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本編:体型正反対夫婦あるある
5 鶏ガラは小洒落たい
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ファッションモデルの痩せ過ぎが話題(問題?)になったのは記憶に新しい。
ショーの舞台に立つプロフェッショナルは見事に服飾を着こなし、堂々とランウェイを歩く。美しく、かっこいい。その華やかさに魅了されるのは当然だと思う。憧れから行き過ぎたダイエットをしてしまう気持ちが分からなくもない。それと同時に、警鐘が鳴らされたのもよく分かる。モデルはあくまで職業であり、見せると魅せるを意識し、トレーニングを積んだプロフェッショナルだ。いくら痩せても同じようにならないのは当然である。
街のオシャレさんたちはこぞって「服はサイズ感。ジャストサイズを選ぶことが絶対条件!」と言うではないか。素敵に華麗に輝くには己を服に合わせるのではなく、服を合わせろと。
目から鱗である。どすこいに勇気と希望を与える名言だ。
実際にジャストサイズの服を見つけたわけでもないのに、ありがたやありがたやと両手を擦り合わせてしまう。その横で、鶏ガラ君はスンッと真顔になっている。
デブよりヤセの方が、ジャストサイズを見つけるのが難しいからだ。
「大きい服の店」はちょくちょく見かけるが、「小さい服の店」との遭遇率は低い。ヤセよりデブの方が優遇されているという鶏ガラ君の主張も頷ける。
それに、「細身」とは「小さい」のではない。ただ小さい服を選んでしまうと圧倒的に長さが足らないのである。
夏服ならまだしも、冬服を探そうともなると難易度は劇的に難しくなる。
鶏ガラ君はSサイズもしくはMサイズを着用している。しかし、裄丈と股下それぞれ90㎝を必要とする。Mサイズの平均値を紳士服専門店で伺ってみたところ、裄丈は82㎝、股下は75㎝前後であると教えられた。
鶏ガラ君が真冬でも九分丈でやせ我慢をしている謎が解けた。
ちなみに、必要な長さで選ぶと3Lか4Lが該当するのだとか。言わずもがな、そのサイズのズボンはベルトで締めようにも限界を超えてしまう。シャツで言えば、肩幅が大きくなるので、必然的に肩の部分が落ちる。それを考慮するとLLで良い説が浮上するが、あくまで「長さ」だけに限定した話だ。
サイズの大きさに比例して、首回りや胴回りも大きくなる。良く言って90年代のヒップホップ系か、胸元からおっぱいが見えそうなセクシー系の着こなしだ。実際は、どこまでもだらしのないおっさんの一丁出来上がりでしかない。
チラリズムでセクシーさがあればよいのだが、見えたところで鶏ガラである。どすこいのパンツと同様、「見てしまっただろゴラァ」と慰謝料を請求されかねないではないか。おー怖っ。
そんなワケで、既製品でジャストサイズを見つけるのは至難の業だ。
昨今、一介の会社員でも手の届くお値段で様々なサービスが展開されている。スーツやワイシャツのオーダーメイドもその一つだ。型と生地を選び、採寸したサイズで仕上げてくれるセミオーダーのサービスには大変お世話になっている。
お陰様で、同僚や取引先に「鶏ガラさん、足りてないっすね。栄養と丈」と、哀れみ缶コーヒーを渡されずに済んでいる。
問題は私服選びだ。一人で買い物に行かせれば、また小さいサイズで越冬することになるだろう。いつしか一緒に買い物へ行く機会も増えた。増えたはいいが、サイズ問題が邪魔をして、鶏ガラ君の冬服に買い替えの必要が出ると家族全員の気が重くなる。
「もういっそ休日もスーツでいいじゃん」
ワーカホリックな鶏ガラ君は、私服を着る機会が少ない。家計の都合により使用頻度の低いものに気張った出費は避けたい。その上、あわよくば飽きのこないデザインで末長く使って欲しいなどと考える。
「スーツが早く痛む」
一理ある。子どもが小さいので、ふとした瞬間に汚してしまう可能性が高い。それと、子どもにとってカッコイイ父親でありたいという鶏ガラ君の矜持と、いつまでも手を繋いで歩いて欲しいという願いも込められている。やはり私服は私服で必要だ。
案の定とでも言うべきか、買い物に疲れてくると「もうなんでもいいや」という気分になってくる。先に音を上げた子どもは父親の手を離して、遊び始めてしまう。
この際、耐久性と丈の長さは度外視して、ファストファッションブランドで賄ってしまおうぜという流れになるのはいつものことだ。
「知ってた? 世の中にはアームカバーだとかレッグウォーマーという素敵防寒具があるのだよ」
「上半身は公務員さんで下半身はキャッツアイになれということか? アームはまだしも、下はちょっとなぁ」
細身にもピッタリするだろうスポーツタイプを考えていたのだが、彼はいわゆる腕ぬきとルーズソックスのようなものを思い浮かべたらしい。今時腕抜きを使用している公務員も珍しいだろうし、流石の私もレオタードまでは勧めない。なかなかの想像力だと感心しつつ、久々に聞いたキャッツアイという単語に思考は掠め取られてしまった。
「公務員な泪ねえさん……溜まらんな」
「俺はメカニックスキルの高い愛ちゃんを推したい」
二次元の来生三姉妹に想いを馳せ、現実逃避が始まったので、お茶休憩で一息入れる。
「冗談抜きで小物で誤魔化すしかないって」
我ながらナイスアイディアだと自慢げに宣言して、ダボついた服を買いに戻る。ついでに手袋と、ハイカットデザインの靴も入手した。
隠せるところを隠せば防寒対策になるだろう。素敵なパパもダンディズムも、一先ずお預けだ。おしゃれを意識して風邪でもひいては元も子もない。
鶏ガラとどすこいは他に気を配ることがあるだろう! と笑われるかもしれないが、予防と対策は大切だ。
最優先すべきはオシャレなジャストサイズではなく健康なのだから。
健 康 第 一 !
ショーの舞台に立つプロフェッショナルは見事に服飾を着こなし、堂々とランウェイを歩く。美しく、かっこいい。その華やかさに魅了されるのは当然だと思う。憧れから行き過ぎたダイエットをしてしまう気持ちが分からなくもない。それと同時に、警鐘が鳴らされたのもよく分かる。モデルはあくまで職業であり、見せると魅せるを意識し、トレーニングを積んだプロフェッショナルだ。いくら痩せても同じようにならないのは当然である。
街のオシャレさんたちはこぞって「服はサイズ感。ジャストサイズを選ぶことが絶対条件!」と言うではないか。素敵に華麗に輝くには己を服に合わせるのではなく、服を合わせろと。
目から鱗である。どすこいに勇気と希望を与える名言だ。
実際にジャストサイズの服を見つけたわけでもないのに、ありがたやありがたやと両手を擦り合わせてしまう。その横で、鶏ガラ君はスンッと真顔になっている。
デブよりヤセの方が、ジャストサイズを見つけるのが難しいからだ。
「大きい服の店」はちょくちょく見かけるが、「小さい服の店」との遭遇率は低い。ヤセよりデブの方が優遇されているという鶏ガラ君の主張も頷ける。
それに、「細身」とは「小さい」のではない。ただ小さい服を選んでしまうと圧倒的に長さが足らないのである。
夏服ならまだしも、冬服を探そうともなると難易度は劇的に難しくなる。
鶏ガラ君はSサイズもしくはMサイズを着用している。しかし、裄丈と股下それぞれ90㎝を必要とする。Mサイズの平均値を紳士服専門店で伺ってみたところ、裄丈は82㎝、股下は75㎝前後であると教えられた。
鶏ガラ君が真冬でも九分丈でやせ我慢をしている謎が解けた。
ちなみに、必要な長さで選ぶと3Lか4Lが該当するのだとか。言わずもがな、そのサイズのズボンはベルトで締めようにも限界を超えてしまう。シャツで言えば、肩幅が大きくなるので、必然的に肩の部分が落ちる。それを考慮するとLLで良い説が浮上するが、あくまで「長さ」だけに限定した話だ。
サイズの大きさに比例して、首回りや胴回りも大きくなる。良く言って90年代のヒップホップ系か、胸元からおっぱいが見えそうなセクシー系の着こなしだ。実際は、どこまでもだらしのないおっさんの一丁出来上がりでしかない。
チラリズムでセクシーさがあればよいのだが、見えたところで鶏ガラである。どすこいのパンツと同様、「見てしまっただろゴラァ」と慰謝料を請求されかねないではないか。おー怖っ。
そんなワケで、既製品でジャストサイズを見つけるのは至難の業だ。
昨今、一介の会社員でも手の届くお値段で様々なサービスが展開されている。スーツやワイシャツのオーダーメイドもその一つだ。型と生地を選び、採寸したサイズで仕上げてくれるセミオーダーのサービスには大変お世話になっている。
お陰様で、同僚や取引先に「鶏ガラさん、足りてないっすね。栄養と丈」と、哀れみ缶コーヒーを渡されずに済んでいる。
問題は私服選びだ。一人で買い物に行かせれば、また小さいサイズで越冬することになるだろう。いつしか一緒に買い物へ行く機会も増えた。増えたはいいが、サイズ問題が邪魔をして、鶏ガラ君の冬服に買い替えの必要が出ると家族全員の気が重くなる。
「もういっそ休日もスーツでいいじゃん」
ワーカホリックな鶏ガラ君は、私服を着る機会が少ない。家計の都合により使用頻度の低いものに気張った出費は避けたい。その上、あわよくば飽きのこないデザインで末長く使って欲しいなどと考える。
「スーツが早く痛む」
一理ある。子どもが小さいので、ふとした瞬間に汚してしまう可能性が高い。それと、子どもにとってカッコイイ父親でありたいという鶏ガラ君の矜持と、いつまでも手を繋いで歩いて欲しいという願いも込められている。やはり私服は私服で必要だ。
案の定とでも言うべきか、買い物に疲れてくると「もうなんでもいいや」という気分になってくる。先に音を上げた子どもは父親の手を離して、遊び始めてしまう。
この際、耐久性と丈の長さは度外視して、ファストファッションブランドで賄ってしまおうぜという流れになるのはいつものことだ。
「知ってた? 世の中にはアームカバーだとかレッグウォーマーという素敵防寒具があるのだよ」
「上半身は公務員さんで下半身はキャッツアイになれということか? アームはまだしも、下はちょっとなぁ」
細身にもピッタリするだろうスポーツタイプを考えていたのだが、彼はいわゆる腕ぬきとルーズソックスのようなものを思い浮かべたらしい。今時腕抜きを使用している公務員も珍しいだろうし、流石の私もレオタードまでは勧めない。なかなかの想像力だと感心しつつ、久々に聞いたキャッツアイという単語に思考は掠め取られてしまった。
「公務員な泪ねえさん……溜まらんな」
「俺はメカニックスキルの高い愛ちゃんを推したい」
二次元の来生三姉妹に想いを馳せ、現実逃避が始まったので、お茶休憩で一息入れる。
「冗談抜きで小物で誤魔化すしかないって」
我ながらナイスアイディアだと自慢げに宣言して、ダボついた服を買いに戻る。ついでに手袋と、ハイカットデザインの靴も入手した。
隠せるところを隠せば防寒対策になるだろう。素敵なパパもダンディズムも、一先ずお預けだ。おしゃれを意識して風邪でもひいては元も子もない。
鶏ガラとどすこいは他に気を配ることがあるだろう! と笑われるかもしれないが、予防と対策は大切だ。
最優先すべきはオシャレなジャストサイズではなく健康なのだから。
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