鬼の宴

さかばんばすぴす

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鬼の宴

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~○◉○~ Sideくるる
矢がアキレツケンを狙って放たれる。

「っっぶねえ!!」

あいにく、いや、俺には奇跡的に俺には効かない矢だった。
ぐるぐる回ってる。もう、ずっっっと回ってる。
何回もあの部屋を見たが。人魂の身体は動かない。
もういいかといえどブツブツつぶやく頭に多少の不信感は覚えど、
できるとこがこれしかないのでがむしゃらにやるしかない現状だ。
ふと、矢の数が少なくなった気がして、
瞬間的に後ろを向く。
色彩の暴力の人型は、上を、射っていた。

轟音と瓦解が後ろの進行方向に響く。
下敷きになる事は奇跡的になかったが、こけてしまった。
やばい、あ、人魂の頭とんだ。やばww二重でヤバいww

「っ…おまえ、目的はなんだ?」

ハイになりかけた脳みそを戻して時間稼ぎをする。
最初に話しかけてきた感じからして、脳みそは少なくともついているのだろう。

「おマエに言ウワケがなイ」

まあ、そうだよな。
ケド…と、彼は続けた。

「ソうダナ…サイゴニ゙教エテやロう。」
「俺ハ、お前ノ一族ガキライダ。」
「特ニお前ノオジが、」

ダカラ、と、そのあとに続く言葉は、知っていた。

何回も見たことがある。
俺の叔父に、半狂乱で襲いにかかる怪達。
どいつもこいつも言う言葉は。

『ォ゙前を殺ス!!』

境界を正常化させたせいで、暴れることができなくなった怪共の戯言。

悲しそうに一発で浄化させる叔父。

…その光景が、心底嫌いだった。

「お前は、混沌が好きなんだよな。」
「勿論ダ。」
「俺も、混沌は好きだ。ルールは好かん。」

でも、

「そのお前の混沌がルールのお陰でなりたっていることに気づけよカス!!」

扇を払い棒に変化させて、札を発現させる。
ちゃんと貼り付いた札は、紫雷を作り出しそいつの足に絡みついた。
不意を突かれたそいつは、それに足を取られて、一瞬動けなくなる。

…まあ、こっちも足引っ掛かって動けないんだけどな!!
腕が動くまで回復した彼奴は弓を俺に撃とうとする。
策は、ないはずがない。

「よくいった陰陽師!予定は狂ったし、
 手の内を見られるで散々だが、30点ぐらいやろう。」

俺の目の前、敵の後ろに人魂が笑って立っていた。
首がつながり、一つの角と共にただれた赤茶の部分が範囲を広げている。
その手には、秤(はかり)が握られていた。
がごん、と、音がなって右に傾く。



敵のいる床に赤黒い光が六芒星に描かれる。
だんだんと広がり、その六芒星の線一つ一つの奇々怪々な文字が見えるまで拡大された真円
それは光を発生させた。

「お前やめろ!!!ッッッっ…クソがァァア!!」

強い赤い光が満ち、下から針…みたいなものが現れる。

光が消えて、敵は、その巨大な針に串刺しにされて息絶えていた。

「…まあ、終わりか?」

人魂は、ひと仕事終わったみたいに伸びをして呟く。
俺の方が大変だったはずだが。

「…まあ、助かった。」

秤を何処かへ仕舞うと、すぐに角が小さくなり、ただれた皮膚ももとに戻る。
…助かったが、命張って30点とは、辛口すぎないか?

「それにしてもこんなやつ、初めて見たな。」

串刺しにされている身体は赤から紫まで脈打つようにランダムに変わり、
ビビットよりも頭が痛い色をしている。

「ちょっと辞典見てみるか…新種だったら注意喚起だな。」

自分の頭を小脇に抱えてどこにあったのかと、思いだそうと、眉間にシワを寄せている。

ふと、
針で刺された化け物の方を見る。
それの右指が、動いた気がした。

刹那、
俺の方を向いていた、人魂の全身を針が引き裂いた。

そのあとは


                 まあ、




…覚えていないということは、そういうことだろう。


ー裏話ー
陰陽師の件は裏設定だった、さらっとだけでいいかなって思っていたらこのざまだよクソが。
だいたい、この同時進行のせいで半年かかった。元凶はくるるの叔父を自分好みにしたこと。
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