6 / 66
第1章 二回目の転生?
06
しおりを挟む
「思わぬことになった……」
屋敷へ帰るとダニエルは深くため息をついた。
「まさか……殿下の初恋が母上だったとは……」
「あら、大人の女性を好きになるなんて子供らしい話じゃない」
笑いながらそう言ったアレクシアだが、直ぐに顔を曇らせた。
「でも……お義母様に顔が似ているからマリアンヌを婚約者に選んだなんて……」
――それは、母親であるアレクシアにとって複雑な気持ちだろう。
フレデリク殿下は幼い時、祖母であるローズモンドが持っていた私の絵姿を見て一目惚れし、私のことをあれこれ尋ねたらしい。
……ローズモンドは昔から私を過大評価するきらいがあり、殿下にも良いことばかり吹聴したのだろう。
殿下は『リリアン』に恋心を抱いてしまったのだ。
しかし現実のリリアン、つまり私は子供も孫もいる、祖母と同じ、四十以上も歳上のお婆ちゃんだ。
到底恋が実るはずもない。
そんな殿下の前に現れたのがマリアンヌだった。
私の孫で絵姿によく似たマリアンヌを婚約者にしたい、と殿下は陛下に願い出た。
元々、私とローズモンドの子供――つまり王家とバシュラール侯爵家との間に婚姻を結びたいという話はあった。
だが互いに産んだのは男子のみで叶うことはなく、ならば孫同士で……と、婚約話はすぐにまとまった。
あの時、私もローズモンドと喜んだのだけれど……まさか、フレデリク殿下がマリアンヌを望んだ理由が『私と似ているから』だったなんて。
「マリアンヌは……このことを知っていたのかしら」
「さあ……」
「――マリアンヌと殿下の仲が悪くなったのはお義母様が亡くなられた後なので……知ったのかもしれませんわ」
確かに、婚約が決まった時、マリアンヌは嬉しそうに私に報告してくれた。
そのマリアンヌが自分が婚約者に望まれた理由を知って……その私が、マリアンヌの身体に入り、殿下と会ったことを知ったら……あの子はどう思うのだろう。
「あの子……傷ついたわよね……」
マリアンヌ……きっと悲しい思いをさせてしまった。
「……それで、婚約の話はどうなりましたの?」
アレクシアがダニエルを見た。
「とりあえず保留になった。何せ殿下が拒否しているからな」
「そうですか……」
「……ごめんなさいね、アレクシアさん」
私はアレクシアに頭を下げた。
「まあ、どうしてお義母様が謝るのです」
「マリアンヌは婚約を解消したいと望んでいたのでしょう。……それに婚約したのは私と似ていたせいだわ」
「――婚約を望んだのは殿下ですわ。こちらからお断りできませんし、それに理由だって誰も知らなかったのですから」
「それに……こうしてマリアンヌの身体に私が入ってしまったわ」
嫁姑の仲は悪くなかったと思っているが。
それでも娘の身体に義母がいるなんて、不快だろう。
「それについては……」
アレクシアはダニエルと顔を見合わせた。
「……まずは目覚めてくれて良かったと思っておりますの」
「医者からこのまま目覚めなければ死んでしまうと言われていましたからね」
「そうなの……?」
確かに……いつまでも眠り続ければ栄養が取れなくて衰弱してしまうだろう。
「ですから、とりあえず目を覚ましてくれて良かったですわ」
アレクシアは私の手を取った。
「マリアンヌのことは心配ですが……お義母様が気に病む必要はありませんわ」
「アレクシアさん……」
「お義母様は、どうか健やかにお過ごし下さい」
「……ありがとう……」
婚約時代からいい子だったけれど。
優しいお嫁さんで……本当に良かった。
こうなった原因も、殿下との婚約の件も今はどうすればいいのか分からない。
ならば私は――マリアンヌがこの身体に戻ってきた時のために。
あの子のためにできることを考えよう。
屋敷へ帰るとダニエルは深くため息をついた。
「まさか……殿下の初恋が母上だったとは……」
「あら、大人の女性を好きになるなんて子供らしい話じゃない」
笑いながらそう言ったアレクシアだが、直ぐに顔を曇らせた。
「でも……お義母様に顔が似ているからマリアンヌを婚約者に選んだなんて……」
――それは、母親であるアレクシアにとって複雑な気持ちだろう。
フレデリク殿下は幼い時、祖母であるローズモンドが持っていた私の絵姿を見て一目惚れし、私のことをあれこれ尋ねたらしい。
……ローズモンドは昔から私を過大評価するきらいがあり、殿下にも良いことばかり吹聴したのだろう。
殿下は『リリアン』に恋心を抱いてしまったのだ。
しかし現実のリリアン、つまり私は子供も孫もいる、祖母と同じ、四十以上も歳上のお婆ちゃんだ。
到底恋が実るはずもない。
そんな殿下の前に現れたのがマリアンヌだった。
私の孫で絵姿によく似たマリアンヌを婚約者にしたい、と殿下は陛下に願い出た。
元々、私とローズモンドの子供――つまり王家とバシュラール侯爵家との間に婚姻を結びたいという話はあった。
だが互いに産んだのは男子のみで叶うことはなく、ならば孫同士で……と、婚約話はすぐにまとまった。
あの時、私もローズモンドと喜んだのだけれど……まさか、フレデリク殿下がマリアンヌを望んだ理由が『私と似ているから』だったなんて。
「マリアンヌは……このことを知っていたのかしら」
「さあ……」
「――マリアンヌと殿下の仲が悪くなったのはお義母様が亡くなられた後なので……知ったのかもしれませんわ」
確かに、婚約が決まった時、マリアンヌは嬉しそうに私に報告してくれた。
そのマリアンヌが自分が婚約者に望まれた理由を知って……その私が、マリアンヌの身体に入り、殿下と会ったことを知ったら……あの子はどう思うのだろう。
「あの子……傷ついたわよね……」
マリアンヌ……きっと悲しい思いをさせてしまった。
「……それで、婚約の話はどうなりましたの?」
アレクシアがダニエルを見た。
「とりあえず保留になった。何せ殿下が拒否しているからな」
「そうですか……」
「……ごめんなさいね、アレクシアさん」
私はアレクシアに頭を下げた。
「まあ、どうしてお義母様が謝るのです」
「マリアンヌは婚約を解消したいと望んでいたのでしょう。……それに婚約したのは私と似ていたせいだわ」
「――婚約を望んだのは殿下ですわ。こちらからお断りできませんし、それに理由だって誰も知らなかったのですから」
「それに……こうしてマリアンヌの身体に私が入ってしまったわ」
嫁姑の仲は悪くなかったと思っているが。
それでも娘の身体に義母がいるなんて、不快だろう。
「それについては……」
アレクシアはダニエルと顔を見合わせた。
「……まずは目覚めてくれて良かったと思っておりますの」
「医者からこのまま目覚めなければ死んでしまうと言われていましたからね」
「そうなの……?」
確かに……いつまでも眠り続ければ栄養が取れなくて衰弱してしまうだろう。
「ですから、とりあえず目を覚ましてくれて良かったですわ」
アレクシアは私の手を取った。
「マリアンヌのことは心配ですが……お義母様が気に病む必要はありませんわ」
「アレクシアさん……」
「お義母様は、どうか健やかにお過ごし下さい」
「……ありがとう……」
婚約時代からいい子だったけれど。
優しいお嫁さんで……本当に良かった。
こうなった原因も、殿下との婚約の件も今はどうすればいいのか分からない。
ならば私は――マリアンヌがこの身体に戻ってきた時のために。
あの子のためにできることを考えよう。
36
あなたにおすすめの小説
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。
櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。
兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。
ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。
私も脳筋ってこと!?
それはイヤ!!
前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。
ゆるく軽いラブコメ目指しています。
最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。
小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。
冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます
藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。
彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。
直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。
だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。
責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。
「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」
これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる