ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―

冬野月子

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27 心当たり

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「アリス・リオットが?!」
待ち合わせ場所のレストランの個室で男性陣と合流し、アリスと会ったことを告げると殿下は目を見開いた。

「国外に逃亡したと聞いたが……」
「はい……それが、ある人と会うために戻ってきたそうで」
「ある人?」
アリスが言ったことを説明すると、殿下やラウルたちの表情が険しくなった。

「――何で、その女がそんなこと知ってるんだ」
エディーが眉をひそめて言った。
「アリス・リオットは、何故か他の者が知り得ないようなことを知っている。彼女と関わった者のなかにはそのため彼女のことを女神だの予言者だのと讃える者もいた」
殿下が答えた。
「私も言われたが……全く外れていたな」
「何を言われたんです?」
「クリスティナは卑怯だの派手好きだのと。見当違いもはなはだしい」
「はあ……」
それは『ゲームのクリスティナ』だ。
アリスはゲームから得た情報を言っていたから、ゲームと外れた私のことは彼女は何も知らないだろう。

「アリス・リオットの話が本当かは分かりませんが。一応ダニエル殿にそのことを伝えておいた方がいいでしょうね」
ラウルが言った。
「そうだな」
「銀髪で元王子ですか……」
「そういえばお兄様が相手の顔を見たのですが。白っぽい髪色の若い男だと言っていましたわ」
サーシャの言葉に、殿下は思い出そうとするように視線を上げた。
「――もしかしたら……」
「心当たりがあるのですか」
「留学先で会った、バートランドの王子が銀髪だった。第一王子だが妾腹で、正妃の命により留学という名目で追い出されたと言っていて……しばらくして行方不明になったと聞いた」
「……その方の名前は?」
「確か……シリルだったと」
私たちは顔を見合わせた。

「まさか……本当に?」
「確認のしようがないな、犯人を捕らえない限りは。バートランド王国は我が国との交流はあまりないし」
バートランドは……確か海の向こう、大陸にある大きな国だったと思う。

「ところで、あの女性が言っていた『隠れキャラ』だの『ラウルルート』って、何なのですの?」
サーシャがラウルに尋ねた。
「……さあ」
「私も聞いたな。隠れキャラというのは初めて聞いたが、その『ルート』というものに『入る』と相手と恋愛関係になるそうだ」
「ええ?!」
「僕はルートには入ってないし、アリス・リオットとは一度話しただけだからね」
声を上げたサーシャにラウルはため息とともにそう言った。


「クリスティナ嬢」
食事を終え出口へと向かっているとラウルが声をかけてきた。
「隠れキャラのシリルって、知ってた?」
「ううん。ラウルの恋愛ルートはやったけど、この街には来なかったもの」
「そうか。僕も研究者ルート目指してて途中だったからな……」
やっぱりラウルも知らないのね。
ゲーム内のどこかのルートに隠れキャラがいるという情報は知ってきたけれど、私も優斗も攻略情報は見ない派だったから。それがまさか、こんな所に出てくるなんて。

「でも……ヒロインがラウルルートじゃないのに隠れキャラがいるの?」
「ゲーム的には隠れキャラでも、この世界には初めから存在しているよね」
「あ……そうね」
「今ここにいる僕たちはゲームのために存在しているんじゃない。それを忘れないでよ」
「……ええ」
そうよね。私とラウルも、前世やゲームの記憶を持っているけれど。
それでもちゃんと、意志を持った人間としてこの世界に生まれて生きているのよね。


帰りは予定を変更して図書館へ寄ることになった。
「そうですか。情報ありがとうございます」
明日の警備の確認をしていたサーシャの兄、ダニエル様は私たちの話を聞いてお礼を言うと、サーシャに向いた。
「ところで、そのアリス・リオットには連れがいなかったか?」
「連れ?」
「彼女と一緒に騎士見習いが出奔しているはずだ」
そういえば……そんなことを聞いたような。
「その騎士見習いはうちの所属になるはずだったんだ。見どころがあって期待していたのだが」
「そうでしたの。……でもそれらしい人はいませんでしたわよね」
「ええ」
私は頷いた。

「もしもその人がいたら捕まえますの?」
「いや、もう騎士団とは関わりがないからな。ただ説教の一つくらいはしておきたい」
「まあ、お兄様の説教!」
サーシャが声を上げると、ダニエル様の後ろにいる騎士たちがその顔を引き攣らせた。……多分、見た目は温厚そうな人だけれど、怒るととっても怖いんだろうな。
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