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幕間2
日和の別荘
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ゴールデンウィークに突入した。
1日目は学校から出された課題を消化。2日目から前の休日で約束した『日和の別荘』に行くこととなった。
「ワォ! イッツ、ソー、ラージ!」
天音さんが片言の英語で感想を述べる。
日和家の別荘は『高級住宅』という名に相応しいほど魅力的なものだった。
山の一角にあるため見晴らしは最高。リビングやダイニングは一般の家庭の4倍ほどの広さを誇っている。庭にはプールがあり、リビングの端にはグランドピアノが置かれている。
「なにこのテレビ見たことないんだけど!」
飯塚先輩はリビングにあるソファーに腰をかけ、前にあるテレビを覗いた。普段、僕が見ているモニターを縦横10個ずつ詰めたくらいの大きさだ。
「お父さん曰く150インチあるみたい」
150インチ。聞いたこともないサイズだな。
「ふむ……どこを見ればいいか全然分からない」
「こんな大きいサイズのテレビでモリカをする。なんて贅沢なんでしょう」
気づけば飯塚先輩の隣に天音さんが座っていた。二人してテレビの画面を注視する。物珍しさに完全に魅了されていた。
天音さんたちを見ている最中、突然ピアノの伴奏が流れる。視線を向けると、奏さんがピアノを演奏していた。彼女の隣では千丈先輩が伴奏に聞き入っている。千丈先輩の無茶振りで弾かされたのだろうか。
日和の別荘に行く予定を立てた時、二人はその場にいなかった。だが、ゴールデンウィーク直前に話をしてみたら「行きたい」と言ったので、彼女たちもまた別荘にやってきたのだった。
「星宮さん、ピアノ上手だね」
「そうだね。日和は弾ける?」
「ちょっとだけならね」
親指と人差し指をくっつけるポーズを見せる。
「もし良かったら後で聞かせてよ。日和の伴奏聞いてみたいから」
「え~。最近はあんまりやってないから上手く弾けないと思うな」
「別に上手くなくたって構わないよ」
「私が構うんだよ。ちょっとだけ練習してからね」
「了解」
「はあ~、あんまり私の前で日和とイチャイチャしないでほしいな」
僕らの後ろにいた人物がため息混じりに会話に割り入る。
日和の家に初めて行った帰り道、僕に声をかけてきた唯川さんもまた別荘にやってきていた。日和曰く、唯川さんは長期休みの度に一緒に遊びに行くと言う。今回の長期休みでは、日和は別荘に行くくらいしか用事がないので、仕方なく僕らに混じってついて来たようだ。
本当に日和のことが好きなんだな。
「唯川さんはよく来るんですか?」
「もちろん。二桁は行っているわ。最上くんと違ってね」
マウントを取るように自慢げに発言する。どうやら、僕は唯川さんにかなり対抗意識を向けられているみたいだ。
「はははは……」
僕たちのやりとりに日和は苦笑いを浮かべていた。
「みんな聞いて」
気を取り直すように手を叩く。その場にいた全員が日和に注意を向けた。
「まずは持って来た荷物を部屋に置くところから始めましょ」
日和の別荘での滞在期間は今日を含めて3日間だ。僕は着替えくらいしか持って来ていないので、比較的荷物は軽い。ただ、女子は化粧品やらケア用品やらで荷物が多くなっているに違いない。
その証拠に僕以外のバッグは皆すべからくキャリーバッグだ。
「部屋は2階と3階にある。各フロア4部屋で計8部屋あるから1人1部屋でいいかな?」
日和の問いかけにソファに座る天音さん、飯塚先輩が肯定する。ピアノの近くにいた千丈先輩、奏さんも大きく頷いた。
「別に1人1部屋じゃなくていいんじゃない? 各部屋にベッドが二つずつあるんだから持て余しちゃうでしょ?」
ただ1人、唯川さんだけは拒絶する。彼女の言うとおりベッドが二つあるのなら持て余してしまう気はするが、それだけなら別にいいのではないだろうか。
「それに、夜中にこっそり誰かが誰かの部屋に行く可能性があるしね」
まだ理由はあるらしく、唯川さんは続けて口にする。その言葉に日和は目を大きくした。同時にピアノが1音鳴る。
「図星の奴らがいるな」
全員の表情を見渡し、唯川さんは訝しげな表情を見せる。
「明里の言うとおりかもしれないね。なら、2人1部屋にしようか。今見ている感じ」
日和は1度全体を見回す。
「天音さんと杏子、奏ちゃんと真奈ちゃん」
それから僕らの元に視線を戻す。唯川さんを見て、僕を見る。
「私と文也、それで明里かな?」
「何で私がハブられるのよ!」
唯川さんは両拳を握って日和の頭をグリグリする。
「明里、痛いよ~」
「やっぱり確信犯だったわね。夜な夜な最上くんのところに行こうだなんてそうはいかないんだから」
日和の耳に口を近づけて言う。遠距離にいる四人には聞こえないだろうが、僕には丸聞こえだった。2人1部屋というのは見張りの意味も込められているみたいだ。
唯川さんの攻撃に根負けし、日和は唯川さんと2人で部屋を共有することになった。
それから僕らは部屋に荷物を置いた後、天音さんの発案でモリカをすることとなった。この人からモリカはどう足掻いても取ることはできないみたいだ。
1日目は学校から出された課題を消化。2日目から前の休日で約束した『日和の別荘』に行くこととなった。
「ワォ! イッツ、ソー、ラージ!」
天音さんが片言の英語で感想を述べる。
日和家の別荘は『高級住宅』という名に相応しいほど魅力的なものだった。
山の一角にあるため見晴らしは最高。リビングやダイニングは一般の家庭の4倍ほどの広さを誇っている。庭にはプールがあり、リビングの端にはグランドピアノが置かれている。
「なにこのテレビ見たことないんだけど!」
飯塚先輩はリビングにあるソファーに腰をかけ、前にあるテレビを覗いた。普段、僕が見ているモニターを縦横10個ずつ詰めたくらいの大きさだ。
「お父さん曰く150インチあるみたい」
150インチ。聞いたこともないサイズだな。
「ふむ……どこを見ればいいか全然分からない」
「こんな大きいサイズのテレビでモリカをする。なんて贅沢なんでしょう」
気づけば飯塚先輩の隣に天音さんが座っていた。二人してテレビの画面を注視する。物珍しさに完全に魅了されていた。
天音さんたちを見ている最中、突然ピアノの伴奏が流れる。視線を向けると、奏さんがピアノを演奏していた。彼女の隣では千丈先輩が伴奏に聞き入っている。千丈先輩の無茶振りで弾かされたのだろうか。
日和の別荘に行く予定を立てた時、二人はその場にいなかった。だが、ゴールデンウィーク直前に話をしてみたら「行きたい」と言ったので、彼女たちもまた別荘にやってきたのだった。
「星宮さん、ピアノ上手だね」
「そうだね。日和は弾ける?」
「ちょっとだけならね」
親指と人差し指をくっつけるポーズを見せる。
「もし良かったら後で聞かせてよ。日和の伴奏聞いてみたいから」
「え~。最近はあんまりやってないから上手く弾けないと思うな」
「別に上手くなくたって構わないよ」
「私が構うんだよ。ちょっとだけ練習してからね」
「了解」
「はあ~、あんまり私の前で日和とイチャイチャしないでほしいな」
僕らの後ろにいた人物がため息混じりに会話に割り入る。
日和の家に初めて行った帰り道、僕に声をかけてきた唯川さんもまた別荘にやってきていた。日和曰く、唯川さんは長期休みの度に一緒に遊びに行くと言う。今回の長期休みでは、日和は別荘に行くくらいしか用事がないので、仕方なく僕らに混じってついて来たようだ。
本当に日和のことが好きなんだな。
「唯川さんはよく来るんですか?」
「もちろん。二桁は行っているわ。最上くんと違ってね」
マウントを取るように自慢げに発言する。どうやら、僕は唯川さんにかなり対抗意識を向けられているみたいだ。
「はははは……」
僕たちのやりとりに日和は苦笑いを浮かべていた。
「みんな聞いて」
気を取り直すように手を叩く。その場にいた全員が日和に注意を向けた。
「まずは持って来た荷物を部屋に置くところから始めましょ」
日和の別荘での滞在期間は今日を含めて3日間だ。僕は着替えくらいしか持って来ていないので、比較的荷物は軽い。ただ、女子は化粧品やらケア用品やらで荷物が多くなっているに違いない。
その証拠に僕以外のバッグは皆すべからくキャリーバッグだ。
「部屋は2階と3階にある。各フロア4部屋で計8部屋あるから1人1部屋でいいかな?」
日和の問いかけにソファに座る天音さん、飯塚先輩が肯定する。ピアノの近くにいた千丈先輩、奏さんも大きく頷いた。
「別に1人1部屋じゃなくていいんじゃない? 各部屋にベッドが二つずつあるんだから持て余しちゃうでしょ?」
ただ1人、唯川さんだけは拒絶する。彼女の言うとおりベッドが二つあるのなら持て余してしまう気はするが、それだけなら別にいいのではないだろうか。
「それに、夜中にこっそり誰かが誰かの部屋に行く可能性があるしね」
まだ理由はあるらしく、唯川さんは続けて口にする。その言葉に日和は目を大きくした。同時にピアノが1音鳴る。
「図星の奴らがいるな」
全員の表情を見渡し、唯川さんは訝しげな表情を見せる。
「明里の言うとおりかもしれないね。なら、2人1部屋にしようか。今見ている感じ」
日和は1度全体を見回す。
「天音さんと杏子、奏ちゃんと真奈ちゃん」
それから僕らの元に視線を戻す。唯川さんを見て、僕を見る。
「私と文也、それで明里かな?」
「何で私がハブられるのよ!」
唯川さんは両拳を握って日和の頭をグリグリする。
「明里、痛いよ~」
「やっぱり確信犯だったわね。夜な夜な最上くんのところに行こうだなんてそうはいかないんだから」
日和の耳に口を近づけて言う。遠距離にいる四人には聞こえないだろうが、僕には丸聞こえだった。2人1部屋というのは見張りの意味も込められているみたいだ。
唯川さんの攻撃に根負けし、日和は唯川さんと2人で部屋を共有することになった。
それから僕らは部屋に荷物を置いた後、天音さんの発案でモリカをすることとなった。この人からモリカはどう足掻いても取ることはできないみたいだ。
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