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28 流星群の夜
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「あっ今流れましたわ」
「え、どこ?」
「西の方ですわ……あっ」
「流れたわ!」
つうっ、と光の筋が満点の星空を流れていくのが見えた。
今夜から数日間、流星がよく見えるのだという。
本当ならば天文台で見る予定だったのだが、盗難予告の件もあって今夜は念のため屋敷の屋上で眺めることになったのだ。
「流星群というからもっとたくさん流れると思っていましたの」
サーシャの言葉に私も頷いた。
もう三十分ほどいるだろうか、その間流れたのは、私が気づかなかった分を含めて五回ほどだ。
「今回はこんなものだよ。沢山流れるのは滅多に見られないから」
ラウルが答えた。
「そうなんですのね」
「来年はもっと多く流れる流星群が見られる予定だよ」
「まあ、見てみたいですわ!」
「じゃあまた来年来ようか」
「はい……!」
(そういえば……盗難予告はどうなったのかしら)
ラウルとサーシャの微笑ましい会話を聞きながらそのことを思い出していると、ふわりと何かが肩にかかった。
「寒くない?」
「……はい……」
後ろからショールをかけてくれた殿下を振り返ろうとして……ふいに四日前の出来事を思い出してしまった。
あの夜もこの場所で、殿下にショールをかけられて……その後……。
かあっと顔に熱が集まるのを感じて慌てて空を見上げると、肩に手がかけられた。
「二人きりだったらまた抱きしめられたのに」
耳元で囁かれて背中がぞくっとする。
(ダメだ……意識しちゃう)
伝わってくる殿下の体温に。あの夜のことや、馬車の中で……触れられた感触が蘇ってきて。殿下に聞かれそうなくらい、痛いほど心臓がドキドキする。
「殿下。近づきすぎではないですか」
不機嫌そうなエディーの声が聞こえて、少し冷静になれたというか落ち着けた。
「そうかな。いつもこれくらいだけど」
「いつも?」
「ね、クリスティナ」
「えっ」
私に聞かないで!
「クリスティナは同意していないようですが」
「恥ずかしがっているだけだ」
「ほう。そうですか」
(やめて)
エディーと殿下のやりとりにヒヤヒヤしていると、バタバタと足音が聞こえてきた。
「ラウル様。ダニエル・アボット殿がお見えです」
お屋敷の執事がやってきた。
「お伝えしたいことがあるそうで……」
「――そうか、分かった」
頷いてラウルは私たちを振り返った。
「会ってきます」
「ああ、私も行こう」
殿下がそう答えて、私たち全員で向かうことになった。
「ああ、殿下」
応接間へ入ると、心なしか疲れたような表情のダニエル様と、三名の騎士がいた。
「……その顔はダメだったようだな」
「は。申し訳ございません、盗まれてしまいました」
ダニエル様は頭を下げた。ええ、盗られてしまったの?!
「かなり厳重な警備だと思ったのだが。どうやって盗まれたのだ」
「は、それが……。同時に数カ所から爆発音のようなものが聞こえまして。我々が目を離した一瞬の隙に……」
「数カ所から……それは別々の場所からですか」
ラウルが尋ねた。
「ああ」
「複数犯の可能性がありますね」
「ああ、それも含めて調査する予定だが……その前に殿下にお伝えしないとならないことがありまして」
「私に?」
「盗まれたブローチのあった場所に、こんな紙が」
ダニエル様は小さな一枚の紙を差し出した。
「……どういう意味だ」
受け取った紙へ視線を落とした殿下は眉をひそめた。
「王太子へ。今宵もう一つの『女王の涙』を頂く?」
紙を覗き込んだラウルがそれを読み上げた。
「もう一つの女王の涙?」
「殿下、心当たりは」
「……いや」
「女王の涙と名付けられた宝石はあれ一つきりのはずです」
ラウルが言った。
「ああ、図書館長にも確認している」
「もう一つとは一体……。それに何故殿下宛に?」
「女王の涙って、どんな宝石ですの?」
皆で顔を見合わせているとサーシャが尋ねた。
「女王の流した涙で色が変わったと伝わる青い石だよ。元々は赤かったと言われている」
「ああ、明るい青い色で、クリスティナの瞳と同じ色……」
何かに気づいたように殿下が私を見た、その瞬間。
激しい音とともに応接間の窓ガラスが一斉に割れた。
「きゃあ?!」
「何だ!」
「殿下!」
何かが壊れるような、足音のような様々な音と声が飛び交い……視界が白く染まって何も見えなくなった。
(何これ……煙?!)
それに妙な臭いが……まさか火事?
(でも……このにおいは……ちが……う……)
「クリスティナ!!」
誰かの声を遠くに聞きながら、私は意識を手放した。
「え、どこ?」
「西の方ですわ……あっ」
「流れたわ!」
つうっ、と光の筋が満点の星空を流れていくのが見えた。
今夜から数日間、流星がよく見えるのだという。
本当ならば天文台で見る予定だったのだが、盗難予告の件もあって今夜は念のため屋敷の屋上で眺めることになったのだ。
「流星群というからもっとたくさん流れると思っていましたの」
サーシャの言葉に私も頷いた。
もう三十分ほどいるだろうか、その間流れたのは、私が気づかなかった分を含めて五回ほどだ。
「今回はこんなものだよ。沢山流れるのは滅多に見られないから」
ラウルが答えた。
「そうなんですのね」
「来年はもっと多く流れる流星群が見られる予定だよ」
「まあ、見てみたいですわ!」
「じゃあまた来年来ようか」
「はい……!」
(そういえば……盗難予告はどうなったのかしら)
ラウルとサーシャの微笑ましい会話を聞きながらそのことを思い出していると、ふわりと何かが肩にかかった。
「寒くない?」
「……はい……」
後ろからショールをかけてくれた殿下を振り返ろうとして……ふいに四日前の出来事を思い出してしまった。
あの夜もこの場所で、殿下にショールをかけられて……その後……。
かあっと顔に熱が集まるのを感じて慌てて空を見上げると、肩に手がかけられた。
「二人きりだったらまた抱きしめられたのに」
耳元で囁かれて背中がぞくっとする。
(ダメだ……意識しちゃう)
伝わってくる殿下の体温に。あの夜のことや、馬車の中で……触れられた感触が蘇ってきて。殿下に聞かれそうなくらい、痛いほど心臓がドキドキする。
「殿下。近づきすぎではないですか」
不機嫌そうなエディーの声が聞こえて、少し冷静になれたというか落ち着けた。
「そうかな。いつもこれくらいだけど」
「いつも?」
「ね、クリスティナ」
「えっ」
私に聞かないで!
「クリスティナは同意していないようですが」
「恥ずかしがっているだけだ」
「ほう。そうですか」
(やめて)
エディーと殿下のやりとりにヒヤヒヤしていると、バタバタと足音が聞こえてきた。
「ラウル様。ダニエル・アボット殿がお見えです」
お屋敷の執事がやってきた。
「お伝えしたいことがあるそうで……」
「――そうか、分かった」
頷いてラウルは私たちを振り返った。
「会ってきます」
「ああ、私も行こう」
殿下がそう答えて、私たち全員で向かうことになった。
「ああ、殿下」
応接間へ入ると、心なしか疲れたような表情のダニエル様と、三名の騎士がいた。
「……その顔はダメだったようだな」
「は。申し訳ございません、盗まれてしまいました」
ダニエル様は頭を下げた。ええ、盗られてしまったの?!
「かなり厳重な警備だと思ったのだが。どうやって盗まれたのだ」
「は、それが……。同時に数カ所から爆発音のようなものが聞こえまして。我々が目を離した一瞬の隙に……」
「数カ所から……それは別々の場所からですか」
ラウルが尋ねた。
「ああ」
「複数犯の可能性がありますね」
「ああ、それも含めて調査する予定だが……その前に殿下にお伝えしないとならないことがありまして」
「私に?」
「盗まれたブローチのあった場所に、こんな紙が」
ダニエル様は小さな一枚の紙を差し出した。
「……どういう意味だ」
受け取った紙へ視線を落とした殿下は眉をひそめた。
「王太子へ。今宵もう一つの『女王の涙』を頂く?」
紙を覗き込んだラウルがそれを読み上げた。
「もう一つの女王の涙?」
「殿下、心当たりは」
「……いや」
「女王の涙と名付けられた宝石はあれ一つきりのはずです」
ラウルが言った。
「ああ、図書館長にも確認している」
「もう一つとは一体……。それに何故殿下宛に?」
「女王の涙って、どんな宝石ですの?」
皆で顔を見合わせているとサーシャが尋ねた。
「女王の流した涙で色が変わったと伝わる青い石だよ。元々は赤かったと言われている」
「ああ、明るい青い色で、クリスティナの瞳と同じ色……」
何かに気づいたように殿下が私を見た、その瞬間。
激しい音とともに応接間の窓ガラスが一斉に割れた。
「きゃあ?!」
「何だ!」
「殿下!」
何かが壊れるような、足音のような様々な音と声が飛び交い……視界が白く染まって何も見えなくなった。
(何これ……煙?!)
それに妙な臭いが……まさか火事?
(でも……このにおいは……ちが……う……)
「クリスティナ!!」
誰かの声を遠くに聞きながら、私は意識を手放した。
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