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第2章 再会と出会い
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「…ねえ、あの人って」
フェールの後ろ姿を見送って、ルーチェが口を開いた。
「〝攻略対象〟のフェール・ノワール様よね」
「ええ」
「お兄様って…」
「私はロゼ・ノワール。妹なの」
「———あの噂になってた氷を溶かした妹姫って、雫の事だったの?」
「氷を溶かした…姫…?」
ルーチェの言葉にロゼは眉をひそめた。
「氷の宰相が最近笑うようになったって王宮中で評判なのよ。ずっと病気療養していた、溺愛している妹とやっと一緒に暮らせるようになったからって」
「それは…当たっているの…かな…」
自覚はあるけれど、改めて言われると恥ずかしい。
「そうか…似てるとは思ってたけど。雫はフェール様の妹だったの」
「…ねえひかり。転生したってどういう事?」
納得したように頷くルーチェにロゼは尋ねた。
「その姿…ヒロインなのよね?」
「そう!雫が行方不明になって半年後くらいかな。突然光に包まれて…目を開けたら何もない白い空間にいて、目の前に白い人がいたの」
「白い…人?」
「人じゃないんだろうけど、私に向かってゲームの世界に転生して貰いたいって言うの」
「え?」
「夢かなと思って、しますって言ったんだけど、気がついたら本当に赤ちゃんになってて。それでずっとルーチェとして生きていたのよ」
「え…待って?」
ロゼは混乱する頭を整理するように顔に手を当てた。
「私がこの世界に戻ってきてから…まだひと月も経っていないのよ」
「え?」
「その前から…私が向こうに行く前からもうひかりはこの世界にいたって事?」
二人は顔を見合わせた。
確かヒロイン・ルーチェの年齢は十八歳。ロゼと同じはずだ。
「…それって私は時間を遡ったって事?というかひと月って事はまだ日本に私がいるの…?え、待って?」
…仕草は〝ひかり〟のままなんだ。
頭を抱えて唸るルーチェを見てロゼは思った。
その見た目はすっかり変わってしまったけれど、中身は変わっていない。
それが嬉しくて、ロゼはそっとルーチェに抱きついた。
「雫?」
「ひかりにまた会えて…良かった…二度と会えないと思っていたから」
考えないようにしていた。
生まれた場所に戻り、本当の家族と再会できた事は嬉しい事だけれど。
ロゼとしてよりも雫として生きた———向こうでの家族、そして友人と過ごした時間の方が長かったのだ。
お別れの挨拶も出来ないまま…彼らとはこのまま永遠に会えないのだと、その事はあえて意識から逸らしていた。
それがまさか…こんな形でひかりと再会できるなんて。
「雫」
ルーチェはロゼを抱きしめ返した。
「びっくりしたよ、突然行方不明になるんだもの」
「ごめん…」
「家出するような心当たりもないし、警察も事故や事件の形跡はないっていうし。おばさん達もすごく心配してたよ」
「……うん」
ズキリ、とロゼの胸が痛んだ。
素性も分からない自分を育ててくれた義理の両親。
彼らはずっと雫の事を案じているのだろう。
「お母さん達に伝えられないのかな…私は元気だって。本当の家族の所に帰ったんだって」
「雫…」
「———ちゃんとお別れしたかった」
それはフェールや実の両親には言えない想いだった。
「…伝えられるといいね」
ロゼの背中を撫でながらルーチェは言った。
迎えにきたフェールが見たのは、ルーチェの膝の上で眠るロゼの姿だった。
「…随分と気を張っていたようですね」
ロゼの髪を撫でていた手を止めると、ルーチェはフェールを見上げた。
「こちらの生活に慣れようと無理していたのでしょう。雫…ロゼ様は辛くてもそれを自分の中に抱え込んで隠してしまいますから」
「———君はロゼの事をよく知っているのだな」
「十年間一緒にいましたから」
十年、という数字に眉をピクリとさせたフェールにルーチェは口端を緩めた。
「私の一番大切な友人です」
「…そうか」
フェールは眠るロゼを抱き上げた。
「君は侍女見習いと言ったな」
「はい」
「先刻は急いでいたようだが、仕事の途中だったのか」
「あ…しまった…」
次の仕事先へ向かう途中だったのだが…すっかり忘れていた。
きっと侍女長に怒られるだろう、ルーチェは青ざめた。
「私に急用を頼まれたという事にしておけ。後で私からも言っておく」
「あ、ありがとうございます」
「———ロゼの傍にいてくれた事、感謝する」
深く頭を下げたルーチェを残してフェールは出て行った。
フェールの後ろ姿を見送って、ルーチェが口を開いた。
「〝攻略対象〟のフェール・ノワール様よね」
「ええ」
「お兄様って…」
「私はロゼ・ノワール。妹なの」
「———あの噂になってた氷を溶かした妹姫って、雫の事だったの?」
「氷を溶かした…姫…?」
ルーチェの言葉にロゼは眉をひそめた。
「氷の宰相が最近笑うようになったって王宮中で評判なのよ。ずっと病気療養していた、溺愛している妹とやっと一緒に暮らせるようになったからって」
「それは…当たっているの…かな…」
自覚はあるけれど、改めて言われると恥ずかしい。
「そうか…似てるとは思ってたけど。雫はフェール様の妹だったの」
「…ねえひかり。転生したってどういう事?」
納得したように頷くルーチェにロゼは尋ねた。
「その姿…ヒロインなのよね?」
「そう!雫が行方不明になって半年後くらいかな。突然光に包まれて…目を開けたら何もない白い空間にいて、目の前に白い人がいたの」
「白い…人?」
「人じゃないんだろうけど、私に向かってゲームの世界に転生して貰いたいって言うの」
「え?」
「夢かなと思って、しますって言ったんだけど、気がついたら本当に赤ちゃんになってて。それでずっとルーチェとして生きていたのよ」
「え…待って?」
ロゼは混乱する頭を整理するように顔に手を当てた。
「私がこの世界に戻ってきてから…まだひと月も経っていないのよ」
「え?」
「その前から…私が向こうに行く前からもうひかりはこの世界にいたって事?」
二人は顔を見合わせた。
確かヒロイン・ルーチェの年齢は十八歳。ロゼと同じはずだ。
「…それって私は時間を遡ったって事?というかひと月って事はまだ日本に私がいるの…?え、待って?」
…仕草は〝ひかり〟のままなんだ。
頭を抱えて唸るルーチェを見てロゼは思った。
その見た目はすっかり変わってしまったけれど、中身は変わっていない。
それが嬉しくて、ロゼはそっとルーチェに抱きついた。
「雫?」
「ひかりにまた会えて…良かった…二度と会えないと思っていたから」
考えないようにしていた。
生まれた場所に戻り、本当の家族と再会できた事は嬉しい事だけれど。
ロゼとしてよりも雫として生きた———向こうでの家族、そして友人と過ごした時間の方が長かったのだ。
お別れの挨拶も出来ないまま…彼らとはこのまま永遠に会えないのだと、その事はあえて意識から逸らしていた。
それがまさか…こんな形でひかりと再会できるなんて。
「雫」
ルーチェはロゼを抱きしめ返した。
「びっくりしたよ、突然行方不明になるんだもの」
「ごめん…」
「家出するような心当たりもないし、警察も事故や事件の形跡はないっていうし。おばさん達もすごく心配してたよ」
「……うん」
ズキリ、とロゼの胸が痛んだ。
素性も分からない自分を育ててくれた義理の両親。
彼らはずっと雫の事を案じているのだろう。
「お母さん達に伝えられないのかな…私は元気だって。本当の家族の所に帰ったんだって」
「雫…」
「———ちゃんとお別れしたかった」
それはフェールや実の両親には言えない想いだった。
「…伝えられるといいね」
ロゼの背中を撫でながらルーチェは言った。
迎えにきたフェールが見たのは、ルーチェの膝の上で眠るロゼの姿だった。
「…随分と気を張っていたようですね」
ロゼの髪を撫でていた手を止めると、ルーチェはフェールを見上げた。
「こちらの生活に慣れようと無理していたのでしょう。雫…ロゼ様は辛くてもそれを自分の中に抱え込んで隠してしまいますから」
「———君はロゼの事をよく知っているのだな」
「十年間一緒にいましたから」
十年、という数字に眉をピクリとさせたフェールにルーチェは口端を緩めた。
「私の一番大切な友人です」
「…そうか」
フェールは眠るロゼを抱き上げた。
「君は侍女見習いと言ったな」
「はい」
「先刻は急いでいたようだが、仕事の途中だったのか」
「あ…しまった…」
次の仕事先へ向かう途中だったのだが…すっかり忘れていた。
きっと侍女長に怒られるだろう、ルーチェは青ざめた。
「私に急用を頼まれたという事にしておけ。後で私からも言っておく」
「あ、ありがとうございます」
「———ロゼの傍にいてくれた事、感謝する」
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