だからこの恋心は消すことにした。

朝比奈未涼

文字の大きさ
19 / 19

19.幸せなエピローグ

しおりを挟む



太陽が輝く空の下。
美しく整えられた離宮の庭には、離宮に住まう9人の最高階級の魔法使いたちを始め、私たちの家族や友人、それから仕事関係者らが数人集められていた。

彼らが並び立つ間には、2人並んで歩いても余裕のできるほどのスペースが作られており、その先には白いタキシードに身を包んだエイダンがいる。
太陽の光を受け、キラキラと輝く金髪はまるで妖精の加護を受けたかのような美しさを放ち、私を見つめるアメジスト色の瞳は相変わらず宝石のようだった。

私の愛しい人が今、あそこで私を待ってくれている。

私の隣に立つ、父の腕に手を置いて、慣れないウエディングドレス姿でゆっくりと今日の式に参列してくれた列席者の間を通っていく。



「ラナ!おめでとう!」



カイがその瞳をうるうると潤ませながら、とても嬉しそうに笑っている。



「綺麗だわ、ラナ。おめでとう」



アランも少しだけ涙を溜めた瞳で私に微笑んでいる。



「幸せになれよ、ラナ」



マテオは優しい瞳でニカッと太陽の如く笑ってくれていた。
彼らだけではない。
ここにいるみんなが父と共に歩く私に暖かい言葉をかけてくれる。
そんな彼らに応えながら進んでいくと、やっとエイダンの側までやってきた。
エイダンの元まで私を送り届けた父が「ラナ、幸せにな」と少しだけ寂しそうに、だけど嬉しそうに笑って私から離れる。



「…エイダン」



父が離れた後、私はエイダンの名前を呼び、エイダンへと視線を向けた。
愛おしい私の恋人。今日から彼は私の夫となる。

ここに立つまで本当に早かった。
雪山の家から離宮に帰ってきた後、エイダンはすぐに私と結婚式を挙げると言ってくれたのだ。

恋人になれたことでさえ、夢のような話だったのに、まさか結婚までできるとは。
もう終わらない関係にエイダンとなれるのだと思うと、天にも昇るような気持ちになった。

そしてエイダンが結婚を口にしてたった1ヶ月。
私たちは今、こうしてみんなに見守られながら結婚式を挙げている。



「綺麗だね、ラナ」



ウエディングドレス姿の私を見て、エイダンが満足げに笑う。



「…エイダンもとても美しいです」



そんなエイダンがあまりにも眩しくて、そしてその甘い言葉が嬉しくて、私は頬を紅潮させながらエイダンに微笑んだ。

ああ、私は今、とても幸せだ。
きっと今日という日を私は一生忘れられないだろう。



「俺はお前を一生離すつもりはないから。どんなに嫌がってもお前は一生俺のものだよ。わかった?」

「はい。離さないでください。私も絶対にアナタを離しませんから」



いつものようにどこか意地悪く笑うエイダンに私は笑顔で応える。
私たち2人の瞳は互いを想う愛でいっぱいになっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー



sideエイダン




あの日もこんなふうに太陽がキラキラと輝いていた。



「大おじい様!」



離宮の庭で何となく空を見上げていると、秘書官の格好をした少女が明るい声で俺に声をかけてきた。



「大おじい様って呼ぶな」



俺に声をかけてきた少女、ルナに向かって俺は大きなため息をつく。
だが、ルナはそんな俺の態度など気にも留めず「大おじい様は私の大おじい様ですからそう呼びます」と言ってきた。

そうルナは俺とラナの子孫だ。
ラナとの子がまた子を作り、さらにその子がまた子を作り、ずっと続いた連鎖の先にルナは産まれた。

ルナはもう数百年前に死んだラナに瓜二つで、見た目だけではなく、中身もまるでラナの生き写しのような存在だった。

ルナの年齢は18歳。ラナが離宮で働き始めた年齢と同じくらいだ。
ラナが秘書官を辞めてから、ここ数百年、主に俺とラナの子孫が秘書官になることが多かったが、ここまでラナのような秘書官はいなかった。
ラナの子孫だからと魔法使いたちはどの子も大変可愛がっていたが、ルナに関してはそれはもう特別に目をかけていた。
ラナの生まれ変わりではないかと騒ぐ者もいた。
俺からしてみれば、似て非なるものだが。
ラナはこの世にたった1人しかいないのだから。

だが、ルナを始め、ラナの残り香のある子孫たちが愛おしいと思えるのは事実だった。
彼らはいわば、ラナと俺の愛のその先なのだ。


数百年前、生前ラナはいつも俺に言っていた。


「私はアナタより先に逝きます。それでもアナタは決して1人になることはありません。私たちの子どもが、子孫が、きっとアナタの側に居続けますから」と。


最初こそ、ラナの言っている意味が全くわからなかった。
ラナがいなくなれば、俺は1人になるし、ラナを失うことが何よりも怖かった。


そしてラナの寿命がきて、俺は1人になった。
初めての愛する人との別れに俺は心が引き裂かれそうになった。
何度も何度もラナと同じところに行こうとした。

…だが、ラナの言う通り、俺は1人ではなかった。

ラナとの子どもに、その子どもの子ども。
ラナの残り香を纏う存在が俺の側にはいた。

彼らもまたラナ同様に愛する存在になっていた。



「大おじい様、今日は父と母がお休みで実家で料理を作ってくれるんです。ですから今日の夕食はみんなで一緒に食べませんか?」

「へぇ…。俺の口に合うものなら一緒に食べてもいいよ」

「ふふ、任せてください。今日は我が一族秘伝の大おばあ様のシチューなんですよ」

「クリーム?ビーフ?」

「それは着いてからのお楽しみです!」



誇らしげに微笑むルナの姿にラナが重なる。



『ねぇ、エイダン。アナタから離れないって言ったでしょう?』



それからどこからかそんなラナの優しい声が聞こえた気がした。



「ふ、本当、お前はすごいね、秘書官様」



俺は空を見上げて、あの頃と変わらない笑みを浮かべた。


ーーーーー愛しているよ、ラナ。お前を俺は一生離さない。




end






しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

にゃあん
2025.07.29 にゃあん

ひねくれすぎのエイダン、でも、今日は美味しいシチューが食べられそうですね、たぶん今日はクリームシチューです!

読ませていただきありがとうございます😊

2025.07.31 朝比奈未涼

にゃあん様、最後までお読みいただき、感想までありがとうございます🙇‍♀️
ひねくれすぎエイダンですね笑
ラナじゃないとエイダンと一緒にはなれなかったかも🫣
今頃穏やかにシチューを食べていることでしょう✨

素敵な感想ありがとうございました🙇‍♀️
元気になりました!

解除
turarin
2025.07.07 turarin
ネタバレ含む
2025.07.07 朝比奈未涼

turarin様、素敵な感想ありがとうございます。
私も最後のエピローグ、とても気に入っているので、素敵だと言って頂けて嬉しいです。

そうなんです。ラナの深い愛情のおかげで最後のエイダンがいるんです。ラナはすごいですね。
エイダン以外の魔法使いたちまでお褒め頂きありがとうございます。彼らも魅力的なキャラなのでとっても嬉しいです。

好きという感情は本当に難しいですね。
理屈では説明できないところがいっぱいです。
turarin様がお選びになった旦那様ならきっと素敵なお方ですね😊✨

心が暖かくなる素敵な感想を本当にありがとうございました。元気になりました。

解除

あなたにおすすめの小説

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)

青空一夏
恋愛
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。 けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。 マルガレータ様は実家に帰られる際、 「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。 信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!! でも、それは見事に裏切られて・・・・・・ ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。 エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。 元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。