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第2章 二回目の学園生活
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「ともかくアンは僕が守るからな」
「殿下は何かと忙しいのでしょう」
私がこれまでのことを回想している間にも、殿下とカミーユは何やら言い争いをしていた。
「二人とも……そろそろ教室へ行きましょう」
先刻から幾つもの視線がこちらへ向けられているのを感じていた。
マリアンヌが階段から落ちて記憶喪失になったということは、学園でも周知されているという。
その、復学した私を挟んで第二王子と侯爵子息が言い合いをしているのだ、注目も集まってしまう。
好奇の視線に晒されるのはあまり気持ちのいいものではない。
「そうだな、行こうアン」
「フレデリク様!」
私の腰に手を回したまま殿下が歩き出そうとすると声が聞こえた。
振り返ると一人の女生徒が駆け寄ってくる所だった。
肩辺りで切り揃えられた茶色い髪が揺れている。
こんなに短い髪も、学園の廊下を走るというのも……貴族令嬢ならばありえないことだ。
おそらく平民なのだろう。
そして可愛らしい顔立ち……もしかして、この子がヒロイン?
ゲームはヒロインであるプレーヤー目線だし、名前も変えられるから顔を見ても分からなくて確信が持てない。
「シャルロット嬢」
私の隣で威嚇するような鋭い声が聞こえた。
「僕の名前を呼ぶなと言っただろう」
王族の名を呼べるのは親しい者にだけ許されることで、特に異性で未婚の王子の名前を呼んでいいのは血族や婚約者だけだ。
私も殿下から『フレッドと呼んで欲しい』と言われたけれど、この婚約は保留という形になっているのを理由にお断りしている。
「え、でも……前はいいって……」
「あれは君が決まりを知らなかったから見逃すという意味だ。いい加減貴族の決まりも覚えただろう」
冷たい殿下の言葉に納得のいかなそうな表情の女生徒――シャルロットが、ようやく気づいたのか私を見た。
その視線が殿下の手が回されたままの腰へと落ち、驚いたように目が見開かれる。
「行こう」
殿下はそんな目線から隠すように、私とシャルロットの間へと身体を移動させた。
「え、フレデ……殿下! どうしてその人……マリアンヌ様と……」
「婚約者と一緒にいて何がおかしい」
冷たい声と眼差しをシャルロットへ向けて、殿下は私を見た。
「時間がないから行こう、アン」
打って変わった笑顔でそう言うと、殿下は今度こそ歩き出した。
「あの……今の人は……」
「あれが前に言った、マリアンヌと揉めていた平民ですよ」
後からついてきたカミーユが答えた。
「どうして揉めていたのかしら」
「さあ。私は彼女とはほとんど面識がないので」
「……一度助けてから、何かと近づいてくるんだ」
ちらとカミーユが殿下に視線を送ると、殿下はため息をついた。
「助けたとは?」
「庭園で迷子になっていたのを見かけて声をかけ、寮へ案内しただけだ」
それは確か……ゲームでのイベントにあったものだ。
するとやはり彼女がヒロインなのか。
――でも好感度は高くない、というより……低いようだけれど。
ゲームはヒロインが九月に入学する所から始まり、翌年の七月、二年生の殿下たちの卒業式で終わる。
今はもうすぐ十二月に入るから、約三か月経っている。
ゲームでは幾つかのイベントを終えて、攻略対象からの好感度も高くなっていないとならないはずだが……殿下のヒロインへの印象は良くないようだ。
攻略対象の一人であるカミーユとは接触していない所を見ると、殿下を攻略しているようだけれど。
まあ、ここがゲームの世界とはいえゲーム通りのことが起きるとは限らない。
現にマリアンヌが階段から落ちて記憶喪失になることも、殿下の初恋が私であることもゲームにはないことだ。
ローズモンドの時もゲームではなかったことや異なることが色々あったし、そもそもゲームなのだから失敗することもあるだろう。
未来は誰にも分からないのだ。
「殿下は何かと忙しいのでしょう」
私がこれまでのことを回想している間にも、殿下とカミーユは何やら言い争いをしていた。
「二人とも……そろそろ教室へ行きましょう」
先刻から幾つもの視線がこちらへ向けられているのを感じていた。
マリアンヌが階段から落ちて記憶喪失になったということは、学園でも周知されているという。
その、復学した私を挟んで第二王子と侯爵子息が言い合いをしているのだ、注目も集まってしまう。
好奇の視線に晒されるのはあまり気持ちのいいものではない。
「そうだな、行こうアン」
「フレデリク様!」
私の腰に手を回したまま殿下が歩き出そうとすると声が聞こえた。
振り返ると一人の女生徒が駆け寄ってくる所だった。
肩辺りで切り揃えられた茶色い髪が揺れている。
こんなに短い髪も、学園の廊下を走るというのも……貴族令嬢ならばありえないことだ。
おそらく平民なのだろう。
そして可愛らしい顔立ち……もしかして、この子がヒロイン?
ゲームはヒロインであるプレーヤー目線だし、名前も変えられるから顔を見ても分からなくて確信が持てない。
「シャルロット嬢」
私の隣で威嚇するような鋭い声が聞こえた。
「僕の名前を呼ぶなと言っただろう」
王族の名を呼べるのは親しい者にだけ許されることで、特に異性で未婚の王子の名前を呼んでいいのは血族や婚約者だけだ。
私も殿下から『フレッドと呼んで欲しい』と言われたけれど、この婚約は保留という形になっているのを理由にお断りしている。
「え、でも……前はいいって……」
「あれは君が決まりを知らなかったから見逃すという意味だ。いい加減貴族の決まりも覚えただろう」
冷たい殿下の言葉に納得のいかなそうな表情の女生徒――シャルロットが、ようやく気づいたのか私を見た。
その視線が殿下の手が回されたままの腰へと落ち、驚いたように目が見開かれる。
「行こう」
殿下はそんな目線から隠すように、私とシャルロットの間へと身体を移動させた。
「え、フレデ……殿下! どうしてその人……マリアンヌ様と……」
「婚約者と一緒にいて何がおかしい」
冷たい声と眼差しをシャルロットへ向けて、殿下は私を見た。
「時間がないから行こう、アン」
打って変わった笑顔でそう言うと、殿下は今度こそ歩き出した。
「あの……今の人は……」
「あれが前に言った、マリアンヌと揉めていた平民ですよ」
後からついてきたカミーユが答えた。
「どうして揉めていたのかしら」
「さあ。私は彼女とはほとんど面識がないので」
「……一度助けてから、何かと近づいてくるんだ」
ちらとカミーユが殿下に視線を送ると、殿下はため息をついた。
「助けたとは?」
「庭園で迷子になっていたのを見かけて声をかけ、寮へ案内しただけだ」
それは確か……ゲームでのイベントにあったものだ。
するとやはり彼女がヒロインなのか。
――でも好感度は高くない、というより……低いようだけれど。
ゲームはヒロインが九月に入学する所から始まり、翌年の七月、二年生の殿下たちの卒業式で終わる。
今はもうすぐ十二月に入るから、約三か月経っている。
ゲームでは幾つかのイベントを終えて、攻略対象からの好感度も高くなっていないとならないはずだが……殿下のヒロインへの印象は良くないようだ。
攻略対象の一人であるカミーユとは接触していない所を見ると、殿下を攻略しているようだけれど。
まあ、ここがゲームの世界とはいえゲーム通りのことが起きるとは限らない。
現にマリアンヌが階段から落ちて記憶喪失になることも、殿下の初恋が私であることもゲームにはないことだ。
ローズモンドの時もゲームではなかったことや異なることが色々あったし、そもそもゲームなのだから失敗することもあるだろう。
未来は誰にも分からないのだ。
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