悪役令嬢は国一番の娼婦を目指したい

冬野月子

文字の大きさ
8 / 14

08

「ああイザベラ。遅くに悪いね」
どこか疲れた顔のメイナードが待っていた。

「いいえ。あの至急確認したい事とは何でしょう」
「明日ここに来る予定の使節団の一人が、視察先で発疹を出してしまってね…どうも夕食時に食べたものに原因があるらしい」
「まあ…」
「おそらく食後のデザートに問題があったのだろうと」
メイナードは一枚の紙を差し出した。
そこにはメニューが書かれている。
デザートは果物の盛り合わせだ。

「タドリーニ国は果物を食べる習慣がないのは知っているよね」
「はい、それで明日も果物入りのお酒を用意しようと…」
そこまで言ってイザベラは気付いた。

「———メニューを変えないといけませんね」
おそらく果物アレルギーの可能性が高い。
初めて口にしたのだから、本人も知らなかったのだろう。

(そうか…そういう事も考えなきゃいけなかったんだ)

現在、タドリーニ国の視察団が滞在しており、明日はオーキッドハウスで接待の予定となっている。
外国人相手の接待の場合、相手国の風習などは事前に調べていたのだけれど。
そこまで思い至らなかった事をイザベラは反省した。

「あの…その発疹を起こされた方はどうなさいましたか」
「症状自体は軽くて、医務室で治療を受けたらじきに治った。明日もここへ来る予定だ」
「そうですか」
イザベラは改めてメニュー表を見た。

果物は計五種類。
明日の為に用意していたものとほぼ同じだ。
この内のどれにアレルギー反応があったかまでは分からないだろう。

「ちなみにワインは大丈夫でしたか?」
「ああ…そうだな、食事中は問題なかったようだ」
「では明日のお酒はワインを中心に。ブドウを漬けた蒸留酒は残しておきましょう。念のため発疹を起こされた方にはお出ししないようにして…おつまみも変えないと」
素早くメニューを再構築していくイザベラを、メイナードは目を細めて見つめていた。


「それでは私は厨房に伝えてきます。ご連絡頂きありがとうございました」
「ああ。頼んだよ」
「はい、失礼いたします」
頭を下げてイザベラは部屋から出て行った。




「殿下、これを」
イザベラが出て行くと、ハロルドは一枚の紙をメイナードに手渡した。

「———今日も宰相が来ていたのか。よくそんな暇があるな」
渡された紙を眺めてメイナードは呟いた。
そこにはこの一ヶ月程度の間、イザベラの客としてやってきた者達の日付と名前が書かれていた。

「いい息抜きになっているようですよ、なにせイザベラ嬢は政治にも明るいですからね」
「…それで、パトロンの話は?」


「はい、四件ございました」
ハロルドは答えた。
「もちろんお断りさせて頂きましたが…今後も増えるでしょうし、パトロンが決まらない限り諦めにならない方も多くいらっしゃるかと」
「……そうか」

「それから、最初はイザベラ様の名前と容姿目当てでいらっしゃる方が多かったのですが…最近は彼女の聡明さに関心をお持ちの方も多いです」
じっとメイナードを見つめながらハロルドは言った。
「———そうだろうな」
メイナードはため息をついた。

「根回しは未だ終わっていないが…待っている余裕もないか」
「さようでございますね。こういった事は早く動いた方がよろしいかと」

「分かった。タドリーニの使者が帰国したら場を設けて欲しい」
そう告げてメイナードは立ち上がった。

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~

ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、 夜会当日── 婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、 迎えに来ることはなかった。 そして王宮で彼女が目にしたのは、 婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。 領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、 感情に流されることもなく、 淡々と婚約破棄の算段を立て始める。 目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、 頭の中で、今後の算段を考えていると 別の修羅場が始まって──!? その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、 エヴァンジェリンの評価と人生は、 思いもよらぬ方向へ転がり始める── 2月11日 第一章完結 2月15日 第二章スタート予定

いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ
恋愛
 初夜の最中。王子は死んだ。  犯人は誰なのか。  妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。  12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。