84 / 138
2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)
イベント開催
しおりを挟む
「5人! 5人も集まったよ!」
イベント当日。
目の前に広がる光景を眺めていると、千丈先輩が僕に耳打ちする。小さな声ながらも声音から彼女が興奮で浮ついていることは分かる。
千丈先輩の言うとおり、イベントの開催される『視聴覚室』に集まったのは部員である千丈先輩、奏さん、僕を除くと男子5人だった。無名の部活でこの結果ならば上々だろう。
「さて! 開始時間が迫ってきましたので、早速始めていこうと思います。本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
一度手を叩き、場を締めたところで千丈先輩が集まった生徒に向けて挨拶する。
「あれ? チラシを配っていた子は今日はいないんですか?」
一人の男子が千丈先輩に尋ねる。
運動部に入っていそうな陽気な男子。千丈先輩には申し訳ないが、とてもじゃないが言遊部に入りそうな人間には見えない。
今日はいないチラシを配っていた子というのはおそらく日和のことだろう。
日和はイベントには参加しない。あくまでも助っ人という立ち位置なので、部員との交流を図るのを目的としたイベントには参加はしないことにしたのだ。
「ひよちゃんのことかな。ひよちゃんは助っ人でチラシを配ってくれただけだから来ないよ」
「助っ人でチラシを……てことは彼女はこの部活には入っていないってことですか?」
「そうなるね」
千丈先輩の答えを受け、彼は隣にいたこれまた運動部っぽい青年と目を合わせる。先ほどまで元気のあった二人はしょぼくれた表情を見せた。
「俺たちやっぱりやめときまーす」
一人が右手を前に出すと、二人は身体を後ろに向けた。
「え! ちょっ……」
千丈先輩が声をかける間もなく、二人は視聴覚室を後にした。去っていく際、「あーあ、せっかく可愛い先輩と仲良くなれるチャンスだったのに」と愚痴を吐くのが聞こえた。
「良かったね。変な人が安藤先輩に近寄らずに済んで」
後ろにいた奏さんに声をかけられる。
振り向いて彼女に顔を向ける。奏さんはそっぽを向いて鼻を鳴らしていた。
「何を残念がってそうな顔してるの?」
「別に~。千丈先輩、続きを始めましょう」
奏さんの視線に合わせるように、僕も千丈先輩の方を向いた。
彼女は手招きしながら彼らの出ていった扉を凝視していた。よっぽどショックだったみたいだ。
「別に気にする必要ないですよ」
「色目使ってくる男なんて部の毒でしかないんですから、いない方がマシですよ」
僕に続くように奏さんが冷たい口調で喋る。どうやら、先ほどの表情は彼らに対して怒りを抱いたが故のものだったみたいだ。
「あの~」
すると、今度は別の男子が手を挙げた。
「思ってたのと違うので、俺たちもイベントの参加はやめておきます」
そう言って、さらに二人の男子生徒が視聴覚室を後にした。
千丈先輩の顔が蒼白になる。仕方がない。5人だった参加者が呆気なく1人になってしまったのだ。
千丈先輩は今にも塵となって消えてしまいそうなほど儚い様子を見せていた。これでは、無事にイベントの進行ができるか怪しいところだ。ある程度までは僕が引き継いでおこう。
「人数は大幅に減ってしまいましたが、0というわけではないので始めていこうと思います。えっと……」
残った一人に顔を向ける。
「1年D組の竹中 天(たけなか そら)です。よろしくお願いします」
彼ははにかんだ表情で僕に自己紹介をした。
真っ白できめ細やかな肌。毛先が外向きにはねた黒髪。まん丸とした目。思春期の男子ながらもやや高い声。
女子だと言われても納得してしまうほどの美を兼ね備えた少年だった。
「えっと……男の子……ですよね?」
奏さんも信じられないのか、男子用の制服を着ているのに思わず確認してしまっていた。
「はい。よく女子と間違われますけどね」
照れくさそうに頭を掻く。
多少の戸惑いはあるが、見た目や話した様子から純粋に言遊部に興味を持ってくれているのは間違いない。
「僕たちも自己紹介した方が良さそうですね。1年G組の最上文也です」
「1年B組の星宮奏です」
「同学年だったんだ! よろしくね。最上くん、星宮さん」
竹中くんは僕たちが同い年であると、分かると不意にフランクな話し方になった。心なしか先ほどよりもテンションが高くなったように感じる。
きっと僕たちのことを一つ上の先輩だと思っていたのだろう。四人の男子生徒がいなくなったことで一年は一人なのだと思い、心細かったに違いない。
「「よ、よろしくお願いします」」
奏さんも僕も他人と壁を作る癖があるからか、急にフランクに話されたことに驚き、おぼつかない対応をしてしまう。そんな僕たちに対して竹中くんは笑みを絶やさなかった。二人の手を両手で握り、握手する。
ゴーゴンに石化されたように動かない千丈先輩は置いておいて、自己紹介が終わったため僕たちはイベントを始めることにした。
イベント当日。
目の前に広がる光景を眺めていると、千丈先輩が僕に耳打ちする。小さな声ながらも声音から彼女が興奮で浮ついていることは分かる。
千丈先輩の言うとおり、イベントの開催される『視聴覚室』に集まったのは部員である千丈先輩、奏さん、僕を除くと男子5人だった。無名の部活でこの結果ならば上々だろう。
「さて! 開始時間が迫ってきましたので、早速始めていこうと思います。本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
一度手を叩き、場を締めたところで千丈先輩が集まった生徒に向けて挨拶する。
「あれ? チラシを配っていた子は今日はいないんですか?」
一人の男子が千丈先輩に尋ねる。
運動部に入っていそうな陽気な男子。千丈先輩には申し訳ないが、とてもじゃないが言遊部に入りそうな人間には見えない。
今日はいないチラシを配っていた子というのはおそらく日和のことだろう。
日和はイベントには参加しない。あくまでも助っ人という立ち位置なので、部員との交流を図るのを目的としたイベントには参加はしないことにしたのだ。
「ひよちゃんのことかな。ひよちゃんは助っ人でチラシを配ってくれただけだから来ないよ」
「助っ人でチラシを……てことは彼女はこの部活には入っていないってことですか?」
「そうなるね」
千丈先輩の答えを受け、彼は隣にいたこれまた運動部っぽい青年と目を合わせる。先ほどまで元気のあった二人はしょぼくれた表情を見せた。
「俺たちやっぱりやめときまーす」
一人が右手を前に出すと、二人は身体を後ろに向けた。
「え! ちょっ……」
千丈先輩が声をかける間もなく、二人は視聴覚室を後にした。去っていく際、「あーあ、せっかく可愛い先輩と仲良くなれるチャンスだったのに」と愚痴を吐くのが聞こえた。
「良かったね。変な人が安藤先輩に近寄らずに済んで」
後ろにいた奏さんに声をかけられる。
振り向いて彼女に顔を向ける。奏さんはそっぽを向いて鼻を鳴らしていた。
「何を残念がってそうな顔してるの?」
「別に~。千丈先輩、続きを始めましょう」
奏さんの視線に合わせるように、僕も千丈先輩の方を向いた。
彼女は手招きしながら彼らの出ていった扉を凝視していた。よっぽどショックだったみたいだ。
「別に気にする必要ないですよ」
「色目使ってくる男なんて部の毒でしかないんですから、いない方がマシですよ」
僕に続くように奏さんが冷たい口調で喋る。どうやら、先ほどの表情は彼らに対して怒りを抱いたが故のものだったみたいだ。
「あの~」
すると、今度は別の男子が手を挙げた。
「思ってたのと違うので、俺たちもイベントの参加はやめておきます」
そう言って、さらに二人の男子生徒が視聴覚室を後にした。
千丈先輩の顔が蒼白になる。仕方がない。5人だった参加者が呆気なく1人になってしまったのだ。
千丈先輩は今にも塵となって消えてしまいそうなほど儚い様子を見せていた。これでは、無事にイベントの進行ができるか怪しいところだ。ある程度までは僕が引き継いでおこう。
「人数は大幅に減ってしまいましたが、0というわけではないので始めていこうと思います。えっと……」
残った一人に顔を向ける。
「1年D組の竹中 天(たけなか そら)です。よろしくお願いします」
彼ははにかんだ表情で僕に自己紹介をした。
真っ白できめ細やかな肌。毛先が外向きにはねた黒髪。まん丸とした目。思春期の男子ながらもやや高い声。
女子だと言われても納得してしまうほどの美を兼ね備えた少年だった。
「えっと……男の子……ですよね?」
奏さんも信じられないのか、男子用の制服を着ているのに思わず確認してしまっていた。
「はい。よく女子と間違われますけどね」
照れくさそうに頭を掻く。
多少の戸惑いはあるが、見た目や話した様子から純粋に言遊部に興味を持ってくれているのは間違いない。
「僕たちも自己紹介した方が良さそうですね。1年G組の最上文也です」
「1年B組の星宮奏です」
「同学年だったんだ! よろしくね。最上くん、星宮さん」
竹中くんは僕たちが同い年であると、分かると不意にフランクな話し方になった。心なしか先ほどよりもテンションが高くなったように感じる。
きっと僕たちのことを一つ上の先輩だと思っていたのだろう。四人の男子生徒がいなくなったことで一年は一人なのだと思い、心細かったに違いない。
「「よ、よろしくお願いします」」
奏さんも僕も他人と壁を作る癖があるからか、急にフランクに話されたことに驚き、おぼつかない対応をしてしまう。そんな僕たちに対して竹中くんは笑みを絶やさなかった。二人の手を両手で握り、握手する。
ゴーゴンに石化されたように動かない千丈先輩は置いておいて、自己紹介が終わったため僕たちはイベントを始めることにした。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる