紫の百合 〜乙女ゲームの世界に転生して、前世で好きだった人と再び出会いました〜

冬野月子

文字の大きさ
29 / 33
第4章 白の聖女

放たれた黒い炎をルカは杖で弾き返した。

「あいつの攻撃は僕とロイドで何とかする。フレッドはただ心臓を狙え」
「防御の術は幾つかかけたが相手の力量が不明だ。即死はするなよ」
「———ああ」
ロイドとルカの言葉に応えると、フレデリックは聖剣を抜き、マリアを振り返った。

「マリア、君の力を」

『聖なる光よ、闇を照らし魔を浄め給え!』

マリアの言葉に反応するように剣から強く白い光が放たれた。





「始まったな」

宮殿の図書室で本を選んでいたリリーは、フランツの声に顔を上げた。

「え?」
「魔王に接触した」
「…分かるの?」
「ルカに持たせた杖に私の魔力を込めておいた。強力な邪気に触れたのを感じる」

「…大丈夫…よね…?」
「マリアは〝ゲーム〟の経験者だし、魔王の倒し方も分かっている。そう心配しなくとも良い」

「———どうか無事で……」

リリーはぎゅっと自分の手を握りしめた。





先よりも大きな黒い炎が放たれた。

すかさずルカが杖を振るうとさらに大きな炎が上がり、黒い炎を飲み込んだ。
重ねて炎を放つと塊となった火の玉が魔王へ襲いかかる。
だが魔王の目の前で何かに当たったように火の玉は消散した。

「結界か」
ロイドの杖が光を帯びた。
溢れ出した光が幾つもの玉となり、魔王へと向かって行く。
だが先程と同じ場所で光の玉は弾け飛んだ。
そこへルカが光の矢を打ち込むが、同じように弾き返されてしまった。


「そんな魔法では破れぬぞ」
魔王は嘲笑うと再び手を振り上げた。

「くそっ」
「あの結界が解ければ…」
黒い炎を防ぎながらルカが呻いた。

「私がっ!」
マリアが叫んだ。
『聖なる力よ!穢れし障壁を祓い給え!』

白い光が魔王の周囲を丸く覆うと、まるで氷のように破片となって剥がれ落ちていった。


ルカが杖を高く掲げた。
「雷撃!」
杖の頭に嵌め込まれた黒い石が輝くと、激しい光と共に稲妻が放たれた。

結界を失い雷の直撃を受けた魔王の身体がグラリと揺れる。

「今だ!」
隙を突いてフレデリックが魔王へと飛び込んだ。



聖剣が魔王の心臓を貫いた。

地響きのような咆哮と共に魔王の身体が白く光る。

光が消えるとやがて魔王は仰向けに倒れ落ちた。



「…これで終わったのか…?」

聖剣を引き抜くとフレデリックは倒れた魔王を見下ろした。
見開いたままの眼からは赤色が失せていた。

「…っ離れろフレッド!」
ルカの叫びにフレデリックが飛び退くと、人型に似た黒い影が倒れた男の身体からゆらり、と立ち昇った。

「これは!」
「あの時見た影か…!?」
「そんな…」


『…弱イ人間ノ身体ハ使エヌナ』

影の中から現れた、2つの赤い目が光った。

『ダガ人間ノ身体ナド使ワズトモ…アノチカラサエ手二入レレバ我ハ———』
宙に黒い魔方陣が浮かび上がった。




「っ!」

突然全身を駆け巡った寒気にリリーは息を飲んだ。

「なに……」
「リリー?」
異変に気付いたフランツがリリーの肩に触れると次の瞬間、リリーの足元に黒い魔方陣が現れた。

「リ…」
フランツがリリーを引き寄せようとしたが、そのまま二人は魔方陣に吸い込まれていった。
感想 4

あなたにおすすめの小説

令嬢失格 〜悪役令嬢に転生したので、速やかに婚約破棄されたいのですが~

松本雀
恋愛
婚約破棄。 正直に言おう。私は、それで構わなかった。 むしろ、ありがたいとすら思っていた。王太子の婚約者など、責任が重すぎる。前世で就職活動を二十回失敗した人間に、一国の王妃が務まるわけがない。聖女に押し付けてしまいたい。どうぞどうぞ。ダチョウ倶楽部のごとく譲り合いたい。 ◆ 目が覚めたら、乙女ゲームの悪役令嬢になっていた。 前世はカップ焼きそばを愛する二十七歳独身。今世は公爵令嬢エステルハージ・フォン・クロイツェナッハ。 名前からして強そうだが、中身はまったく変わっていない。ワルツは踊れない。カーテシーで人に突っ込む。マカロンは一口で頬張る。侍女のマリアンヌは一日三回膝から崩れ落ちる。 原作通りに婚約破棄されて、田舎でのんびり隠居生活を送ろうと思っていたのに、不品行を重ねるほどなぜか王太子フリードリヒの好感度が上がっていく。 「あなたは面白い」じゃないんです殿下。 わたくしは嫌われたいんです。 一方、本来の恋のお相手である聖女リーゼロッテは、殿下そっちのけで私に懐いてくる始末。 物語のシナリオは崩壊し、謎のゆるキャラ「ぱんにゃ」は学園で信仰を集め、もう何もかもが予定通りにいかない。令嬢としてはポンコツでも、人間としては――まあ、仮免許くらいはもらえるかもしれない。そんなお話。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】お前が悪役令嬢だと王子が叫ぶ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
ガリブルラ王立学園の卒業式。 男爵令嬢のリアは突然、第二王子のオーブリーに断罪されてしまう。 「貴様への嫌がらせなど存在しない。全ては自作自演。自ら本を破り、池に落ち、階段を転がった。さながら喜劇役者のよう。残飯をかぶる様は見事であったが、それも今日まで」 リアを助けてくれた優しいオーブリーの姿はそこにはなく、身に覚えのない罪をリアに着せていく。 理解できないまま国外追放を言い渡され、倒れそうになっていたリアに手を差し伸べたのは――? *小説家になろう様にも掲載します。

魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?

朱音ゆうひ@4月1日新刊発売!
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。 このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる! それは、悪役教授ネクロセフ。 顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。 「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」 ……のはずが。 「夢小説とは何だ?」 「殿下、私の夢小説を読まないでください!」 完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。 破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ! 小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m