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大學ノォトの人
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「祖父は3年前に他界したんです。流行病で」
そう伝えると、とても寂しげな表情になり、「すみません。昔世話になったから焼香だけでも」と申し出られた。祖父の交友範囲を把握しきれていなかったから、知らせが随分経ってから届いたという人が、こうやってちらほらやってくる。
男性の言葉に頷き、会話を止めてじっと様子をうかがっている二人の脇を通って、店の奥にある居間に通した。
「誰?見ない顔ね」
「じぃじの知り合いみたい。なんか見覚えがあるんだけど、気のせいかなぁ」
「あんな素敵な殿方いたら、忘れないわよぉ」
すでに素敵な旦那様がいるというのに、しおりちゃんは呑気にそんなことをいう。こんなのしおりちゃんを溺愛する旦那様に聞かれたら一大事。彼はしおりちゃんに悪い虫がつかないように、高校を卒業したらすぐに結婚を迫ったほどなのだ。分かってんのかなぁ、そこの所。
祖父の位牌を前に手を合わせている彼に、そっとお茶を出したら茶柱が立っていた。なんだかうれしくなってしまう。店の方に目をやると二人は「帰るね」とメモを残していなくなっていた。仕方なくオルゴォルの修理の続きに取り掛かった。作業机の上には学校の実習で染めた手ぬぐいが敷いてあり、そこにバネや小さなボルト、歯車などの細かな部品が整然と並べてある。どの順番に置いても組み上げることはできるけれど、この方が効率がいいから。
人が動いた気配がしたので振り向くと、男性は私の出したお茶を、おいしそうに啜りながらにっこりと微笑んでいた。
「ごめんなさい!すぐに夢中になっちゃって!」
慌てて作業を中断して彼の元へと向かうと、「大丈夫ですよ」とクスクス笑われてしまった。恥ずかしい。
「すっかり動揺して名乗るのを忘れていました。白川昌一郎といいます」
丁寧に下げられた頭を見ながら、その聞き覚えのある名前に頭を捻る。そしてはたと思い出した。
「大學ノォトの人!」
「大學ノォト?」
「うちに大學ノォトを出してくれた人!」
「……ああ、そういえばそんなこともあったなぁ」
「ちょっと待っててくださいね!」
ポンと手を叩いた彼を見て確信した私は、慌てて二階の部屋へと駆け込んだ。そうだ!絶対にあの人だ!押し入れから少し古びた木彫りの箱を取り出した。これは木彫りが趣味だった祖父が祖母にプレゼントした作品だ。私が壊れかけた紙箱を宝箱にしているのを見て、祖父が「おめぇのばぁばの為に昔こしらえたやつだ。それよりはましだろ」とくれたのだ。つっけんどんに渡された割にはとても綺麗な状態なのを見て、きっと祖母はこれをとても大切にしていたに違いないと思った。シゲさん曰く、ムカつくくらい仲が良かったそうだから。だから私も風呂敷に包んで大切に扱っている、大事な大事な宝箱なのだ。
そんな箱からこれまた古びた一冊のノォトを取り出した。祖父が亡くなった後、このノォトにはとても勇気をもらった。びっしり書かれたその文字の羅列を見て、頑張って勉強している姿を勝手に妄想していた。一人で努力している人がいた。頑張っている人がいた。誰もが私の事を助けようとして、それがどんどん過剰になっていき、むしろ甘えてダメな人間になりそうで、その葛藤で苦しくなっていた時、このノォトを抱きしめていたんだ。
それだけ大事なノォトに何かあったら嫌なので、箱ごと慎重に、まるで神様に上納するかのように、普段から考えられないくらいおしとやかに階段を下りて、彼の前にその箱を置いた。
「これは懐かしい…」
やっぱり彼のノォトだった。そのノォトを取り出した彼は、ゆっくりと当時の思い出に浸るかのように、ペェジをめくっていた。鉛筆で書き込まれたそのノォトは相変わらずぱりぱりと心地よい音がする。新品のノォトには出せない音だ。
「よくまぁ取ってありましたね」
「これはうちの名物なんです」
「名物?」
「白川さんが置いていかれたこのノォト、その次の学生さんが借りていったんです。祖父も彼も余白を勉強に使うためだったんです。だけど、実際に戻ってきた時には、ご自身が使ったノォトとこのノォトの二冊。このノォトの余白には『俺も頑張れた。君も頑張れ』というメッセェジが書き込まれていたんです」
余白利用の予定だったそれは、なかなか参考書の代わりとなり、続いていく後輩への応援ノォトとなった。ノォトを元に勉強し、そのノォトと自分のノォトを添えて合格の報告に来る。恐らく白川さん自身、このノォトの前にも数冊あったはずだろう。引き継いだ人たちの中には、その前半を埋めるべく、使い切ったノォトも置いていく人がいた。白川さんが置いていかなかった(恐らく使い切ったため)教科も、同様にして増えていった。まるで伝統のようになったそれは今でも受け継がれいて、派生していったノォトを含めて余裕で50冊を超える。受験をする人はまるで参考書を選ぶかのように、ノォトを選んでいく。そして返す。まるでノォト図書館だ。私が大事にしているのはまさにその第一号。祖父のお参りに来る人には沢山のノォトの借主がいた。
「なんだか照れくさいなぁ。私は本当にノォトを活用してほしかっただけなのに」
頬をポリポリ掻いて、最後の方の歴代の借主が書いたメッセージを、一つ一つ丁寧になぞっていた。
「活用してますよ。それが今の形になっているんです」
「そっかぁ。そうですね。これが見知らぬ誰かの手助けになったとしたら、こんなに嬉しいことはないですね」
そして最後のペェジに来た時に、なぞっていた指が止まった。あの切り取られたペェジのところだ。
「そこ、何かに使ったんですか?」
「え?」
「ノォトがボロボロになったんで、修理しようと思って糸を切って分解したら、そこだけ足りなかったんです」
中綴じの所は紙の中心を糸で縫って二つに折る。だから前半分と後半分が対になっていないといけないのに、それはノォトがばらけない程度に余白を残して切り取られていたのだ。修理する時にはその穴が大きくなっていたから、仕方なくノリで一番前のペェジを固定した経緯がある。
「えっと…あ、うん、そうなんだよ」
なんだか突然歯切れが悪くなった白川さんを見て、これは立ち入らない方が良かったのでは、と後悔して続ける言葉を失ってしまった。私はこういう機微に疎い。麻里ちゃんだったら、そういうのを察してもっと流れるように会話が出来たのに。ノォトの持ち主に会えて、あまりにも嬉しくてやらかしてしまったようだ。夢中になると周りが見えなくなるのは私の悪い癖。
「あ、大丈夫だよ。気にしないで。大したことじゃないんだから」
幾分柔らかくなった口調で声を掛けられて、はっとなった。どこかで聞いた覚えがある。
「あの…もしかしたらどこかで会っていませんか?」
それを聞いた白川さんが、ますます考え込んだような顔をして、次に満面の笑みを返してきた。
「多分、私がここに立ち寄った時に、会っていたのかもしれないですね?」
「そ、そうか!そうですね!」
なぁんだ!そういう事か!合点がいって手を叩いた私を見つめる白川さんの笑顔は、とても素敵なのに、ほんのちょっと怖かった。
なぜだろう?
その日以来、白川さんは頻繁に店に顔を出すようになっていった。てっきり仕事の都合で立ち寄ってきたのかと思っていたら、白川さんは「自由業」というものらしく、その詳細は教えてはくれない。以前は大学を出てからは銀行員として働いていたそうだけど、それはもう辞めていた。ここへは田舎に帰ってきたついでに立ち寄ったのだという。私もこの前失敗したから、それ以上は深く聞けなかった。でも町の人たちには彼の事を知っている人もいて、「久々だな!」とか「頑張ってるか!」などと気軽に声を掛けられている所を見ると怪しい人ではなさそうだ。
てっきり実家に帰っているのかと思ったら、まさかの旅館住まい。この町にある唯一の旅館を定宿にしていた。「実家に僕の居場所はないからね」と肩をすくめていうので、どれだけ悲しい過去を、と思ったけれど、当の本人は別段気にした様子はない。ますます彼の謎が深まるばかりだ。
「本当に沙奈ちゃんは器用だねぇ」
白川さんのバインダァ式手帳の開閉が上手くいかないというので、軽く分解してバネをはめ直してみた。そうやって何か作業している時、白川さんはかなり近くで覗き込んでくる。
白川さんは物腰の柔らかな人で落ち着いた所作なのに、色々と好奇心旺盛でこういう時は少年のように目を輝かせている。うちにある古い文房具や道具を見つけ出しては、その用途を聞いてメモを取る。今もすぐ傍に座ってじっと手元を見詰めていた。正直言って緊張するのでやめてほしいのだけれど、離れたら離れたでなぜか寂しく、結局私は以前よりも若干手際が悪くなりながらも、その状態を受け入れていた。
最初は警戒していた麻里ちゃんやしおりちゃんも同様だった。特に麻里ちゃんは綺麗にメイクアップされたその顔で、有り得ないような毒舌を吐くのだけど、博識な白川さんからもたらされる帝都話に食いついて、そこから美術論や流行について語りだし、すっかり懐柔されていた。麻里ちゃんはこういう話に飢えていたのだ。
「沙奈は白川さんの事どう思うのよ」
「どうって?いい人だよね」
「そおおおおじゃなああああい!」
美人さんに凄まれると怖い。半端なく怖い。若干後ずさろうとして、更に睨まれたのでピタリと動きを止める。
「殿方としてどうかって話よ!」
「ご、ごめんなさい」
「謝んないでよ。空しくなるじゃない」
本当に私は疎い。特に恋愛方向はからっきしだ。別に恋をしたことがないわけじゃない。でも恋を自覚するのが恥ずかしくて、結局その思いは昇華されずに枯れ果てるという事を繰り返していた。
「いい年の独身女が一人暮らし。狙わない男はいないわね」
「白川さんはそういう人じゃない!」
「まぁ、そうかもしれないけれど、あんた気を付けなよ?シゲさんとこのバカ息子、また粉かけてくるんでしょ」
そうなのだ。頭が痛いことが最近起きていた。
そう伝えると、とても寂しげな表情になり、「すみません。昔世話になったから焼香だけでも」と申し出られた。祖父の交友範囲を把握しきれていなかったから、知らせが随分経ってから届いたという人が、こうやってちらほらやってくる。
男性の言葉に頷き、会話を止めてじっと様子をうかがっている二人の脇を通って、店の奥にある居間に通した。
「誰?見ない顔ね」
「じぃじの知り合いみたい。なんか見覚えがあるんだけど、気のせいかなぁ」
「あんな素敵な殿方いたら、忘れないわよぉ」
すでに素敵な旦那様がいるというのに、しおりちゃんは呑気にそんなことをいう。こんなのしおりちゃんを溺愛する旦那様に聞かれたら一大事。彼はしおりちゃんに悪い虫がつかないように、高校を卒業したらすぐに結婚を迫ったほどなのだ。分かってんのかなぁ、そこの所。
祖父の位牌を前に手を合わせている彼に、そっとお茶を出したら茶柱が立っていた。なんだかうれしくなってしまう。店の方に目をやると二人は「帰るね」とメモを残していなくなっていた。仕方なくオルゴォルの修理の続きに取り掛かった。作業机の上には学校の実習で染めた手ぬぐいが敷いてあり、そこにバネや小さなボルト、歯車などの細かな部品が整然と並べてある。どの順番に置いても組み上げることはできるけれど、この方が効率がいいから。
人が動いた気配がしたので振り向くと、男性は私の出したお茶を、おいしそうに啜りながらにっこりと微笑んでいた。
「ごめんなさい!すぐに夢中になっちゃって!」
慌てて作業を中断して彼の元へと向かうと、「大丈夫ですよ」とクスクス笑われてしまった。恥ずかしい。
「すっかり動揺して名乗るのを忘れていました。白川昌一郎といいます」
丁寧に下げられた頭を見ながら、その聞き覚えのある名前に頭を捻る。そしてはたと思い出した。
「大學ノォトの人!」
「大學ノォト?」
「うちに大學ノォトを出してくれた人!」
「……ああ、そういえばそんなこともあったなぁ」
「ちょっと待っててくださいね!」
ポンと手を叩いた彼を見て確信した私は、慌てて二階の部屋へと駆け込んだ。そうだ!絶対にあの人だ!押し入れから少し古びた木彫りの箱を取り出した。これは木彫りが趣味だった祖父が祖母にプレゼントした作品だ。私が壊れかけた紙箱を宝箱にしているのを見て、祖父が「おめぇのばぁばの為に昔こしらえたやつだ。それよりはましだろ」とくれたのだ。つっけんどんに渡された割にはとても綺麗な状態なのを見て、きっと祖母はこれをとても大切にしていたに違いないと思った。シゲさん曰く、ムカつくくらい仲が良かったそうだから。だから私も風呂敷に包んで大切に扱っている、大事な大事な宝箱なのだ。
そんな箱からこれまた古びた一冊のノォトを取り出した。祖父が亡くなった後、このノォトにはとても勇気をもらった。びっしり書かれたその文字の羅列を見て、頑張って勉強している姿を勝手に妄想していた。一人で努力している人がいた。頑張っている人がいた。誰もが私の事を助けようとして、それがどんどん過剰になっていき、むしろ甘えてダメな人間になりそうで、その葛藤で苦しくなっていた時、このノォトを抱きしめていたんだ。
それだけ大事なノォトに何かあったら嫌なので、箱ごと慎重に、まるで神様に上納するかのように、普段から考えられないくらいおしとやかに階段を下りて、彼の前にその箱を置いた。
「これは懐かしい…」
やっぱり彼のノォトだった。そのノォトを取り出した彼は、ゆっくりと当時の思い出に浸るかのように、ペェジをめくっていた。鉛筆で書き込まれたそのノォトは相変わらずぱりぱりと心地よい音がする。新品のノォトには出せない音だ。
「よくまぁ取ってありましたね」
「これはうちの名物なんです」
「名物?」
「白川さんが置いていかれたこのノォト、その次の学生さんが借りていったんです。祖父も彼も余白を勉強に使うためだったんです。だけど、実際に戻ってきた時には、ご自身が使ったノォトとこのノォトの二冊。このノォトの余白には『俺も頑張れた。君も頑張れ』というメッセェジが書き込まれていたんです」
余白利用の予定だったそれは、なかなか参考書の代わりとなり、続いていく後輩への応援ノォトとなった。ノォトを元に勉強し、そのノォトと自分のノォトを添えて合格の報告に来る。恐らく白川さん自身、このノォトの前にも数冊あったはずだろう。引き継いだ人たちの中には、その前半を埋めるべく、使い切ったノォトも置いていく人がいた。白川さんが置いていかなかった(恐らく使い切ったため)教科も、同様にして増えていった。まるで伝統のようになったそれは今でも受け継がれいて、派生していったノォトを含めて余裕で50冊を超える。受験をする人はまるで参考書を選ぶかのように、ノォトを選んでいく。そして返す。まるでノォト図書館だ。私が大事にしているのはまさにその第一号。祖父のお参りに来る人には沢山のノォトの借主がいた。
「なんだか照れくさいなぁ。私は本当にノォトを活用してほしかっただけなのに」
頬をポリポリ掻いて、最後の方の歴代の借主が書いたメッセージを、一つ一つ丁寧になぞっていた。
「活用してますよ。それが今の形になっているんです」
「そっかぁ。そうですね。これが見知らぬ誰かの手助けになったとしたら、こんなに嬉しいことはないですね」
そして最後のペェジに来た時に、なぞっていた指が止まった。あの切り取られたペェジのところだ。
「そこ、何かに使ったんですか?」
「え?」
「ノォトがボロボロになったんで、修理しようと思って糸を切って分解したら、そこだけ足りなかったんです」
中綴じの所は紙の中心を糸で縫って二つに折る。だから前半分と後半分が対になっていないといけないのに、それはノォトがばらけない程度に余白を残して切り取られていたのだ。修理する時にはその穴が大きくなっていたから、仕方なくノリで一番前のペェジを固定した経緯がある。
「えっと…あ、うん、そうなんだよ」
なんだか突然歯切れが悪くなった白川さんを見て、これは立ち入らない方が良かったのでは、と後悔して続ける言葉を失ってしまった。私はこういう機微に疎い。麻里ちゃんだったら、そういうのを察してもっと流れるように会話が出来たのに。ノォトの持ち主に会えて、あまりにも嬉しくてやらかしてしまったようだ。夢中になると周りが見えなくなるのは私の悪い癖。
「あ、大丈夫だよ。気にしないで。大したことじゃないんだから」
幾分柔らかくなった口調で声を掛けられて、はっとなった。どこかで聞いた覚えがある。
「あの…もしかしたらどこかで会っていませんか?」
それを聞いた白川さんが、ますます考え込んだような顔をして、次に満面の笑みを返してきた。
「多分、私がここに立ち寄った時に、会っていたのかもしれないですね?」
「そ、そうか!そうですね!」
なぁんだ!そういう事か!合点がいって手を叩いた私を見つめる白川さんの笑顔は、とても素敵なのに、ほんのちょっと怖かった。
なぜだろう?
その日以来、白川さんは頻繁に店に顔を出すようになっていった。てっきり仕事の都合で立ち寄ってきたのかと思っていたら、白川さんは「自由業」というものらしく、その詳細は教えてはくれない。以前は大学を出てからは銀行員として働いていたそうだけど、それはもう辞めていた。ここへは田舎に帰ってきたついでに立ち寄ったのだという。私もこの前失敗したから、それ以上は深く聞けなかった。でも町の人たちには彼の事を知っている人もいて、「久々だな!」とか「頑張ってるか!」などと気軽に声を掛けられている所を見ると怪しい人ではなさそうだ。
てっきり実家に帰っているのかと思ったら、まさかの旅館住まい。この町にある唯一の旅館を定宿にしていた。「実家に僕の居場所はないからね」と肩をすくめていうので、どれだけ悲しい過去を、と思ったけれど、当の本人は別段気にした様子はない。ますます彼の謎が深まるばかりだ。
「本当に沙奈ちゃんは器用だねぇ」
白川さんのバインダァ式手帳の開閉が上手くいかないというので、軽く分解してバネをはめ直してみた。そうやって何か作業している時、白川さんはかなり近くで覗き込んでくる。
白川さんは物腰の柔らかな人で落ち着いた所作なのに、色々と好奇心旺盛でこういう時は少年のように目を輝かせている。うちにある古い文房具や道具を見つけ出しては、その用途を聞いてメモを取る。今もすぐ傍に座ってじっと手元を見詰めていた。正直言って緊張するのでやめてほしいのだけれど、離れたら離れたでなぜか寂しく、結局私は以前よりも若干手際が悪くなりながらも、その状態を受け入れていた。
最初は警戒していた麻里ちゃんやしおりちゃんも同様だった。特に麻里ちゃんは綺麗にメイクアップされたその顔で、有り得ないような毒舌を吐くのだけど、博識な白川さんからもたらされる帝都話に食いついて、そこから美術論や流行について語りだし、すっかり懐柔されていた。麻里ちゃんはこういう話に飢えていたのだ。
「沙奈は白川さんの事どう思うのよ」
「どうって?いい人だよね」
「そおおおおじゃなああああい!」
美人さんに凄まれると怖い。半端なく怖い。若干後ずさろうとして、更に睨まれたのでピタリと動きを止める。
「殿方としてどうかって話よ!」
「ご、ごめんなさい」
「謝んないでよ。空しくなるじゃない」
本当に私は疎い。特に恋愛方向はからっきしだ。別に恋をしたことがないわけじゃない。でも恋を自覚するのが恥ずかしくて、結局その思いは昇華されずに枯れ果てるという事を繰り返していた。
「いい年の独身女が一人暮らし。狙わない男はいないわね」
「白川さんはそういう人じゃない!」
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