32 / 50
意見を言わない限り肯定したと思われても仕方がない 2
しおりを挟む
その日の夜、英語の宿題をやりながら俺は中谷さんに連絡した。
【明日の昼は俺と南条が初めに行きます。あと伊月も後から来るみたいなんで、連絡し次第援護で来てくれませんか?】
OKの文字がすぐに返ってくる。
【初めはどうやって切り出すの?】
中谷さんが質問する。
【南条と俺とで例のアカウント画面を見せて、それについて知らないか聞いてみます】
【知らないって言われたら?】
中谷さんが切り返す。確かに。
【南条の証言から知らないはずはないんで、これを見た反応から伺います。そんで、光の写真が校舎内でアップされていることを証拠に詰め寄ります】
【南条さんがクロじゃない確信はあるの?】
【そこは中谷さんが一番わかっているでしょ】
【まあね、ちょっと調べればわかると思うけどどうする?追加料金かかるけど調べる?】
【一応お願いします、金なら払うんで】
【いや、いいよ。その代わり、君が今書いている小説を見せてほしいな】
【なんで俺が小説書いていること、知ってるんですか】
【え、だって文芸部って小説書く部活でしょ?みんな書いているんじゃないの?】
天然で言っているのか?
【もしかしてカマかけただけですか?】
【うん。当たった】
ピースの絵文字が送られてくる。
【わかりましたよ】
中谷さんはつくづく怖い。これで弱みを握られた。
【未来の小説家の生原稿ゲットん☆】
冗談なのか本気なのかいまいちわからない。とにかくこの人を敵に回すことだけはしないでおこうと再度誓った。
翌日の授業中は何となく気がそぞろだった。昼休みのことが頭の片隅のどこかにあり、いまいち集中できなかった。好きな本でも隠れて読もうとしたが、それにも集中できず、諦めて授業を聞いた。英語の課題は今日当たらなかった。俺は授業が一つ終わる毎に少しずつ胸がドキドキし、息がしづらいような感じがした。
昼休みに早速南条と合流した。
「ありがと、来てくれて」
「いえいえ」
「八組に行くか」
俺たちは無言で八組を目指す。少し決まずい。
「協力してくれてありがとう」
俺はとにかく何かを言わなくてはと思い、必死に頭を回転させた。
「いや」
南条は下を向いて言う。
「私の方こそ、放置していたものがあんなことになっているとは知らなかったですし、気づかせてくれたのでこちらこそお礼を言うべきです」
「いや、俺は、自分がやりたいようにやっているだけだから」
「そうですか」
沈黙。なんて返せばいいのかわからん。伊月ならこういう時、どう返すんだろうなあ。
「日向さんって、思ったより話しやすいですよね」
気をきかせてくれたのか、南条が話題を振る。
「日向でいいよ」
言っていると、八組に着いた。
「そういや昨日、欅に連絡したんだよな?」
「はい、連絡も来ました」
「じゃあ大丈夫だ、ちょっと呼んできてくれ」
「わかりました」
南条は八組の中へ入っていった。俺はすかさず伊月と中谷さんに連絡する。
【今呼び出してるなうです】
中谷さんから連絡が即来る。
【おっす】
伊月からの連絡はない。
しばらくするとおかっぱの女の子が出てきた。見たことがある。確か新入生とのお茶会の時に来ていた子だった気がする。
「なんでしょう」
「実はこのアカウントについて知りたくて」
おかっぱの子の顔がみるみる青ざめていく。
「このアカウント、」
「ごめんなさい」
後ろから少し大きな声がした。昨日聞いた、高い、声。
佐伯だった。
【明日の昼は俺と南条が初めに行きます。あと伊月も後から来るみたいなんで、連絡し次第援護で来てくれませんか?】
OKの文字がすぐに返ってくる。
【初めはどうやって切り出すの?】
中谷さんが質問する。
【南条と俺とで例のアカウント画面を見せて、それについて知らないか聞いてみます】
【知らないって言われたら?】
中谷さんが切り返す。確かに。
【南条の証言から知らないはずはないんで、これを見た反応から伺います。そんで、光の写真が校舎内でアップされていることを証拠に詰め寄ります】
【南条さんがクロじゃない確信はあるの?】
【そこは中谷さんが一番わかっているでしょ】
【まあね、ちょっと調べればわかると思うけどどうする?追加料金かかるけど調べる?】
【一応お願いします、金なら払うんで】
【いや、いいよ。その代わり、君が今書いている小説を見せてほしいな】
【なんで俺が小説書いていること、知ってるんですか】
【え、だって文芸部って小説書く部活でしょ?みんな書いているんじゃないの?】
天然で言っているのか?
【もしかしてカマかけただけですか?】
【うん。当たった】
ピースの絵文字が送られてくる。
【わかりましたよ】
中谷さんはつくづく怖い。これで弱みを握られた。
【未来の小説家の生原稿ゲットん☆】
冗談なのか本気なのかいまいちわからない。とにかくこの人を敵に回すことだけはしないでおこうと再度誓った。
翌日の授業中は何となく気がそぞろだった。昼休みのことが頭の片隅のどこかにあり、いまいち集中できなかった。好きな本でも隠れて読もうとしたが、それにも集中できず、諦めて授業を聞いた。英語の課題は今日当たらなかった。俺は授業が一つ終わる毎に少しずつ胸がドキドキし、息がしづらいような感じがした。
昼休みに早速南条と合流した。
「ありがと、来てくれて」
「いえいえ」
「八組に行くか」
俺たちは無言で八組を目指す。少し決まずい。
「協力してくれてありがとう」
俺はとにかく何かを言わなくてはと思い、必死に頭を回転させた。
「いや」
南条は下を向いて言う。
「私の方こそ、放置していたものがあんなことになっているとは知らなかったですし、気づかせてくれたのでこちらこそお礼を言うべきです」
「いや、俺は、自分がやりたいようにやっているだけだから」
「そうですか」
沈黙。なんて返せばいいのかわからん。伊月ならこういう時、どう返すんだろうなあ。
「日向さんって、思ったより話しやすいですよね」
気をきかせてくれたのか、南条が話題を振る。
「日向でいいよ」
言っていると、八組に着いた。
「そういや昨日、欅に連絡したんだよな?」
「はい、連絡も来ました」
「じゃあ大丈夫だ、ちょっと呼んできてくれ」
「わかりました」
南条は八組の中へ入っていった。俺はすかさず伊月と中谷さんに連絡する。
【今呼び出してるなうです】
中谷さんから連絡が即来る。
【おっす】
伊月からの連絡はない。
しばらくするとおかっぱの女の子が出てきた。見たことがある。確か新入生とのお茶会の時に来ていた子だった気がする。
「なんでしょう」
「実はこのアカウントについて知りたくて」
おかっぱの子の顔がみるみる青ざめていく。
「このアカウント、」
「ごめんなさい」
後ろから少し大きな声がした。昨日聞いた、高い、声。
佐伯だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる