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36.変化
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目を開けると、そこは私の部屋だった。
…どうしたんだっけ…とぼんやりしているとベッドの下で何かが動く気配がした。
「起きたか」
「……アルフィン」
起き上がったアルフィンが私の顔を覗き込む。
「体の具合はどうだ?」
「…良くも悪くもない感じ…?」
「なら大丈夫だな」
「私…どれくらい眠っていたの」
「三日間だ」
「上手く行ったの…?」
「ああ」
「ラウルは…」
「まだ眠っている」
「え…?」
「ただの人間があれだけの術を使ったんだ。魔力を使い果たしたんだろう」
アルフィンが頭を私に擦り付ける。
「眠っているだけだ、心配しなくていい」
モフモフしたアルフィンの感触は気持ちいいけれど…。
ラウルに…会いたい。触れてほしい。
「大丈夫か」
起き上がった私を見上げるアルフィンの声には心配そうな色が含まれていた。
…アルフィンはいつも素っ気ない言葉で、気が利かないようだけど…本当はとても優しい子なのよね。
「大丈夫よ、ありがとう」
アルフィンの頭を撫でて部屋を出る。
ラウルはよく眠っていて起きる気配がなかった。
「だいぶ顔色が良くなったな」
一緒について来たアルフィンがその顔を覗き込んだ。
「…良くなかったの?」
「倒れているのを見た時は青白くて死ぬかと思ったぞ」
術をかけ終わった後、そのままラウルは倒れ込んだそうだ。
ティーナだけでは運べないので一度家まで飛んで戻り———アルフィンと、まだ家にいたジェラルド様が私達を運んでくれたという。
「……ジェラルド様と二人でここにいたの?」
「そうだ」
「…何を話していたの?」
「別に何も」
わあ…空気が重そう。
私はベッドの傍に膝をつくとラウルの頬にそっと手で触れた。
温かさと静かで定期的な寝息にほっとする。
「ラウル…」
間近で顔を見つめていると…何だか泣きそうになってくる。
「ラウル…早く起きて」
名前を呼んで欲しい。
抱きしめて欲しい。
「ラウル…大好き……」
ラウルの寝顔を眺めているうちに、再び眠気がやってきたようだった。
…温かな感触と慣れた匂いが私を包み込む。
それはとても幸せな感覚だった。
意識が戻って来て…首の下の違和感に、腕枕されているのに気づいた。
「ん…」
「…フローラ様」
柔らかなものが私のこめかみに触れる。
私を抱きしめるこの腕と声は…
「ラウル…」
「おはよう」
目の前に優しい眼差しのラウルの顔があった。
「…起きたの…?」
「貴女が呼んでくれたから」
額に、頬に…ラウルのキスが落ちてくる。
「っ…や、くすぐったい…」
「フローラ様…」
私の唇をかすめたラウルの唇が口角を上げた。
「抱いていい?」
は…?
「いい訳ないだろう」
怒りに満ちた声に顔を向けると…腰に手を当てたティーナが立っていた。
え…待って見られてたの?!
「坊や…あんたは本当に懲りないね」
大股でベッドに近づくと、私に覆いかぶさろうとしていたラウルを引き剥がす。
「再封印が終わるまで我慢しろっていうから我慢しただろ」
「二人とも三日三晩寝たっきりだったんだよ!まず風呂!それからご飯!」
…何かティーナって本当にお母さんみたいだなあ。
ティーナ特製の苦い薬膳スープを飲みながら、私達が眠っていた間の事を聞く。
今のところ森に異常はないが、本当に封印がされているかはラウルが確認しないと分からないらしい。
「フローラ様。身体の具合はどう?」
ラウルに聞かれて首を傾げる。
「特に何も…悪い所はないけれど」
「魔力が消えたな」
足元で丸まっていたアルフィンが口を開いた。
「え?」
「フローラから魔力の匂いが全くしない」
「…私もそれは気になっていたよ」
「私の魔力…」
思わず自分の手のひらをみつめる。
魔力が消えたって事は…私は……。
「———おそらく〝フローレンス様〟は元々魔力を持っていないんだろうな」
ラウルが私の手を握った。
「呪いから解放されて、本来の身体に戻ったんだよ」
「…私…もう魔女じゃないんだ」
呟いたら急に心細くなった。
「…嫌?」
「私…フローレンスとして生きていていいのかしら…」
それは呪いが解けるかもしれないと知った時から抱いていた不安だった。
「私は…何回も生まれ変わってきたけれど…中身はずっと同じ、孤児のララだから…本当のフローレンス・ロージェルじゃないし……」
こんな高貴で…綺麗な人が〝私〟だという事にずっと違和感があった。
「〝私〟はこの身体を借りているだけだから…」
「借りているって、じゃあ誰に返すの」
私の手を握る手に力が入る。
「他に誰がいるの。貴女はフローレンス公女だよ、中身も全部含めて」
「でも…」
「———確かにその自信の無さはララの時から変わらないね」
呆れたような口調だけど、優しい眼差しのティーナが言った。
「坊やの言う通り、違和感があってもその身体はあんただけのものだ。慣れるしかないね」
「慣れる…のかな」
「新しい人生が始まったばかりだ。先はまだ長いんだから、大丈夫だよ」
新しい人生…?
「俺がついているから」
ラウルを見上げると笑顔を向けられた。
まだ実感が湧かないけど…既にこの身体は変わってしまったのだ。
これから更にどう変わっていくのか分からないけれど。
私の手を握るこの手が側にあれば…きっと、大丈夫なんだよね。
…どうしたんだっけ…とぼんやりしているとベッドの下で何かが動く気配がした。
「起きたか」
「……アルフィン」
起き上がったアルフィンが私の顔を覗き込む。
「体の具合はどうだ?」
「…良くも悪くもない感じ…?」
「なら大丈夫だな」
「私…どれくらい眠っていたの」
「三日間だ」
「上手く行ったの…?」
「ああ」
「ラウルは…」
「まだ眠っている」
「え…?」
「ただの人間があれだけの術を使ったんだ。魔力を使い果たしたんだろう」
アルフィンが頭を私に擦り付ける。
「眠っているだけだ、心配しなくていい」
モフモフしたアルフィンの感触は気持ちいいけれど…。
ラウルに…会いたい。触れてほしい。
「大丈夫か」
起き上がった私を見上げるアルフィンの声には心配そうな色が含まれていた。
…アルフィンはいつも素っ気ない言葉で、気が利かないようだけど…本当はとても優しい子なのよね。
「大丈夫よ、ありがとう」
アルフィンの頭を撫でて部屋を出る。
ラウルはよく眠っていて起きる気配がなかった。
「だいぶ顔色が良くなったな」
一緒について来たアルフィンがその顔を覗き込んだ。
「…良くなかったの?」
「倒れているのを見た時は青白くて死ぬかと思ったぞ」
術をかけ終わった後、そのままラウルは倒れ込んだそうだ。
ティーナだけでは運べないので一度家まで飛んで戻り———アルフィンと、まだ家にいたジェラルド様が私達を運んでくれたという。
「……ジェラルド様と二人でここにいたの?」
「そうだ」
「…何を話していたの?」
「別に何も」
わあ…空気が重そう。
私はベッドの傍に膝をつくとラウルの頬にそっと手で触れた。
温かさと静かで定期的な寝息にほっとする。
「ラウル…」
間近で顔を見つめていると…何だか泣きそうになってくる。
「ラウル…早く起きて」
名前を呼んで欲しい。
抱きしめて欲しい。
「ラウル…大好き……」
ラウルの寝顔を眺めているうちに、再び眠気がやってきたようだった。
…温かな感触と慣れた匂いが私を包み込む。
それはとても幸せな感覚だった。
意識が戻って来て…首の下の違和感に、腕枕されているのに気づいた。
「ん…」
「…フローラ様」
柔らかなものが私のこめかみに触れる。
私を抱きしめるこの腕と声は…
「ラウル…」
「おはよう」
目の前に優しい眼差しのラウルの顔があった。
「…起きたの…?」
「貴女が呼んでくれたから」
額に、頬に…ラウルのキスが落ちてくる。
「っ…や、くすぐったい…」
「フローラ様…」
私の唇をかすめたラウルの唇が口角を上げた。
「抱いていい?」
は…?
「いい訳ないだろう」
怒りに満ちた声に顔を向けると…腰に手を当てたティーナが立っていた。
え…待って見られてたの?!
「坊や…あんたは本当に懲りないね」
大股でベッドに近づくと、私に覆いかぶさろうとしていたラウルを引き剥がす。
「再封印が終わるまで我慢しろっていうから我慢しただろ」
「二人とも三日三晩寝たっきりだったんだよ!まず風呂!それからご飯!」
…何かティーナって本当にお母さんみたいだなあ。
ティーナ特製の苦い薬膳スープを飲みながら、私達が眠っていた間の事を聞く。
今のところ森に異常はないが、本当に封印がされているかはラウルが確認しないと分からないらしい。
「フローラ様。身体の具合はどう?」
ラウルに聞かれて首を傾げる。
「特に何も…悪い所はないけれど」
「魔力が消えたな」
足元で丸まっていたアルフィンが口を開いた。
「え?」
「フローラから魔力の匂いが全くしない」
「…私もそれは気になっていたよ」
「私の魔力…」
思わず自分の手のひらをみつめる。
魔力が消えたって事は…私は……。
「———おそらく〝フローレンス様〟は元々魔力を持っていないんだろうな」
ラウルが私の手を握った。
「呪いから解放されて、本来の身体に戻ったんだよ」
「…私…もう魔女じゃないんだ」
呟いたら急に心細くなった。
「…嫌?」
「私…フローレンスとして生きていていいのかしら…」
それは呪いが解けるかもしれないと知った時から抱いていた不安だった。
「私は…何回も生まれ変わってきたけれど…中身はずっと同じ、孤児のララだから…本当のフローレンス・ロージェルじゃないし……」
こんな高貴で…綺麗な人が〝私〟だという事にずっと違和感があった。
「〝私〟はこの身体を借りているだけだから…」
「借りているって、じゃあ誰に返すの」
私の手を握る手に力が入る。
「他に誰がいるの。貴女はフローレンス公女だよ、中身も全部含めて」
「でも…」
「———確かにその自信の無さはララの時から変わらないね」
呆れたような口調だけど、優しい眼差しのティーナが言った。
「坊やの言う通り、違和感があってもその身体はあんただけのものだ。慣れるしかないね」
「慣れる…のかな」
「新しい人生が始まったばかりだ。先はまだ長いんだから、大丈夫だよ」
新しい人生…?
「俺がついているから」
ラウルを見上げると笑顔を向けられた。
まだ実感が湧かないけど…既にこの身体は変わってしまったのだ。
これから更にどう変わっていくのか分からないけれど。
私の手を握るこの手が側にあれば…きっと、大丈夫なんだよね。
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