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35.解呪
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全ての支度を終えて外に出ると…何かすっかり見慣れた光景になったな。
「フローラ」
笑みをたたえたジェラルド様が私に近づいてきた。
「ジェラルド様、今日は…」
「分かってる。見送りだけさせて」
私の手をジェラルド様の両手が包み込んだ。
「成功する事を祈っている」
そう言ってラウルに視線を送る。
「頼んだよ」
「はい」
視線を戻すとジェラルド様は私をしばらく見つめて———そっと抱きしめた。
———思えば、ジェラルド様が私を訪ねて来たのが始まりだった。
そのきっかけになったのはアルフィンとシャルロットが出会ったからで……そもそもララが呪いを受けなければ、ここにいる人たちと出会う事はなかった。
……不思議だな。
ゆっくりとジェラルド様は私を離した。
「…それでは行ってきます」
「ああ」
「アルフィン、留守番お願いね」
返事の代わりに尾を振ったアルフィンとジェラルド様に手を振って、私達は森の奥に入っていった。
森の中はいつもと同じように穏やかだった。
「ティーナもアルフィンと一緒に家で待っていてくれれば良かったのに」
ラウルの肩に乗ったティーナを見上げた。
「何言ってるの。ちゃんと見届けるよ」
バサリと翼を広げてティーナが答える。
アルフィンも付いてこようとしたけれど、もしも怪我をさせたりしたらシャルロットに申し訳ないのと———万が一の場合は王宮に報告に行って欲しいから外で待っていてとお願いしたのだ。
封印の場所に着くと、ラウルは懐から私の身代わりになる石を取り出し、邪神だった石の隣に置いた。
「フローラ様の呪いと、この邪神の封印を同時に解く」
「同時に?」
「そんな事出来るのかい?」
「同時に解いてすぐに再封印しないと魔物が放たれてしまうからね」
ラウルは私を見ると、ふっと笑顔を見せた。
「大丈夫だよ」
「…うん」
頷いた私の頭をくしゃりと撫でる。
再会した時にされたのと同じ仕草に———ふいに何かが胸に込み上げてきて、ラウルに抱き付いた。
「フローラ様」
「———頑張ってね」
ラウルの胸に顔を埋めると抱きしめられる。
「頑張ってもいいけど…」
「他の言葉は後で言うから」
「…期待してる」
身体を離そうとしたけれど、背中の腕がそれを拒んだ。
顔を上げるとラウルが顔を近づけた。
「フローラ様からキスしてくれたらもっと頑張れるんだけど」
…ここで?
ティーナも見てるのに…と思ってちらと見ると、気を遣ってくれたのか、いつの間にかティーナは離れた木の上に止まっていた。
仕方ないので爪先立ちになって、ラウルに口付ける。
柔らかくて温かな感触が…じんわりと身体中に広がるような感覚を覚える。
唇を離し、身体を離すと今度はラウルが額に口付けを落とした。
「それじゃあ始めるよ」
「ええ」
「フローラ様はそこに座って」
ラウルの示した場所に座り込む。
「…多分痛かったり苦しくなると思うけど…」
「覚悟しているわ」
ラウルに笑みを向ける。
「私が苦しがっても気にしないで続けてね」
「……ああ」
少し泣きそうな笑顔で頷いたラウルの顔が真剣なものになった。
杖を地面につけたラウルの口から呪文が流れ出す。
私と石の周りに金色の光の輪が現れた。
胸の奥に痛みを覚え始め、目を固く閉じる。
呪文に応えるようにじわじわと…痛みと熱が強くなっていく。
「は…」
熱さで息苦しくなって息を吐く。
頭の中でラウルの声が———呪文がぐるぐると響いている。
熱い。
痛い。
苦しい。
「あ…ぁ…」
座っている事すらできなくなって、身体が崩れ落ちた。
「フローラ!」
遠くでティーナの声が聞こえる。
熱い。
熱い。
助けて…誰か……
頭の中に響く呪文がひときわ大きく聞こえたような気がした。
それは私の一番大切で…大好きな人の声。
「ラ…ウ……」
闇に引きずり込まれるように私の意識はそこで途切れた。
「フローラ」
笑みをたたえたジェラルド様が私に近づいてきた。
「ジェラルド様、今日は…」
「分かってる。見送りだけさせて」
私の手をジェラルド様の両手が包み込んだ。
「成功する事を祈っている」
そう言ってラウルに視線を送る。
「頼んだよ」
「はい」
視線を戻すとジェラルド様は私をしばらく見つめて———そっと抱きしめた。
———思えば、ジェラルド様が私を訪ねて来たのが始まりだった。
そのきっかけになったのはアルフィンとシャルロットが出会ったからで……そもそもララが呪いを受けなければ、ここにいる人たちと出会う事はなかった。
……不思議だな。
ゆっくりとジェラルド様は私を離した。
「…それでは行ってきます」
「ああ」
「アルフィン、留守番お願いね」
返事の代わりに尾を振ったアルフィンとジェラルド様に手を振って、私達は森の奥に入っていった。
森の中はいつもと同じように穏やかだった。
「ティーナもアルフィンと一緒に家で待っていてくれれば良かったのに」
ラウルの肩に乗ったティーナを見上げた。
「何言ってるの。ちゃんと見届けるよ」
バサリと翼を広げてティーナが答える。
アルフィンも付いてこようとしたけれど、もしも怪我をさせたりしたらシャルロットに申し訳ないのと———万が一の場合は王宮に報告に行って欲しいから外で待っていてとお願いしたのだ。
封印の場所に着くと、ラウルは懐から私の身代わりになる石を取り出し、邪神だった石の隣に置いた。
「フローラ様の呪いと、この邪神の封印を同時に解く」
「同時に?」
「そんな事出来るのかい?」
「同時に解いてすぐに再封印しないと魔物が放たれてしまうからね」
ラウルは私を見ると、ふっと笑顔を見せた。
「大丈夫だよ」
「…うん」
頷いた私の頭をくしゃりと撫でる。
再会した時にされたのと同じ仕草に———ふいに何かが胸に込み上げてきて、ラウルに抱き付いた。
「フローラ様」
「———頑張ってね」
ラウルの胸に顔を埋めると抱きしめられる。
「頑張ってもいいけど…」
「他の言葉は後で言うから」
「…期待してる」
身体を離そうとしたけれど、背中の腕がそれを拒んだ。
顔を上げるとラウルが顔を近づけた。
「フローラ様からキスしてくれたらもっと頑張れるんだけど」
…ここで?
ティーナも見てるのに…と思ってちらと見ると、気を遣ってくれたのか、いつの間にかティーナは離れた木の上に止まっていた。
仕方ないので爪先立ちになって、ラウルに口付ける。
柔らかくて温かな感触が…じんわりと身体中に広がるような感覚を覚える。
唇を離し、身体を離すと今度はラウルが額に口付けを落とした。
「それじゃあ始めるよ」
「ええ」
「フローラ様はそこに座って」
ラウルの示した場所に座り込む。
「…多分痛かったり苦しくなると思うけど…」
「覚悟しているわ」
ラウルに笑みを向ける。
「私が苦しがっても気にしないで続けてね」
「……ああ」
少し泣きそうな笑顔で頷いたラウルの顔が真剣なものになった。
杖を地面につけたラウルの口から呪文が流れ出す。
私と石の周りに金色の光の輪が現れた。
胸の奥に痛みを覚え始め、目を固く閉じる。
呪文に応えるようにじわじわと…痛みと熱が強くなっていく。
「は…」
熱さで息苦しくなって息を吐く。
頭の中でラウルの声が———呪文がぐるぐると響いている。
熱い。
痛い。
苦しい。
「あ…ぁ…」
座っている事すらできなくなって、身体が崩れ落ちた。
「フローラ!」
遠くでティーナの声が聞こえる。
熱い。
熱い。
助けて…誰か……
頭の中に響く呪文がひときわ大きく聞こえたような気がした。
それは私の一番大切で…大好きな人の声。
「ラ…ウ……」
闇に引きずり込まれるように私の意識はそこで途切れた。
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