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本編
みっともない恋 side 幸太
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読んだ様子も、返事も無いSNS。
繋がらないまま彼女を呼び続けて、コール音がエンドレスに鳴る電話…。
あれから…俺は彼女と連絡を取ろうと必死だった。
せめて、俺の本当の気持ちを伝えたい!
許されるならば…“お試し”なんかじゃなく、ちゃんと付き合いたい!
そんな思いだった。
3日目、俺は彼女に電話をすることをやめた。
少し冷静になり、彼女が重要なプレゼンを控えていることに気が付いたからだ。
直接、自宅か会社に会いに行こうかとも思ったけど、重要なプレゼンが終わるまで彼女を煩わせることを避けたかった。
これ以上嫌われたくないという気持ちもあったから、せめてプレゼンが終わるまでは待とうと、俺は決めた。
6日目、大学で必要な資料集めの為に、都内の専門書籍を扱う書店へ出掛けた。
明日で彼女と別れて1週間…。
平日の昼下がり、都会の雑踏を眺めながら信号待ちしている間、向かい側で信号待ちをしているスーツ姿の女性を見て、ふと俺は彼女のことを思い出していた。
(今日がプレゼンだって、言ってたっけ…。)
明後日、電話をしてみようか…そんなことを考えていた時だった。
彼女が背の高いスーツ姿の男と道路の向かい側を歩いていた。
胸元に茶色の書類袋を抱え、男と何か話ながら歩いているので、彼女は俺に気付かない。
彼女の名前を叫ぼうとした時、ふと…男と目があった。
一瞬、驚いた様な顔をしたあと、俺に含み笑いをしながら彼女の頭に触れた。
俺が訝しげに睨みつけると、男は見せつける様に彼女の肩を抱いた。
(あの男…俺とつぐみのことを知ってるのか!?)
彼女に何か抗議されているようだが、男は微笑みながら彼女の耳元に唇を寄せて何か話している。
今すぐにでも走って、彼女とあの男を引き剥がしたいのに、信号は一向に変わらず、信号を無視したくとも連なる車の往来がそれをさせてくれない。
信号が変わって直ぐに、俺は苛立ちに任せて走り出した。
が、時既に遅く彼女と男の姿は雑踏の中に消えていた。
(あの男はいったい誰なんだ…)
仕立ての良いスーツを颯爽と着こなして歩く、華やかな顔立ちの大人の男…。
見たところつぐみと親しげだった…。
それに…俺を挑発するような余裕ある含み笑い…。
彼は…つぐみの…
何度も頭を振って否定しても、受け入れ難い答えばかりが脳裏を過る。
そもそも、つぐみは魅力的な女性だ。
仕事モードが入っているときは、近寄りがたいキャリアウーマンだが、仕事から一歩離れれば、大きな瞳が可愛らしい女…。
カフェで彼女に熱い視線を送る男の数も、少なくはなかった。
年下でまだ大学生の俺が“お試し”でも付き合えたことは、本当に奇跡だったかも知れない。
そうだ…俺以外の他の男が彼女を見初めない訳がない…。
それなのに俺は…。
昔から人は、恋を“病”と表する。
“病”…確かにそうだと思う。
7日目、俺はあまり眠れなくなった。
食も細くなり、気が付けば1日何も口に入れることもなく過ごしていたこともあった。
そんな俺の異変に気が付いたのは、カフェのアルバイト仲間の熊だった。
最初は熊の心配を「なんでもない」と突っぱねたが
、ある日とうとう貧血で俺はカフェのアルバイト中に倒れた。
気が付けば駅ビルの医務室に寝かされており、バイトを終えた熊が俺を送って行くと申し出てくれた。
彼女と別れてから11日目のその日、俺は初めて熊に今までのことを話した。
恋愛初心者の俺には、もう独りで抱えて悩み続けることが限界だった。
恥も外聞もない。
お前は馬鹿だと言われても仕方ない。
でも、熊は黙って俺の話を聞いたあと、深い溜め息を吐いて、『どんなに辛くてもちゃんとケジメをつけろ。』と言った。
『お前が一人で恋愛していたツケだ。藍原さんに気持ちを伝えて、キチンとその辺も謝れ。お前を許すかどうかは藍原さん次第だ。それでもいい、拒絶されてもいいという覚悟があるなら、藍原さんに会えるように協力してやる。』
“拒絶”…その言葉は俺に言い知れぬ胸の痛みを与えた。
熊の言葉から、つぐみに俺が会うということは相当に難しく、会えたとしてもつぐみが俺を拒む可能性が大きいことを思い知らされた。
彼女が望むなら今度会えるのが最後でいい…。
抉られるような痛みに耐えてでも…つぐみに会いたい…。
俺は…熊に協力して貰うことにした。
そして…13日目の今日、熊からの連絡が来た…。
『藍原さんがカフェに来ている。』
体調不良を理由に、家庭教師のアルバイトを休んでいた俺は、ベッドから飛び起きて貧血でフラフラな身体に鞭を打って、無我夢中でカフェへ走った。
繋がらないまま彼女を呼び続けて、コール音がエンドレスに鳴る電話…。
あれから…俺は彼女と連絡を取ろうと必死だった。
せめて、俺の本当の気持ちを伝えたい!
許されるならば…“お試し”なんかじゃなく、ちゃんと付き合いたい!
そんな思いだった。
3日目、俺は彼女に電話をすることをやめた。
少し冷静になり、彼女が重要なプレゼンを控えていることに気が付いたからだ。
直接、自宅か会社に会いに行こうかとも思ったけど、重要なプレゼンが終わるまで彼女を煩わせることを避けたかった。
これ以上嫌われたくないという気持ちもあったから、せめてプレゼンが終わるまでは待とうと、俺は決めた。
6日目、大学で必要な資料集めの為に、都内の専門書籍を扱う書店へ出掛けた。
明日で彼女と別れて1週間…。
平日の昼下がり、都会の雑踏を眺めながら信号待ちしている間、向かい側で信号待ちをしているスーツ姿の女性を見て、ふと俺は彼女のことを思い出していた。
(今日がプレゼンだって、言ってたっけ…。)
明後日、電話をしてみようか…そんなことを考えていた時だった。
彼女が背の高いスーツ姿の男と道路の向かい側を歩いていた。
胸元に茶色の書類袋を抱え、男と何か話ながら歩いているので、彼女は俺に気付かない。
彼女の名前を叫ぼうとした時、ふと…男と目があった。
一瞬、驚いた様な顔をしたあと、俺に含み笑いをしながら彼女の頭に触れた。
俺が訝しげに睨みつけると、男は見せつける様に彼女の肩を抱いた。
(あの男…俺とつぐみのことを知ってるのか!?)
彼女に何か抗議されているようだが、男は微笑みながら彼女の耳元に唇を寄せて何か話している。
今すぐにでも走って、彼女とあの男を引き剥がしたいのに、信号は一向に変わらず、信号を無視したくとも連なる車の往来がそれをさせてくれない。
信号が変わって直ぐに、俺は苛立ちに任せて走り出した。
が、時既に遅く彼女と男の姿は雑踏の中に消えていた。
(あの男はいったい誰なんだ…)
仕立ての良いスーツを颯爽と着こなして歩く、華やかな顔立ちの大人の男…。
見たところつぐみと親しげだった…。
それに…俺を挑発するような余裕ある含み笑い…。
彼は…つぐみの…
何度も頭を振って否定しても、受け入れ難い答えばかりが脳裏を過る。
そもそも、つぐみは魅力的な女性だ。
仕事モードが入っているときは、近寄りがたいキャリアウーマンだが、仕事から一歩離れれば、大きな瞳が可愛らしい女…。
カフェで彼女に熱い視線を送る男の数も、少なくはなかった。
年下でまだ大学生の俺が“お試し”でも付き合えたことは、本当に奇跡だったかも知れない。
そうだ…俺以外の他の男が彼女を見初めない訳がない…。
それなのに俺は…。
昔から人は、恋を“病”と表する。
“病”…確かにそうだと思う。
7日目、俺はあまり眠れなくなった。
食も細くなり、気が付けば1日何も口に入れることもなく過ごしていたこともあった。
そんな俺の異変に気が付いたのは、カフェのアルバイト仲間の熊だった。
最初は熊の心配を「なんでもない」と突っぱねたが
、ある日とうとう貧血で俺はカフェのアルバイト中に倒れた。
気が付けば駅ビルの医務室に寝かされており、バイトを終えた熊が俺を送って行くと申し出てくれた。
彼女と別れてから11日目のその日、俺は初めて熊に今までのことを話した。
恋愛初心者の俺には、もう独りで抱えて悩み続けることが限界だった。
恥も外聞もない。
お前は馬鹿だと言われても仕方ない。
でも、熊は黙って俺の話を聞いたあと、深い溜め息を吐いて、『どんなに辛くてもちゃんとケジメをつけろ。』と言った。
『お前が一人で恋愛していたツケだ。藍原さんに気持ちを伝えて、キチンとその辺も謝れ。お前を許すかどうかは藍原さん次第だ。それでもいい、拒絶されてもいいという覚悟があるなら、藍原さんに会えるように協力してやる。』
“拒絶”…その言葉は俺に言い知れぬ胸の痛みを与えた。
熊の言葉から、つぐみに俺が会うということは相当に難しく、会えたとしてもつぐみが俺を拒む可能性が大きいことを思い知らされた。
彼女が望むなら今度会えるのが最後でいい…。
抉られるような痛みに耐えてでも…つぐみに会いたい…。
俺は…熊に協力して貰うことにした。
そして…13日目の今日、熊からの連絡が来た…。
『藍原さんがカフェに来ている。』
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