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本編
みっともない恋 side 幸太 2
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勢いよく走り出したものの、健康体ではない今の俺には駅ビルまでの距離は遠く、カフェに着く頃には、俺はもう酸欠と貧血で倒れそうになっていた。
(ダメだ…しっかりしろよ俺!つぐみに絶対に会うんだ!)
そんな思いだけが、俺を支えていた。
少し息を整えてからカフェに入ると、カウンターにいる熊が、目線で俺に彼女の居場所を告げた。
物憂げにクリスマスツリーを眺めている13日ぶりに見る彼女の姿に、俺は歓喜と自分の犯した過ちのせいで会えなくなってしまっていた後悔で泣きそうになった。
(やっと…やっと…つぐみに…会えた…。)
クリスマスツリーに飾られたクリスタルのオーナメントから放たれる虹色の光が点滅によって灯るたび、夢を見ているようにさえ思えた。
フラフラとまるで温かな灯火に引き寄せられるように、彼女に近づいていく。
仕事が忙しいせいなのか?
新しい恋人がいて幸せな筈の彼女の表情は暗く、少し窶れた様に見えた。
そんな彼女の様子を見て、俺は心配で思わずの名前を呼んでいた。
「つぐみ…」
俺がいることに気が付いた彼女は、目を瞠って唖然と俺を見ていた。
「会いたかった…」と伝えると、悲しそうに顔を歪め彼女はいきなり立ち上がり、カフェを出ようとした。
が、俺はそれを阻み、彼女の細い手をそっと握った。
久しぶりに、この手に感じる彼女の体温が愛しい。
だけど彼女は、俺の手から逃れようと自分の手を引き寄せ振りほどこうとした。
明らかな拒絶…。
俺は胸に突き刺さる痛みに耐えながら、彼女の手を捕まえたまま、二人で話をしたいと告げた。
彼女は最初は拒んだものの、最後は無言で了承してくれた。
やっとの思いで再会した彼女と手を繋いだまま歩き出せば、彼女は戸惑いとてもよそよそしくて、少し怯えている様だった。
…無理もない。
本来なら俺はカフェにいる筈がなかったのだ。
連絡を断ち、もう会う筈もない男が目の前に立っていれば、当然の反応だと思う。
フッた男に付き纏われること程、煩わしい事はないだろう。
不安げに行き先を訊ねる彼女に、自宅で話したいと
言った時、彼女はビクッと身体を震わせた。
彼女に俺が危害を及ぼすかも知れないと疑われたのだ。
誰よりも大切な彼女に、俺がそんなことをする筈もない。
ショックだった。
だけど、今の俺たちの関係性を思えば、二人っきりになることを警戒されても仕方ない。
「…つぐみを傷付けるような事は、絶対しないから安心して?」
そう彼女に告げると、彼女は申し訳なさそうに頷いた。
(ゴメンな…つぐみ…あと少しだけ、俺と居ることを我慢してくれ…。)
ちゃんとつぐみを俺から解放する為に、俺は自分の気持ちに決着をつけなければならない。
彼女に好きな相手が出来たのなら…尚更…
それが俺が初恋の彼女に出来る、唯一で最後のことだから…。
俺は部屋に着くと、冷えきった部屋にエアコンのスイッチを入れて、彼女をいつもの場所に座らせ、キッチンでつぐみに飲んで貰う最後のカフェラテを淹れた。
彼女に恋を意識した時から、いつか気持ちが届く様にと心を込めて淹れ続けたハートのラテアートを施したカフェラテ…。
自宅にはポット型の簡易のエスプレッソマシーンしかないし、カフェほど上等なカフェラテはここでは淹れられない。
それでも、彼女への思いを込めて丁寧に淹れた。
(これで…最後…)
引き吊るような胸の痛みに堪えて、泣きそうになるのを必死に我慢し、カフェラテの入ったマグカップを持ち、彼女が待つ部屋へと向かった。
(ダメだ…しっかりしろよ俺!つぐみに絶対に会うんだ!)
そんな思いだけが、俺を支えていた。
少し息を整えてからカフェに入ると、カウンターにいる熊が、目線で俺に彼女の居場所を告げた。
物憂げにクリスマスツリーを眺めている13日ぶりに見る彼女の姿に、俺は歓喜と自分の犯した過ちのせいで会えなくなってしまっていた後悔で泣きそうになった。
(やっと…やっと…つぐみに…会えた…。)
クリスマスツリーに飾られたクリスタルのオーナメントから放たれる虹色の光が点滅によって灯るたび、夢を見ているようにさえ思えた。
フラフラとまるで温かな灯火に引き寄せられるように、彼女に近づいていく。
仕事が忙しいせいなのか?
新しい恋人がいて幸せな筈の彼女の表情は暗く、少し窶れた様に見えた。
そんな彼女の様子を見て、俺は心配で思わずの名前を呼んでいた。
「つぐみ…」
俺がいることに気が付いた彼女は、目を瞠って唖然と俺を見ていた。
「会いたかった…」と伝えると、悲しそうに顔を歪め彼女はいきなり立ち上がり、カフェを出ようとした。
が、俺はそれを阻み、彼女の細い手をそっと握った。
久しぶりに、この手に感じる彼女の体温が愛しい。
だけど彼女は、俺の手から逃れようと自分の手を引き寄せ振りほどこうとした。
明らかな拒絶…。
俺は胸に突き刺さる痛みに耐えながら、彼女の手を捕まえたまま、二人で話をしたいと告げた。
彼女は最初は拒んだものの、最後は無言で了承してくれた。
やっとの思いで再会した彼女と手を繋いだまま歩き出せば、彼女は戸惑いとてもよそよそしくて、少し怯えている様だった。
…無理もない。
本来なら俺はカフェにいる筈がなかったのだ。
連絡を断ち、もう会う筈もない男が目の前に立っていれば、当然の反応だと思う。
フッた男に付き纏われること程、煩わしい事はないだろう。
不安げに行き先を訊ねる彼女に、自宅で話したいと
言った時、彼女はビクッと身体を震わせた。
彼女に俺が危害を及ぼすかも知れないと疑われたのだ。
誰よりも大切な彼女に、俺がそんなことをする筈もない。
ショックだった。
だけど、今の俺たちの関係性を思えば、二人っきりになることを警戒されても仕方ない。
「…つぐみを傷付けるような事は、絶対しないから安心して?」
そう彼女に告げると、彼女は申し訳なさそうに頷いた。
(ゴメンな…つぐみ…あと少しだけ、俺と居ることを我慢してくれ…。)
ちゃんとつぐみを俺から解放する為に、俺は自分の気持ちに決着をつけなければならない。
彼女に好きな相手が出来たのなら…尚更…
それが俺が初恋の彼女に出来る、唯一で最後のことだから…。
俺は部屋に着くと、冷えきった部屋にエアコンのスイッチを入れて、彼女をいつもの場所に座らせ、キッチンでつぐみに飲んで貰う最後のカフェラテを淹れた。
彼女に恋を意識した時から、いつか気持ちが届く様にと心を込めて淹れ続けたハートのラテアートを施したカフェラテ…。
自宅にはポット型の簡易のエスプレッソマシーンしかないし、カフェほど上等なカフェラテはここでは淹れられない。
それでも、彼女への思いを込めて丁寧に淹れた。
(これで…最後…)
引き吊るような胸の痛みに堪えて、泣きそうになるのを必死に我慢し、カフェラテの入ったマグカップを持ち、彼女が待つ部屋へと向かった。
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