Tril"if"e

さかばんばすぴす

文字の大きさ
27 / 35
第一章 赤色の追憶

(3)※大幅変更

しおりを挟む
~❀☆❀~side ライ

記憶の混濁する廊下を走る。
後ろの刹那は、どこかで見たことのある顔をしていた。

普通の人は、故郷を見ると懐かしいと思うのかもしれない。

でも、彼は故郷にそんな思いをはせられない。
俺にそういう機能はないから、残念ながら共感はできない。

ただ、今までずっとあった空っぽが埋まっていくのを感じて。
変な気持ちになっていたりするのだろう。

あ、

そうだ。おもいだした、あの顔。

「…なあ、刹那。」

言葉で思考がかき乱してみる。
まぬけな返事は今までの考えの解答解説みたいで笑った。

「一つ、俺も思い出したことがある。」

頭を指で差しながら、サクラ。と、彼に言った。

「桜だよ、思い出した。お前が最初に会ったときにつけていたやつ。」
「え?そんなのつけてたっけ?」

マ?自分覚えていないのかよ、デスクの一番見える所に大切に持っていたのに。

「ええ…わすれたのかよ…」

ため息をすると、思い出したかのような顔を作った。

「ほら、出会ったぐらいの時、空き時間があればその桜を見て何かを考えていたんだよ。」
「で、何考えてるのか一回きいた時があってさ、その時なんて言ったか覚えてる?」

憶えてないか。だって。その栞の事さえ忘れていたのに。
首を横に振ると。俺は。その言葉を伝えた。


知らないけど、きっと、忘れちゃいけないこと。


「お前、自分が認識してなかっただけで、多分覚えてたんだよ。」

記憶というものはつくづく変なものだ。
走ることを憶えたはずが、今では記憶の中にはない。
どこにも見当たらないのに、僕達は今、走っている。
記憶は、時に肉体にしみついて離れない癖となり。
だんだんその任を全うし、消えてゆくのだ。

顔を忘れて、恩を忘れて。何もかも忘れても。
それでもずっと、彼には“花陽”が離れなかった。
ずっとそばにあったその無意識の思い出は、
足かせなんかじゃない。
いま、彼の足にかかっている、それは、きっと。

「よし、ここが厨房、っと。」
「なあ、ライ。僕やっていい?」

返事を待たずに、彼からマッチをわたす。
厨房へ向かった、その事実だけで、俺たちには言葉は何もいらなかった。

さよなら。二度と刹那を縛るなよ、監獄。

摩擦で生み出された灯は。刹那の足枷を燃やすには十分だった。

ー大幅な変更ー
理由:なんかちゃうかった。
あと3話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

政略結婚の意味、理解してますか。

章槻雅希
ファンタジー
エスタファドル伯爵家の令嬢マグノリアは王命でオルガサン侯爵家嫡男ペルデルと結婚する。ダメな貴族の見本のようなオルガサン侯爵家立て直しが表向きの理由である。しかし、命を下した国王の狙いはオルガサン家の取り潰しだった。 マグノリアは仄かな恋心を封印し、政略結婚をする。裏のある結婚生活に楽しみを見出しながら。 全21話完結・予約投稿済み。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『pixiv』・自サイトに重複投稿。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...