異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子

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第7章 月の女神と光の乙女

04

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「…!」
「何だ!」

突然激しい衝撃が身体を走り抜けた。

「今のは…」
「———ロゼが魔力を暴発させた…」
フェールは目を見開いた。

「何だと」
「西の方角だ…行くぞ!」
「…私も…!」
部屋から飛び出そうとするフェールにルーチェは叫んだ。

「君はダメだ」
フェールは立ち止まり振り返った。
「次期王妃を危険な目に合わせる訳にはいかない」
「でもっ私の力が必要になるかも…!」

「すぐに連れて帰るから待っていてくれ」
そう言い残すとフェールとヴァイスは駆け出していった。


「…ロゼ……どうか無事で…」
彼女を守ると誓ったのに。
ルーチェはただただ祈るしかできなかった。





「この先だ…」
馬で西へと走り抜け、森の中をしばらく進んだ所でフェールが止まった。
前方、木々の間から小屋のようなものが見える。

「先遣!」
ヴァイスの命令に、従っていた騎士が三名、小屋へ向かって駆け出した。

「あの中にロゼが…?」
「おそらく」
「団長!馬車です!」
騎士の声に二人は急いで馬を走らせた。

小屋の傍らにはアルジェント家の紋章が入った馬車と、荷馬車が置かれていた。
「…ここで乗り換えるつもりだったか」
「協力者がいるな」
「例の商人か…」

馬車に繋がれたままのある馬は怯え、別の馬は興奮し、御者らしき男たちが倒れていた。

「…まさかロゼの魔力か」
「当てられたんだろう。…俺も昔魔力を暴発させた時にやらかした」
横目で彼らを見ながら、フェールは小屋の扉に手をかけた。

「お待ちください!」
「先に我らが…」
「中に起きていられる人間はいない、大丈夫だ」
制しようとする騎士たちを無視して扉を開く。


床には二人の男と侍女が倒れていた。
そしてベッドの上に横たわる…

「ロゼ…」
フェールは膝をつくと意識のない妹の頭を撫で、キスを落とした。
それから首にそっと触れ…温かな体温と穏やかな脈拍に安堵の息を漏らす。

「この二人を縛って牢へ放り込め」
部下に指示すると、ヴァイスは床に倒れた侍女を縛る縄をナイフで手早く切った。
それからフェールの腕の中のロゼの縄も同様に切っていく。

「殴らなくていいのか?」
ディランともう一人の男が運び出させるのを見ながらフェールが言った。
「…殴るだけでは済まなくなる。ロゼの前で人殺しは出来ない」
感情を押し殺すと、ヴァイスはきつく縛られたせいで赤く跡が残る手首を手に取った。

「可哀想に…ロゼ…良かった…」
「———安心するな」
フェールはヴァイスを見上げた。

「ロゼの魔力を…意識を全く感じない」
「何…?」
「…魔力の暴発は…何を引き起こすか分からないんだ」

ヴァイスは茫然と固く瞳を閉ざしたロゼを見下ろした。
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