鬼の宴

さかばんばすぴす

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鬼の宴

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~●〇●~
木の雑像の間から一定で光る花束。
前を走るライに耳打ちをされる。

「刹那を見ておいてくれ、たぶん…暴走する。」
「え?」

ライの前で全力疾走している彼を見た。
…小脇に抱えられているくとは見えないことにした。

「いや、無差別な殺人とかじゃないんだけどさ、後先考えないようになるから。」

そういえば、と、あの殺気立った目を思い出す。
なりそこないに恨みでもあるのだろうか?

「きかないほうがいい?」
「逆にここまで言って聞いちゃダメってあんの?」

言葉の応酬にが一段落した後、一息置いて、話始める。

「あいつは、元仏の使者、まア、狛犬って種族でわからんでもないけどね。
そんな奴が堕ちてきたのは、なりそこないと戦っていたとき、相打ちになったから。」
「あいつが言うにはまだ、対峙したなりそこないは輪廻の輪に入っていないようで、
今でも探してんだよ。」

つまり、今回が、自分を堕としたなりそこないかもしれないと模索しているのか。

「まあ、そーいうことだ。俺だけじゃ心もとないからな、よろしく。」

了解の意を短く示す。
狛犬は仏の使いか、まあ、そうか、神社の守り神だもんな。

あれ、でも、俺ら鳥居から来たよね。
神社が仏の教会だとすれば、あの鳥居はいったい何だったのか、
それとも、仏がこの世界へ誘いだしたのか、
…しらねえよ、考えるだけ無駄な気がしてきた、
考え込んでいるとだんだんと近づいてゆく騒音。
人込みで、近くの空気が2.3度高くなった気がした。

「ッついた…まだ、大事にはなってないか…」

ライが、安心したようにつぶやく。

太鼓の音が響く、人々は皆、頭上を見上げていた。

まだ、混乱状態に陥っていない、
早くしないといけないが、この人数をどうやって捌けばいいんだ?

「こっち!」

刹那が大量の人を押し込みながら手を振る。

「多分まずは花火を狙うでしょ、ということは、花火を止めればいい!」

鼻を鳴らしながら自分天才のように言っているが、
刹那が走って探し出した後、ライが同じことつぶやいていた。仲がよろしいようで…

「ッ刹那ちょっとまt…チッ。行くぞがk…きのすけ!」
「勿論!」

鬼の迷路を潜り抜ける。
子供の特権の小さな図体を生かしてライについていく。
そうしているうちにも花火は打ちあがり、金色の大華が夜空を舞う。
焦りがこみあげてくる。
何かが違う気がする。

…そんな気より、今の現状を打破しないといけないけど。

花火の音が大きくなって、熱が頬を霞める。
言い争う声も、大きくなってきた。
実行委員と書いてある服の男性と、特殊な着物に白いしっぽ。
多分…いや、絶対刹那だ。

「…っなんでだよ!早く打ち上げをやめろ!!」
「でも…一年に一回の大切な催しなんです…やはり、確実な証拠がないと…」

おろおろする係員に詰め寄る刹那。
証拠、無いし、信ぴょう性もないよな…だって、偶然の産物だもん。
刹那も冷静を欠いて論理的な話が出来ていない。

「おい!せつn…」

ライが近づこうとする

すとん、

髪の毛と、ゴーグルのゴムを霞めて。

矢が地面へ突き刺さった。

ことん、

ゴーグルが固い音を立てて地面へ着く音がした。

「…っやばい!!刹那!!!」

コンマ十秒停止した思考を現実へ戻す。
何処かで狙っている。

間に合う…か?

いや、間に合わせろ!!

足になりふり構わず全速力で踏み切り、管理人の方へ向かう。
残念ながら中学生には巨体の男を持ちあがらせることはできない。

だから。

蹴り飛ばす!!!

ぶへぇ!
と、変な声を出したことには気にせず。
そして、巻き込まれたライにも気にせず。
状況を確認した。

やば…意外といる。

この瞬間もなりそこないは、弓でねらいを定めている。

むりだね、これ、
管理人の命だけ守れただけでいっか…
フルスイングで上昇した自分を自分が支えられず態勢を崩す。
地面にたたきつけられる次の瞬間に備え。目をつぶる。
す、と。地面ではないものに支えられた。

「きの!大丈夫?」
「っておい!くといたのかよ!!」

早く逃がさないと。
くとの脚力でいけるか?いや、ここはまた蹴れば…

そんな思考を回転させていると、くとが、ボクの前へ飛び出した。

「ちょっ」
「私ね、この世界について、何にもわかんない!!」

「鬼とか、仏とか、きのに角ついてるし、私にも何か憑いているらしいし…」

足を広げ、重心を低くして、さっきの、狐の小窓のポーズをする。

「でも、たぶん、どの世界でも、命の重さは一緒、
今まで守られてばっかだった私も、もし、誰かを守れるのなら。もう!」
「守られてばっかじゃ、いやだから!!」

花火の筒に、何かが刺さる。
札を括り付けたそれは、紫雷を帯びて、花火の導火線に火をつけた。

刹那

深海の青が飛び散る、他の虹色も続けて爆音を上げた。
それと同時か、そのあとか、閃光のような水色が抱擁する。

眩しい光に包まれて、
そして。

光が収まった先には、

地面の黒い焦げ跡と轟を残して火花は散っていた。


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