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季節は巡るが何も変わらないわけでは無い 1
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季節が一つ周り、俺たちは一つ年を取った。単に時間が経っただけだ。何もしなくったって時間は只過ぎていく。誰に自慢できることでもない。
「今年はさあ、日向が部長になるべきだと思うんだよな」
伊月が唐突に俺に言った。
「別にいいけど、なんでだよ?」
「俺は生徒会の仕事もあるし。ちょっと今年は忙しくなりそうなんだよ」
「まあ、いいけど……」
「うん。それが良いよ。」
鈴木も笑顔で言ってくれた。
俺は教室で、伊月に小声で聞いた。
「彼女とは仲良くやっているか?」
伊月は一瞬面食らったような顔をしたが、
「まあまあかな」
と言った。
「知っていたのか」
「そりゃあね」
「そうか」
それきり伊月は話題を広げなかった。
顔つきも平然を装いつつもどこか神妙だった。目が笑っていない。
「何か悩みでもあるのか?」
「あるっちゃある。ないっちゃない」
「なんだそりゃ」
「俺に言わせれば、問題の生じない人間関係なんて存在しない」
「まあ、そうだわな。一般論としても実際としても」
「一般論でも実際にでもそうだ。ただ、俺としてはあまり考えたくない部類のことなんだ。俺は俺の出来ることをするしかない」
伊月はきっぱりと宣言した。
「そういうものだよな」
「そういうものだ」
伊月と俺は納得しあった。俺たちは、自分に今できる最大限のことをするしかないのだ。確かに俺たちは正しかった。只もっと言えば、世の中は必ずしも、正しさだけが必要とされているわけではないことを、俺たちは知らなかった。
「ところで、彼女とはどこまで進んでるんだ?彼女の家には行った?」
「家に行ったことはあるけど、お前が考えているようなことは無かったよ。残念ながら」
「つまんねえな」
「お前に言われたくねえ」
「うるせ」
「お前は好きな人いないのか?」
真剣なトーンだった。
「多分いない」
俺は即座に言った。嘘だった。
「そうか」
と伊月は言った。
「何か彼女とトラブルあったら俺に報告しろよ、馬鹿にしてやるから」
俺は笑って言った。
「するかよ」
俺たちは、鈴木には悪いが、出会ったときのような友情を取り戻していた。それでもやはり、俺は鈴木の前でこんな会話を堂々とする気にはなれなかった。
俺たちは二年生になった。去年の暮れにビブリオバトルの全国大会に行ったものの、優勝は伊月も俺も出来なかった。よくわからねえけど、すごく有名な進学校の三年生のプレゼンが群を抜いていて、票は殆どそいつに持って行かれて終わった。俺はともかく、伊月の話術もそんなに話題にならなかった。それが俺たちを少しだけ凹ませた。大会の後、俺はますます本の世界に籠もるようになった。正月休みは殆ど本だけを読んで過ごした(と言っても、普段とそんなに変わりはないが)。
意識的に行ったことと言えば、今までの俺ならば手にしないような本を読むことだった。俺の好みじゃない、となんとなく敬遠していた本を手に取るようにした。その本のうち、半分以上はやはり俺の好みにはあわず、最後まで読むことは無かったが、残り半分は新たな発見があった。というのも、読みづらい文体はとっつきにくいが、一度すべて読破してしまうとその文体に慣れ、別の作品もすらすら読めるようになる。おかげで今まで名作とは言われていたが、読んでいなかった古典を読むことが出来た。知識として知っていたものが、実感として俺の中をすり抜けて言ったような気がした。
俺はこうやって、ちょっとずつ自分で自分を移動させることが出来るのだ。それは素晴らしい事だったし、俺が読書をする理由の殆どはそこにあった。読み終わった時にどこか別の場所に移動していること。それが俺にとって、素晴らしい作品の定義だった。
「今年はさあ、日向が部長になるべきだと思うんだよな」
伊月が唐突に俺に言った。
「別にいいけど、なんでだよ?」
「俺は生徒会の仕事もあるし。ちょっと今年は忙しくなりそうなんだよ」
「まあ、いいけど……」
「うん。それが良いよ。」
鈴木も笑顔で言ってくれた。
俺は教室で、伊月に小声で聞いた。
「彼女とは仲良くやっているか?」
伊月は一瞬面食らったような顔をしたが、
「まあまあかな」
と言った。
「知っていたのか」
「そりゃあね」
「そうか」
それきり伊月は話題を広げなかった。
顔つきも平然を装いつつもどこか神妙だった。目が笑っていない。
「何か悩みでもあるのか?」
「あるっちゃある。ないっちゃない」
「なんだそりゃ」
「俺に言わせれば、問題の生じない人間関係なんて存在しない」
「まあ、そうだわな。一般論としても実際としても」
「一般論でも実際にでもそうだ。ただ、俺としてはあまり考えたくない部類のことなんだ。俺は俺の出来ることをするしかない」
伊月はきっぱりと宣言した。
「そういうものだよな」
「そういうものだ」
伊月と俺は納得しあった。俺たちは、自分に今できる最大限のことをするしかないのだ。確かに俺たちは正しかった。只もっと言えば、世の中は必ずしも、正しさだけが必要とされているわけではないことを、俺たちは知らなかった。
「ところで、彼女とはどこまで進んでるんだ?彼女の家には行った?」
「家に行ったことはあるけど、お前が考えているようなことは無かったよ。残念ながら」
「つまんねえな」
「お前に言われたくねえ」
「うるせ」
「お前は好きな人いないのか?」
真剣なトーンだった。
「多分いない」
俺は即座に言った。嘘だった。
「そうか」
と伊月は言った。
「何か彼女とトラブルあったら俺に報告しろよ、馬鹿にしてやるから」
俺は笑って言った。
「するかよ」
俺たちは、鈴木には悪いが、出会ったときのような友情を取り戻していた。それでもやはり、俺は鈴木の前でこんな会話を堂々とする気にはなれなかった。
俺たちは二年生になった。去年の暮れにビブリオバトルの全国大会に行ったものの、優勝は伊月も俺も出来なかった。よくわからねえけど、すごく有名な進学校の三年生のプレゼンが群を抜いていて、票は殆どそいつに持って行かれて終わった。俺はともかく、伊月の話術もそんなに話題にならなかった。それが俺たちを少しだけ凹ませた。大会の後、俺はますます本の世界に籠もるようになった。正月休みは殆ど本だけを読んで過ごした(と言っても、普段とそんなに変わりはないが)。
意識的に行ったことと言えば、今までの俺ならば手にしないような本を読むことだった。俺の好みじゃない、となんとなく敬遠していた本を手に取るようにした。その本のうち、半分以上はやはり俺の好みにはあわず、最後まで読むことは無かったが、残り半分は新たな発見があった。というのも、読みづらい文体はとっつきにくいが、一度すべて読破してしまうとその文体に慣れ、別の作品もすらすら読めるようになる。おかげで今まで名作とは言われていたが、読んでいなかった古典を読むことが出来た。知識として知っていたものが、実感として俺の中をすり抜けて言ったような気がした。
俺はこうやって、ちょっとずつ自分で自分を移動させることが出来るのだ。それは素晴らしい事だったし、俺が読書をする理由の殆どはそこにあった。読み終わった時にどこか別の場所に移動していること。それが俺にとって、素晴らしい作品の定義だった。
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