和光さんの問いかけに、前の席に座っている女子が咳き込む。盗み聞きされていたらしい。

「そっちの方とはどっちの方でしょうか?」

「女子に言わせようとするなんて。セクハラで訴えられるわよ」

「先にセクハラを仕掛けてきたのはどっちですか?」

「あら。私はそっちの方って言っただけよ。勝手に想像したのは亡霊くんの方じゃないかしら?」

「さっきの言葉を組み合わせたら、セクシュアルに関わることは見え見えな気がしますけど」

「あなたが変なことを言うから合わせてあげただけよ。最初のそっちはゲームの方。人生ゲームがお得意なのだから、普通のゲームもやってるかなって?」

「無理がありすぎますよ」

「そう? 私は本当に思っていたことを言っただけよ。亡霊くんが勝手に勘違いしたのに私のせいにするのは良くないんじゃないかしら?」

 これ以上は埒があかないな。
 和光さんは負けず嫌いというか。意地悪というか。よく分からない人だ。

「まあ、そういうことにしときます」

「賢明な判断ね。彼女さん、大切にしてあげなさいよ。くれぐれもヤリマンにはならないように」

 支度を終えたのか、一足先に席から立ち上がり、廊下に出ていった。
 あの人も嵐のような人だな。散々揶揄っておいて、勝手にいなくなるなんて。

「ねえねえ」

 廊下側を見ていると、今度は前の方から声をかけられる。視線を送ると、前にいた二人の女子がこちらを見ていた。

「どうしたんですか?」

「最上くんって和光さんと何かあった?」

「いえ、何もないですけど」

「そっか。和光さんのさっきの言動が変な感じだったから」

「ひょっとして、最上くんのこと好きだったり? はっ!」

 言ってはいけないことに気づいたのか口を両手で覆う。
 遅すぎる。せめて言い切る前にするべきだ。

「まあ、和光さんは最上くんにだけ雑談をかけてるイメージがあるから何か分かるかも」

「だよね。他の子たちに話しかける時は、だいたい業務連絡だし」

「詳しいですね」

「えっ! いやー、和光さんって美人で頭良くて、なんていうか気になる人だから。はっ!」

 また両手で口を塞ぐ。わざとなのか、天然なのか、分かりかねる反応だ。

「最上くーん!」

 三人で話していると、今度は廊下の方から声をかけられる。
 今日は色々なところから声をかけられるな。そんなことを思いながら顔を向けると、飯塚先輩の姿があった。

 そこで、今日の目的を忘れていた自分に気がつく。

「すみません、今日はこれで失礼します」

「うんうん。いきなり話しかけてごめんね。さよなら」

「バイバイ。はっ!」

 また口を噤む。いや、さよならの挨拶は別に良いだろ。

「おい、最上」

 立ち上がってすぐ、誰かに肩を叩かれた。
 置かれた手の持ち主に目をやる。先ほどの男子生徒たちだ。

「あの可愛い人は誰だ? 知り合いか?」

 男というのは可愛ければ誰でも良いらしい。
 懲りない奴らだ。彼らの輝かしい瞳を見ながら、心の中でため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...