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第8章 カーニバル
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大聖堂から王宮へ続く長い大通りを、馬車の列はゆっくりと進んでいく。
屋根のない馬車に乗った私たちは、手にした籠から花びらを取ると、それを沿道に集まった観客へと向かって投げた。
この花は前に王宮の温室で会った庭師の青年がパレード用に、羽のように遠くまで飛ぶよう改良したものだという。
昔はすぐ下に落ちてしまい、正直いまいちだったのだけれど。
まるで紙吹雪のように色とりどりの花びらが宙を舞う光景はとても綺麗で幻想的だ。
花を撒きながら馬車からの眺めを楽しむ内に、トラブルが起きる事もなく馬車は王宮前の広場に到着した。
この広場に設けられた舞台で、花娘は最後にもう一度花を撒く。
広場は既に大勢の人々で埋め尽くされていた。
――シャルロットはここに来ると言っていたけれど、入れただろうか。
「アン!」
先に王宮に戻る王族が乗った馬車から、フレデリク殿下がこちらに向かって手を振るのが見えた。
殿下に手を振り返して舞台へ昇る。
四十五年前のパレードの時は、ここでローズモンドが襲われたのだ。
あの時の騒動を思い出してさすがに緊張してしまう。
今はあの時よりも警備も厳重で、舞台の下も大勢の騎士たちが守っているけれど。
舞台から花を蒔いていると、猫の声が聞こえた気がして頭を上げた。
近くの建物のベランダに赤いリボンを巻いた黒猫が見えた。
――セレストだろうか。
遠くて分からないけれど、黒猫に向かって手を振ると長いしっぽを振り返してくれた。
「人が多くて凄かったですわね」
「ええ……でも無事に終わって良かったですわ」
花を撒き終えると私たちは舞台を降りていった。
後は晩餐会を残すのみだ。
朝から準備だったし緊張するし、人々の熱気に当てられるしで流石に疲れたわ。
「花娘の皆さまには控え室をご用意してございます。晩餐会までそちらで御休息ください」
一緒の馬車に乗っていた神官が言った。
「マリアンヌ様はこちらへ」
神官の後をついていこうとすると、騎士の一人に呼び止められた。
「フレデリク殿下がお待ちです」
「あ、はい」
……私は休憩できないのかしら。
思わず小さなため息がもれる。
でも王宮では会わないという話だったのでは……今日はカーニバルだから特別?
「それではマリアンヌ様、また後で」
「ええ、後でお会いしましょう」
バーバラ様に手を振ると私は騎士の後についていった。
あれ?
広場にある騎士団の詰所を通り、そこから王宮に入るのだと思っていた。
正門からよりも、裏道になるけれどこちらの方が王族の居住区へ行くには近道なのだ。
けれど騎士は詰所を通り抜けたあと、王宮へは入らずそのまままた外へ出てしまった。
目の前には一台の馬車。
「あの……」
何かおかしい。
そう気づいて足を止めた、その時。
ふいに騎士が振り返ると私へ手を伸ばしてきた。
「きゃあ?!」
突然抱き上げられ思わず騎士にしがみつく。
そのまま騎士は早足で目の前の馬車に乗り込んだ。
鍵がかかると同時に馬車は勢いよく走り出した。
「きゃ……」
「マリアンヌ様」
突然の激しい揺れと出来事に混乱していると、ぎゅっと抱きしめられる。
え、何――
「やっと……貴女を手に入れられる」
おそるおそる騎士と目を合わせる。
まだ十代くらいの若いその顔は、どこか見覚えがあった。
屋根のない馬車に乗った私たちは、手にした籠から花びらを取ると、それを沿道に集まった観客へと向かって投げた。
この花は前に王宮の温室で会った庭師の青年がパレード用に、羽のように遠くまで飛ぶよう改良したものだという。
昔はすぐ下に落ちてしまい、正直いまいちだったのだけれど。
まるで紙吹雪のように色とりどりの花びらが宙を舞う光景はとても綺麗で幻想的だ。
花を撒きながら馬車からの眺めを楽しむ内に、トラブルが起きる事もなく馬車は王宮前の広場に到着した。
この広場に設けられた舞台で、花娘は最後にもう一度花を撒く。
広場は既に大勢の人々で埋め尽くされていた。
――シャルロットはここに来ると言っていたけれど、入れただろうか。
「アン!」
先に王宮に戻る王族が乗った馬車から、フレデリク殿下がこちらに向かって手を振るのが見えた。
殿下に手を振り返して舞台へ昇る。
四十五年前のパレードの時は、ここでローズモンドが襲われたのだ。
あの時の騒動を思い出してさすがに緊張してしまう。
今はあの時よりも警備も厳重で、舞台の下も大勢の騎士たちが守っているけれど。
舞台から花を蒔いていると、猫の声が聞こえた気がして頭を上げた。
近くの建物のベランダに赤いリボンを巻いた黒猫が見えた。
――セレストだろうか。
遠くて分からないけれど、黒猫に向かって手を振ると長いしっぽを振り返してくれた。
「人が多くて凄かったですわね」
「ええ……でも無事に終わって良かったですわ」
花を撒き終えると私たちは舞台を降りていった。
後は晩餐会を残すのみだ。
朝から準備だったし緊張するし、人々の熱気に当てられるしで流石に疲れたわ。
「花娘の皆さまには控え室をご用意してございます。晩餐会までそちらで御休息ください」
一緒の馬車に乗っていた神官が言った。
「マリアンヌ様はこちらへ」
神官の後をついていこうとすると、騎士の一人に呼び止められた。
「フレデリク殿下がお待ちです」
「あ、はい」
……私は休憩できないのかしら。
思わず小さなため息がもれる。
でも王宮では会わないという話だったのでは……今日はカーニバルだから特別?
「それではマリアンヌ様、また後で」
「ええ、後でお会いしましょう」
バーバラ様に手を振ると私は騎士の後についていった。
あれ?
広場にある騎士団の詰所を通り、そこから王宮に入るのだと思っていた。
正門からよりも、裏道になるけれどこちらの方が王族の居住区へ行くには近道なのだ。
けれど騎士は詰所を通り抜けたあと、王宮へは入らずそのまままた外へ出てしまった。
目の前には一台の馬車。
「あの……」
何かおかしい。
そう気づいて足を止めた、その時。
ふいに騎士が振り返ると私へ手を伸ばしてきた。
「きゃあ?!」
突然抱き上げられ思わず騎士にしがみつく。
そのまま騎士は早足で目の前の馬車に乗り込んだ。
鍵がかかると同時に馬車は勢いよく走り出した。
「きゃ……」
「マリアンヌ様」
突然の激しい揺れと出来事に混乱していると、ぎゅっと抱きしめられる。
え、何――
「やっと……貴女を手に入れられる」
おそるおそる騎士と目を合わせる。
まだ十代くらいの若いその顔は、どこか見覚えがあった。
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