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餅は餅屋
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一週間が経った。若狭の小説は相変わらず収束しなかった。俺の提言通り、都合よく神様のようなものが登場人物を動かすように物語を進めようとしたが、それでも間に合わなかった。俺と佐伯、鈴木の小説は修正された。高橋は文章の校正を、時系列や細かい知識は梶がチェックしてくれた。理系なだけあって、梶は草木や星の名前などにも詳しく、その知識に俺たちはいつも感心させられた。特に星座の知識は若狭の物語の中でも重要な役割を占めたのでとても役に立った。
「実は部誌を年に一回、発行しようと思う」
俺はみんなを集めて言う。
「今年はメンバーも多いし、部誌を作って文化祭で売りたい。今日から一か月、それに注力する。文化祭で使う部屋も一つまるまる借りた」
「がんばったぜ」
と伊月。
「去年は文化祭、何やったんですか?」
と若狭。好奇心たっぷりのイヌのようだ。
「実は文化祭は五人以上じゃないと出店できなくて、やらなかった。去年は同じく人数の足りなかった書道部のスペースに合同で部誌を置かせてもらった」
俺が説明する。
「でも今年は一階の扉から近い部屋を取ったらな。くじを引いた伊月に感謝して欲しい」
誰からともなくみんなが拍手した。伊月が笑いながら軽く頭を下げた。
「で、今言ったように部誌を発行して売ろうと思う。過去作品もあるから、かなりのボリュームにはなると思う。で、問題は製本作業なんだけど」
「製本なら製本機を買うか借りるかできると思います」
梶が口を挟む。
「印刷はどのサイズかにもよりますが、確か一階の体育館近くの倉庫に輪転機があったと思います」
「じゃあ後はサイズと紙の種類を考えなくてはですね」
高橋も口を挟む。
「サイズは全部の文字数やページ数を換算してから考えた方がよくないか?」
と伊月。
「ですね、作品は出来上がっているので編集作業を早めに終わらせて、サイズを決めてみます」
高橋がスラスラ言う。
「じゃあページレイアウトは高橋に任せる」
俺が指示する。早速高橋が皆から原稿データを受け取り、パソコンに向かう。
「梶と伊月は輪転機と製本機が使えるかどうか確認してきてくれないか」
俺が二人に言う。
「場所はわかりますが誰に聞けばいいでしょう」
「とりあえず辻先生だな、後は倉庫の管理人が誰かわからないからそれも聞いて来てくれ」
「わかった、そこらへんは調べてくるよ」
伊月が頼もしく言う。こいつがいれば交渉に問題は無いだろう。
「そういえば、表紙はどうします?」
若狭が投げかける。
「絵でもいいけど、写真を使って加工するか、文字をレタリングしてロゴみたいにするのもありだな」
伊月が言う。佐伯がホワイトボードにさらさらと内容を書いていく。①写真 ②絵 ③レタリング。
「あ、俺写真なら結構得意で、趣味でとっているんですけど、この前旅行で撮ったやつとか」
みんなが若狭の携帯に注目する。見ると、夕暮れに鳥が飛び立つ写真や紅葉の下で寛ぐ猫の写真、港の船とと空と海とがくっきりと対比された写真などがあった。写真のことはよくわからないけれど、どれもすごく美しく思えた。
「……意外な才能だな」
伊月がぼそりという。
「使えそうだねえ」
鈴木も感心する。
「これ、加工したら使えると思います。データをもらっていいですか?」
梶が淡々と言う。
「じゃあ表紙の加工は俺と梶がやろう、梶は大変だけどお願い」
「わかりました」梶は優秀な技術員みたいだ。
「先にさっき言っていた先生の確認を取りに行こう」
伊月が梶に声をかける。
「そうだな、表紙は後でにしよう、若狭は使えそうな写真をピックアップしておいてくれ」
「はいっ」
若狭は携帯を操作する。佐伯がホワイトボードの「①写真」の文字に丸を付ける。
「佐伯と鈴木は部屋のレイアウト考えてくれないか?予算は三千円くらいしかないから、百円均一で買える物を買おう」
「ええと、頑張るよ」
と、少々頼りない鈴木。
「私、インテリアとか好きなので頑張ります」
と、佐伯。
それから、各々が作業に移り、俺と佐伯と鈴木はあーだこーだと教室のレイアウト案を考えていた。
三十分後、
「輪転機も製本機も使えるみたいだ」
と伊月が言いながら帰ってきた。梶は製本機の取扱説明書をすでに読んでいる。
「厚さによってコツがいるかもしれませんね」
梶が冷静に言う。
「お、おう。でも編集作業はまだまだ終わらないと思うから、先にポスターと表紙の案を考えようか」
「わかりました」
そのあとは梶と若狭で表紙案を考え、俺と伊月もたまに口を挟み、各々の作業を行って七時に解散した。
「一年生はみんな優秀だね」
雪が降り始めそうな寒さの中、鈴木がぽつりと言った。帰り道、俺は鈴木と二人だった。伊月は彼女と帰った。
「一年生はみんないろいろな特技があってすごいなあ」
「今年の一年は優秀だよな」
俺もうなずく。伊月と俺は特に何もしなくても勝手に物事が回るからやりやすい。
「なんか、私たちより活躍してるよね」
「そうだなあ」
「今日、佐伯さんがね、帰り際に『みんなのおすすめの本を並べておくのはどうでしょう』って提案してくれたんだ」
「それ、いいかもな」
「レイアウトに関しては何もわからないから、本当に頼りっぱなしなんだあ」
すごいな、みんな」
「うん」
俺らはさくさくと枯葉の上を歩く。足を動かすたびにかさ、かさ、と音がする。
「じゃあ、高橋は一人で編集するのが大変そうだし、編集の手伝いに回ってくれないか?俺と伊月がレイアウトに加わるよ。買い出しも必要だろうし」
「うん、でも少し、レイアウトも手伝いたいな」
「……わかった」
「うん、私、何もできないんだなあ、って、今日、思っちゃった」
「なんで?」
俺は面食らった。
「なんでだ? 普通に、一番この部活で文章書けるエースなんだぞ」
「でも私、文章を書くしかできないよ」
鈴木が笑顔を取り繕って言う、目が笑っていない。泣きそうだ。
「日向君みたいに本の知識があって人の良さを見抜けるわけじゃないし、伊月君みたいに弁が立つわけでもないし、高橋さんみたいに紙の知識もないし、梶君みたいに機械に強くないし、若狭君みたいにみんなと仲良くできて写真がうまいわけでもないし」
「なんでだ?」
俺は率直に答えた。
「なんで鈴木がそんなこと言うんだ?」
「だって私、本当に何も役に立たなくて……」
「何もできないのは俺の方じゃないか」
俺はショックだった。そんな言葉、鈴木から聞きたくなった。
「俺なんか、ほとんど何の能力もない。ただ夢中で本を読んで、それで過ごしているだけで……」
「日向君は人のことよく見ているし、まとめられている」
鈴木は俺の目を真直ぐ見て言う。
「日向君は自分のこと、何もしていないって言うけど、自分が思っているより本当にすごい人だと思う」
「そんなに言うなら」
俺も食い下がる。俺らは駅に向かう途中の道の脇で立ち止まる。
「桜木ヒカルだってすごいよ。高校生なのに賞獲ってさ。俺はそんな才能持ち合わせてないよ、残念ながら。でも、でも小説家になりたいって思っちゃったから、お前を見てすごいと思ったから、俺にもできるんじゃないかと思って始めたけど、けど、できなくて、苦しくて、何が書きたいのかなんてまるで分らなくなって、でも頭の中はすごいぐちゃぐちゃしてて、でも、それでも、物語りが好きで、物語を、空気のように、俺は、吸って生きているから、やっぱり書きたいと思うから、書かなきゃなんだよ………」
俺は息を大きく吐いた。鈴木は丸いまっすぐな目で俺を見ていた。
「俺のエースが、」
俺は光の両肩に手をかける。
「俺のエースが、そんなこと言わないでくれ」
鈴木はそのまま俺の手を振り払わなかった。
「鈴木がそんなことを言うんだったら、俺はなんなんだ?」
「わからない」
寒い日だったが、一段と空気が冷えた気がした。この様子の鈴木を見るのは二回目だ。欅と対面した時と同じ声だ。
「だって物語が書けて、何になるの?」
鈴木が叫ぶ。
「俺が救われる」
俺はきっぱりと、鈴木の目を見て即座に言った。
「だから、頼むから、そんなこと言わないでくれ」
俺も鈴木の目を見る。丸くて小動物みたいな鈴木の目を。
「そんな当たり前のこと」
鈴木は両肩に俺の手を載せられたまま、微動だにしなかった。時間が長く感じられた。俺はきっかり三秒間鈴木の目を見て、その後下を向いた。
「頼むから」
「……うん」
ゆっくり、鈴木は落ち着いた声で言った。俺頭の中でその声が響く。鈴木の目を見る。丸い、いつもの目。きっかり三秒後に恭しく鈴木は笑った。俺は両手を鈴木の両肩からどかす。俺は二秒かけて深呼吸した。鈴木は少し笑った。
「そっか、わかった」
「うん」
良かった。鈴木は落ち込みから少し回復したみたいだった。
「日向君、すごいよ」
鈴木は笑った。俺は軽いため息をついた。
「何が?」
「私、信じていなかった」
「だめだろ」
俺が鈴木を叱る。
「誰が何と言おうと、救われているんだよ。本当は」
本心だった。もともと嘘なんかつけない。
「鈴木が物語の可能性を信じないでどうする」
「本当、すごいよね」
鈴木は笑う。ため息交じりに。
「……天然」
何か鈴木が言った気がしたが、聞こえなかった。
「そういや、もう七時過ぎているけど、時間あるか?少し」
「え?大丈夫だけど」
「俺、新しく物語作ったんだ。」
「実は部誌を年に一回、発行しようと思う」
俺はみんなを集めて言う。
「今年はメンバーも多いし、部誌を作って文化祭で売りたい。今日から一か月、それに注力する。文化祭で使う部屋も一つまるまる借りた」
「がんばったぜ」
と伊月。
「去年は文化祭、何やったんですか?」
と若狭。好奇心たっぷりのイヌのようだ。
「実は文化祭は五人以上じゃないと出店できなくて、やらなかった。去年は同じく人数の足りなかった書道部のスペースに合同で部誌を置かせてもらった」
俺が説明する。
「でも今年は一階の扉から近い部屋を取ったらな。くじを引いた伊月に感謝して欲しい」
誰からともなくみんなが拍手した。伊月が笑いながら軽く頭を下げた。
「で、今言ったように部誌を発行して売ろうと思う。過去作品もあるから、かなりのボリュームにはなると思う。で、問題は製本作業なんだけど」
「製本なら製本機を買うか借りるかできると思います」
梶が口を挟む。
「印刷はどのサイズかにもよりますが、確か一階の体育館近くの倉庫に輪転機があったと思います」
「じゃあ後はサイズと紙の種類を考えなくてはですね」
高橋も口を挟む。
「サイズは全部の文字数やページ数を換算してから考えた方がよくないか?」
と伊月。
「ですね、作品は出来上がっているので編集作業を早めに終わらせて、サイズを決めてみます」
高橋がスラスラ言う。
「じゃあページレイアウトは高橋に任せる」
俺が指示する。早速高橋が皆から原稿データを受け取り、パソコンに向かう。
「梶と伊月は輪転機と製本機が使えるかどうか確認してきてくれないか」
俺が二人に言う。
「場所はわかりますが誰に聞けばいいでしょう」
「とりあえず辻先生だな、後は倉庫の管理人が誰かわからないからそれも聞いて来てくれ」
「わかった、そこらへんは調べてくるよ」
伊月が頼もしく言う。こいつがいれば交渉に問題は無いだろう。
「そういえば、表紙はどうします?」
若狭が投げかける。
「絵でもいいけど、写真を使って加工するか、文字をレタリングしてロゴみたいにするのもありだな」
伊月が言う。佐伯がホワイトボードにさらさらと内容を書いていく。①写真 ②絵 ③レタリング。
「あ、俺写真なら結構得意で、趣味でとっているんですけど、この前旅行で撮ったやつとか」
みんなが若狭の携帯に注目する。見ると、夕暮れに鳥が飛び立つ写真や紅葉の下で寛ぐ猫の写真、港の船とと空と海とがくっきりと対比された写真などがあった。写真のことはよくわからないけれど、どれもすごく美しく思えた。
「……意外な才能だな」
伊月がぼそりという。
「使えそうだねえ」
鈴木も感心する。
「これ、加工したら使えると思います。データをもらっていいですか?」
梶が淡々と言う。
「じゃあ表紙の加工は俺と梶がやろう、梶は大変だけどお願い」
「わかりました」梶は優秀な技術員みたいだ。
「先にさっき言っていた先生の確認を取りに行こう」
伊月が梶に声をかける。
「そうだな、表紙は後でにしよう、若狭は使えそうな写真をピックアップしておいてくれ」
「はいっ」
若狭は携帯を操作する。佐伯がホワイトボードの「①写真」の文字に丸を付ける。
「佐伯と鈴木は部屋のレイアウト考えてくれないか?予算は三千円くらいしかないから、百円均一で買える物を買おう」
「ええと、頑張るよ」
と、少々頼りない鈴木。
「私、インテリアとか好きなので頑張ります」
と、佐伯。
それから、各々が作業に移り、俺と佐伯と鈴木はあーだこーだと教室のレイアウト案を考えていた。
三十分後、
「輪転機も製本機も使えるみたいだ」
と伊月が言いながら帰ってきた。梶は製本機の取扱説明書をすでに読んでいる。
「厚さによってコツがいるかもしれませんね」
梶が冷静に言う。
「お、おう。でも編集作業はまだまだ終わらないと思うから、先にポスターと表紙の案を考えようか」
「わかりました」
そのあとは梶と若狭で表紙案を考え、俺と伊月もたまに口を挟み、各々の作業を行って七時に解散した。
「一年生はみんな優秀だね」
雪が降り始めそうな寒さの中、鈴木がぽつりと言った。帰り道、俺は鈴木と二人だった。伊月は彼女と帰った。
「一年生はみんないろいろな特技があってすごいなあ」
「今年の一年は優秀だよな」
俺もうなずく。伊月と俺は特に何もしなくても勝手に物事が回るからやりやすい。
「なんか、私たちより活躍してるよね」
「そうだなあ」
「今日、佐伯さんがね、帰り際に『みんなのおすすめの本を並べておくのはどうでしょう』って提案してくれたんだ」
「それ、いいかもな」
「レイアウトに関しては何もわからないから、本当に頼りっぱなしなんだあ」
すごいな、みんな」
「うん」
俺らはさくさくと枯葉の上を歩く。足を動かすたびにかさ、かさ、と音がする。
「じゃあ、高橋は一人で編集するのが大変そうだし、編集の手伝いに回ってくれないか?俺と伊月がレイアウトに加わるよ。買い出しも必要だろうし」
「うん、でも少し、レイアウトも手伝いたいな」
「……わかった」
「うん、私、何もできないんだなあ、って、今日、思っちゃった」
「なんで?」
俺は面食らった。
「なんでだ? 普通に、一番この部活で文章書けるエースなんだぞ」
「でも私、文章を書くしかできないよ」
鈴木が笑顔を取り繕って言う、目が笑っていない。泣きそうだ。
「日向君みたいに本の知識があって人の良さを見抜けるわけじゃないし、伊月君みたいに弁が立つわけでもないし、高橋さんみたいに紙の知識もないし、梶君みたいに機械に強くないし、若狭君みたいにみんなと仲良くできて写真がうまいわけでもないし」
「なんでだ?」
俺は率直に答えた。
「なんで鈴木がそんなこと言うんだ?」
「だって私、本当に何も役に立たなくて……」
「何もできないのは俺の方じゃないか」
俺はショックだった。そんな言葉、鈴木から聞きたくなった。
「俺なんか、ほとんど何の能力もない。ただ夢中で本を読んで、それで過ごしているだけで……」
「日向君は人のことよく見ているし、まとめられている」
鈴木は俺の目を真直ぐ見て言う。
「日向君は自分のこと、何もしていないって言うけど、自分が思っているより本当にすごい人だと思う」
「そんなに言うなら」
俺も食い下がる。俺らは駅に向かう途中の道の脇で立ち止まる。
「桜木ヒカルだってすごいよ。高校生なのに賞獲ってさ。俺はそんな才能持ち合わせてないよ、残念ながら。でも、でも小説家になりたいって思っちゃったから、お前を見てすごいと思ったから、俺にもできるんじゃないかと思って始めたけど、けど、できなくて、苦しくて、何が書きたいのかなんてまるで分らなくなって、でも頭の中はすごいぐちゃぐちゃしてて、でも、それでも、物語りが好きで、物語を、空気のように、俺は、吸って生きているから、やっぱり書きたいと思うから、書かなきゃなんだよ………」
俺は息を大きく吐いた。鈴木は丸いまっすぐな目で俺を見ていた。
「俺のエースが、」
俺は光の両肩に手をかける。
「俺のエースが、そんなこと言わないでくれ」
鈴木はそのまま俺の手を振り払わなかった。
「鈴木がそんなことを言うんだったら、俺はなんなんだ?」
「わからない」
寒い日だったが、一段と空気が冷えた気がした。この様子の鈴木を見るのは二回目だ。欅と対面した時と同じ声だ。
「だって物語が書けて、何になるの?」
鈴木が叫ぶ。
「俺が救われる」
俺はきっぱりと、鈴木の目を見て即座に言った。
「だから、頼むから、そんなこと言わないでくれ」
俺も鈴木の目を見る。丸くて小動物みたいな鈴木の目を。
「そんな当たり前のこと」
鈴木は両肩に俺の手を載せられたまま、微動だにしなかった。時間が長く感じられた。俺はきっかり三秒間鈴木の目を見て、その後下を向いた。
「頼むから」
「……うん」
ゆっくり、鈴木は落ち着いた声で言った。俺頭の中でその声が響く。鈴木の目を見る。丸い、いつもの目。きっかり三秒後に恭しく鈴木は笑った。俺は両手を鈴木の両肩からどかす。俺は二秒かけて深呼吸した。鈴木は少し笑った。
「そっか、わかった」
「うん」
良かった。鈴木は落ち込みから少し回復したみたいだった。
「日向君、すごいよ」
鈴木は笑った。俺は軽いため息をついた。
「何が?」
「私、信じていなかった」
「だめだろ」
俺が鈴木を叱る。
「誰が何と言おうと、救われているんだよ。本当は」
本心だった。もともと嘘なんかつけない。
「鈴木が物語の可能性を信じないでどうする」
「本当、すごいよね」
鈴木は笑う。ため息交じりに。
「……天然」
何か鈴木が言った気がしたが、聞こえなかった。
「そういや、もう七時過ぎているけど、時間あるか?少し」
「え?大丈夫だけど」
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