元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子

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第3章 ヒロイン

03

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「悪役令嬢が階段から落ちたりして前世の記憶を思い出すのもよくあるパターンで……それでマリアンヌ様も前世を思い出したんですよね。そして殿下に溺愛されて私がざまぁされるんです!」
ぐっと握り拳を作ってシャルロットは叫んだ。
「いやそんな事しないし、させないわよ?」
何か悪いことをしたならばまだしも……シャルロットはどう見ても普通の少女だ。

「でも記憶喪失になった途端、殿下に溺愛されてるじゃないですか」
「あ……あれには事情があって……」
「事情?」
「ええと……」
今度は私が言い淀んだ。
――同じ転生者の彼女にならば話してもいいだろうか。


「実は私……マリアンヌではないの」
「マリアンヌ様の時の記憶がなくなったのではなくて? それって、転生してマリアンヌ様の代わりにその身体に入ったということですか?」
さすが同じ転生者、話が通じるのが早いのね。

「そう……なんだけれど。ええと、ずっと前に転生していて」
「ずっと前?」
「私、本当はマリアンヌの祖母のリリアンなの。前作のお助けキャラだった」

「前作の……ええ?!」
シャルロットは目を見開いた。
「お助けキャラ? 双子の妹の?」
「そう、リリアン・アシャールよ」

「ええー! どういうことなんですか?!」
「私、二年前に死んだのだけれど……何故かマリアンヌの身体に入ったのよね。階段から落ちたショックでマリアンヌの魂が抜けてしまったのか……他の理由があるのかは分からないけれど」

「お助けキャラのリリアン……」
シャルロットはじっと私を見つめた。
「そういえば、マリアンヌ様とカミーユ様はお助けキャラの孫なんですよね」
「ええ」
「そんな事もあるんですね……」
そう言いながら頷いていたシャルロットは首をかしげた。
「でもどうして殿下にあんなに溺愛されているんです? 中の人がリリアン様だって殿下は知ってるんですか?」


「それは……何でも殿下の初恋が私だったらしくて」
「初恋」
「殿下の祖母の王太后……前作のヒロインが持っていた私の絵姿を見たとかで。それに彼女から私の話を色々聞いていたみたいで……」

「初恋が……お祖母様と同い年……」
シャルロットの呟きに恥ずかしくなる。
――初恋が祖母の友人って、やっぱりおかしいわよね?!


「……ああでも。私、前作の王太子だったら六十過ぎててもいけるかもしれません」

「え」
思いがけない言葉に私は目を見開いた。

「アンドリュー様が一推しだったんですよね。あのイラストに惚れてゲーム始めたので」
うっとりとした表情でシャルロットは言った。
「あれだけカッコいいなら、歳をとってもカッコいいままですよね」
「そうね……確かに素敵な方だったわ」
前作のメインヒーローである前王アンドリューと最後に会ったのは……五年前くらいだったろうか。
六十近い年齢だったが、確かに若い頃の面影をよく残して格好良いままだった。

「殿下とお近づきになって王宮に招かれたら会えると思ったんですけど、亡くなってしまったんですよね……」
はあ、とシャルロットはため息をついた。
「フレデリク殿下はアンドリュー様にあまり似ていないですし……」
確かに殿下はどちらかというとローズモンド似だ。

「そうね、お兄様のアラステア殿下の方が似ているかしら」
先日王宮へ上がった時にお会いしたけれど、若い頃の前王を思い出させる容姿だった。
「王太子なんて攻略対象ではないし雲の上すぎるじゃないですか」
シャルロットはため息をついた。
「あーあ。今更他の人攻略するのもなんだし。どうしようかな」

「――フレデリク殿下は諦めるの?」
「いや無理ですよね、だって初恋相手のリリアン様はあんなに溺愛されてるじゃないですか!」
それこそざまぁされますから、とシャルロットは大きく首を振ると再びため息をついた。
「――マリアンヌ様が言っていたのって、リリアン様だったんですね」


「え?」
「あの人の心には既にいるから、いくら近づこうとしても無駄だし虚しいわよって」
「……もしかしてマリアンヌとあなたが揉めていたのって」
「揉めていたというか、忠告を受けていましたね。殿下を取られたくなくて言ってるんだと思ってましたけど、まさかこういう事だったとは」

やはり、マリアンヌは知っていたのか。
殿下の初恋相手と……どうして自分が婚約者になったのか。
「でも同じ顔なのに中身が変わると顔つきも変わるんですね」
私の顔をしげしげとや眺めてシャルロットは言った。
「柔らかくなったというか……確かに、前作のリリアン様に見えますもの」
「――マリアンヌはどんな顔つきだったの?」
「ゲームと同じですよ、目つきがキツくて意地悪そうな顔で」
私が知っているマリアンヌはそんな子ではなかった。
そんな風になってしまったのは、やはり――

「……私のせいだわ……」
両手で顔を覆うと私は深く息を吐いた。

「はい?」
「殿下が私に似ているからってマリアンヌを婚約者に選んで……それを知ってしまったあの子に辛い思いをさせてしまったの……」
可哀想なマリアンヌ……どうすれば良かったのだろう。



「えー、それってリリアン様じゃなくて殿下のせいじゃないですか」

シャルロットの言葉に顔を上げて彼女を見た。
「初恋相手に似てるから婚約するって、女性に対して失礼ですよね?!」
「……そう、ね」
「それに選んだのは殿下で、リリアン様は何もしてないんですよね」
「……生前殿下に会ったことはなかったわ」
「じゃあ全くリリアン様は悪くないじゃないですか」
そう……なのだろうか。

言われれば確かにそうかもしれない。
殿下の初恋が私だなんて、誰も知らなかったのだ。
そしてマリアンヌを選んだ理由も。


「殿下ってそういう人だったんですね。私は無理だわー」
不敬罪にも当たるような言葉をあっけらかんと言い放つシャルロットにヒヤヒヤしながらも。
その言葉で、心の奥でもやもやしていたものが少し晴れたような気がした。
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