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第5章 虹の架け橋
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「ふざけるな!」
階段を上っていく二人に向かって叫ぶとレナルドは思わず追おうとした。
「殿下!来ます」
ラナの声に我に帰ると振り返る。
「…お前は僕達の味方なんだな」
こちらへ向かってくる一団を見つめたまままレナルドは言った。
「女神が殿下をお認めになるのならば、私は殿下をお守りします」
そう答えてラナは剣を抜いた。
「ですが女神を怒鳴りつけるのは容認できません」
「———変な事を言うからだ」
レナルドも剣を抜くと構えを取った。
「ユーピテルにも誰にも、イリスは渡さない」
「王子!ラナ!」
最初に着いたのはバーナードだった。
「お嬢は?!」
「神殿に入っていった」
「暫く王太子殿下達を足止めします」
「そうか」
頷くと、バーナードは馬から降りて神殿に背を向け、二人の前に立った。
すぐにオレール達やサルマントの者達も来た。
「ラナ?!貴様裏切るのか!」
「———私が忠誠を誓うのは女神ジュノーただひとり」
サルマントの騎士に向かってラナは言った。
「女神の命により、ここから先へは通さない」
馬車からヘンリクが降りてきた。
「姫はこの中にいるのか」
「他国の令嬢を攫うなど、王太子にあるまじき行為だな」
剣先をヘンリクに向けてレナルドは言った。
「それが姫を手に入れる方法であれば、何でもする」
レナルドを見据えてヘンリクは答えた。
「虹の姫は我がサルマントにとって何よりも得難いもの。手段など選んでられないからな」
「イリスは渡さない。彼女は僕が見つけたんだ」
あの小さな領地の、小さな離れに住んでいた少女を。
見つけて、ここまで関係を育てて来たのだ。
「それはこちらも同じ事」
ヘンリクの右手が光ると、青い光を帯びた剣が現れた。
「姫は頂いていく」
「誰が渡すか!」
ギィンッと音を立てて二本の剣がぶつかった。
「イリス」
荒れ果てた神殿の中。
クリストファーは先を歩く妹に声を掛けた。
「はい?」
振り返った表情をじっと見定める。
「…今はちゃんと〝イリス〟だな」
少し首を傾げて、兄の言いたい事を理解するとイリスは微笑んだ。
「王太子に変な事をされなかったか」
「……大丈夫よ」
「その間は何だ」
「本当に、大丈夫だから」
イリスは赤い瞳を見上げた。
「お兄様はその瞳はどうしたの?」
「ユーピテルの力を借りているんだ」
「…私達の力って、聞いていたものと違う気がするのだけれど」
女神の声を聞くには、魔力を使い身体にかなりの負担がかかるものだと聞いていた。
だから年に数度しか声を聞く事もなかったし、巫女として務められるのも長くても十年と短い間だったという。
また声を聞くには祈りを捧げ、その言葉もお告げとして一方的に与えられるものだと。
けれどもイリスは幾度となくユーピテルと、そして女神ともまるで人間とするように会話を交わしているし、それで魔力が奪われている感覚もない。
それにそういう能力を使えるのは女性だけであって、クリストファーがイリス同様にユーピテルと会話をしたりその力を使う事ができるのも不思議だ。
『使われる事のなかった巫女の力が溜まっていき、濃くなったのかもしれぬな』
頭の中ではなく———外から女神の声が聞こえた。
階段を上っていく二人に向かって叫ぶとレナルドは思わず追おうとした。
「殿下!来ます」
ラナの声に我に帰ると振り返る。
「…お前は僕達の味方なんだな」
こちらへ向かってくる一団を見つめたまままレナルドは言った。
「女神が殿下をお認めになるのならば、私は殿下をお守りします」
そう答えてラナは剣を抜いた。
「ですが女神を怒鳴りつけるのは容認できません」
「———変な事を言うからだ」
レナルドも剣を抜くと構えを取った。
「ユーピテルにも誰にも、イリスは渡さない」
「王子!ラナ!」
最初に着いたのはバーナードだった。
「お嬢は?!」
「神殿に入っていった」
「暫く王太子殿下達を足止めします」
「そうか」
頷くと、バーナードは馬から降りて神殿に背を向け、二人の前に立った。
すぐにオレール達やサルマントの者達も来た。
「ラナ?!貴様裏切るのか!」
「———私が忠誠を誓うのは女神ジュノーただひとり」
サルマントの騎士に向かってラナは言った。
「女神の命により、ここから先へは通さない」
馬車からヘンリクが降りてきた。
「姫はこの中にいるのか」
「他国の令嬢を攫うなど、王太子にあるまじき行為だな」
剣先をヘンリクに向けてレナルドは言った。
「それが姫を手に入れる方法であれば、何でもする」
レナルドを見据えてヘンリクは答えた。
「虹の姫は我がサルマントにとって何よりも得難いもの。手段など選んでられないからな」
「イリスは渡さない。彼女は僕が見つけたんだ」
あの小さな領地の、小さな離れに住んでいた少女を。
見つけて、ここまで関係を育てて来たのだ。
「それはこちらも同じ事」
ヘンリクの右手が光ると、青い光を帯びた剣が現れた。
「姫は頂いていく」
「誰が渡すか!」
ギィンッと音を立てて二本の剣がぶつかった。
「イリス」
荒れ果てた神殿の中。
クリストファーは先を歩く妹に声を掛けた。
「はい?」
振り返った表情をじっと見定める。
「…今はちゃんと〝イリス〟だな」
少し首を傾げて、兄の言いたい事を理解するとイリスは微笑んだ。
「王太子に変な事をされなかったか」
「……大丈夫よ」
「その間は何だ」
「本当に、大丈夫だから」
イリスは赤い瞳を見上げた。
「お兄様はその瞳はどうしたの?」
「ユーピテルの力を借りているんだ」
「…私達の力って、聞いていたものと違う気がするのだけれど」
女神の声を聞くには、魔力を使い身体にかなりの負担がかかるものだと聞いていた。
だから年に数度しか声を聞く事もなかったし、巫女として務められるのも長くても十年と短い間だったという。
また声を聞くには祈りを捧げ、その言葉もお告げとして一方的に与えられるものだと。
けれどもイリスは幾度となくユーピテルと、そして女神ともまるで人間とするように会話を交わしているし、それで魔力が奪われている感覚もない。
それにそういう能力を使えるのは女性だけであって、クリストファーがイリス同様にユーピテルと会話をしたりその力を使う事ができるのも不思議だ。
『使われる事のなかった巫女の力が溜まっていき、濃くなったのかもしれぬな』
頭の中ではなく———外から女神の声が聞こえた。
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