Over the Forty ー夢を見れないお年頃ー

真田 真幸

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恋人編 

二人の身体事情

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 “理彩を俺にちょうだい”

いきなりの一哉の言葉に、声を出すことも息をすることも忘れてしまった様に、パクパクと熱くなった顔で口の開閉を繰り返す。

一哉はそんな私の様子を見て、落ち着かせるようにこめかみや額に口づけを落とす。

少し落ち着いて、深呼吸をしてから私は言葉を紡いだ。

「一哉、ゴメン…。いきなりすぎて…私…心の準備が出来てない。」

一応、結婚前提の付き合いということで、それなりに意識はしていた。

しかし、いきなり本日たった今から致シましょう!

なんて言われるとは思いもよらなかった訳で…。

 それにまだ…私の心も身体も…一哉の気持ちに追いついていない。

「大丈夫、俺も理彩の心の準備が出来るように協力するから。」

「いや…その…そんな軽い問題ではなくて…」

歯切れ悪く言い淀み、あとの言葉が続かないわたしを一哉が不思議そうに覗き込む。

言葉を選んで紡ごうにも、どうにも纏まらない。

説明を諦めて、このままその気になってる彼に、また生殺しのお泊まりを強いる訳には行かないと、心苦しく思いながら私は帰宅を促すことにした。

「とにかく、今日は…」

“帰って”と続けようとしたとき、無情にも終電発車のアナウンスが聞こえてきた。

「~~~~」

(なんてこと…これでは一哉のお泊まり決定じゃないかぁ~!!)

タクシーで送って、2駅先にあるビジネスホテルに泊まって貰おうとかと考えてみた…。 

いや…前回、客間にすら泊まるのを拒否した一哉が素直に頷く筈もない。

私は俯いて、深い溜め息を一哉の胸元に吐いた。

こうなったら、なんで私が一哉との一線を越えることに、二の足踏んでるのかちゃんと話さないと埒が開かない。

私は意を決して、一哉を見上げた。

「一哉、この先のことで話があるから、とりあえずウチに来て。」

「うん…」

いっこうに甘くならない私の表情に戸惑いを見せながら、一哉は左手で私の鞄を持ち、右手で私の手を握り歩き始めた。




 風呂上がり、シルクのパジャマ姿でキッチンの冷蔵庫から炭酸水のボトルを取り出し、半分ほど飲み干した。

先に風呂から上がってTシャツ短パン姿一哉は、ソファーからそんな私の様子を不安そうに見ていた。

先程、一人湯船に浸かり私が出した結論は、心が追いついていないと言っても“一哉の恋人”として、ゆくゆくは、生涯の伴侶として側にいるという立ち位置を明確に認識しているのだから、一哉さえ問題が無いのなら、この身を委ねよう…ということ。

問題は…身体のことだった。

「一哉も飲む?」

「いや…いい。」

私はリビングへと歩き出し、一哉の座っているソファーの反対側に少し距離を置いて体育座りで座った。

本当はくっつきたかったけど、今から話すことを惰性で終わらせたくなかった。

一哉はソファーの上で胡座をかいて、私の方を向いた。

「あのね、一哉…その…今日は来てくれてありがとう。会えて…その…嬉しかった…。」

そう言ってチラッと横目で一哉を見た。

先程までの不安そうな顔は、少し緩み照れて赤く染まった。

「で、真面目な話なんだけどね…。」

「うん…。」

「私を欲してくれる一哉の気持ちは嬉しいの。でも…正直、今の私の身体は…多分…一哉の期待に添える身体じゃないと思うんだ。色々、その…一哉と付き合うようになってから…頑張ってお手入れもしてはいるんだけど…長年の重力に耐えきれず負けてしまってるというか…。」

 正直、自分の身体に自信なんてない。

一哉と付き合う前、諦めさせる切り札として使おうとしたぐらい、体型が崩れているのは自覚していた。

年齢や一哉との歳の差についても、何度も向き合わなきゃいけなかったことだけど、身体のことをあえて口に出すのは、一番恥ずかしいし…辛い。

でも…泣きそうなのを必死に堪えて、体育座りの膝に顔を隠しながら、私は必死に伝えべきことを伝える。

「で…私の身体を見て…もしかしたら…一哉が萎えちゃって…ショックでEDになっちゃったらどうしょうって…。一哉はロマンチストだし…その…初めてだし…それなりに夢を持って、私を抱きたいって言ってくれてるのに…私はその期待に…応えられないかもって思うと…やっぱり…」

“付き合うのを考え直した方がいいんじゃないか?”

そう言おうとしたのに、喉で言葉がつっかえて出てこない。

一哉への気持ちをまた新たに自覚したばかりの私にとって、前なら一哉の為にと思えば、嘘を吐いてでも出来たことなのに、離れる言葉を告げることが簡単なことで無くなってしまっていた。

今の私は、ちゃんと一哉を恋人として好きになっているから…。

ふいに、影が重なり温かい体温が体育座りの私の身体を抱き寄せた。

まったく…と呟いて、一哉は私の頭を撫でる。

「理彩、俺の理彩への性欲、舐めてない?」

「へ?」

すっとんきょんな私の声に構わず、一哉は私の手首を掴んで、自分の身体の中で今一番熱を発している場所に触らせた。

短パンの生地を押し上げ、少し窮屈そうに脈打つソレは、私が少し指を動かすだけでビクッと反応する。

「一応、これでもさっき風呂に入ったときに一度抜いておいたんだ。性急に事を急いで理彩を怖がらせたり泣かせたりしたくなかったし…。でもね、理彩のパジャマ姿だけで、この状態になっちゃうんだ、俺。」

困ったように笑いながら一哉は私を抱きしめると、いつかの様に頬に零れた涙を丁寧に口づけて吸い取ってくれた。

「取り越し苦労だよ、理彩。ちゃんと俺は理彩を欲しがっているから安心して?」

ふんわりと優しく微笑む一哉は、私の額に瞼に頬に口づけを落とし、最後に唇を柔らかく食んだ。

(…一哉が受け入れてくれているなら、安心して身を委ねられる。)

啄むような優しい私をあやすような口づけを、ゆっくり…ゆっくり重ねたあと、一哉は囁いた。

「行こうか…」

「うん…」

私が頷くと、一哉は私を横抱きして立ち上がり、歩き出した。




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