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第6章 秘密の特技
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「そうか。冬休みが明けたら図書館と……その前にバシュレ家について調査だ」
「はい」
アドリアン殿下の言葉に頷くと、セベリノさんは私へ向いた。
「リリアン様、図書館へは決して近づかないで下さい」
「え?」
「私が気づいたように、そのカインという男にもあなたがマリアンヌ様ではないと気づかれている可能性があります」
そういえば、セベリノさんは魂が違うのが分かったのだっけ。
「その男がマリアンヌ様に術をかけ、階段から落としたとして。目的が分からない以上、あなたにも同じ危険が起きる可能性があります」
「――そうですわね。分かりましたわ」
確かに、カミーユも言っていたけれど、どうしてマリアンヌの身にあんなことが起きたか分からないのだ。
カインは悪い人には見えないけれど……またこの身体を危険な目に合わせる訳にはいかない。
「リリアン嬢に守護の術をかけられないのか」
アドリアン殿下が言った。
「可能ですが、向こうにそれが知られてしまうのも得策ではありません。ともかくカイン・バシュレが本当に黒魔術師なのか、そしてマリアンヌ様との関係を調べないと」
そう答えてセベリノさんは私を見た。
「リリアン様の身に危険が及ばないようにはいたしますが、ご協力願いたいです」
「ええ、勿論ですわ」
マリアンヌのことなのだ、私も出来る限りのことはしたい。
「あ、でも……私、お二人には接触しないようカミーユやフレデリク殿下に言われていて」
「何故?」
「とにかく他の男性と接するなと。昔からですわ、兄や夫にも言われ続けて……」
あ、またあの時の不快感を思い出してモヤモヤしてしまう。
「皆様、リリアン様のことが大切なのですね」
「信用されていないのですわ」
「男としては心配になるものですよ」
セベリノさんの手が頭にふわりと乗せられる。
「リリアン様はこんなに可愛らしいのですから」
「――それはつまり、子供みたいだということですよね」
こうやって頭を撫でられるのも。
確かに背は低いし、行動を制限されて拗ねるなんて子供っぽいかもしれないけれど……。
でも私はもっと自由に行動したいのに。
「ああ、つまり……」
私から手を離すとセベリノさんは少し思案した。
「リリアン様は城の隠し通路を見つけ出し実際に脱出する知力や行動力があるのに、実際は学園内でも自由に行動できないのがお辛いと」
「……そうですわ」
「そして守られることが子供扱いされているように感じると」
「ええ」
「守られることに関しては、男の心理として仕方ない部分はあるのですが……」
セベリノさんがじっと私を見た。
「リリアン様の魂は縛られることを嫌うのですね」
「魂?」
「ええ。リリアンの魂はとても純粋で綺麗です。ですから魂が望むままに自由を求めるのでしょう」
「そう……なんですの?」
魂が純粋と言われても、よく分からないけれど。
自由を求めるというのは……分かる気がする。
「リリアン様。束縛されるのが嫌でしたら、一緒にミジャンへ行きませんか」
「え?」
「私と結婚すれば、全く自由という訳にはいきませんが、ある程度は好きにさせてあげられます」
結婚?
――セベリノさんと?
「セベリノ……」
はあ、とアドリアン殿下がため息をついた。
「いきなり求婚か」
求婚?
私に?
って、でも。
「私は……」
「フレデリク殿下と婚約されているのはマリアンヌ様であって、リリアン様ではありませんよね」
「そう……ですけれど。でも私は、そもそももうお婆ちゃんですし」
「私はリリアン様の魂に惹かれたのです。魂に年齢はありませんから」
「魂……」
「黒魔術師は魂を感じることができます。リリアン様の魂は純粋で穢れていない、素晴らしい魂です。きっと私の魔力を受けて優秀な魔術師が産まれるでしょう」
「はあ……」
魂でいい子供を産む?
遺伝子とかじゃなくて?
「でも……私の魂はいつまでこの身体にいるか分かりませんわ」
この身体はフレデリク殿下の婚約者であるマリアンヌのもの。
私はマリアンヌが目覚めるまで身体を借りているに過ぎない。
「ああ、そうですね。ではその問題が解決できたら結婚していただけますか?」
「え? ええと」
セベリノさんと結婚してミジャンへ行く、なんてとても思いがけない話で、いきなり言われても返事なんてできないし、それに。
「――興味深いですけれど、それは私の一存では決められませんわ」
結婚というのは家族の問題だ。
ここで私一人で決められるものでもない。
「そうですか。前向きに考えていただけているようで良かったです」
セベリノさんは笑顔でそう答えた。
「はい」
アドリアン殿下の言葉に頷くと、セベリノさんは私へ向いた。
「リリアン様、図書館へは決して近づかないで下さい」
「え?」
「私が気づいたように、そのカインという男にもあなたがマリアンヌ様ではないと気づかれている可能性があります」
そういえば、セベリノさんは魂が違うのが分かったのだっけ。
「その男がマリアンヌ様に術をかけ、階段から落としたとして。目的が分からない以上、あなたにも同じ危険が起きる可能性があります」
「――そうですわね。分かりましたわ」
確かに、カミーユも言っていたけれど、どうしてマリアンヌの身にあんなことが起きたか分からないのだ。
カインは悪い人には見えないけれど……またこの身体を危険な目に合わせる訳にはいかない。
「リリアン嬢に守護の術をかけられないのか」
アドリアン殿下が言った。
「可能ですが、向こうにそれが知られてしまうのも得策ではありません。ともかくカイン・バシュレが本当に黒魔術師なのか、そしてマリアンヌ様との関係を調べないと」
そう答えてセベリノさんは私を見た。
「リリアン様の身に危険が及ばないようにはいたしますが、ご協力願いたいです」
「ええ、勿論ですわ」
マリアンヌのことなのだ、私も出来る限りのことはしたい。
「あ、でも……私、お二人には接触しないようカミーユやフレデリク殿下に言われていて」
「何故?」
「とにかく他の男性と接するなと。昔からですわ、兄や夫にも言われ続けて……」
あ、またあの時の不快感を思い出してモヤモヤしてしまう。
「皆様、リリアン様のことが大切なのですね」
「信用されていないのですわ」
「男としては心配になるものですよ」
セベリノさんの手が頭にふわりと乗せられる。
「リリアン様はこんなに可愛らしいのですから」
「――それはつまり、子供みたいだということですよね」
こうやって頭を撫でられるのも。
確かに背は低いし、行動を制限されて拗ねるなんて子供っぽいかもしれないけれど……。
でも私はもっと自由に行動したいのに。
「ああ、つまり……」
私から手を離すとセベリノさんは少し思案した。
「リリアン様は城の隠し通路を見つけ出し実際に脱出する知力や行動力があるのに、実際は学園内でも自由に行動できないのがお辛いと」
「……そうですわ」
「そして守られることが子供扱いされているように感じると」
「ええ」
「守られることに関しては、男の心理として仕方ない部分はあるのですが……」
セベリノさんがじっと私を見た。
「リリアン様の魂は縛られることを嫌うのですね」
「魂?」
「ええ。リリアンの魂はとても純粋で綺麗です。ですから魂が望むままに自由を求めるのでしょう」
「そう……なんですの?」
魂が純粋と言われても、よく分からないけれど。
自由を求めるというのは……分かる気がする。
「リリアン様。束縛されるのが嫌でしたら、一緒にミジャンへ行きませんか」
「え?」
「私と結婚すれば、全く自由という訳にはいきませんが、ある程度は好きにさせてあげられます」
結婚?
――セベリノさんと?
「セベリノ……」
はあ、とアドリアン殿下がため息をついた。
「いきなり求婚か」
求婚?
私に?
って、でも。
「私は……」
「フレデリク殿下と婚約されているのはマリアンヌ様であって、リリアン様ではありませんよね」
「そう……ですけれど。でも私は、そもそももうお婆ちゃんですし」
「私はリリアン様の魂に惹かれたのです。魂に年齢はありませんから」
「魂……」
「黒魔術師は魂を感じることができます。リリアン様の魂は純粋で穢れていない、素晴らしい魂です。きっと私の魔力を受けて優秀な魔術師が産まれるでしょう」
「はあ……」
魂でいい子供を産む?
遺伝子とかじゃなくて?
「でも……私の魂はいつまでこの身体にいるか分かりませんわ」
この身体はフレデリク殿下の婚約者であるマリアンヌのもの。
私はマリアンヌが目覚めるまで身体を借りているに過ぎない。
「ああ、そうですね。ではその問題が解決できたら結婚していただけますか?」
「え? ええと」
セベリノさんと結婚してミジャンへ行く、なんてとても思いがけない話で、いきなり言われても返事なんてできないし、それに。
「――興味深いですけれど、それは私の一存では決められませんわ」
結婚というのは家族の問題だ。
ここで私一人で決められるものでもない。
「そうですか。前向きに考えていただけているようで良かったです」
セベリノさんは笑顔でそう答えた。
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