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恋人編 初恋を追っていた頃
美しい彼女の狂気
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一哉たちが2階から居なくなって暫くして、1階ではチームに分かれてのウォーミングアップが始まり、身体が温まったところでシュート練習がスタートしていた。
ここの体育館は、地域でも一番大きな体育館。
日曜日となれば、地域の人たちが集まり、スポーツに興じる。
今日は使用する人が多いのか?
二階席から渡すように張られたワイヤーネットのカーテンで区切られたスペースを使い、ハンドボールのカズたち以外にもバドミントンなどのスポーツに汗を流している人たちがいた。
ふと時計を見れば、一哉たちが体育館を出ていって30分が経っている。
だけど、一哉も太一くんもまだ戻ってこない。
「シューズ置きっぱなしだし…」
少し不安になり、それをやり過ごすように身体を揺らしながら1階を見つめていた。
穏やか高校時代…とはいかなかったのが、さっきの一哉の様子から分かった。
それでも私を連れてきたってことは、過去のこと一哉自身が区切りをつけたからなんだと思う。
だけど今、予想外の事態が起こっているのだろう。
(何となく…私もそれに絡んでる気はするけど…。)
どう絡んでいるのか分からない以上、私には待っていることしかできない。
なんとも言えない不安に、私は溜め息を吐いた。
「お隣、座っても良いですか?」
後ろから突然聞こえた声に驚きながら振り替えると、そこには茶髪のポニーテールを揺らし、美少女が微笑みながら立っていた。
「…どうぞ。」
先程は一哉に抱きかかえられてしまい、姿を見ることが出来なかったけど、間違いなく彼女が“美乃さん”であることは声で分かった。
「私、小山 美乃といいます。高校時代、一哉くんと少しだけお付き合いしてました。」
彼女は少し距離をとって座ってから、私を一度も見ないで名乗った。
これは…宣戦布告!?
にしては穏やかだなぁ…と思いつつ、私も名乗る。
「…結城理彩です。」
「お名前は一哉くんから聞いてます。ずっと思い続けている初恋の人だって。」
「そう…ですか。」
「ところで、もう一哉くんとは寝ましたか?」
いきなりド直球に聞かれて私は目を瞠った。
なんとも答えられず、私は彼女を見つめた。
「一哉くん、上手だったでしょ?私とシていたから。」
(うわっ!この子の攻撃、綺麗な顔に似合わずエグい!!っていうか…この子が“実地研修”の相手だったのか…。)
呆気にとられながらも、私は言葉を発した。
「ああ…貴女が…」
「え?」
彼女は驚いた様子で私を見た。
「彼から少し話は聞いてます…。」
「…なんて?」
「途中までだけど…そういうことになったことがあるって…。その…最後まで出来なかったって…。」
「なぁ~んだ、つまんないの!一哉くんの初めての相手は本当は私だって嘯いてやろうと思ったのに!」
レモンイエローのショートパンツから覗く白く細い足を投げ出して、彼女は天井を仰ぎ見た。
少しの沈黙のあと、彼女は小さな笑い声を上げて話し始めた。
「ねぇ…不公平だと思いません?貴女は亡くなった彼氏さんからも、一哉くんからも愛されているのに、私はたった一人の初恋の人から愛されないなんて…。」
「…不公平?」
「不公平ですよね?貴女は欲張りだわ。出会う前から貴女はずっと一哉くんを束縛してる。」
「…」
何と言えば良いのか分からなかった。
分かるのは、一転して彼女の言葉から滲み始めた狂気と…そして酷く彼女が傷付いていて、私を自分と同じぐらいかそれ以上に傷付けたいのだということだった。
「一哉くんと寝たんでしょ?もういいですよね?成就して満足したでしょう?だったら、もういらないでしょ?私に一哉くんを下さい。初恋の人なの。私も結ばれたっていいですよね?」
完全に支離滅裂だった。
彼女は、もう狂気を隠し切れなくなったのだろう。
先程までお人形さんのように整っていた顔が、劣等感に歪んでいた。
「ごめんなさい…それは出来ないわ。一哉とは…もう離れられないの。」
私は美乃さんの瞳を見つめて答えた。
私の言葉を聞いて彼女の顔は一瞬強張った。
やがて感情が分からない笑顔で、私ににじり寄りゆっくりと細い指を首に近付けてきた。
(…何?)
焦点の合わない虚ろな彼女の瞳に恐ろしさを感じて、私は急いで後ずさって声を出そうとした。
が、直ぐに彼女の指は私の首に絡まり、押し倒された私の身体は恐怖で動かなくなった。
「助…けて…」
大きな声を出そうと、必死にもがいたしたけど出せなかった。
やっと出たささやかな助けを呼ぶ声は、体育館に満ちる喧騒にかき消けされてしまった。
ここの体育館は、地域でも一番大きな体育館。
日曜日となれば、地域の人たちが集まり、スポーツに興じる。
今日は使用する人が多いのか?
二階席から渡すように張られたワイヤーネットのカーテンで区切られたスペースを使い、ハンドボールのカズたち以外にもバドミントンなどのスポーツに汗を流している人たちがいた。
ふと時計を見れば、一哉たちが体育館を出ていって30分が経っている。
だけど、一哉も太一くんもまだ戻ってこない。
「シューズ置きっぱなしだし…」
少し不安になり、それをやり過ごすように身体を揺らしながら1階を見つめていた。
穏やか高校時代…とはいかなかったのが、さっきの一哉の様子から分かった。
それでも私を連れてきたってことは、過去のこと一哉自身が区切りをつけたからなんだと思う。
だけど今、予想外の事態が起こっているのだろう。
(何となく…私もそれに絡んでる気はするけど…。)
どう絡んでいるのか分からない以上、私には待っていることしかできない。
なんとも言えない不安に、私は溜め息を吐いた。
「お隣、座っても良いですか?」
後ろから突然聞こえた声に驚きながら振り替えると、そこには茶髪のポニーテールを揺らし、美少女が微笑みながら立っていた。
「…どうぞ。」
先程は一哉に抱きかかえられてしまい、姿を見ることが出来なかったけど、間違いなく彼女が“美乃さん”であることは声で分かった。
「私、小山 美乃といいます。高校時代、一哉くんと少しだけお付き合いしてました。」
彼女は少し距離をとって座ってから、私を一度も見ないで名乗った。
これは…宣戦布告!?
にしては穏やかだなぁ…と思いつつ、私も名乗る。
「…結城理彩です。」
「お名前は一哉くんから聞いてます。ずっと思い続けている初恋の人だって。」
「そう…ですか。」
「ところで、もう一哉くんとは寝ましたか?」
いきなりド直球に聞かれて私は目を瞠った。
なんとも答えられず、私は彼女を見つめた。
「一哉くん、上手だったでしょ?私とシていたから。」
(うわっ!この子の攻撃、綺麗な顔に似合わずエグい!!っていうか…この子が“実地研修”の相手だったのか…。)
呆気にとられながらも、私は言葉を発した。
「ああ…貴女が…」
「え?」
彼女は驚いた様子で私を見た。
「彼から少し話は聞いてます…。」
「…なんて?」
「途中までだけど…そういうことになったことがあるって…。その…最後まで出来なかったって…。」
「なぁ~んだ、つまんないの!一哉くんの初めての相手は本当は私だって嘯いてやろうと思ったのに!」
レモンイエローのショートパンツから覗く白く細い足を投げ出して、彼女は天井を仰ぎ見た。
少しの沈黙のあと、彼女は小さな笑い声を上げて話し始めた。
「ねぇ…不公平だと思いません?貴女は亡くなった彼氏さんからも、一哉くんからも愛されているのに、私はたった一人の初恋の人から愛されないなんて…。」
「…不公平?」
「不公平ですよね?貴女は欲張りだわ。出会う前から貴女はずっと一哉くんを束縛してる。」
「…」
何と言えば良いのか分からなかった。
分かるのは、一転して彼女の言葉から滲み始めた狂気と…そして酷く彼女が傷付いていて、私を自分と同じぐらいかそれ以上に傷付けたいのだということだった。
「一哉くんと寝たんでしょ?もういいですよね?成就して満足したでしょう?だったら、もういらないでしょ?私に一哉くんを下さい。初恋の人なの。私も結ばれたっていいですよね?」
完全に支離滅裂だった。
彼女は、もう狂気を隠し切れなくなったのだろう。
先程までお人形さんのように整っていた顔が、劣等感に歪んでいた。
「ごめんなさい…それは出来ないわ。一哉とは…もう離れられないの。」
私は美乃さんの瞳を見つめて答えた。
私の言葉を聞いて彼女の顔は一瞬強張った。
やがて感情が分からない笑顔で、私ににじり寄りゆっくりと細い指を首に近付けてきた。
(…何?)
焦点の合わない虚ろな彼女の瞳に恐ろしさを感じて、私は急いで後ずさって声を出そうとした。
が、直ぐに彼女の指は私の首に絡まり、押し倒された私の身体は恐怖で動かなくなった。
「助…けて…」
大きな声を出そうと、必死にもがいたしたけど出せなかった。
やっと出たささやかな助けを呼ぶ声は、体育館に満ちる喧騒にかき消けされてしまった。
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