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第4章 もう一つの魔力
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「お仕事中にありがとうございます」
ロゼは迎えに来たヴァイスと並んで廊下を歩いていた。
「なに、大した事はない」
ヴァイスは笑顔で答えた。
「少しでもロゼと一緒にいたいからな」
さっとロゼの頬が赤く染まった。
「何か分かった事はあったのか」
「はい…私の魔力の事で…」
「ヴァイス」
ランドの所での事をロゼが説明していると、背後から声が聞こえた。
振り返ったロゼの背中をぞくりと冷たいものが走り抜けた。
「久しぶりだな」
一人の男が立っていた。
「…ご無沙汰しています、兄上」
「それが噂の娘か」
自分に向けられた舐めるような視線にロゼは寒気を感じ、縋るようにヴァイスの腕を握りしめた。
ディランは顔立ちはヴァイスに似た所があるが、色彩が全く違うせいか…その目つきのせいか、兄弟には見えなかった。
「ふん、剣にしか興味がない奴かと思っていたが。公爵家の娘にいち早く手を出すだけの知恵と出世欲はあったのだな」
「…兄上」
ヴァイスはそっとロゼを抱き寄せ…手を回した背中が震えているのに気づいた。
「———急いでいるので失礼します」
ロゼを抱え込むようにしてヴァイスは兄に背を向け歩き出した。
二人の姿が見えなくなるまでディランはその場に立ち止まり、二人を見つめ続けていた。
「ロゼ…大丈夫か?」
ヴァイスはロゼを覗き込んで、その顔色が青ざめているのに気づいた。
「…少し休もうか」
人気のない中庭へと出るとロゼをベンチに座らせ、その前に膝をついた。
「どうした?」
ロゼはひどく怯えた表情をしていた。
ヴァイスを捉えた虚ろな瞳から大粒の涙が溢れた。
「ロゼ」
慌ててロゼの隣へと腰を下ろしその身体を抱きしめる。
「ロゼ…どうした」
言葉もなくただ震えながら涙を流すロゼに困惑しながらヴァイスはその背中を撫で続けた。
「…ロゼ!」
中庭へフェールが駆け込んできた。
ヴァイスから奪うようにロゼを抱きしめると、ヴァイスを睨みつける。
「何があった」
「———兄と会って少し嫌味を言われたが…何故かひどく怯えているんだ」
「ディランに?」
「…こわい…」
フェールの腕の中から弱々しい声が聞こえた。
「ロゼ?」
「あのひとの…目がこわいの」
ロゼは兄を見上げた。
「お兄様…」
「大丈夫だ」
フェールはロゼを強く抱きしめるとヴァイスを見た。
「何故ディランが王宮へ来ていた?」
「———おそらく俺とロゼの噂を聞きつけて見に来たんだろう」
ヴァイスはため息をついた。
「あの人はいつも俺の動向を気にしているから」
「こんなに怯える相手を兄弟に持つ男に大事な妹は嫁がせられないな」
ロゼの頭を撫でその頭にキスを落としながらフェールは言った。
「———俺は家には戻らないし、もうあの人も近づけさせない」
「家族の縁が切れる訳ではないだろう」
「……何故ロゼはこんなに怯えているんだ」
ロゼを見つめてヴァイスは言った。
確かに、自慢できない兄ではあるし、先刻の印象はかなり悪かったが…これほどまでに怯えるとは。
「…思い出した」
フェールは顔を上げた。
「幼い頃、何かをされた訳でもないのにロゼがひどく怯える使用人がいた。———しばらくしてその男は解雇された…仕事は真面目にやっていたが、自分の子供を虐待していたらしい」
フェールはヴァイスを見た。
「先代のフラーウム公爵によるとロゼは人が秘めている悪意のようなものに敏感らしい」
「悪意…」
「ディランの動向に気をつけろ。あいつは良くない噂も聞くからな」
「———分かった」
フェールの胸に顔を埋めたままのロゼを見つめてヴァイスは答えた。
ロゼは迎えに来たヴァイスと並んで廊下を歩いていた。
「なに、大した事はない」
ヴァイスは笑顔で答えた。
「少しでもロゼと一緒にいたいからな」
さっとロゼの頬が赤く染まった。
「何か分かった事はあったのか」
「はい…私の魔力の事で…」
「ヴァイス」
ランドの所での事をロゼが説明していると、背後から声が聞こえた。
振り返ったロゼの背中をぞくりと冷たいものが走り抜けた。
「久しぶりだな」
一人の男が立っていた。
「…ご無沙汰しています、兄上」
「それが噂の娘か」
自分に向けられた舐めるような視線にロゼは寒気を感じ、縋るようにヴァイスの腕を握りしめた。
ディランは顔立ちはヴァイスに似た所があるが、色彩が全く違うせいか…その目つきのせいか、兄弟には見えなかった。
「ふん、剣にしか興味がない奴かと思っていたが。公爵家の娘にいち早く手を出すだけの知恵と出世欲はあったのだな」
「…兄上」
ヴァイスはそっとロゼを抱き寄せ…手を回した背中が震えているのに気づいた。
「———急いでいるので失礼します」
ロゼを抱え込むようにしてヴァイスは兄に背を向け歩き出した。
二人の姿が見えなくなるまでディランはその場に立ち止まり、二人を見つめ続けていた。
「ロゼ…大丈夫か?」
ヴァイスはロゼを覗き込んで、その顔色が青ざめているのに気づいた。
「…少し休もうか」
人気のない中庭へと出るとロゼをベンチに座らせ、その前に膝をついた。
「どうした?」
ロゼはひどく怯えた表情をしていた。
ヴァイスを捉えた虚ろな瞳から大粒の涙が溢れた。
「ロゼ」
慌ててロゼの隣へと腰を下ろしその身体を抱きしめる。
「ロゼ…どうした」
言葉もなくただ震えながら涙を流すロゼに困惑しながらヴァイスはその背中を撫で続けた。
「…ロゼ!」
中庭へフェールが駆け込んできた。
ヴァイスから奪うようにロゼを抱きしめると、ヴァイスを睨みつける。
「何があった」
「———兄と会って少し嫌味を言われたが…何故かひどく怯えているんだ」
「ディランに?」
「…こわい…」
フェールの腕の中から弱々しい声が聞こえた。
「ロゼ?」
「あのひとの…目がこわいの」
ロゼは兄を見上げた。
「お兄様…」
「大丈夫だ」
フェールはロゼを強く抱きしめるとヴァイスを見た。
「何故ディランが王宮へ来ていた?」
「———おそらく俺とロゼの噂を聞きつけて見に来たんだろう」
ヴァイスはため息をついた。
「あの人はいつも俺の動向を気にしているから」
「こんなに怯える相手を兄弟に持つ男に大事な妹は嫁がせられないな」
ロゼの頭を撫でその頭にキスを落としながらフェールは言った。
「———俺は家には戻らないし、もうあの人も近づけさせない」
「家族の縁が切れる訳ではないだろう」
「……何故ロゼはこんなに怯えているんだ」
ロゼを見つめてヴァイスは言った。
確かに、自慢できない兄ではあるし、先刻の印象はかなり悪かったが…これほどまでに怯えるとは。
「…思い出した」
フェールは顔を上げた。
「幼い頃、何かをされた訳でもないのにロゼがひどく怯える使用人がいた。———しばらくしてその男は解雇された…仕事は真面目にやっていたが、自分の子供を虐待していたらしい」
フェールはヴァイスを見た。
「先代のフラーウム公爵によるとロゼは人が秘めている悪意のようなものに敏感らしい」
「悪意…」
「ディランの動向に気をつけろ。あいつは良くない噂も聞くからな」
「———分かった」
フェールの胸に顔を埋めたままのロゼを見つめてヴァイスは答えた。
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