虹の瞳を継ぐ娘

冬野月子

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第2章 王都と学園

02

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レナルドの母親、側妃アナベラとのお茶会は穏やかに終わった。
息子によく似た面差しの美しいアナベラは、心からイリスを歓迎してくれたようだった。


「ここから王都が一望できるんだ」
お茶会が終わるとレナルドはイリスを物見塔へと連れてきた。
石造りの塔の長い螺旋階段を登った先、ぐるりと四方を見渡せるようにいくつもの窓が作られている。

「わあ…」
窓の一つから顔を出してイリスは声を上げた。
こんなに高い場所から景色を見下ろすのも初めてだ。
城を中心に放射状に太い道が伸び、その両脇に建物が並んでいる。
多くの人々が行き交い、遠目からでも街の賑わいが聞こえてくるようだった。

「とても広いのね」
興奮したように頬を赤く染めて見渡し、反対側の窓へと駆け寄ったイリスの瞳が、ある一点を捉えて動かなくなった。
「何か見つけた?」
イリスの視線の先に目をやると、白い大きな建物がある。

「あれは大神殿だよ。この国で王城の次に大きいんだ」
レナルドは大神殿から目を逸らさないイリスの横顔を見つめた。

初めて会った時は天使のように愛らしかった少女は、会う度に大人の美しさを増やしていった。
どこか憂いを感じさせる綺麗な横顔に心臓が高鳴るのを感じながら———返事もなく、視線を眼下から逸らそうとしない姿に軽く嫉妬を覚える。

「気になるなら帰りに寄ってみようか」
「え?」
「大神殿に」
ようやくレナルドと視線を合わせてイリスは目を瞬かせた。
「行く?」
「…ええ」
少し戸惑いながらイリスは頷いた。




「大きい…」
馬車から降りるとイリスは神殿を見上げ、ほう、と息を吐いた。
太い大理石の柱が並び立つ姿は大神殿の威厳を感じさせた。

「ようこそおいで下さいました殿下、オービニエ様」
先遣を出しておいたからだろう、十人ほどの神官が現れるとその中で一番豪華な刺繍が施されたローブをまとった男性が前に出た。
「私が祭司長です」
「…よろしくお願いいたします」
最高位の祭司長自らの出迎えに、イリスは身体を固くしながら差し出された手を取った。
「そう緊張なさらずに。ご案内いたしましょう」
祭司長は優しい笑顔を向けてそう言った。



「神殿は誰にでも等しく解放された場所。ですが…どうしても身分による揉め事が生じてしまいますので、拝殿は貴族用と平民用に分かれております」
二人は祭司長の説明を受けながら、長い廊下を歩いていた。
「こちらが拝殿です」
案内されたのは、広い空間だった。

正面には大理石で作られた、見上げるほど大きくて立派な男神の像が置かれていた。
その手前には金色の燭台が二つ置かれた、豪華な祭壇がある。
「どうぞこちらの祭壇の前へ」
レナルドと並んで立ち、彼に合わせて膝を折ると胸の前で手を組む。


『よく来た虹の娘よ』

頭の中に声が響くと同時に、イリスの目の前が真っ白になった。
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