元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子

文字の大きさ
7 / 66
第2章 二回目の学園生活

01

しおりを挟む
「まあ……懐かしいわ」
馬車から降りると私は感慨深く白亜の建物を見上げた。

ここはエナン王立高等学園。
二年制で、通えるのは王侯貴族の子女と一部の優秀な平民。
かつて私が通っていた、そしてゲームの舞台であるこの学園に来るのはもう一人の息子で、アルドリッジ伯爵家に婿入りしたショーイの卒業式以来だ。


私が目覚めてから約一か月。
マリアンヌの意識が戻る様子はなかった。

親族会議の結果、私は記憶喪失になったマリアンヌとして学園に通うことになった。
マリアンヌは記憶喪失ということは公表されているけれど、いつまでも姿を見せないので人目に出せないような怪我をしているのではなど良からぬ噂が出始めているらしい。
だから学園に通うことで、マリアンヌが健康であるとアピールする必要があるのだ。

だが私が学園に行く事に反対する声もあった。
――マリアンヌを階段から突き落とした犯人が分からないため、また私の身に危険が及ぶのではないかと。

けれど、犯人が分からないからこそ、私は学園に行くべきだと言った。
きっと犯人は私に接触してくるだろう。
マリアンヌのために、私は犯人を見つけたいのだ。



「教室に案内しましょう」
一緒の馬車に乗ってきたカミーユがそう言って手を差し出した。

彼とマリアンヌはハトコとはいえそう親しくしていたそうではないが、私がマリアンヌの中に入ってからは頻繁に屋敷を訪れ何かと気にかけてくれている。
幼い頃も、毎年のように領地に来ては『大叔母様!』と慕ってくれていた。
そのクールビューティーな容姿と大人びた性格、女性を寄せ付けないことからゲームでは『氷の貴公子』などと呼ばれていたが、本当はとても心優しい青年なのだ。

「ありがとう……」
「アン!」
エスコートしてくれるカミーユの手を取ろうとすると声が聞こえた。


「殿下……」
「何をしている」
駆け寄って来たフレデリク殿下が、私の手に触れようとしていたカミーユの手を払いのけた。

「教室へ案内する所ですよ」
「手を取る必要があるのか?」
「はぐれたら大変ですから」
そう答えてカミーユは私を見た。
「祖父から『マリアンヌは結構抜けている所があるので目を離さないように』と言い含められておりますので」
……ええ? 私、兄にそんな風に思われているの?

「ですから私から離れないで下さいね」
思わずカミーユを見上げると、爽やかな笑顔を向けられた。

「アンを守るのは僕の役目だ」
フレデリク殿下は私の腰に手を回すと自身へと引き寄せ、カミーユを睨みつけた。
「親戚だからといって、気安く人の婚約者に触るな」

「婚約の件は保留になったと聞きましたが」
「保留になったのは婚約解消の件だし、解消も保留もしない」
「そう思っているのは殿下だけですよね」
睨みつける王子に怯むことのない、涼やかな表情でカミーユは言った。



王宮を訪れてから今日まで約二週間。

その間、殿下は毎日のように私に会いに侯爵家までやってきた。
そうしてどれだけ私を慕っていたのか、二度と会えないと思っていた私と会えてどれだけ嬉しいか……こちらが恥ずかしくなるくらい、真っ直ぐな言葉で伝えてくる。

周囲の大人たちからすれば、殿下が恋したのはローズモンドを通して美化された『少女リリアン』だ。
そして今殿下の前に現れた『リリアン』は、見た目は十六歳だけれど中身は六十歳のリリアンで……今はよくとも、そのうち理想と現実のギャップで私に幻滅してしまうだろう。
そう思っているのだが、今の所殿下からの好意は変わらず……むしろますます増えている、気がする。
『年齢なんか関係ないし、どんなリリアンでも好きだ』というのが殿下の言い分だ。

私をリリアンと呼べない代わりにマリアンヌとの名前の共通部分である『アン』と呼び、全身で私への好意を表すその姿は……例えは失礼だけれど、まるで前々世で飼っていた犬を思わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

処理中です...