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第5章 虹の架け橋
00:SIDE S
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「ほら、入っておいでクリストファー」
フェリクスは振り返ると、ドアから顔だけ出してこちらを覗いている息子に声をかけた。
「…大丈夫?」
「もう大丈夫だよ」
父親の言葉に嬉しそうに顔を綻ばせると、クリストファーはベッドへと駆け寄った。
「母様!」
「クリストファー、いい子にしていた?」
「はい!」
本当は母親に抱きつきたかったが、その腕の中に小さな命が抱かれているのを見てぐっと我慢する。
そんな息子の様子に目を細めて、レインはクリストファーが赤子の顔をよく見えるようにそっと腕を差し出した。
「ほら、あなたの妹よ」
「ちいちゃい…」
赤子とはこんなに不思議な生き物なのか。
それは全てが小さくて柔らかそうだった。
その瞳は固く閉ざされていたが、夢を見ているのか、口元はなにやら言いたげにむにゅむにゅと動いている。
それを見ているとなんとも言えない、不思議な感情が心の奥から湧き上がってくるのを幼いクリストファーは感じた。
妹が生まれて二日後。
クリストファーはようやく母と妹に対面する事を許された。
難産だったのであろう、出産の時の母親の苦しげな声は部屋にいたクリストファーの元まで聞こえていた。
その声はいつまでも響き———永遠に終わらないのではないかと恐怖にかられた頃、ようやく元気な赤子の声に変わったのだ。
そんな苦労など知るよしもない妹はすやすやと眠っていた。
「…さわってもいい?」
まるで美味しいリンゴのような、赤く染まった頬に衝動を抑えきれず、クリストファーはそう言って母親を見上げた。
「少しだけよ」
許しを得て、指先で頬をちょんと突く。
その柔らかさに驚いていると、ん…と赤子が身じろいだ。
慌てて手を離す息子の姿を両親は優しく見守っている。
「…名前は決めたの?」
クリストファーは父親を見上げた。
「まだだよ。候補は二つあるんだ」
「なんて言うの?」
「一つは〝ディアーナ〟だよ。もう一つは…」
「あ」
レインの声に父子はバッとそちらを向いた。
「どうした」
「目が…」
赤子の小さな黒いまつ毛が震えた。
上下に揺れると、その中から青い光が見えてきた。
「あ———」
それは不思議な色だった。
青い瞳の中に赤や黄色…幾つもの色が混ざっている。
ゆっくりと瞬きをすると、赤子は眩しそうに目を細め、周囲を見回し———ふにゃりと笑顔を浮かべた。
「きれいな色…」
「…レイン…まさかこれは…」
「ああ…女神よ!」
レインは赤子を抱きしめた。
「女神…我らを見捨てずにおられた事…感謝いたします———」
その頬に涙を伝わせながら娘を抱きしめる母親を見つめるクリストファーの肩に、フェリクスはぽんとその手を乗せた。
「父様」
「この子は〝イリス〟だ」
「イリス…」
「もしも生まれた女の子の瞳が虹色だったらイリスと名付けると、そう決められているんだよ」
フェリスクは息子を見下ろした。
妻レインの実家に伝わる、彼らの宿命と希望を負った特別な名前。
我が子達がこの先どんな未来を辿るのか、それはフェリクスには分からない。
けれど、父親として守る事ならばできる。
「イリスは神様から預かった大切な宝物だ。いいかい、これからこの子を守るのがお前の役目だ」
「はい」
父親を見上げてクリストファーは大きく頷いた。
フェリクスは振り返ると、ドアから顔だけ出してこちらを覗いている息子に声をかけた。
「…大丈夫?」
「もう大丈夫だよ」
父親の言葉に嬉しそうに顔を綻ばせると、クリストファーはベッドへと駆け寄った。
「母様!」
「クリストファー、いい子にしていた?」
「はい!」
本当は母親に抱きつきたかったが、その腕の中に小さな命が抱かれているのを見てぐっと我慢する。
そんな息子の様子に目を細めて、レインはクリストファーが赤子の顔をよく見えるようにそっと腕を差し出した。
「ほら、あなたの妹よ」
「ちいちゃい…」
赤子とはこんなに不思議な生き物なのか。
それは全てが小さくて柔らかそうだった。
その瞳は固く閉ざされていたが、夢を見ているのか、口元はなにやら言いたげにむにゅむにゅと動いている。
それを見ているとなんとも言えない、不思議な感情が心の奥から湧き上がってくるのを幼いクリストファーは感じた。
妹が生まれて二日後。
クリストファーはようやく母と妹に対面する事を許された。
難産だったのであろう、出産の時の母親の苦しげな声は部屋にいたクリストファーの元まで聞こえていた。
その声はいつまでも響き———永遠に終わらないのではないかと恐怖にかられた頃、ようやく元気な赤子の声に変わったのだ。
そんな苦労など知るよしもない妹はすやすやと眠っていた。
「…さわってもいい?」
まるで美味しいリンゴのような、赤く染まった頬に衝動を抑えきれず、クリストファーはそう言って母親を見上げた。
「少しだけよ」
許しを得て、指先で頬をちょんと突く。
その柔らかさに驚いていると、ん…と赤子が身じろいだ。
慌てて手を離す息子の姿を両親は優しく見守っている。
「…名前は決めたの?」
クリストファーは父親を見上げた。
「まだだよ。候補は二つあるんだ」
「なんて言うの?」
「一つは〝ディアーナ〟だよ。もう一つは…」
「あ」
レインの声に父子はバッとそちらを向いた。
「どうした」
「目が…」
赤子の小さな黒いまつ毛が震えた。
上下に揺れると、その中から青い光が見えてきた。
「あ———」
それは不思議な色だった。
青い瞳の中に赤や黄色…幾つもの色が混ざっている。
ゆっくりと瞬きをすると、赤子は眩しそうに目を細め、周囲を見回し———ふにゃりと笑顔を浮かべた。
「きれいな色…」
「…レイン…まさかこれは…」
「ああ…女神よ!」
レインは赤子を抱きしめた。
「女神…我らを見捨てずにおられた事…感謝いたします———」
その頬に涙を伝わせながら娘を抱きしめる母親を見つめるクリストファーの肩に、フェリクスはぽんとその手を乗せた。
「父様」
「この子は〝イリス〟だ」
「イリス…」
「もしも生まれた女の子の瞳が虹色だったらイリスと名付けると、そう決められているんだよ」
フェリスクは息子を見下ろした。
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けれど、父親として守る事ならばできる。
「イリスは神様から預かった大切な宝物だ。いいかい、これからこの子を守るのがお前の役目だ」
「はい」
父親を見上げてクリストファーは大きく頷いた。
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