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本編
みっともない恋
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彼に別れを告げてから1週間……
別れたことは高峰先輩には報告済みなのに、何故か今日は定期ランチミーティングに連れてこられた。
本日はベトナム料理。
(最近、忙しかったし単なる気晴らしかなぁ…?)
ちなみに昨日、取引先で行われたプレゼンも手応えを感じられる形で終わり、明日結果が出ることになっている。
(もしかして…プレゼン頑張ったご褒美?)
いつもは厳しい先輩が珍しく誉めてくれたことを思えば、そうなのかも知れない。
ベトナムの屋台街をイメージした店内は、そこはかとなくちょっと電飾が怪しめではあるが、私も先輩もここのベトナム料理が大好きで、ほぼ常連の状態になっている。
特にチリソースが苦手な私は、クルミ味噌をつけて食べるここの生春巻きが大好きだ。
いつものマストメニューである、生春巻きとナシゴレン、先輩はパクチー抜きのフォーガと青パパイヤのサラダを頼み、水を飲み一息ついた。
「で、お前はなんで最近、落ち込んでるんだ?プレゼンも上手く言ったし、もっと意気揚々としてても良いハズだろう?」
注文したものが揃って、さて食べようとした時に先輩は意地悪にも“なんで今!?”という質問してきた。
さっきまでは、まともな仕事の話をしていたのに…。
はぁ…プレゼンのご褒美だと思ったのに、やっぱり違うらしい…。
私は先輩の視線から逃げるように俯いた。
「分かり…ません…。」
「その答えは違うな。“分かりたくないです…。”が正解なんじゃないのか?」
「うっ…」
先輩の言葉に返す言葉が見つからず、私はテーブルに突っ伏して撃沈した。
「図星か…。頭良いクセにどうして恋愛に対してはブリキみたいに頑なになっちまうのかね…お前は…。自分に素直になっちまえば一発で解決するって俺は言ったと思うんだが?」
「それが出来ないから別れたんじゃないですか…。」
「なぁ…お前は何をそんなに怖がってんだ?恋愛にトラウマでもあんのか?」
「まぁ…大したことじゃありません。…なんていうか…気持ちの大きさって、言葉で語られない限りは分からないじゃないですか?…それが…相手の気持ちが分からないまま…自分の気持ちが強くなってしまうのが…怖いんです…。」
先輩はソムタムを頬張り咀嚼しながら、私をジーっと見ていた。
「そういうもんだろう、恋愛なんざ。お互いの気持ちの大きさが違って当たり前だしなぁ。昨日より今日、今日より明日、相手の気持ちがどうあろうと大きくも小さくも気持ちが変化していくのが普通だ。それを悩んだところで無駄ってもんだ。」
「…達観してますね、先輩。」
「まぁな、亀の甲より年の功、人生経験の賜物だ。」
先輩は、私より3歳年上だ。
3歳の差にどんな人生経験の差があるのだろうか…。
多分、年上だからではなく…先輩はそれだけ多くの経験をしてきたからなんだろう。
経験の浅い私には先輩の言うことは、未知でしかない。
「…私には先輩みたいに考えるのは無理です。だから、気持ちが大きくならないうちに離れたんです。年下の彼にとって私は…ただの“お試し”の相手でしかないのに、心が動いてしまうことが嫌だったから…。」
「それがそもそもの間違いだ、藍原。人間の気持ち、特に恋心ってヤツは厄介なことに、一度自覚しちまうと自分ではなかなか制御できるもんじゃねぇ。」
「…」
「藍原、お前はとっくに自覚しちまったんだ。その辺は諦めな。後はのたまう覚悟を決めて、みっともなくとも相手と恋愛と向き合え。」
「…私から別れを切り出したのに、どう向き合えと…」
「間違ったって自覚があるなら、ダメ元で相手に謝ればいい。許してもらえるかどうかなんて分からないが、無くしたくない想いなら、みっともなくとも誠実な気持ちをぶつけるべきだと俺は思うぜ?第一、恋愛は大抵は皆、必死でみっともないもんだ。」
そう言って笑う先輩の言葉を聞きながら、ナシゴレンの玉子を崩して混ぜて頬張った。
混ぜ方が甘かったのか?
頬張ったそれは何時になく辛くて、その辛さはいつまでも私の口の中に留まったままだった。
別れたことは高峰先輩には報告済みなのに、何故か今日は定期ランチミーティングに連れてこられた。
本日はベトナム料理。
(最近、忙しかったし単なる気晴らしかなぁ…?)
ちなみに昨日、取引先で行われたプレゼンも手応えを感じられる形で終わり、明日結果が出ることになっている。
(もしかして…プレゼン頑張ったご褒美?)
いつもは厳しい先輩が珍しく誉めてくれたことを思えば、そうなのかも知れない。
ベトナムの屋台街をイメージした店内は、そこはかとなくちょっと電飾が怪しめではあるが、私も先輩もここのベトナム料理が大好きで、ほぼ常連の状態になっている。
特にチリソースが苦手な私は、クルミ味噌をつけて食べるここの生春巻きが大好きだ。
いつものマストメニューである、生春巻きとナシゴレン、先輩はパクチー抜きのフォーガと青パパイヤのサラダを頼み、水を飲み一息ついた。
「で、お前はなんで最近、落ち込んでるんだ?プレゼンも上手く言ったし、もっと意気揚々としてても良いハズだろう?」
注文したものが揃って、さて食べようとした時に先輩は意地悪にも“なんで今!?”という質問してきた。
さっきまでは、まともな仕事の話をしていたのに…。
はぁ…プレゼンのご褒美だと思ったのに、やっぱり違うらしい…。
私は先輩の視線から逃げるように俯いた。
「分かり…ません…。」
「その答えは違うな。“分かりたくないです…。”が正解なんじゃないのか?」
「うっ…」
先輩の言葉に返す言葉が見つからず、私はテーブルに突っ伏して撃沈した。
「図星か…。頭良いクセにどうして恋愛に対してはブリキみたいに頑なになっちまうのかね…お前は…。自分に素直になっちまえば一発で解決するって俺は言ったと思うんだが?」
「それが出来ないから別れたんじゃないですか…。」
「なぁ…お前は何をそんなに怖がってんだ?恋愛にトラウマでもあんのか?」
「まぁ…大したことじゃありません。…なんていうか…気持ちの大きさって、言葉で語られない限りは分からないじゃないですか?…それが…相手の気持ちが分からないまま…自分の気持ちが強くなってしまうのが…怖いんです…。」
先輩はソムタムを頬張り咀嚼しながら、私をジーっと見ていた。
「そういうもんだろう、恋愛なんざ。お互いの気持ちの大きさが違って当たり前だしなぁ。昨日より今日、今日より明日、相手の気持ちがどうあろうと大きくも小さくも気持ちが変化していくのが普通だ。それを悩んだところで無駄ってもんだ。」
「…達観してますね、先輩。」
「まぁな、亀の甲より年の功、人生経験の賜物だ。」
先輩は、私より3歳年上だ。
3歳の差にどんな人生経験の差があるのだろうか…。
多分、年上だからではなく…先輩はそれだけ多くの経験をしてきたからなんだろう。
経験の浅い私には先輩の言うことは、未知でしかない。
「…私には先輩みたいに考えるのは無理です。だから、気持ちが大きくならないうちに離れたんです。年下の彼にとって私は…ただの“お試し”の相手でしかないのに、心が動いてしまうことが嫌だったから…。」
「それがそもそもの間違いだ、藍原。人間の気持ち、特に恋心ってヤツは厄介なことに、一度自覚しちまうと自分ではなかなか制御できるもんじゃねぇ。」
「…」
「藍原、お前はとっくに自覚しちまったんだ。その辺は諦めな。後はのたまう覚悟を決めて、みっともなくとも相手と恋愛と向き合え。」
「…私から別れを切り出したのに、どう向き合えと…」
「間違ったって自覚があるなら、ダメ元で相手に謝ればいい。許してもらえるかどうかなんて分からないが、無くしたくない想いなら、みっともなくとも誠実な気持ちをぶつけるべきだと俺は思うぜ?第一、恋愛は大抵は皆、必死でみっともないもんだ。」
そう言って笑う先輩の言葉を聞きながら、ナシゴレンの玉子を崩して混ぜて頬張った。
混ぜ方が甘かったのか?
頬張ったそれは何時になく辛くて、その辛さはいつまでも私の口の中に留まったままだった。
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