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15.封印されしもの
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そこにあったのは奇妙な形をした大きな黒い石だった。
「…禍々しい気配を感じるが…」
ジェラルド様が剣の鞘に手をかけながら言った。
「これが私に呪いをかけた邪神です」
「何…?」
あの時。私は意識を失って見ていなかったけれど、倒れた邪神は見る間に石に変化したらしい。
「封印が解けた場合、この石の下から魔物が出てくる…という事ですよねフローラ様」
「ええ」
「三人はそこから動かないで下さい」
ラウルは石へと近づいた。
手にした杖で何かを確認するように、土を突きながら石の周りを一周すると私達を見た。
「少し封印を解いてもいいですか」
「は?」
「何を言っているの?!」
「ここにどういったものが封印されているのかよく分からないんですよね。だから実物を確認した方が手っ取り早いかと」
「魔物を外に出すの?!」
「少しだけですよ」
「そんな事をしたら…」
「貴女の呪いを解くために必要なんですよ」
ラウルの表情はあくまでも冷静だった。
「呪いの解除も、再封印も失敗出来ないんです。情報がない状態では再封印は出来ません」
「だからってそんな危険な事…ダメよ!」
「———だから一人で来ると言ったんですよ」
ラウルはため息をついた。
そんな事言われたって…可愛い弟子を危険な目に晒すなんてそんな事…
「殿下。フローラ様を連れてここから離れてもらえますか」
「ラウル!」
「———そんなに危険なのか魔物は」
「それを調べるんです。一、二体なら倒せると思いますよ。フローラ様は心配性すぎるんです」
「だって…」
「フローラ、私も剣の心得はある。君は私が護るから…」
「私の事はいいの!」
私が嫌なのはラウルやジェラルド様達が怪我をする事なの!
「———フローラ様。結界を広めにお願いします」
ひどく冷たい表情でラウルは私を見た。
「それが出来ないならここから離れて下さい」
ラウルのこの表情は嫌いだ。
子供の時も時々…私が過保護にしたり必要以上に子供扱いすると大人びた、冷えた目で抗議する。
その顔を見せられると自分の弱さや未熟さを指摘されているようで…そしてそれは事実そうで、私には反論する術がなくなるのだ。
私は渋々杖を上げた。
ジェラルド様とディオンさんも剣に手を掛け臨戦態勢を取る。
私が呪文を唱え、周囲に結界を張ったのを見るとラウルは杖を岩の下、土との隙間に当てた。
そうして———聞き覚えのない呪文を唱え始めた。
杖が当てられた部分から冷たい風が流れ出ると、風と共に黒い影が現れた。
それは影ではなく、生き物だった。
黒い———人間と同じ身体を持ち、頭は角を生やした獣のそれで…金色の目が怪しく光っていた。
「これは…」
その異様な姿に驚きながらも、ジェラルド様は魔物から守るように素早く私を背中へと隠した。
「これが古の魔物か」
ラウルの杖が輝くと放たれた光が魔物へと向かった。
ラウルの攻撃魔法を見るのは初めてだった。
私には攻撃の素質は全くないらしく…ラウルに教えたのも防御や回復系の魔法に薬学といったものばかりだったのに。
どこであんな技を身に付けたのだろう。
ラウルの攻撃を交わした魔物がこちらを見たような気がして慌ててジェラルド様の背中に隠れる。
———あの金色の目にかつての邪神の目を思い出してしまい身体が震える。
本当に自分が情けない。
何百年生きていても…何もできない弱い子供のままで。
この森の封印を護るくらいしか役に立てない身ならばこのままでも———
「あれは…何者なんだ」
ラウルが聞いたら怒られそうな思考に囚われていたのをディオンさんの呟きで我に返った。
人の身体と獣の頭を持ったあの魔物は確かに見た事のない物だった。
けれども何か覚えがあるような気もする。
人と獣の混ざった古の魔物———
「あ…」
もしかして…
その時すさまじい咆哮が森に響いた。
「…禍々しい気配を感じるが…」
ジェラルド様が剣の鞘に手をかけながら言った。
「これが私に呪いをかけた邪神です」
「何…?」
あの時。私は意識を失って見ていなかったけれど、倒れた邪神は見る間に石に変化したらしい。
「封印が解けた場合、この石の下から魔物が出てくる…という事ですよねフローラ様」
「ええ」
「三人はそこから動かないで下さい」
ラウルは石へと近づいた。
手にした杖で何かを確認するように、土を突きながら石の周りを一周すると私達を見た。
「少し封印を解いてもいいですか」
「は?」
「何を言っているの?!」
「ここにどういったものが封印されているのかよく分からないんですよね。だから実物を確認した方が手っ取り早いかと」
「魔物を外に出すの?!」
「少しだけですよ」
「そんな事をしたら…」
「貴女の呪いを解くために必要なんですよ」
ラウルの表情はあくまでも冷静だった。
「呪いの解除も、再封印も失敗出来ないんです。情報がない状態では再封印は出来ません」
「だからってそんな危険な事…ダメよ!」
「———だから一人で来ると言ったんですよ」
ラウルはため息をついた。
そんな事言われたって…可愛い弟子を危険な目に晒すなんてそんな事…
「殿下。フローラ様を連れてここから離れてもらえますか」
「ラウル!」
「———そんなに危険なのか魔物は」
「それを調べるんです。一、二体なら倒せると思いますよ。フローラ様は心配性すぎるんです」
「だって…」
「フローラ、私も剣の心得はある。君は私が護るから…」
「私の事はいいの!」
私が嫌なのはラウルやジェラルド様達が怪我をする事なの!
「———フローラ様。結界を広めにお願いします」
ひどく冷たい表情でラウルは私を見た。
「それが出来ないならここから離れて下さい」
ラウルのこの表情は嫌いだ。
子供の時も時々…私が過保護にしたり必要以上に子供扱いすると大人びた、冷えた目で抗議する。
その顔を見せられると自分の弱さや未熟さを指摘されているようで…そしてそれは事実そうで、私には反論する術がなくなるのだ。
私は渋々杖を上げた。
ジェラルド様とディオンさんも剣に手を掛け臨戦態勢を取る。
私が呪文を唱え、周囲に結界を張ったのを見るとラウルは杖を岩の下、土との隙間に当てた。
そうして———聞き覚えのない呪文を唱え始めた。
杖が当てられた部分から冷たい風が流れ出ると、風と共に黒い影が現れた。
それは影ではなく、生き物だった。
黒い———人間と同じ身体を持ち、頭は角を生やした獣のそれで…金色の目が怪しく光っていた。
「これは…」
その異様な姿に驚きながらも、ジェラルド様は魔物から守るように素早く私を背中へと隠した。
「これが古の魔物か」
ラウルの杖が輝くと放たれた光が魔物へと向かった。
ラウルの攻撃魔法を見るのは初めてだった。
私には攻撃の素質は全くないらしく…ラウルに教えたのも防御や回復系の魔法に薬学といったものばかりだったのに。
どこであんな技を身に付けたのだろう。
ラウルの攻撃を交わした魔物がこちらを見たような気がして慌ててジェラルド様の背中に隠れる。
———あの金色の目にかつての邪神の目を思い出してしまい身体が震える。
本当に自分が情けない。
何百年生きていても…何もできない弱い子供のままで。
この森の封印を護るくらいしか役に立てない身ならばこのままでも———
「あれは…何者なんだ」
ラウルが聞いたら怒られそうな思考に囚われていたのをディオンさんの呟きで我に返った。
人の身体と獣の頭を持ったあの魔物は確かに見た事のない物だった。
けれども何か覚えがあるような気もする。
人と獣の混ざった古の魔物———
「あ…」
もしかして…
その時すさまじい咆哮が森に響いた。
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