18 / 25
水の章
8
しおりを挟む
ルキウスはアリアをベッドに寝かせると、その縁に腰掛けた。
再び眠りについたアリアの顔をしばらく見つめる。
「金色の…瞳……」
呟くと、長い金色の髪を一筋手に取った。
「アリア……君は…」
手に取った髪を見つめると、ルキウスはそっと口づけを落とした。
身動ぐとアリアは目を開いた。
「起きた?」
声のする方へ頭を巡らせると窓際にルキウスが腰掛けていた。
「雨が上がったよ」
立ち上がりアリアの側まで来るとルキウスは手を差し出した。
「起き上がれる?虹が出ているんだ」
ルキウスに手を引かれ、窓際まで来るとアリアは開け放たれた窓から空を見上げた。
「わあ…」
夕陽に染まった空に大きな虹が弧を描いていた。
「良かった…ウンディーネと仲直りしたんですね…」
「気分は?」
「大丈夫です」
「もう声は聞こえない?」
「はい」
「そうか、私も耳鳴りが治まった」
「耳鳴り?」
「雨が降っている間ずっと耳鳴りがしていたんだが———あれはウンディーネの泣き声だったんだな」
アリアは虹からルキウスへ視線を移した。
「…ルキウス様にも聞こえたのですか?」
「聞こえたし、今も精霊がいくつか飛んでいるのが見える」
ルキウスはアリアを抱き寄せた。
「君が見たり聞いたりしているものを共有できるのは嬉しいが———あの泣き声は勘弁だな」
「……お別れするのって…あんなに悲しくなるものなんですね」
胸の苦しさを思い出して、アリアはルキウスの上衣の裾をぎゅっと握りしめた。
愛とはなんて苦しくて、悲しくて…そして熱いものなのだろう。
ウンディーネの悲しみは消えたはずなのに、アリアの心の中の残滓がまだかすかな痛みを与えているのを感じた。
「アリアにはそんな悲しい思いはさせない」
髪に口づけると、ルキウスはアリアの正面に立ち、両手を取った。
「王宮に戻ったら、ガーランド伯爵に君との結婚を許してもらえるよう書状を送る」
強い光を帯びた翡翠色の瞳がアリアを見つめた。
「何があろうとも、私はアリアを愛する事を誓うよ。だから…この先ずっと、私の側にいてくれる?」
「……はい」
笑みを浮かべ頷いたアリアをルキウスは抱きしめた。
「ああもう———今すぐ結婚したい」
「…ルキウス様はいつも…」
「〝様〟はいらない」
ルキウスはアリアの頬を手で包み込んだ。
「言葉遣いも、もっと普通にして欲しい」
「でも…」
「二人きりの時だけでいいから。そのままのアリアを見せて欲しい」
「…分かったわ、ルキウス」
「うん」
嬉しそうに頬を緩めると、ルキウスはもう一度アリアを抱きしめた。
「———ルキウス」
「ん?」
「…好きよ」
呟くような声に腕を緩めると、濡れたように光る藍色の瞳がルキウスを見上げた。
「アリア…」
「大好き」
「———私もだよ」
頬に手を添えると微笑んで目を閉じたアリアに唇を重ねる。
二人は長い口づけを交わした。
再び眠りについたアリアの顔をしばらく見つめる。
「金色の…瞳……」
呟くと、長い金色の髪を一筋手に取った。
「アリア……君は…」
手に取った髪を見つめると、ルキウスはそっと口づけを落とした。
身動ぐとアリアは目を開いた。
「起きた?」
声のする方へ頭を巡らせると窓際にルキウスが腰掛けていた。
「雨が上がったよ」
立ち上がりアリアの側まで来るとルキウスは手を差し出した。
「起き上がれる?虹が出ているんだ」
ルキウスに手を引かれ、窓際まで来るとアリアは開け放たれた窓から空を見上げた。
「わあ…」
夕陽に染まった空に大きな虹が弧を描いていた。
「良かった…ウンディーネと仲直りしたんですね…」
「気分は?」
「大丈夫です」
「もう声は聞こえない?」
「はい」
「そうか、私も耳鳴りが治まった」
「耳鳴り?」
「雨が降っている間ずっと耳鳴りがしていたんだが———あれはウンディーネの泣き声だったんだな」
アリアは虹からルキウスへ視線を移した。
「…ルキウス様にも聞こえたのですか?」
「聞こえたし、今も精霊がいくつか飛んでいるのが見える」
ルキウスはアリアを抱き寄せた。
「君が見たり聞いたりしているものを共有できるのは嬉しいが———あの泣き声は勘弁だな」
「……お別れするのって…あんなに悲しくなるものなんですね」
胸の苦しさを思い出して、アリアはルキウスの上衣の裾をぎゅっと握りしめた。
愛とはなんて苦しくて、悲しくて…そして熱いものなのだろう。
ウンディーネの悲しみは消えたはずなのに、アリアの心の中の残滓がまだかすかな痛みを与えているのを感じた。
「アリアにはそんな悲しい思いはさせない」
髪に口づけると、ルキウスはアリアの正面に立ち、両手を取った。
「王宮に戻ったら、ガーランド伯爵に君との結婚を許してもらえるよう書状を送る」
強い光を帯びた翡翠色の瞳がアリアを見つめた。
「何があろうとも、私はアリアを愛する事を誓うよ。だから…この先ずっと、私の側にいてくれる?」
「……はい」
笑みを浮かべ頷いたアリアをルキウスは抱きしめた。
「ああもう———今すぐ結婚したい」
「…ルキウス様はいつも…」
「〝様〟はいらない」
ルキウスはアリアの頬を手で包み込んだ。
「言葉遣いも、もっと普通にして欲しい」
「でも…」
「二人きりの時だけでいいから。そのままのアリアを見せて欲しい」
「…分かったわ、ルキウス」
「うん」
嬉しそうに頬を緩めると、ルキウスはもう一度アリアを抱きしめた。
「———ルキウス」
「ん?」
「…好きよ」
呟くような声に腕を緩めると、濡れたように光る藍色の瞳がルキウスを見上げた。
「アリア…」
「大好き」
「———私もだよ」
頬に手を添えると微笑んで目を閉じたアリアに唇を重ねる。
二人は長い口づけを交わした。
1
あなたにおすすめの小説
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される
希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。
すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。
その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜
たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。
だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。
契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。
農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。
そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。
戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる