鬼の宴

さかばんばすぴす

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鬼の宴

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~●◯●~
「ありがとうございます!」

さっきの鬼殺しを飲むたぶん鬼が、自分を捕まえているたぶん鬼にお礼をいう。
そんなに礼儀正しい人…たぶん鬼だったのだろうか?
または捕まえている方がなんか強いやつなのか。
まあ、少し他の鬼(仮)とは違う気はする。
黄色の目に焦げ茶の髪の毛、奇抜な着物。
ある程度、人間のような形をしているというのもあるが、異様にでかい左手が目に付く。
骨で構成されているその手は変幻自在なようで普通に使っている。
ひとしきり感謝を伝えられたボクを捕まえているたぶん鬼がこっちに話してくる。

「なあ、お前、どっから来た?」

「それより離せ!!!!」

首根っこを掴まれたまま宙ぶらりんで掴まえられている、
この体勢が辛い、首締まるわ、着物崩れるわでいいことない、


でも、ここで反撃しても、勝ち目はないか。

静かに、反抗していた手を降ろした。

「…たぶん、違う世界だ。」
「お?反抗期終了か?」
「っ、うるせぇ、ボクが今、お前に抗っても勝ち目がないと思ったからだ。」

ふーんと言いながら、品定めするようにこちらを見る。

「お前、勝ち目が無い敵に、向かっていかないタチか?」
「ちがう…そんなわけ無いだろ、ただ、そっちのほうが得策だと思っただけだ。」

凝視される目から逃げるように、近くの行燈を見た。
ふーん、と、声がして、刹那の浮遊感に苛まれる。

「っちょ!!!離せ!!!」

神輿のようにボクを担いで、鬼は言った。

「違う世界から来たんだろ?教えてやるよ、この世界。」
「いやっ!口頭でいいから!!!」

なんだよ、そんなの面白くないだろ?と、笑い、風を切り始める。
速い!!ジェットコースターかよ!!

「ハッハッハ!!!そんなに掴まって、面白いか!」
「ちげえよ!!どちらかといえば怖いわ!振り切られないように掴まってんの!」

目まぐるしく変わる景色、きれいに人混みを避ける道選びはこの街を隅から隅まで知っているようだった。
流れる景色が止まるときには、騒がしさは消え、辺りは静寂に包まれていた。

下には

「どーだ。きれいだろ、一等景色がよいここでしか見られない一年に一回の景色だ。」

首都よりも温かみのある、営みの銀河。
見えないのに分かる、笑い合う異形たち。

「…まあ、きれいだな、提灯とか、」
「やっぱりいいよな~!活気があって、しかも、規則もちゃんとしている!
私闘禁止だとか、食べ歩き禁止、餓鬼も禁止だな、」

指折りルールを話し始める自しょ…もう鬼でいいや、が、両手を折り終わったとこで、後ろから冷たい風が吹き込んだ。

「…んで、こんなに鬼が集まっているんだ、ソレ以外の場所はもぬけの殻、」

そんなときには、
骨の指が、後ろを指した。

「空き巣の稼ぎどきだろ?」

近くの茅葺き屋根のこじんまりとした家の扉が、どたん!!!と、あいた。
急に寒い暴風が辺りを包む。
めり、と、いい、その家が…家が!!!

「ふっっきとんだ!?!?」
「あはっはっは!!今日はそういう気分か…雪坊主さん?」

雪坊主??雪女とか、じゃなくて雪坊主?

「…そうそう!雪坊主、アグレッシブな方の子供さらいね。」

爆風で集められた雪が一塊の巨体になる。
山ぐらいの、いや、山以上の巨人は、家を自分の手(の形をした雪)に置き、飲み込んだ。
雄叫び、つまり、轟音。が、響く、

「おい!!餓鬼!」

鬼が声を俺にかける。

「言っちゃ悪いが、こいつはお前より強いぞ!」
「そりゃそうだろ!!変なとこで比べるな!!」

それで?ボクを貶すためにここまで来たのかよ?

「…でも、お前がここで引くと、家の中の子どもは氷の置物になっちまう。」

お前はどうする?そう言われている気がした。
得策、は、引くことだろう、一番賢く、安全に終わる。

安全…かあ…

『いいかい?きのすけ、よ~くきくんだ。』

遠い昔に聞いたはずの誰かの声が響く。

『人の魂は、平等だ。みな等しく21グラム、この世に二つもないもの、』

『大切で絶対に守らなくてはいけないもの、でも』

『大切を味方にして、安泰を進み過ぎたら、いつか道が消えてしまう。』

『大切にする、を、勇気出さないことのいいわけにしてはいけないよ、』

『それでは、ただの』

腰抜けだ。


「…おい、鬼。」
「ん…お、おう?」

手の平を鬼に向ける

「武器くれ、お前、持ってんだろ?」
「え…まあ…そうだな…」

急にやる気になったボクに驚きながら、どこからかでてきた脇差しをこっちに投げてくる。
普通の刀より短いそれは、使ったことがあるみたいに右手に馴染んだ。

こういう実態のないやつは、核とか、何かがあるのがお決まりだ。
目を凝ら…いや!見えねえよ!!!
瞬間、雪の拳がやってくる。

「っあぶな!!!」

危機一髪、鬼に抱えられて逃げた。

「おまえ…意外とおもろいやん!!」

笑いながら大ぶりの攻撃をスイスイ避けてゆく。
戦い慣れてるのか…?なんか、ボクを探していたし、道把握してたし、
警察とかの役職なのか?

「こいつの本体は頭の中、脳天の近くにいる。だ、か、ら~♪」

だ、か、ら?嫌な予感がするのは気のせいだろうか?って!抱え方を変えるな!

「秘技!!人間…?ミサイル!!!」

衝撃とともに、風切音が激しくなる、
独特な浮遊感に苛まれた、
あいつ、飛ばしやがった!!
空気抵抗で開きにくい目を必死に開けて敵を見る、
巨大だった雪坊主を見下ろして頭の近くに来る。

どこだ?探すが見えない、運に頼るしかないのか?

凝視する、

瞬間、世界がモノクロに変わる。
一つだけ青白い炎が雪塊の中に燃えた。

ーーー見え…た?

すぐに体制を立て直し、そこを目指して、

切っ先を

突きつけた。

「ん、おわった…か?」

刺した刀を引き抜く、
白銀に輝いていた剣先が、どす黒く変色していた。
これは…なんだ?
血液っぽくはない、もっと、凝縮された悪意のような。
そのへんの雪で拭き取って、鞘に収める。
さっきは一生懸命で気づかなかったけど、柄の装飾が美しい。
濃紺の中に煌く銀が、深海のようだ。
あれ、この根付…ボクの浴衣にもあるような…まあ、勘違いか、

一息をつく、途端、がたん!!と、足場が崩れた。
多くの雪が、雪崩れている。
やっっっば!そりゃ核なくなればそうなるわ!!
無駄な足掻きも成果は虚しく崩れるままに身を任すすべしかなかった。
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