呪いを受けて少女は魔女になった

冬野月子

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14.西の森

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「フローラ様。機嫌直してくださいよ」
「直せる訳ないでしょう。もう信じられない!」
昨夜はちゃんと別々の部屋で寝ていたはずなのに。
どうして朝起きたらラウルに腕枕されているの?!
しかも目覚めた瞬間キスするし!
「貴女って昔から一度寝たら朝まで絶対起きないよね」
ホント、どうして私も気づかないんだろう。
「俺があんな事しても全然…」
「何したの?!」
「知りたい?」
ラウルの腕が私の腰に回った。
「こうやって…」
「やっぱりいい!」
知らない方が幸せな事もあるわ…うん。

揉めながらも昔そうしていたように二人で朝食を用意し、向かい合って食べる。
ラウルと一緒に過ごしたのは六年間という短い間だったし、もうすっかり大人になってしまったけれど…すぐにあの頃の感覚が戻ってくるのも不思議な感じだ。

「ところでラウル。私の呪いの事って…どこまで分かっているの」
食後のお茶を飲みながら尋ねた。
「フローラ様の呪いを解くのは出来ると思うよ」
「本当に?!」
「問題はこの森だよ。貴女の呪いを解いてしまったら森の封印も解けてしまうから、再封印しなければならないんだ」
「…そうね」
私よりもそっちの方が大事だわ。
「だから森を調べて封印の方法を検討するんだ」

「———あなた、本当に凄い魔導師になったのね」
思わず感嘆のため息が漏れる。
「どうやって調べたの……」
「俺だけの力じゃないよ」
ラウルが手のひらを上に向けるとそこに一冊の本が現れた。
「その本は…?」
「五年くらい前かな、偶然手に入れたんだ」
ラウルは本を私に差し出した。
「貴女のお師匠様が書いた本だよ」

「え」
ひどく古びた本だった。
恐る恐る開くと、細かな文字や図形がびっしりと書き込まれている。
それは確かにお師匠様の筆跡だった。

「これは…」
「お師匠様は世界中を巡りながら古の邪神や呪いについて調べていたんだね。これはその記録だよ。あともう少しで呪いを解くところまで辿り着いていた。俺はその跡を継いだだけ」
「…お師匠様———」
思わず本を抱きしめる。
「その本は日記も兼ねていて、何度も貴女への謝罪の言葉が書いてあったよ」
「謝罪なんて…そんなの……」
「お師匠様の遺志のためにも、呪いは必ず解くから」
伸ばされたラウルの指先が私の目元から零れそうになった涙を優しく拭った。



「フローラ」
支度を終えて外に出ると、ジェラルド様が立っていた。
…本当にこの人のタイミングの良さはなんなんだろう。
私の背後に立つラウルの姿を認めたジェラルド様の目つきが険しくなる。
「何故その男がここに……」
「師弟ですから」
ラウルは私の前に出た。
「今日はこれから森の奥へ行くんです。申し訳ありませんがお引き取り下さい」
「森の奥へ?何をしに」
「この森の封印についての調査ですよ。公主からフローレンス様の呪いを解く任務を受けておりますのでその一環です」
「ならば私も一緒に———」

「それはなりません」
あ、ラウルとハモったわ。
「ジェラルド様…これから行く場所はこの森で最も危険な場所です。王子である貴方を連れていく訳には…」
「そんな所に君は行くのか?」
「私はこの森の魔女ですよ」
「だからといって私が君が危険な所に行くのを見過ごすとでも?」
困ったな…。
来るなといってもきっと付いてくるだろうし。
どうしよう。
ラウルを見上げるとしょうがないという風に頷いた。
「付いてくるのは構いませんが…隣の騎士はいいとして、殿下のその丸腰では無理ですね」
「馬車に予備の剣があるので持って参ります」
ディオンさんが即答すると身を翻した。
———忠実なのはいいけど、できればジェラルド様を止めて欲しかったな…。

ジェラルド様は何か言いたげにラウルと私を見ていた。
(…ジェラルド様に私にキスした事は絶対に言わないでよ)
私は念話魔法でラウルに言った。
(分かってるよ。今日はさすがに殿下と揉める余裕はないから)
さすがにラウルもその辺りは弁えているのね。
(フローラ様。万一の時は殿下を連れて逃げて)
(そんなに危険な事をするの?)
(万が一だよ。状況が分からないからね)
(…とりあえず防御魔法を先に掛けておいた方がいい?)
(そうだね、お願い)
どちらが師匠か分からない念話を交わしているとディオンさんが戻ってきた。

四人に防御魔法を掛けて、私達は森の奥へと歩き出した。
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