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第37話 良き友
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「・・・・・・香油?」
唖然とした表情で見上げれば、ウォーレンはニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていた。
「そ。香油だ」
アークレイは呆れ果てて、胡乱げな表情でそんなウォーレンを見上げる。
「・・・・・・何のために」
「そりゃあ、おまえ。決まっているだろ?」
眉を上げて肩をすくめ、呆れ顔で笑ったウォーレン。
アークレイは再びその小瓶に視線を落とし眉をひそめた。
『決まっている』
そんなことは言われなくても、子供ではないのだからアークレイにだってわかる。
だが、何故それをウォーレンがアークレイに贈るのか、その理由がわからない。
香油とはいえ、このような高級そうな品、昨日今日で用意できるものではないだろう。
ということは、昨夜、アークレイがシルフィアと共寝をすることになった以前から、この男はすでに用意をしていたということだ。
相変わらず、この男の意図は掴みにくい。
「おまえ・・・・・・何を考えている」
「何って、おまえとシルフィア殿の為に俺からの贈り物だ」
ははっと軽く笑う男に苛つきを覚える。
「ふざけるな」
「ふざけてなどいないって」
心外だとでも言うかのように大げさに驚くウォーレンだったが、アークレイにはそんな態度も癇に障った。
「どこがだっ」
「ほんとだって」
「こんなもの、おまえから貰う謂れはない」
「まあそういうな。持っておいて損はないぞ?」
「得になどならん」
ウォーレンは両手を胸のあたりまで挙げて、「まあまあ」と笑いながらその手を前に振った。
「そう言うが、アークレイ」
アークレイの傍まで来たウォーレンは、腰を曲げにやりと笑って覗き込んでくる。
「おまえ、実はけっこう危なかったんじゃないのか?」
「は?」
「口づけくらいはしただろ?」
ウォーレンからの不意打ちに、ぐっと言葉を詰まらせてしまう。
「それは・・・・・・まあ・・・・・・」
言葉を濁せば、ふんっと鼻で笑われた。
「で?おまえは、口づけだけで終わらせた、と」
「『だけ』とは何だ。馬鹿にしているのか」
「いやあ?おまえの理性に感心したのさ」
「は?」
「あのシルフィア殿のことだしな。無自覚に色気をばら撒いてそうだ。口づけだけとはいえ、おまえもよく我慢したな」
何故わかる。
そう問い詰めようとして、ぐっとこらえた。
これ以上この男の口車に乗せられれば、余計なことまで言ってしまいそうになる。
この手の話でからかわれるのは、アークレイの自尊心が許さない。
だが、アークレイのそのような葛藤などとっくにお見通しとばかりに、ウォーレンはにやりと笑う。
「俺だったら我慢などせず、そのまま最後までやるな」
「俺とおまえを一緒にするな!」
ウォーレンは腕を組み、ははは、と大きく笑う。
「ま、俺のほうが欲望に正直だってことだ」
アークレイは右手で顔を覆い、はあ・・・・・と深いため息をついた。
こんな男と付き合っているシメオンのことが、哀れというか気の毒にも思える。
「まあ、折角だから貰っておけって。俺からの礼だと思えばいい」
「礼?」
そう言われても、アークレイがウォーレンに対して何かした覚えはない。
「ああ。ディヴェルカ=イングラムのことだ」
途端、ウォーレンは瞳を輝かせ、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「ああ・・・・・・」
合同演習の際、シルフィアは己の剣の師匠を明かしてしまったのだ。
その直後のウォーレンの動揺ぶりは、常に見たことがないほどだった。
最初は信じられずに、シルフィアの肩を両手で掴み、鬼気迫るような形相で詰め寄り、何度も何度も真偽を問い確かめていた。
シルフィアは苦笑しながらも丁寧にそれに応じていたのだが、アークレイが止めなければ、ガクガクと揺さぶられてシルフィアを壊しかねない勢いだった。
ディヴェルカ=イングラムの生存と、センシシアに滞在していることを知ったウォーレンは、大興奮で顔を紅潮させ、剣闘場に響き渡らんほどの雄叫びをあげたのだ。
『俺はセンシシアに行く!今すぐ行くぞ!』
有言実行とばかりに本気でやりかねない様子のウォーレンを、周りの部下たちがなんとか押さえようとしたのだが、ウォーレンの暴走はおさまらなかった。
その暴走を止めたのは、やはりシルフィアだった。
『ウォーレン様は、ディヴェルカ=イングラム様に憧れて騎士になられたと伺っております』
『おう!そうですとも!』
『それ故に、私の師匠についてお話させていただきました。ですが、師匠は今、お身体を壊され静養をされております。師匠は誰にも知られることなく、静かにお暮らしになりたいと願われているのです』
にっこり微笑むシルフィアに、拳を突き上げていたウォーレンの勢いが緩まった。
『ですから、ディヴェルカ=イングラム様の願いを、お聞き入れくださいませんか?』
そう言われた後の、ウォーレンの焦燥ぶりもまた凄かった。
だが、がっくりと崩れ落ちるウォーレンを救ったのも、またシルフィアだ。
『これからは、私も剣の鍛錬を今まで以上に励みたいと考えています。また時間があるときに、お相手いただけませんか?』
その言葉で一気に機嫌が急上昇したウォーレンは、シルフィアの手を両手で握り笑顔で快諾した。
そしてその場にいた騎士全員に、ディヴェルカ=イングラムについて一切他言無用であること、睨みをきかせて釘までさしてくれたのだ。
「ま、おまえは男を抱いたことなどないだろう?役に立つから貰っておけ」
これ以上、何かを言い返すのも面倒になってきた。
確かに、くれるというのなら貰っておいてもいいだろう。
使うかどうかはわからないが。
「そもそもおまえ、女相手でさえあんまり経験ないのだからな」
「はあ?」
「まあ、仕方がないけどな。王族や貴族にとって、性行為なんてものは、跡継ぎを残すための行為と考えている者も少なくないからな。おまえも王子が生まれてからは随分とご無沙汰なんじゃないか?昔から俺が色々と教えてやろうと思っても、興味なさげで、淡白すぎてつまらなかったしなー」
「下半身がだらしないおまえに、性指南などされたくもない」
「まあ、そう言うなって。同性同士の恋愛に関しては、俺の方が大先輩なんだし。だいたい、初めてのときは入れるほうも受けるほうも相当辛いらしいからな。おまえだって、シルフィア殿を傷つけたくないだろう?」
「は?」
「どうせなら気持ちよくなって楽しみたいじゃないか」
「辛いらしいからな・・・・・・て、おまえたちのときはどうだったんだ?」
「覚えてない」
「・・・・・・・」
胸を張ってきっぱりと言い放ったウォーレンの態度に、アークレイは呆れてがっくりと肩を落とす。
真面目に聞くのも馬鹿馬鹿しい。
「俺たちは酔った勢いでやったからな。残念ながら、俺もシメオンも覚えていない。だから参考にはならん」
「自慢できることではないだろう・・・・・・」
「まあまあ、素直に先輩の意見を聞きたまえ」
先輩とも思いたくないのだが。
眩暈がしそうになって、指で頭を押さえた。
「だから、初めてのときにはこれを使え」
既にやることを前提に言われ、反論したかったがその気力もなかったので、話を先に進めることにした。
「で?これは?」
藁に沈んでいた小瓶を持ち上げると、見た目以上に意外と重い。
小瓶の中で、液体が左右に波打った。
「だから、香油だ」
「・・・・・・それはわかっている」
「催淫効果がある、媚薬入りの香油だ」
「媚薬・・・・・・だと?」
呆気にとられ、小瓶を凝視した。
そんなアークレイの反応に、ウォーレンはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。
「そう。しかも、即効性の媚薬だ。さらに、この香油と精液が交われば、効果は更に増すそうだ。絶大だぜ?」
「・・・・・・」
「なあに、大丈夫大丈夫。植物から抽出したものだからな、身体に影響はない」
アークレイは呆然と小瓶を見下ろしていたが、そこに腕が伸びてきて、ウォーレンがそれを取り上げてしまった。
「おい」
咎めるアークレイのことなど気にもせず、ウォーレンはその小瓶の蓋をキュッと鳴らして開けた。
途端、芳しい薔薇の香りがたちこめる。
「薔薇か?」
「そうさ。これは薔薇の花びらを煮詰めて抽出したものだからな。しかも、ファーレインローズという最高級品種の白薔薇だぞ?」
「何故そのようなものを・・・・・・」
「そりゃあ、折角だから良いものを使って欲しいじゃないか。まあ、おまえとシルフィア殿の結婚祝いだと思ってくれればいい」
先ほどは『餞別』だと言っていたのに、この男のいい加減さに呆れてしまう。
だいたい、結婚祝いにこのような物は普通贈らないと思うのだが、この男に世間一般の常識を求めることは、そもそも無理な話だし、アークレイも諦めている。
「これはエルガスティン王国の王都にある、高級娼館”花灯篭(はなとうろう)”で使われている香油なんだ」
「・・・・・・娼館?」
「そ。それも、男娼・・・・・・男性同士専門のな」
「男娼!?そんなものがあるのか!?」
「あるさ。エルガスティン王国では、貴族が男娼娼館に通うのは当たり前にあることなんだしな。貴族の嗜みみたいなものさ」
口をぽかんと大きく開けたアークレイの表情に、ウォーレンは肩を揺らしながら可笑しそうに笑った。
「おいおい。そんなに驚くことか?」
「いや、しかし・・・・・・エルガスティン王国では同性婚を認める法律は無いだろう?」
「ああ、無いな。だが、同性愛を禁じる法律も無い」
「!」
「四強国のうち、リヒテラン王国やファーリヴァイア王国では、確固とした同性愛を禁じる法律があるが、エルガスティン王国にはそれはない。大らかな国民だし、性に関してもかなり寛容で、女性同士でも男性同士でも恋愛は自由というお国柄なんだ。リヒテラン王国とは真逆で、血を残さない関係だからこそ、跡目争いや相続争いが起こらないという理由で歓迎されている節がある」
「そうなのか・・・・・・知らなかった・・・・・・」
知らなかったというよりも、そもそも興味がなかった、という方が正しい。
アークレイがシルフィアを好きになることがなければ、同性同士ということに意識を向けることすらなかっただろう。
「”花灯篭”はエルガスティンの中でも、特に最高級の娼館なんだ。建物や設備ももちろん、男娼たちもとにかく最高に良いらしいぞ。美少年に美青年、美壮年だっているぞ。とにかく選りすぐりの男娼たちばかりだから、顧客も厳しい基準で選ばれた者だけに限られているようだな。中にはお忍びでやって来る王族なんかも居るらしい」
「王族?」
「ああ。”花灯篭”の顧客だというだけでも箔が付くらしいからなあ」
アークレイには全くといっていいほど理解が出来ない世界だ。
だが、だからといってそれを否とするつもりはない。
そもそも同性など好きになることなどないと思っていた自分が、同性のシルフィアを好きになってしまったのだから。
そういう世界もあるのだと、アークレイは驚きながらも受け入れた。
「この香油はその”花灯篭”で使われているものだ。これだけで10万ディナールもするんだぞ?」
「10万!?」
シメオンのおかげで金銭感覚が常識的であるアークレイには、その値段が破格の値段であることはすぐにわかった。
「男同士の性行為は、普通、異性同士では使わない場所に挿れるわけだし、そこが濡れるわけでもないし、挿れるほうも挿れられるほうも、最初はきつくて痛くてなかなか大変なものだ」
「おまえが言うと生々しく聞こえるな・・・・・・」
「そうか?これでも柔らかく言ってるつもりだがな」
「・・・・・・・いや、おまえに品性を求めるのが間違っていた。先を続けてくれ」
額に手をあてて、アークレイは深いため息を吐き出した。
小瓶の蓋を閉めたウォーレンは、それをアークレイの膝の上にあった木箱の藁の中へと沈める。
「で、この香油で濡らせば、初めてのときでもほとんど痛みを感じないそうだ。それどころか、媚薬の効果でたちまち理性なんてぶっ飛んでしまう。泥沼のような快楽の渦に巻き込まれて、これがまー・・・最っっっ高にいいぞ?」
拳を握り締め、力をこめて言うウォーレンの言葉にはやたらと説得力があった。
「・・・・・・使ったな?」
「当然だ。おまえに贈る前に自分が試さなくてどうする。俺用にもう一つ購入して使わせてもらった。いや~・・・昨夜は本当に燃えた燃えた。最高によかった!」
「昨夜?」
「ああ。これから1ヶ月間会えないわけだし、昨夜はその分堪能させてもらったぜ。あいつも、いつにも増して感じまくって、善がりまくっていたもんなあ・・・・・・」
その情景を思い浮かべているのか、どこか遠くを見るようにニヤニヤと笑う。
アークレイは今朝方のシメオンの様子を思い出し、「ああ・・・」と呆れ顔でため息をつく。
顔色も芳しくなく、体調は悪そうで、歩き方も辛さをこらえるようなものだった。
朝議の間も気だるそうに何度もため息をついており、なかなか集中出来ないシメオンのことが気になってはいたのだ。
その原因は、目の前にいる男だったというわけか。
「少しは加減をしてやれ・・・・・・」
本当に、こんな男を相手にするシメオンが気の毒に思える。
まあ、何だかんだ言ってシメオンもそれで良しと思っているらしいので、二人の関係に口を挟むことはしないが。
「その香油の良さは俺が保証する。お取り寄せ可能だからな、足りなくなったらいつでも言えよ?」
「・・・・・・考えておく」
緩慢な動作で木箱の蓋を閉め、アークレイは深く息を吐き出した。
「ま、でも本当によかった」
顔を上げれば、笑みを浮かべたウォーレンがアークレイを見下ろしてくる。
その笑みは、先ほどまでの嫌味を含んだ笑みではなかった。
「何がだ?」
「シルフィア殿だよ」
「シルフィア?どういう意味だ?」
「いや・・・・・・おまえに嫁いで来てくれたのが、シルフィア殿でよかったという意味だ。確かに少女と見紛うばかりの美少年だが、おまえが惹かれたのはそれだけじゃあないだろ?」
「ああ」
「穏やかで優しくて、だが芯は強くて負けず嫌い。他にもおまえにしか見せていない表情があるだろう。儚げでか弱い方かと思いきや、ディヴェルカ=イングラム仕込みの剣の使い手。おまえのことを護ると言ったその力強さ。見た目を裏切らない一面と、見た目を裏切る一面を併せ持つ不思議な方だ。だが、シルフィア殿のその全てをおまえは愛しいと思うのだろう?
「・・・・・・ああ」
「よかったな、シルフィア殿に出会えて。おまえは幸せ者だ」
「ウォーレン・・・・・・」
ウォーレンはふっと笑うと、ぽんっとアークレイの肩に右手を置いた。
「大事にしてやれよ?シルフィア殿を幸せにしてやれ」
「ああ・・・・・・ありがとう、ウォーレン」
差し出されたウォーレンの右手に笑みを浮かべ、アークレイも右手を差し出して互いに強く手を握り合った。
口は悪くとも、ウォーレンはいつもアークレイのことを見守ってくれていた。
時には兄のように、時には友のように、時には騎士として。
この関係はずっと同じだ。
今までも、そして、これからも。
唖然とした表情で見上げれば、ウォーレンはニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていた。
「そ。香油だ」
アークレイは呆れ果てて、胡乱げな表情でそんなウォーレンを見上げる。
「・・・・・・何のために」
「そりゃあ、おまえ。決まっているだろ?」
眉を上げて肩をすくめ、呆れ顔で笑ったウォーレン。
アークレイは再びその小瓶に視線を落とし眉をひそめた。
『決まっている』
そんなことは言われなくても、子供ではないのだからアークレイにだってわかる。
だが、何故それをウォーレンがアークレイに贈るのか、その理由がわからない。
香油とはいえ、このような高級そうな品、昨日今日で用意できるものではないだろう。
ということは、昨夜、アークレイがシルフィアと共寝をすることになった以前から、この男はすでに用意をしていたということだ。
相変わらず、この男の意図は掴みにくい。
「おまえ・・・・・・何を考えている」
「何って、おまえとシルフィア殿の為に俺からの贈り物だ」
ははっと軽く笑う男に苛つきを覚える。
「ふざけるな」
「ふざけてなどいないって」
心外だとでも言うかのように大げさに驚くウォーレンだったが、アークレイにはそんな態度も癇に障った。
「どこがだっ」
「ほんとだって」
「こんなもの、おまえから貰う謂れはない」
「まあそういうな。持っておいて損はないぞ?」
「得になどならん」
ウォーレンは両手を胸のあたりまで挙げて、「まあまあ」と笑いながらその手を前に振った。
「そう言うが、アークレイ」
アークレイの傍まで来たウォーレンは、腰を曲げにやりと笑って覗き込んでくる。
「おまえ、実はけっこう危なかったんじゃないのか?」
「は?」
「口づけくらいはしただろ?」
ウォーレンからの不意打ちに、ぐっと言葉を詰まらせてしまう。
「それは・・・・・・まあ・・・・・・」
言葉を濁せば、ふんっと鼻で笑われた。
「で?おまえは、口づけだけで終わらせた、と」
「『だけ』とは何だ。馬鹿にしているのか」
「いやあ?おまえの理性に感心したのさ」
「は?」
「あのシルフィア殿のことだしな。無自覚に色気をばら撒いてそうだ。口づけだけとはいえ、おまえもよく我慢したな」
何故わかる。
そう問い詰めようとして、ぐっとこらえた。
これ以上この男の口車に乗せられれば、余計なことまで言ってしまいそうになる。
この手の話でからかわれるのは、アークレイの自尊心が許さない。
だが、アークレイのそのような葛藤などとっくにお見通しとばかりに、ウォーレンはにやりと笑う。
「俺だったら我慢などせず、そのまま最後までやるな」
「俺とおまえを一緒にするな!」
ウォーレンは腕を組み、ははは、と大きく笑う。
「ま、俺のほうが欲望に正直だってことだ」
アークレイは右手で顔を覆い、はあ・・・・・と深いため息をついた。
こんな男と付き合っているシメオンのことが、哀れというか気の毒にも思える。
「まあ、折角だから貰っておけって。俺からの礼だと思えばいい」
「礼?」
そう言われても、アークレイがウォーレンに対して何かした覚えはない。
「ああ。ディヴェルカ=イングラムのことだ」
途端、ウォーレンは瞳を輝かせ、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「ああ・・・・・・」
合同演習の際、シルフィアは己の剣の師匠を明かしてしまったのだ。
その直後のウォーレンの動揺ぶりは、常に見たことがないほどだった。
最初は信じられずに、シルフィアの肩を両手で掴み、鬼気迫るような形相で詰め寄り、何度も何度も真偽を問い確かめていた。
シルフィアは苦笑しながらも丁寧にそれに応じていたのだが、アークレイが止めなければ、ガクガクと揺さぶられてシルフィアを壊しかねない勢いだった。
ディヴェルカ=イングラムの生存と、センシシアに滞在していることを知ったウォーレンは、大興奮で顔を紅潮させ、剣闘場に響き渡らんほどの雄叫びをあげたのだ。
『俺はセンシシアに行く!今すぐ行くぞ!』
有言実行とばかりに本気でやりかねない様子のウォーレンを、周りの部下たちがなんとか押さえようとしたのだが、ウォーレンの暴走はおさまらなかった。
その暴走を止めたのは、やはりシルフィアだった。
『ウォーレン様は、ディヴェルカ=イングラム様に憧れて騎士になられたと伺っております』
『おう!そうですとも!』
『それ故に、私の師匠についてお話させていただきました。ですが、師匠は今、お身体を壊され静養をされております。師匠は誰にも知られることなく、静かにお暮らしになりたいと願われているのです』
にっこり微笑むシルフィアに、拳を突き上げていたウォーレンの勢いが緩まった。
『ですから、ディヴェルカ=イングラム様の願いを、お聞き入れくださいませんか?』
そう言われた後の、ウォーレンの焦燥ぶりもまた凄かった。
だが、がっくりと崩れ落ちるウォーレンを救ったのも、またシルフィアだ。
『これからは、私も剣の鍛錬を今まで以上に励みたいと考えています。また時間があるときに、お相手いただけませんか?』
その言葉で一気に機嫌が急上昇したウォーレンは、シルフィアの手を両手で握り笑顔で快諾した。
そしてその場にいた騎士全員に、ディヴェルカ=イングラムについて一切他言無用であること、睨みをきかせて釘までさしてくれたのだ。
「ま、おまえは男を抱いたことなどないだろう?役に立つから貰っておけ」
これ以上、何かを言い返すのも面倒になってきた。
確かに、くれるというのなら貰っておいてもいいだろう。
使うかどうかはわからないが。
「そもそもおまえ、女相手でさえあんまり経験ないのだからな」
「はあ?」
「まあ、仕方がないけどな。王族や貴族にとって、性行為なんてものは、跡継ぎを残すための行為と考えている者も少なくないからな。おまえも王子が生まれてからは随分とご無沙汰なんじゃないか?昔から俺が色々と教えてやろうと思っても、興味なさげで、淡白すぎてつまらなかったしなー」
「下半身がだらしないおまえに、性指南などされたくもない」
「まあ、そう言うなって。同性同士の恋愛に関しては、俺の方が大先輩なんだし。だいたい、初めてのときは入れるほうも受けるほうも相当辛いらしいからな。おまえだって、シルフィア殿を傷つけたくないだろう?」
「は?」
「どうせなら気持ちよくなって楽しみたいじゃないか」
「辛いらしいからな・・・・・・て、おまえたちのときはどうだったんだ?」
「覚えてない」
「・・・・・・・」
胸を張ってきっぱりと言い放ったウォーレンの態度に、アークレイは呆れてがっくりと肩を落とす。
真面目に聞くのも馬鹿馬鹿しい。
「俺たちは酔った勢いでやったからな。残念ながら、俺もシメオンも覚えていない。だから参考にはならん」
「自慢できることではないだろう・・・・・・」
「まあまあ、素直に先輩の意見を聞きたまえ」
先輩とも思いたくないのだが。
眩暈がしそうになって、指で頭を押さえた。
「だから、初めてのときにはこれを使え」
既にやることを前提に言われ、反論したかったがその気力もなかったので、話を先に進めることにした。
「で?これは?」
藁に沈んでいた小瓶を持ち上げると、見た目以上に意外と重い。
小瓶の中で、液体が左右に波打った。
「だから、香油だ」
「・・・・・・それはわかっている」
「催淫効果がある、媚薬入りの香油だ」
「媚薬・・・・・・だと?」
呆気にとられ、小瓶を凝視した。
そんなアークレイの反応に、ウォーレンはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。
「そう。しかも、即効性の媚薬だ。さらに、この香油と精液が交われば、効果は更に増すそうだ。絶大だぜ?」
「・・・・・・」
「なあに、大丈夫大丈夫。植物から抽出したものだからな、身体に影響はない」
アークレイは呆然と小瓶を見下ろしていたが、そこに腕が伸びてきて、ウォーレンがそれを取り上げてしまった。
「おい」
咎めるアークレイのことなど気にもせず、ウォーレンはその小瓶の蓋をキュッと鳴らして開けた。
途端、芳しい薔薇の香りがたちこめる。
「薔薇か?」
「そうさ。これは薔薇の花びらを煮詰めて抽出したものだからな。しかも、ファーレインローズという最高級品種の白薔薇だぞ?」
「何故そのようなものを・・・・・・」
「そりゃあ、折角だから良いものを使って欲しいじゃないか。まあ、おまえとシルフィア殿の結婚祝いだと思ってくれればいい」
先ほどは『餞別』だと言っていたのに、この男のいい加減さに呆れてしまう。
だいたい、結婚祝いにこのような物は普通贈らないと思うのだが、この男に世間一般の常識を求めることは、そもそも無理な話だし、アークレイも諦めている。
「これはエルガスティン王国の王都にある、高級娼館”花灯篭(はなとうろう)”で使われている香油なんだ」
「・・・・・・娼館?」
「そ。それも、男娼・・・・・・男性同士専門のな」
「男娼!?そんなものがあるのか!?」
「あるさ。エルガスティン王国では、貴族が男娼娼館に通うのは当たり前にあることなんだしな。貴族の嗜みみたいなものさ」
口をぽかんと大きく開けたアークレイの表情に、ウォーレンは肩を揺らしながら可笑しそうに笑った。
「おいおい。そんなに驚くことか?」
「いや、しかし・・・・・・エルガスティン王国では同性婚を認める法律は無いだろう?」
「ああ、無いな。だが、同性愛を禁じる法律も無い」
「!」
「四強国のうち、リヒテラン王国やファーリヴァイア王国では、確固とした同性愛を禁じる法律があるが、エルガスティン王国にはそれはない。大らかな国民だし、性に関してもかなり寛容で、女性同士でも男性同士でも恋愛は自由というお国柄なんだ。リヒテラン王国とは真逆で、血を残さない関係だからこそ、跡目争いや相続争いが起こらないという理由で歓迎されている節がある」
「そうなのか・・・・・・知らなかった・・・・・・」
知らなかったというよりも、そもそも興味がなかった、という方が正しい。
アークレイがシルフィアを好きになることがなければ、同性同士ということに意識を向けることすらなかっただろう。
「”花灯篭”はエルガスティンの中でも、特に最高級の娼館なんだ。建物や設備ももちろん、男娼たちもとにかく最高に良いらしいぞ。美少年に美青年、美壮年だっているぞ。とにかく選りすぐりの男娼たちばかりだから、顧客も厳しい基準で選ばれた者だけに限られているようだな。中にはお忍びでやって来る王族なんかも居るらしい」
「王族?」
「ああ。”花灯篭”の顧客だというだけでも箔が付くらしいからなあ」
アークレイには全くといっていいほど理解が出来ない世界だ。
だが、だからといってそれを否とするつもりはない。
そもそも同性など好きになることなどないと思っていた自分が、同性のシルフィアを好きになってしまったのだから。
そういう世界もあるのだと、アークレイは驚きながらも受け入れた。
「この香油はその”花灯篭”で使われているものだ。これだけで10万ディナールもするんだぞ?」
「10万!?」
シメオンのおかげで金銭感覚が常識的であるアークレイには、その値段が破格の値段であることはすぐにわかった。
「男同士の性行為は、普通、異性同士では使わない場所に挿れるわけだし、そこが濡れるわけでもないし、挿れるほうも挿れられるほうも、最初はきつくて痛くてなかなか大変なものだ」
「おまえが言うと生々しく聞こえるな・・・・・・」
「そうか?これでも柔らかく言ってるつもりだがな」
「・・・・・・・いや、おまえに品性を求めるのが間違っていた。先を続けてくれ」
額に手をあてて、アークレイは深いため息を吐き出した。
小瓶の蓋を閉めたウォーレンは、それをアークレイの膝の上にあった木箱の藁の中へと沈める。
「で、この香油で濡らせば、初めてのときでもほとんど痛みを感じないそうだ。それどころか、媚薬の効果でたちまち理性なんてぶっ飛んでしまう。泥沼のような快楽の渦に巻き込まれて、これがまー・・・最っっっ高にいいぞ?」
拳を握り締め、力をこめて言うウォーレンの言葉にはやたらと説得力があった。
「・・・・・・使ったな?」
「当然だ。おまえに贈る前に自分が試さなくてどうする。俺用にもう一つ購入して使わせてもらった。いや~・・・昨夜は本当に燃えた燃えた。最高によかった!」
「昨夜?」
「ああ。これから1ヶ月間会えないわけだし、昨夜はその分堪能させてもらったぜ。あいつも、いつにも増して感じまくって、善がりまくっていたもんなあ・・・・・・」
その情景を思い浮かべているのか、どこか遠くを見るようにニヤニヤと笑う。
アークレイは今朝方のシメオンの様子を思い出し、「ああ・・・」と呆れ顔でため息をつく。
顔色も芳しくなく、体調は悪そうで、歩き方も辛さをこらえるようなものだった。
朝議の間も気だるそうに何度もため息をついており、なかなか集中出来ないシメオンのことが気になってはいたのだ。
その原因は、目の前にいる男だったというわけか。
「少しは加減をしてやれ・・・・・・」
本当に、こんな男を相手にするシメオンが気の毒に思える。
まあ、何だかんだ言ってシメオンもそれで良しと思っているらしいので、二人の関係に口を挟むことはしないが。
「その香油の良さは俺が保証する。お取り寄せ可能だからな、足りなくなったらいつでも言えよ?」
「・・・・・・考えておく」
緩慢な動作で木箱の蓋を閉め、アークレイは深く息を吐き出した。
「ま、でも本当によかった」
顔を上げれば、笑みを浮かべたウォーレンがアークレイを見下ろしてくる。
その笑みは、先ほどまでの嫌味を含んだ笑みではなかった。
「何がだ?」
「シルフィア殿だよ」
「シルフィア?どういう意味だ?」
「いや・・・・・・おまえに嫁いで来てくれたのが、シルフィア殿でよかったという意味だ。確かに少女と見紛うばかりの美少年だが、おまえが惹かれたのはそれだけじゃあないだろ?」
「ああ」
「穏やかで優しくて、だが芯は強くて負けず嫌い。他にもおまえにしか見せていない表情があるだろう。儚げでか弱い方かと思いきや、ディヴェルカ=イングラム仕込みの剣の使い手。おまえのことを護ると言ったその力強さ。見た目を裏切らない一面と、見た目を裏切る一面を併せ持つ不思議な方だ。だが、シルフィア殿のその全てをおまえは愛しいと思うのだろう?
「・・・・・・ああ」
「よかったな、シルフィア殿に出会えて。おまえは幸せ者だ」
「ウォーレン・・・・・・」
ウォーレンはふっと笑うと、ぽんっとアークレイの肩に右手を置いた。
「大事にしてやれよ?シルフィア殿を幸せにしてやれ」
「ああ・・・・・・ありがとう、ウォーレン」
差し出されたウォーレンの右手に笑みを浮かべ、アークレイも右手を差し出して互いに強く手を握り合った。
口は悪くとも、ウォーレンはいつもアークレイのことを見守ってくれていた。
時には兄のように、時には友のように、時には騎士として。
この関係はずっと同じだ。
今までも、そして、これからも。
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―――
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