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灰色の果実を喰らう
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「序」
街一つを隔離する巨大な壁が目の前に聳え立っている。
車椅子の少女は表情ひとつ変えずにその壁を見つめていた。
「司令、内部の魔力値に異常が出ています!」
司令と呼ばれた少女は目だけを動かして、声をかけてきた組織の構成員らしき人物を見た。
「どうかしましたか」
「はい、内部魔力値が急激に低下してまして」
「低下? 増えることは予測できていましたが、減っているのは予想外ですね。異常事態に備えてください。何か問題が起きている可能性が」
司令が言いかけたとき、目の前の壁から何かを殴りつけるような音が鳴った。
「全員下がりなさい」
司令の指示に皆が臨戦体制を取り、壁から距離をとった。壁から発せられる音は止まることなく、ついにはその壁が破壊された。
「あぁ、くそ、煙たいな」
瓦礫の煙幕の中から、手を払いながら一歩外に出てきたのは、神父服にモーニングスターのついた鈍器を担ぐ風変わりな男だった。
「あ?」
その男は臨戦体制である周りの人間を不思議そうに眺めると、そのまま180度体の向きを変えまた壁の中に戻ろうした。
思わず構成員が声を上げて男を引き止めた。
「あっ、待ちなさい!」
「うるせぇな、俺はまだ朝食が済んでないんだ。なんなら昨日の晩から飲まず食わずだしな、どうせなら引き出しの奥に隠したあれでも」
男はニヤつきながらぶつぶつと呟き、慌てる構成員たちを放って壁の中へ歩を進めようとした。
「神凪倫一」
司令が一言名を呼んだ。神父服の男は歩みを止めて、振り返る。
「私たちは貴方を探しにまいりました。朝食ならば、こちらでご用意いたします。ですのでご同行をお願いしたい」
「言っておくが、俺は何も知らない。テメェらの望むモンは何一つ持っちゃいねーよ」
「それで構いません。私たちが欲するのは貴方自身です」
倫一は被っていた帽子の位置を直しながら、司令の言葉を聞く。
「熱烈なアプローチだな」
「それで、どういたしますか。神凪倫一」
「・・・・・・紅茶とスコーン。出来ればスープつけてくれ。そしたら考えてやらなくもねえ」
担いでいた武器を地面に突き立てて、倫一はそう言った。
「不味いもん出したら、承知しねえぞ」
「わかりました、ご用意しましょう」
司令は静かに頷き、部下に指示を出した。
「改めて、神凪倫一。ようこそ、悪魔と天使を管理する我ら、Appleへ」
※
道路の真ん中を疾走する三人の姿。神父服と袴と、薄汚れたローブ姿を三人の成人男性だった。なんともアンバランスな組み合わせをしている。
大通りだというのにその三人以外の人は誰もいなかった。
「埒があかねえだろ。おいセル、ちゃんと探してるのかよ!」
神父服の男性は足を止め、インカムに向けて苛ついた声で怒鳴る。インカムからノイズが走った後、のんびりとした声が聞こえてくる。
『しっかり探しているとも。自由にさせてもらった分、ちゃんと働きますよ。・・・・・・ポテトって美味しいんですねぇ』
「何食ってんだテメェ、働け!」
『いいじゃないですかあ、身体を手に入れてからジャンクフードなんて食べる機会なかったんですから。あぁ、料金については問題ないですよ。倫一くんのお財布からいただいたお金をカウンターに置いておきました』
「はっ、おま。いつの間に俺の財布を」
神父服の男性、神凪倫一は自分の財布を入れていたはずの場所を触って、財布が消えていることに気づいた。
「お前、ふざけてんのか・・・・・・」
「マアマア、そんな怒らんで。なぎはん」
袴の男性が抑揚のついた声で倫一をなだめる。だが逆効果なのか、額に青筋を立てながら倫一は返す。
「サシャ・・・・・・テメェはその呼び方いい加減やめねえか。神凪だって言ってんだろ」
「ええやん、なぎはんの方が呼びやすいわぁ」
倫一に凄まれても全く気にせず、袴の男性、サシャ・ロイド・クラインはヘラリと笑った。
「どーでもいいんだけど。さっさと敵捕まえるのが先だろ」
もう一人のローブ姿の人物ライアンも、倫一と同じく苛立ったように声を上げる。
「馬鹿ども、さっさとしろ」
「俺じゃなくてセルに言え」
『厳しいですねえ。ちゃんと働いてますって。標的の悪魔は今見つけましたから』
インカムの先の声の主、セル・バイエスは高台から左目につけた特別製の片眼鏡を弄り、遠くにいる標的である人物を見つめていた。
『9時方向です。その方向に走れば、ちょうど標的の逃走経路と重なります』
その言葉を聞いた直後、話し合うこともせず三人は再び走り出した。
『さあ、特攻隊の皆さん頑張ってくださいね。んーバーガーもおいしい』
「テメェ、人の金でどんだけ買ってやがんだ。後で覚えてろ」
倫一は文句を一つ言うと、一人近くの建物のガラス扉を蹴り割って入っていった。
「あーこらぁ、なぎはん。町の物壊したらあとで司令に怒られるで。しょうがないな。ライアンくん、アンタは先に敵さんのところ行ってくれる?」
「俺に命令するな」
「もう、誰も会話してくれへん」
ライアンは無愛想に不機嫌に言いはなしつつも、コウモリの姿に変わるとサシャの前を飛んでいった。
『じゃあ、私はライアンさんが接敵するタイミングで攻撃を始めます』
三人の行動をスコープを通して見たセルは引き金に指をかけた。
「なんだよ、なんでだよこのタイミング! せっかく街丸ごと俺のもんになるとこだったのに!」
額から黒い液体を垂らし、人間の姿をした悪魔は走った。その黒い液体は傷跡から止まることなく流れ続けている。
「全部アイツのせいだ、怠惰が管理を怠るからだ! 何が【座】だ、怠惰の含め役割もこなさない無能どもが・・・・・・! 裏切り者を放置するくせに偉ぶりおって!」
悪魔は歯を食いしばり、痛みを感じるにもかかわらず雑に傷を袖で拭った。
反響する銃声。傷を拭っていた悪魔の右腕が宙を舞う。一瞬の間があり、悪魔は痛みで地面でのたうち回る。
「くそっ、・・・・・・!」
悪魔ははじけ飛んだ右腕を拾うと、腕のなくなった肩にくっつけるようにそれを押さえた。
「再生しない・・・・・・くそっくそっ、魔道具の弾丸か!」
歯ぎしりをして、悪魔は再度走り出そうと立ち上がろうとした。
だが、上空から飛来してきたライアンに蹴り飛ばされ、倒れ伏した所を踏みつけられた。
「逃がさない」
「ぐ、う・・・・・・お前は、傲慢っ!」
「そうだ、お前が言っていた無能が1人、【傲慢の座】のライアンだ。愚か者のお前も俺のことがわかるのだな」
「裏切り者がっ、【名前】なんて名乗りやがって! 人間の、天使の味方につきやがって!」
「別に俺は人間の味方でも天使の味方でもない。俺は、俺の大事なイヴの味方なだけだ」
「くたばれ、くたばれ裏切り者!」
「よく回る口だな。そんなにしゃべりたいなら切り裂いて、もっと口を大きくしてやろうか。喋りやすくなるだろう」
ライアンは鋭い爪の生えた手を広げる。だが、後ろからポカッと頭にチョップされて動きを止めた。
「こーら。なんで司令からの指示をみんな忘れんねん。完全にやっつけちゃ駄目って言ってたやろ」
「はっ、お前たちの司令の命令はつまらないんだ。それに死ななければいい話だ」
サシャの言葉を無視して、ライアンはまた手を上げようとしたが「駄目やー!」とサシャに腕を捕まれてしまった。二人してジタバタしていると、ライアンの足下の悪魔が無理矢理立ち上がって2人を突き飛ばした。
「く、お前・・・・・・お前、俺に手を上げたな。下等悪魔のくせに舐めた真似を!」
「黙れ、傲慢が! 前々から座の存在には苛ついてたんだ。ちょうどいい、その弱そうな人間と一緒に傲慢のお前をここで消してやる!」
「え、弱そうな人間って僕?」
サシャが自分を指さして確認するが、悪魔は答えずに壁に取り付けられていたパイプを掴んで、とんでもない力でそれを捻り切った。そして、パイプを振り上げ突進しようと一歩踏み出した。
サシャは自分の影から大蛇を生成し、ライアンも身構える。
だが、悪魔がもう一歩踏み出す前に壁にめり込んだ。そのままその悪魔は動かなくなり地面に倒れた。
「あ」
倒れた悪魔の背後には、煙草をくわえた倫一がしまったという顔で立っていた。
「まずい、死んだか」
倫一は悪魔を殴りつけたモーニングスターを肩に担ぎ直して、倒れた悪魔の顔を叩いて確認する。
「あー・・・・・・」
「なぎはん?」
「力加減ミスったんだ、怒んなよ。そもそもこの悪魔が弱いのも悪ぃ」
倫一は唇を尖らせる。サシャはもう呆れたように大きなため息をつく。
「ちっ、俺の獲物を」
ライアンも不満があるようで、そうぼやいた。
喋っている間に、倒れた悪魔の身体は黒い液体となって消滅していた。
『討伐完了ですね。司令にはこちらからもう連絡しましたよ。神凪倫一はあとで説教とのことです』
「げっ、余計なことまで報告すんじゃねえよ」
『司令からは報連相をしっかりするようにとのご指示を受けていたので』
「司令に、お前に金取られたってチクっといてやるよ」
倫一は煙草の煙を吸おうとして噎せる。
「苦手やったら吸わんかったらええのに」
「うっせ・・・・・・」
反発するようにもう一度吸い込んで、倫一は変わらず咳き込んだ。
車椅子に乗った女性が、ばつが悪そうな表情の倫一の前で止まる。無表情で冷たい瞳で倫一を見つめたいた。
「なにか言うことはありますか、神凪倫一」
「いいえ司令」
「発音の仕方から不満を感じます。言うことがあるならどうぞ」
「いいえ司令」
「はあ」
変わらぬ倫一の返事に、車椅子の司令は旋回して倫一に対して背を向ける。
「血の気が多すぎます。その点は傲慢も同じ。ですが、貴方の方がひどい。無自覚なところが最も駄目なところです」
「ちっ」
ライアンと比べられたことに倫一は苛立ちを隠さない。
「まあいいでしょう、もう休んでください。今日もありがとうございました、お疲れ様でした」
司令は表情を変えずにそう言い、倫一を帰した。まだ不満はあるようだったが、倫一はおとなしく部屋を出て行った。
「お咎めなしでいいのかい」
司令のデスクの上を這う一匹の蜘蛛が、司令に話しかける。
「別に構いません」
「あの町の一角を私物化してた悪魔だぜ、それほどまでに力は強い方だったってわけだ。前に言ったろ、力の強い悪魔はネットワークを大事してる。他の悪魔の情報を聞けたかもしれないのに」
「いいのです、虱潰しでも全部潰せば同じです」
「司令様は案外脳筋だな」
開け放った窓から風が入り、カーテンが揺れる。司令が月明かりに目を細めると、その一瞬で一匹の蜘蛛は人間の姿になった。机に腰掛け、足を組んでいる。身につけたサングラスをずらして、司令を見つめる。
「そういう所も愛してるよ、俺の司令様」
「机に座らないで」
冷たく司令に言われた蜘蛛の姿をしていた悪魔、ディエゴは肩をすくめる。
「名を呼んでくれよ、司令様がつけてくれた名前だってのに」
「貴方がつけろとねだったからつけてあげただけです。それに貴方は悪魔ですから、敵であることを忘れないでください」
「俺はお前をモノだよ。モノは主人を裏切らない」
ディエゴは司令の頬に指を這わせる。そのまま顔を近づけようとしたが、司令はふいっと顔をそらす。
「強情だな、そこも好きだが」
「雑談はいいのです。今日はどういった報告があるのですか?」
「はいはい、報告しますよ司令様」
どんなに冷たくあしらわれようとそれすらも嬉しそうにディエゴは微笑み、司令の車椅子の目の前にひざまずいて話し出した。
*
目を閉じると倫一は思い出す。
優しく頭をなでてくれた先代の神父であり、育て親だった人を。育ったあの街を。最期に虚しそうに微笑んだ神父の口からは黒い液体が垂れて、地面に広がっていたことを。
あの日、あのとき、倫一は知った。悪魔の存在を知ったのだ。
「倫一さん」
セルの声で倫一は目を開く。ベランダの端で柵にもたれてた倫一に、両手にコップを持ったセルが話しかけた。
部屋の中では酔ったライアンが少女イヴに抱きついて、飲ませた張本人のサシャは楽しそうに大笑いしていた。
「なにか思い出してました?」
「別に」
「そうですか。・・・・・・お酒持ってきましたが飲みます?」
倫一は手だけ寄越せとジェスチャーする。セルは素直に一つ渡した。
「今日も大変でしたね」
「誰かさんに金を勝手に使われたしな」
「おや、その人はずいぶんひどいことをしましたね」
「どの口が」
倫一はお酒を口に含んだ。独特の苦みに顔をしかめながらも飲み込む。
「お酒も飲めないんですね」
「飲める」
セルに煽られて、倫一はまた一口飲む。
「倫一さんはどうして悪魔を殺すんですか?」
「なんだ藪から棒に」
「ただ気になったので」
「・・・・・・俺を育ててくれた人と故郷の仇だ」
すんなりと倫一は語り出した。アルコールの力もあったのだろう。
「俺の前の代、ライト神父・・・・・・厳しいやつばっかの教会だったが、あの人は優しかった。そのライト神父は、悪魔に乗っ取られて、俺は俺の手で」
「なるほど。故郷の、確かあの天使の遺物、隔離都市チェスターに住んでたんでしたっけ」
「よく知ってるな」
「悪魔なら皆知ってますよ」
片眼鏡をつけていない右目がすっと細められる。怪しい微笑みを浮かべるセルだったが、倫一はそれに何も帰さずに続けた。
「・・・・・・天使の街だったってのは後から知ったがな。天使は人間と姿形は変わらねえし見たことねえし、そんなことライト神父は話してなかったし」
「へえ、倫一さんって可哀想ですね」
「そう言う言葉、気安く言うなよ」
倫一はまた一口酒を含む。
「司令に助けてもらうまでは、つい最近まであの街いたが、まさか俺が憎んでいる悪魔の巣窟になってたとは。それに気づかない俺は馬鹿すぎた。・・・・・・ライト神父を乗っ取ったのもあの街を悪魔の街にして俺を騙し続けたことも許せない。だから俺は悪魔を全員殺すんだ。全ての仇なんだよ」
「すべての悪魔を、ですか。サシャさんとライアンさんは? 私は?」
「サシャは魔人だから、別にいい。ライアンとお前は・・・・・・最後に殺してやる」
「そうですか、厳しい人ですね」
「今は味方でも悪魔であることに変わりねえだろ」
倫一は残ったお酒を一気に流し込む。
「俺は悪魔を残らず殺す。どんな手を使っても全員だ。殺して殺して・・・・・・復讐を果たす」
セルはそう宣言する倫一の姿を見ながら、同じようにコップに入ったお酒を飲んだ。
「俺は・・・・・・俺は、やるぞ。やりきるんだ。みんな・・・・・・」
ぼそぼそと呟きながら、倫一はそのまま床に座り込んで動かなくなった。
「あれ、寝ました?」
「・・・・・・」
倫一から返事はなかった。
「お酒、弱いんですねえ」
遠くから「なぎはんが座り込んどる!」というサシャの声が聞こえた。セルはどこか楽しそうに微笑んで、コップに残った物を飲み干した。
*
「寝坊助さん、目が覚めたのね」
長髪の女性が棺に語りかける。
「貴方が眠っている間に、貴方の担当のチェスターがAppleに落とされたわ。アダムも奪われたわ。どう責任を取るのかしら」
「・・・・・・色欲、か。あの街には、僕の代理の担当もいたじゃないか」
棺の中から声が返ってくる。女性は「だってこの強欲、チェスターに興味を示さなかったもの。仕方ないわ」と隣と椅子に座った男を見てぼやく。
「仕事をしっかりしてくれないか強欲」
棺の声が、近くの椅子に座った男に話しかける。
「ずっと寝てたお前に言われたくないなぁ、怠惰」
「それもそうだ、悪かった」
素直に謝る棺の声。
「まあそれはそれとして、お前が目を覚ましたし。これから手はいくらでもあるだろうよ。どうする、怠惰。いや、ライト神父?」
棺に入っていた悪魔が身体を起こす。
「やめるんだ、その名前で呼ぶのは。今の僕は怠惰の座の悪魔なんだから」
その姿は、倫一の育ての親、ライト神父の姿をしていた。
「手始めに、彼らの要であるアダムを奪い返そう」
ライト神父の姿をした怠惰の悪魔は静かに微笑んだ。
街一つを隔離する巨大な壁が目の前に聳え立っている。
車椅子の少女は表情ひとつ変えずにその壁を見つめていた。
「司令、内部の魔力値に異常が出ています!」
司令と呼ばれた少女は目だけを動かして、声をかけてきた組織の構成員らしき人物を見た。
「どうかしましたか」
「はい、内部魔力値が急激に低下してまして」
「低下? 増えることは予測できていましたが、減っているのは予想外ですね。異常事態に備えてください。何か問題が起きている可能性が」
司令が言いかけたとき、目の前の壁から何かを殴りつけるような音が鳴った。
「全員下がりなさい」
司令の指示に皆が臨戦体制を取り、壁から距離をとった。壁から発せられる音は止まることなく、ついにはその壁が破壊された。
「あぁ、くそ、煙たいな」
瓦礫の煙幕の中から、手を払いながら一歩外に出てきたのは、神父服にモーニングスターのついた鈍器を担ぐ風変わりな男だった。
「あ?」
その男は臨戦体制である周りの人間を不思議そうに眺めると、そのまま180度体の向きを変えまた壁の中に戻ろうした。
思わず構成員が声を上げて男を引き止めた。
「あっ、待ちなさい!」
「うるせぇな、俺はまだ朝食が済んでないんだ。なんなら昨日の晩から飲まず食わずだしな、どうせなら引き出しの奥に隠したあれでも」
男はニヤつきながらぶつぶつと呟き、慌てる構成員たちを放って壁の中へ歩を進めようとした。
「神凪倫一」
司令が一言名を呼んだ。神父服の男は歩みを止めて、振り返る。
「私たちは貴方を探しにまいりました。朝食ならば、こちらでご用意いたします。ですのでご同行をお願いしたい」
「言っておくが、俺は何も知らない。テメェらの望むモンは何一つ持っちゃいねーよ」
「それで構いません。私たちが欲するのは貴方自身です」
倫一は被っていた帽子の位置を直しながら、司令の言葉を聞く。
「熱烈なアプローチだな」
「それで、どういたしますか。神凪倫一」
「・・・・・・紅茶とスコーン。出来ればスープつけてくれ。そしたら考えてやらなくもねえ」
担いでいた武器を地面に突き立てて、倫一はそう言った。
「不味いもん出したら、承知しねえぞ」
「わかりました、ご用意しましょう」
司令は静かに頷き、部下に指示を出した。
「改めて、神凪倫一。ようこそ、悪魔と天使を管理する我ら、Appleへ」
※
道路の真ん中を疾走する三人の姿。神父服と袴と、薄汚れたローブ姿を三人の成人男性だった。なんともアンバランスな組み合わせをしている。
大通りだというのにその三人以外の人は誰もいなかった。
「埒があかねえだろ。おいセル、ちゃんと探してるのかよ!」
神父服の男性は足を止め、インカムに向けて苛ついた声で怒鳴る。インカムからノイズが走った後、のんびりとした声が聞こえてくる。
『しっかり探しているとも。自由にさせてもらった分、ちゃんと働きますよ。・・・・・・ポテトって美味しいんですねぇ』
「何食ってんだテメェ、働け!」
『いいじゃないですかあ、身体を手に入れてからジャンクフードなんて食べる機会なかったんですから。あぁ、料金については問題ないですよ。倫一くんのお財布からいただいたお金をカウンターに置いておきました』
「はっ、おま。いつの間に俺の財布を」
神父服の男性、神凪倫一は自分の財布を入れていたはずの場所を触って、財布が消えていることに気づいた。
「お前、ふざけてんのか・・・・・・」
「マアマア、そんな怒らんで。なぎはん」
袴の男性が抑揚のついた声で倫一をなだめる。だが逆効果なのか、額に青筋を立てながら倫一は返す。
「サシャ・・・・・・テメェはその呼び方いい加減やめねえか。神凪だって言ってんだろ」
「ええやん、なぎはんの方が呼びやすいわぁ」
倫一に凄まれても全く気にせず、袴の男性、サシャ・ロイド・クラインはヘラリと笑った。
「どーでもいいんだけど。さっさと敵捕まえるのが先だろ」
もう一人のローブ姿の人物ライアンも、倫一と同じく苛立ったように声を上げる。
「馬鹿ども、さっさとしろ」
「俺じゃなくてセルに言え」
『厳しいですねえ。ちゃんと働いてますって。標的の悪魔は今見つけましたから』
インカムの先の声の主、セル・バイエスは高台から左目につけた特別製の片眼鏡を弄り、遠くにいる標的である人物を見つめていた。
『9時方向です。その方向に走れば、ちょうど標的の逃走経路と重なります』
その言葉を聞いた直後、話し合うこともせず三人は再び走り出した。
『さあ、特攻隊の皆さん頑張ってくださいね。んーバーガーもおいしい』
「テメェ、人の金でどんだけ買ってやがんだ。後で覚えてろ」
倫一は文句を一つ言うと、一人近くの建物のガラス扉を蹴り割って入っていった。
「あーこらぁ、なぎはん。町の物壊したらあとで司令に怒られるで。しょうがないな。ライアンくん、アンタは先に敵さんのところ行ってくれる?」
「俺に命令するな」
「もう、誰も会話してくれへん」
ライアンは無愛想に不機嫌に言いはなしつつも、コウモリの姿に変わるとサシャの前を飛んでいった。
『じゃあ、私はライアンさんが接敵するタイミングで攻撃を始めます』
三人の行動をスコープを通して見たセルは引き金に指をかけた。
「なんだよ、なんでだよこのタイミング! せっかく街丸ごと俺のもんになるとこだったのに!」
額から黒い液体を垂らし、人間の姿をした悪魔は走った。その黒い液体は傷跡から止まることなく流れ続けている。
「全部アイツのせいだ、怠惰が管理を怠るからだ! 何が【座】だ、怠惰の含め役割もこなさない無能どもが・・・・・・! 裏切り者を放置するくせに偉ぶりおって!」
悪魔は歯を食いしばり、痛みを感じるにもかかわらず雑に傷を袖で拭った。
反響する銃声。傷を拭っていた悪魔の右腕が宙を舞う。一瞬の間があり、悪魔は痛みで地面でのたうち回る。
「くそっ、・・・・・・!」
悪魔ははじけ飛んだ右腕を拾うと、腕のなくなった肩にくっつけるようにそれを押さえた。
「再生しない・・・・・・くそっくそっ、魔道具の弾丸か!」
歯ぎしりをして、悪魔は再度走り出そうと立ち上がろうとした。
だが、上空から飛来してきたライアンに蹴り飛ばされ、倒れ伏した所を踏みつけられた。
「逃がさない」
「ぐ、う・・・・・・お前は、傲慢っ!」
「そうだ、お前が言っていた無能が1人、【傲慢の座】のライアンだ。愚か者のお前も俺のことがわかるのだな」
「裏切り者がっ、【名前】なんて名乗りやがって! 人間の、天使の味方につきやがって!」
「別に俺は人間の味方でも天使の味方でもない。俺は、俺の大事なイヴの味方なだけだ」
「くたばれ、くたばれ裏切り者!」
「よく回る口だな。そんなにしゃべりたいなら切り裂いて、もっと口を大きくしてやろうか。喋りやすくなるだろう」
ライアンは鋭い爪の生えた手を広げる。だが、後ろからポカッと頭にチョップされて動きを止めた。
「こーら。なんで司令からの指示をみんな忘れんねん。完全にやっつけちゃ駄目って言ってたやろ」
「はっ、お前たちの司令の命令はつまらないんだ。それに死ななければいい話だ」
サシャの言葉を無視して、ライアンはまた手を上げようとしたが「駄目やー!」とサシャに腕を捕まれてしまった。二人してジタバタしていると、ライアンの足下の悪魔が無理矢理立ち上がって2人を突き飛ばした。
「く、お前・・・・・・お前、俺に手を上げたな。下等悪魔のくせに舐めた真似を!」
「黙れ、傲慢が! 前々から座の存在には苛ついてたんだ。ちょうどいい、その弱そうな人間と一緒に傲慢のお前をここで消してやる!」
「え、弱そうな人間って僕?」
サシャが自分を指さして確認するが、悪魔は答えずに壁に取り付けられていたパイプを掴んで、とんでもない力でそれを捻り切った。そして、パイプを振り上げ突進しようと一歩踏み出した。
サシャは自分の影から大蛇を生成し、ライアンも身構える。
だが、悪魔がもう一歩踏み出す前に壁にめり込んだ。そのままその悪魔は動かなくなり地面に倒れた。
「あ」
倒れた悪魔の背後には、煙草をくわえた倫一がしまったという顔で立っていた。
「まずい、死んだか」
倫一は悪魔を殴りつけたモーニングスターを肩に担ぎ直して、倒れた悪魔の顔を叩いて確認する。
「あー・・・・・・」
「なぎはん?」
「力加減ミスったんだ、怒んなよ。そもそもこの悪魔が弱いのも悪ぃ」
倫一は唇を尖らせる。サシャはもう呆れたように大きなため息をつく。
「ちっ、俺の獲物を」
ライアンも不満があるようで、そうぼやいた。
喋っている間に、倒れた悪魔の身体は黒い液体となって消滅していた。
『討伐完了ですね。司令にはこちらからもう連絡しましたよ。神凪倫一はあとで説教とのことです』
「げっ、余計なことまで報告すんじゃねえよ」
『司令からは報連相をしっかりするようにとのご指示を受けていたので』
「司令に、お前に金取られたってチクっといてやるよ」
倫一は煙草の煙を吸おうとして噎せる。
「苦手やったら吸わんかったらええのに」
「うっせ・・・・・・」
反発するようにもう一度吸い込んで、倫一は変わらず咳き込んだ。
車椅子に乗った女性が、ばつが悪そうな表情の倫一の前で止まる。無表情で冷たい瞳で倫一を見つめたいた。
「なにか言うことはありますか、神凪倫一」
「いいえ司令」
「発音の仕方から不満を感じます。言うことがあるならどうぞ」
「いいえ司令」
「はあ」
変わらぬ倫一の返事に、車椅子の司令は旋回して倫一に対して背を向ける。
「血の気が多すぎます。その点は傲慢も同じ。ですが、貴方の方がひどい。無自覚なところが最も駄目なところです」
「ちっ」
ライアンと比べられたことに倫一は苛立ちを隠さない。
「まあいいでしょう、もう休んでください。今日もありがとうございました、お疲れ様でした」
司令は表情を変えずにそう言い、倫一を帰した。まだ不満はあるようだったが、倫一はおとなしく部屋を出て行った。
「お咎めなしでいいのかい」
司令のデスクの上を這う一匹の蜘蛛が、司令に話しかける。
「別に構いません」
「あの町の一角を私物化してた悪魔だぜ、それほどまでに力は強い方だったってわけだ。前に言ったろ、力の強い悪魔はネットワークを大事してる。他の悪魔の情報を聞けたかもしれないのに」
「いいのです、虱潰しでも全部潰せば同じです」
「司令様は案外脳筋だな」
開け放った窓から風が入り、カーテンが揺れる。司令が月明かりに目を細めると、その一瞬で一匹の蜘蛛は人間の姿になった。机に腰掛け、足を組んでいる。身につけたサングラスをずらして、司令を見つめる。
「そういう所も愛してるよ、俺の司令様」
「机に座らないで」
冷たく司令に言われた蜘蛛の姿をしていた悪魔、ディエゴは肩をすくめる。
「名を呼んでくれよ、司令様がつけてくれた名前だってのに」
「貴方がつけろとねだったからつけてあげただけです。それに貴方は悪魔ですから、敵であることを忘れないでください」
「俺はお前をモノだよ。モノは主人を裏切らない」
ディエゴは司令の頬に指を這わせる。そのまま顔を近づけようとしたが、司令はふいっと顔をそらす。
「強情だな、そこも好きだが」
「雑談はいいのです。今日はどういった報告があるのですか?」
「はいはい、報告しますよ司令様」
どんなに冷たくあしらわれようとそれすらも嬉しそうにディエゴは微笑み、司令の車椅子の目の前にひざまずいて話し出した。
*
目を閉じると倫一は思い出す。
優しく頭をなでてくれた先代の神父であり、育て親だった人を。育ったあの街を。最期に虚しそうに微笑んだ神父の口からは黒い液体が垂れて、地面に広がっていたことを。
あの日、あのとき、倫一は知った。悪魔の存在を知ったのだ。
「倫一さん」
セルの声で倫一は目を開く。ベランダの端で柵にもたれてた倫一に、両手にコップを持ったセルが話しかけた。
部屋の中では酔ったライアンが少女イヴに抱きついて、飲ませた張本人のサシャは楽しそうに大笑いしていた。
「なにか思い出してました?」
「別に」
「そうですか。・・・・・・お酒持ってきましたが飲みます?」
倫一は手だけ寄越せとジェスチャーする。セルは素直に一つ渡した。
「今日も大変でしたね」
「誰かさんに金を勝手に使われたしな」
「おや、その人はずいぶんひどいことをしましたね」
「どの口が」
倫一はお酒を口に含んだ。独特の苦みに顔をしかめながらも飲み込む。
「お酒も飲めないんですね」
「飲める」
セルに煽られて、倫一はまた一口飲む。
「倫一さんはどうして悪魔を殺すんですか?」
「なんだ藪から棒に」
「ただ気になったので」
「・・・・・・俺を育ててくれた人と故郷の仇だ」
すんなりと倫一は語り出した。アルコールの力もあったのだろう。
「俺の前の代、ライト神父・・・・・・厳しいやつばっかの教会だったが、あの人は優しかった。そのライト神父は、悪魔に乗っ取られて、俺は俺の手で」
「なるほど。故郷の、確かあの天使の遺物、隔離都市チェスターに住んでたんでしたっけ」
「よく知ってるな」
「悪魔なら皆知ってますよ」
片眼鏡をつけていない右目がすっと細められる。怪しい微笑みを浮かべるセルだったが、倫一はそれに何も帰さずに続けた。
「・・・・・・天使の街だったってのは後から知ったがな。天使は人間と姿形は変わらねえし見たことねえし、そんなことライト神父は話してなかったし」
「へえ、倫一さんって可哀想ですね」
「そう言う言葉、気安く言うなよ」
倫一はまた一口酒を含む。
「司令に助けてもらうまでは、つい最近まであの街いたが、まさか俺が憎んでいる悪魔の巣窟になってたとは。それに気づかない俺は馬鹿すぎた。・・・・・・ライト神父を乗っ取ったのもあの街を悪魔の街にして俺を騙し続けたことも許せない。だから俺は悪魔を全員殺すんだ。全ての仇なんだよ」
「すべての悪魔を、ですか。サシャさんとライアンさんは? 私は?」
「サシャは魔人だから、別にいい。ライアンとお前は・・・・・・最後に殺してやる」
「そうですか、厳しい人ですね」
「今は味方でも悪魔であることに変わりねえだろ」
倫一は残ったお酒を一気に流し込む。
「俺は悪魔を残らず殺す。どんな手を使っても全員だ。殺して殺して・・・・・・復讐を果たす」
セルはそう宣言する倫一の姿を見ながら、同じようにコップに入ったお酒を飲んだ。
「俺は・・・・・・俺は、やるぞ。やりきるんだ。みんな・・・・・・」
ぼそぼそと呟きながら、倫一はそのまま床に座り込んで動かなくなった。
「あれ、寝ました?」
「・・・・・・」
倫一から返事はなかった。
「お酒、弱いんですねえ」
遠くから「なぎはんが座り込んどる!」というサシャの声が聞こえた。セルはどこか楽しそうに微笑んで、コップに残った物を飲み干した。
*
「寝坊助さん、目が覚めたのね」
長髪の女性が棺に語りかける。
「貴方が眠っている間に、貴方の担当のチェスターがAppleに落とされたわ。アダムも奪われたわ。どう責任を取るのかしら」
「・・・・・・色欲、か。あの街には、僕の代理の担当もいたじゃないか」
棺の中から声が返ってくる。女性は「だってこの強欲、チェスターに興味を示さなかったもの。仕方ないわ」と隣と椅子に座った男を見てぼやく。
「仕事をしっかりしてくれないか強欲」
棺の声が、近くの椅子に座った男に話しかける。
「ずっと寝てたお前に言われたくないなぁ、怠惰」
「それもそうだ、悪かった」
素直に謝る棺の声。
「まあそれはそれとして、お前が目を覚ましたし。これから手はいくらでもあるだろうよ。どうする、怠惰。いや、ライト神父?」
棺に入っていた悪魔が身体を起こす。
「やめるんだ、その名前で呼ぶのは。今の僕は怠惰の座の悪魔なんだから」
その姿は、倫一の育ての親、ライト神父の姿をしていた。
「手始めに、彼らの要であるアダムを奪い返そう」
ライト神父の姿をした怠惰の悪魔は静かに微笑んだ。
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